「うちの顧問弁護士、本当に自社の味方だろうか」——そんな疑念を、ふと抱いたことはありませんか。弁護士に相談したはずなのに、何となく歯切れが悪い。相手方ともつながりがあると後から知った。紹介で来た弁護士を断りにくくて、そのまま任せてしまっている。明確な証拠はないけれど、どこか釈然としない。このような不安は、社長なら一度は感じる場面があるはずです。 その不安の正体のひとつが、「利益相反」と呼ばれる問題です。難しい言葉ですが、要は「弁護士が同時に、あるいは過去に、あなたの相手方の側の仕事もしていた」という状況を指します。これは弁護士業界では厳しく規制されており、違反すれば懲戒処分という罰則も存在します。ところが社長側からは、そもそも利益相反が起きているかどうかを見抜くのが難しい。この記事では、なぜそのような状況が生まれるのか、どう対処すればいいのかを、社長目線で整理します。 「利益相反」とは何か——社長が知っておくべき最低限の構造 利益相反とは、弁護士が同一または関連する案件において、相反する利益を持つ複数の依頼者を同時または順次に代理することをいいます。弁護士職務基本規程(以下「規程」)は第27条から第31条にかけてこれを禁止しており、具体的には以下のようなケースが該当します。 現在の依頼者の相手方から、同じ事件について相談を受ける・依頼を引き受ける 過去に依頼者から受けた事件で、その相手方から新たに依頼を受ける 同じ弁護士事務所内の別の弁護士が相手方を担当している 依頼者AとBの間に利害対立が生じているのに、双方の代理人となる たとえば、ある顧問弁護士が、あなたの会社と取引関係にある別の会社からも顧問を受けている。後日、その取引でトラブルが生じたとき、弁護士は本当にあなたの利益を最大化するために動けるでしょうか。答えは「難しい」です。これが利益相反問題の核心です。 なお、利益相反にあたるかどうかの判断基準は「依頼者の利益が実質的に損なわれるおそれがあるか」という点にあります。単に「過去に関係があった」だけでは必ずしも違反とはなりませんが、双方の利益が対立する可能性がある場合は非常に慎重な判断が求められます。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 利益相反違反の「罰則」——懲戒処分とはどういうものか 【図解】「利益相反」とは何か——社長が知っておくへの対応フロー ① 問題発生 → ② 事実確認・記録 → ③ 顧問弁護士に相談 → ④ 対応策の実行 ※ 弁護士に早期相談することで、リスクを最小化できます。 弁護士が利益相反規制に違反した場合、弁護士法や弁護士職務基本規程に基づく懲戒処分の対象となります。懲戒処分は、弁護士会が行うものであり、重大さに応じて以下の4段階があります。 戒告:最も軽い処分。文書による訓告。 2年以内の業務停止:一定期間、弁護士業務を行えない。 退会命令:弁護士会から退会させられる(弁護士は続けられる)。 除名:弁護士資格の剥奪。最も重い処分。 加えて、利益相反違反が原因で依頼者に損害が生じた場合は、民事上の損害賠償請求(弁護過誤訴訟)の対象にもなります。懲戒処分とは別に、実際に支払った費用や被った損害の賠償を弁護士個人または所属事務所に求めることができるのです。 重要なのは、懲戒処分は弁護士会への申立てという形で会社側からも申し立てることができるという点です。ただし、懲戒処分の申立てと損害賠償請求は別の手続きであり、懲戒が認められたからといって自動的に賠償が得られるわけではありません。損害回復を求めるならば、訴訟を通じた法的手続きが必要になります。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) なぜ「気づいたときには手遅れ」になるのか——判断ミスが起きる構造 利益相反問題で一番怖いのは、会社側が「そういう状況にある」と気づきにくいことです。なぜ気づけないのか。その構造を整理しておきます。 ① 紹介経由だと断れない空気がある 取引先や経営者仲間から「うちの弁護士を使ってください」と紹介された弁護士を、関係を壊したくないがために断れない。その結果、相手側にも接点のある弁護士を顧問にしてしまう。このケースは中小企業に非常に多い構造です。 ② 弁護士自身が開示しない・できない場合がある 利益相反に該当するかどうかは、弁護士が判断します。しかし、弁護士が「軽微だから問題ない」と独自に判断して開示しないケースや、そもそも利益相反であることに気づいていない場合もあります。会社側には確認する術がありません。 ③ 問題が表面化するのは「トラブルが起きたとき」 日常的な法務顧問業務では利益相反が問題にならないように見えても、相手方との紛争が生じた瞬間に「この弁護士は動けない」という事態が発生します。まさに必要な場面で使えない、という最悪のタイミングで顕在化します。 ④ 「顧問契約」の範囲が不明確 顧問弁護士がどこまでの業務を担い、誰のために働いているのかが曖昧なまま契約している会社は少なくありません。複数企業の顧問を兼ねていても、その利益構造が依頼者に見えないまま進んでいることがあります。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 問題が起きる前に会社ができること——予防のための具体的な行動 利益相反問題は、起きてから対処するより、起きないように設計するほうがはるかにコストが低い。予防のために社長が取れる行動を具体的に挙げます。 顧問契約時に「利益相反の確認」を明示的に依頼する:弁護士に対し、「自社の関係先・取引先・競合他社と現在または過去に顧問・受任関係があるか」を書面で確認する。これだけで多くの問題を事前に防げます。 重要な案件は、使用する弁護士を固定する:複数の弁護士事務所に顔が広い社長ほど、「その件はA弁護士、この件はB弁護士」とバラバラに相談しがちです。情報が分散すると、誰がどこまで把握しているかわからなくなります。 顧問弁護士に「他の顧問先リスト」を聞く:すべての開示を求めるのは難しいですが、自社の主要取引先・競合先と重複がないかを確認するだけでも、リスクの大半は防げます。 新たな弁護士を紹介された際は「どの立場からの紹介か」を確認する:紹介元が自社ではなく相手方(取引先・資本家・共同事業者など)の場合は、その弁護士が本当に自社の味方として機能するかを冷静に見極める必要があります。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 問題発生時の対応フロー——「気づいた瞬間」に何をすべきか もし「うちの顧問弁護士は相手方とも関係があるかもしれない」と気づいた場合、どう動けばいいか。焦る必要はありませんが、動く順番を間違えると後手に回ります。 ステップ1:現在の弁護士に直接確認する 「今回のトラブルの相手方と、先生の事務所は関係がありますか」と正面から聞く。弁護士には守秘義務がありますが、利益相反の有無については開示義務があります。回答が曖昧であれば、それ自体が問題のシグナルです。 ステップ2:やり取りを記録・保存する 弁護士とのメール・チャット・書面でのやり取りはすべて保存しておく。口頭でのやり取りは要点をメモして日時も記録する。問題が深刻化した場合、これが証拠になります。 ステップ3:別の弁護士にセカンドオピニオンを求める 利益相反の疑いがある状況で、その弁護士に引き続き相談するのは危険です。別の弁護士に「この状況は利益相反に当たるか」という点も含めて相談してください。 ステップ4:弁護士会への懲戒申立てを検討する 明らかな利益相反違反が確認できた場合、弁護士が所属する弁護士会に懲戒申立てを行うことができます。ただし、懲戒申立てと損害賠償請求は別手続きであり、損害を回復したいのであれば民事訴訟が必要であることを忘れないでください。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 失敗事例から学ぶ——なぜ相談が遅れ、なぜ証拠がなかったのか 当事務所には、「元顧問弁護士に問題があった」という相談が一定数寄せられます。そのほとんどに共通するパターンがあります。 なぜ相談が遅れたのか 最も多い理由は「弁護士を変えたら関係が壊れる」という遠慮です。紹介で来た弁護士、長年付き合いのある弁護士——そういった関係性のある弁護士に対して、不信感を持っても口に出せない。結果として、問題が取り返しのつかない段階まで進んでからようやく相談に来る方が多い。 なぜ証拠が残っていなかったのか 弁護士への相談は、多くの場合「口頭」や「電話」で行われます。アドバイスの内容が書面になっていない、メールでもない。後から「あのとき何と言われたか」を立証しようとしても、物証がありません。弁護過誤を争う場合、この「言った・言わない」の壁が最大の障壁になります。 証拠は、紛争になってから急に作れるものではありません。日頃から弁護士とのやり取りを記録・保存する習慣を持つことが、会社を守る最大の備えです。重要な相談の後は「本日ご相談いただいた内容を確認のためメールにてお送りします」と一言添えて、内容をテキスト化しておく。それだけで大きく変わります。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) うちの会社ではどう考えればいいのか——再発防止のための実践的な整理 「結局、うちの会社では何をすればいいのか」——ここが一番大事なところです。 まず、顧問弁護士を選ぶ段階で「利益相反確認書」を交わすことを標準化する。新たな弁護士に依頼する際には、自社の取引先・競合・関係会社のリストを示したうえで、受任可能かを書面で確認する。これだけで多くのリスクが防げます。 次に、顧問弁護士との関係を「困ったときだけ使う」から「日常的に情報共有する」に変える。会社の取引状況・人事状況・資本構成の変化を定期的に共有していれば、弁護士側も利益相反が生じそうな状況を早期に察知できます。 そして、セカンドオピニオンを使うことへの抵抗をなくす。弁護士を変えることや、別の弁護士に相談することは、裏切りでも失礼でもありません。医療でいえば「別の病院の意見も聞く」のと同じです。重大な判断をするほど、複数の視点が必要です。 利益相反問題は、社長が「この弁護士、本当に自分の味方か」という問いを持ち続けることで、大部分を防げます。不安を放置せず、早めに確認を取ることが、会社を守る安全装置です。 こうした問題は、一度発生してからスポット対応で解決しようとしても、すでに手遅れのことが少なくありません。重要なのは、日常的に法務リスクを点検できる体制です。利益相反のチェック、顧問弁護士の選定基準の明文化、重要なやり取りの記録化——これらを就業規則・社内規程に落とし込み、会社の意思決定の仕組みとして組み込むことが求められます。当事務所「みんなの法務部」では、企業法務部の弁護士歴平均14年以上の弁護士が、顧問先130社以上(実名公開)との継続的な関係を通じて、こうした法務体制の整備から日常相談まで一貫して支えています。弁護士を「揉めてから使う」ではなく、「揉めないために使う」体制へ——その転換をご支援しています。 よくある質問 Q1. 顧問弁護士が利益相反に該当するかどうか、会社側で確認できますか? A. 自社から弁護士に確認を求めることができます。弁護士には利益相反の有無を開示する義務があります。確認する際は、自社の関係先リストを提示したうえで書面での回答を求めるのが最も確実です。弁護士が答えを曖昧にする場合は、別の弁護士に相談することをお勧めします。 Q2. 利益相反違反をした弁護士に損害賠償を請求できますか? A. できます。利益相反違反によって会社に損害が生じた場合、弁護士個人または所属する法律事務所(弁護士法人)に対して民事上の損害賠償請求を行うことができます。懲戒申立てと損害賠償請求は別手続きである点にご注意ください。損害を証明するためには記録の保存が重要です。 Q3. 「利益相反かもしれない」と思ったとき、すぐに弁護士を変えるべきですか? A. まずは事実確認が先です。顧問弁護士に直接確認し、その回答内容を記録したうえで、別の弁護士にセカンドオピニオンを求める、という順番が適切です。いきなり弁護士を変えることで証拠保全の機会を失う場合もあります。進行中の案件があれば特に慎重に動いてください。 Q4. 弁護士への懲戒申立ては、弁護士会のどこに行えばよいですか? A. 当該弁護士が所属する弁護士会の懲戒担当窓口に申立てを行います。日本弁護士連合会(日弁連)のウェブサイトでも手続きの案内が公開されています。懲戒申立書の作成にあたっては、別の弁護士のサポートを受けることが実務上も有効です。 当事務所が参考にした実務書 当事務所では本テーマに関する最新の実務書を継続的に確認し、顧問先企業のリスク評価に反映しています。本記事の作成にあたり特に参考にした書籍を以下に紹介します。 『弁護士職務基本規程〔第3版〕』 — 日本弁護士連合会弁護士倫理委員会編著/日本弁護士連合会/2017年/分類:条文逐条解説書 『弁護士倫理の理論と実務』 — 加藤新太郎編著/ぎょうせい/2012年/分類:学術書・体系書 『弁護過誤の法律相談』 — 大江忠著/青林書院/2010年/分類:Q&A形式の実務解説書 『企業法務のための弁護士選びと活用法』 — 田中亘・松中学編著/商事法務/2020年/分類:実務解説書 『弁護士懲戒の実務と解説』 — 第一東京弁護士会調査室編/第一東京弁護士会/2019年/分類:Q&A形式の実務解説書 ※ 書籍内容は引用しておらず、書誌情報のみ表示しています。本記事は弁護士法人ブライトが監修・執筆しています。 この記事の監修者 和氣 良浩(わけ よしひろ) 弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士 /大阪弁護士会/大阪大学法学部卒 専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生 利益相反問題・顧問弁護士の選定・弁護過誤による損害回復など、法律事務所との関係でお困りのことがある方は、弁護士法人ブライト「みんなの法務部」にお問い合わせください。顧問先130社以上の実名を公開しており、企業法務部の弁護士歴平均14年以上の経験豊かな弁護士が対応します。企業法務窓口:06-4965-9590(平日9:00〜18:00) 「みんなの法務部」というブライトの考え方 中小企業の社長に「専属の法務部」を持っていただく——これがブライトの顧問サービスの基本姿勢です。社内に法務部を置けない規模でも、契約書・労務・債権回収・M&Aまで日常的に相談できる体制を、月額固定で。企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームで、130社以上の顧問先と向き合っています。 ▶ みんなの法務部とは(詳しく見る) 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 会社運営・企業法務の関連記事 従業員の不貞行為を理由に懲戒処分できるか|会社が誤りやすい判断と正しい対応手順 反省文を書かせる会社が知らないリスク|法的に有効な指導記録の残し方 リース契約を解約したい社長へ|弁護士が教える手続きの流れと交渉の注意点 仮差押の担保金(保証金)はいくら必要?相場と決まり方を弁護士が解説 テクノロジーハラスメントとは?チャット・監視ツールが引き起こすリスクと会社の対処法