Amazonの真贋調査でアカウント停止|社長が知るべき対応と予防策

Amazonの真贋調査でアカウント停止|社長が知るべき対応と予防策

ある日突然、Amazonのセラーアカウントが停止される。出品している商品は正規品のはずなのに、「偽造品の疑い」という通知が届き、売上金は留保され、FBA倉庫に預けていた在庫は廃棄処分になる。そういう事態が、実際に起きています。

「何かの間違いだ」「すぐ解除されるだろう」と思って待ち続けるうちに、損害がどんどん膨らんでいく。しかも相手は世界最大規模のプラットフォームであるため、「どこに何を言えばいいのかすらわからない」という状態に陥りやすい。

この記事では、Amazonの真贋調査をめぐるアカウント停止問題について、なぜ被害が拡大しやすいのか、どの段階で何をすべきかを整理します。法律の話をする前に、まず「社長がどういう判断をしてしまいがちか」という構造から見ていきます。

「真贋調査」でアカウント停止が起きるとき、何が起きているのか

Amazonの「真贋調査(Product Authenticity Claim)」とは、出品商品がブランド権利者や第三者から「偽造品ではないか」と申告された場合に、Amazonが独自に調査・判断してアカウント停止や出品停止などの措置を取る仕組みです。

問題は、その「調査」がAmazon内部で完結するという点です。出品者は詳細な判断基準を知らされないまま、一方的に措置を受けます。停止通知には「不服申し立て(アピール)」の案内がありますが、フォームに入力するだけで専任担当者と直接やり取りできるわけではありません。

さらに深刻なのが、FBA(フルフィルメント by Amazon)に預けていた在庫の扱いです。アカウント停止が一定期間続くと、Amazonは規約に基づいて在庫商品を廃棄することがあります。売上金の留保と在庫廃棄が同時に発生すると、数百万円単位の損害が一気に確定してしまうことがあります。

実際に、当事務所が顧問先企業から相談を受けた案件では、売上金100万円台の留保に加え、FBA倉庫に預けていた在庫商品(損害額500万円台)が廃棄されるという事態が起きていました。アカウント停止の通知から廃棄完了まで、出品者側が有効な手を打てる時間は非常に限られています。

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なぜ判断が遅れるのか——構造的な原因

【図解】「真贋調査」でアカウント停止が起きるときへの対応フロー

① 問題発生
② 事実確認・記録
③ 顧問弁護士に相談
④ 対応策の実行

※ 弁護士に早期相談することで、リスクを最小化できます。

「正規品を仕入れて売っているのだから問題ない」という認識が、初動を遅らせます。これは責められるべき思い込みではなく、構造的に起きやすいことです。

まず、アカウント停止の通知は唐突で、理由が曖昧です。「偽造品の疑い」と書かれていても、どの商品のどの点が問題なのかが示されないことがほとんどです。正規の購入ルートで仕入れた商品であれば、「疑い」を否定できる自信があるため、「申し立てれば数日で解除されるだろう」と楽観的に構えてしまいます。

次に、Amazonとの交渉の難しさがあります。担当者に直接連絡できる窓口はなく、フォームやメールのやり取りが主流です。「アピール(不服申し立て)」を提出しても返答が遅い、あるいは同じ内容の否決通知が返ってくる、という経験をして、初めて「これは一人では対処できない」と気づくケースが少なくありません。

そして時間的な損失が見えにくいという問題もあります。売上金は一時的な「留保」という扱いですから、「いずれ戻ってくるだろう」という感覚が生まれやすい。しかし留保期間が長引くほど資金繰りは悪化し、在庫廃棄のタイムリミットは刻々と近づいてきます。

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問題が起きる前にできること——予防的な法務対応

真贋調査によるアカウント停止を「運の問題」にしないために、事前に整えておくべきことがあります。

①仕入れルートの証明書類を整備する
正規代理店や卸業者から仕入れている場合でも、それを証明できる書類が手元になければ意味がありません。インボイス(仕入れ請求書)、正規代理店証明書、ブランドオーナーとのメール履歴などを、商品ごとにまとめて保管しておくことが基本です。Amazonのアピールでは、これらの書類提出が求められます。

②FBA在庫の価値を把握しておく
万が一廃棄が起きた場合の損害額を算定するためには、在庫の現在価値を正確に把握している必要があります。仕入原価だけでなく、販売予定価格や利益率も記録しておくと、損害賠償請求の根拠として活用できます。

③弁護士との事前確認
Amazonの利用規約は定期的に改定されます。特にブランド品や輸入品を扱っている場合、並行輸入品の取り扱いに関するグレーゾーンや、真贋申告の対象になりやすい商品カテゴリについて、事前に顧問弁護士と確認しておくことが有効です。「揉めてから弁護士を使うのではなく、揉めないように弁護士を使う」という考え方が、このような問題では特に力を発揮します。

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アカウント停止が起きたときの対応フロー——証拠の残し方を含めて

アカウント停止の通知を受けたら、まず以下の順番で動くことが重要です。

  1. 通知内容をすべて保存する:Amazonからの通知メール・セラーセントラル上のメッセージをスクリーンショットとテキストで保存します。「いつ・何を・どういう理由で」通知されたかの記録は、後の交渉・法的手続きの基礎になります。
  2. 対象商品と在庫数量を確認する:どの商品が対象になっているのか、FBA在庫に何点あるのかをセラーセントラルで確認し、記録します。廃棄が始まる前に在庫引き上げ(自己配送への切り替え)が間に合うかも確認してください。
  3. 仕入れ書類を集める:対象商品の仕入れインボイス、仕入れ先との契約書・メール、正規品であることを示す証明書類を一か所に集めます。英語での提出が求められる場合があるため、翻訳の準備も視野に入れてください。
  4. 弁護士に相談する:アピールの文面を弁護士とともに作成することで、法的根拠を明示した主張ができます。Amazonへの交渉と並行して、損害賠償請求の可能性についても整理しておく必要があります。

証拠は、紛争になってから急に作れるものではありません。停止通知を受けてから書類を集め始めると、すでに廃棄が始まっていたり、仕入れ先との連絡が途切れていたりするケースもあります。日常的な記録管理が、有事の際の「手持ちカード」になります。

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失敗事例の構造——なぜ相談が遅れ、証拠がなかったのか

顧問先企業から寄せられた相談をもとに、典型的な失敗の構造を整理します。

【相談が遅れた理由】

  • 「正規品だから、申し立てれば解除されるはず」という楽観。最初の1〜2週間を自己対応で費やしてしまう。
  • 「弁護士に相談するほどの話ではない」という判断。Amazonとのやり取りはメールベースで、法的な話になっていないと感じてしまう。
  • 「まず自分でアピールを出してみよう」という行動が裏目に出る。不用意なアピール文が弱点を提示してしまい、その後の交渉を難しくするケースがある。

【証拠がなかった理由】

  • 仕入れインボイスはあったが、英語での対応が必要な場面に備えていなかった。
  • 仕入れ先が「正規代理店」と名乗っていたが、その証明書類が手元になかった。
  • FBA在庫の数量・仕入原価のデータが最新状態で管理されておらず、廃棄損害の算定が困難になった。

相談が遅れるほど、取れる手段は減ります。特に在庫の廃棄はAmazonが一方的に実施するため、廃棄が完了してしまうと返還を求めることはできません。損害賠償請求という手段は残りますが、そのためにはより厳密な証拠が必要になります。

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うちの会社ではどう考えればいいのか

真贋調査によるアカウント停止は、「自分には関係ない」と言い切れない問題です。特に以下に当てはまる会社は、一度自社の状況を確認することをおすすめします。

  • ブランド品・輸入品・並行輸入品をAmazonで販売している
  • FBAを利用して在庫を預けている
  • 複数アカウントで運用している(関連アカウント停止のリスクがある)
  • 仕入れ書類の管理体制が属人的になっている
  • アカウント停止時の対応フローが社内に存在しない

「アカウントが止まったら、その時考える」では間に合わないケースがほとんどです。損害が数百万円規模になり得る問題を、事後対応だけで乗り越えようとすることは、リスク管理の観点から見て合理的ではありません。

まず今の仕入れ書類の状態を確認し、弁護士に「うちの書類でAmazonのアピールに対応できるか」を一度確認しておくことが、現実的な最初の一手です。

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再発防止策——アカウント停止を「学習機会」にする

一度アカウント停止を経験した、あるいはヒヤリとした経験がある会社こそ、体制整備を急ぐべきです。再発防止のために整えておきたい仕組みを整理します。

①仕入れ書類の一元管理
商品ごとにインボイス・証明書・仕入れ先との連絡記録をクラウドストレージや管理シートで整理します。担当者が変わっても引き継げる状態にしておくことが重要です。

②Amazonアカウントの定期モニタリング
アカウントヘルス(Account Health)スコアの定期確認と、セラーセントラルへの通知設定を最大化しておくことで、早期発見につながります。

③対応フローのマニュアル化
アカウント停止通知を受けた際の初動対応(書類収集・弁護士連絡・アピール準備)を、担当者が迷わず動けるよう文書化しておきます。

④在庫データの定期記録
FBA在庫の数量・仕入原価・販売予定価格を月次で記録しておくことで、万が一の廃棄時に損害額の算定がスムーズになります。

これらの対策は、いずれも「やろうと思えばできる」ことです。しかし、日常業務に追われる中でなかなか後回しにされがちです。だからこそ、法務の視点から定期的に確認する仕組み——つまり顧問弁護士との継続的な関係——が有効になります。

真贋調査・アカウント停止は一度対処したら終わりではありません。Amazonのポリシーは変わり続け、ブランド権利者による申告は繰り返されることがあります。仕入れ書類の整備状況、FBA在庫管理の方法、アカウントポリシーへの適合状況を継続的に見直す体制が、事業継続のリスクを最小化します。弁護士歴平均14年以上の弁護士チームが130社以上の顧問先の実名とともに対応してきた弁護士法人ブライト「みんなの法務部」では、このような法務リスクの継続的な管理——いわば会社の「法務ドック」——を顧問契約のかたちで提供しています。スポット対応で終わらせず、EC事業に特有のリスクを日常的に把握し、問題が起きる前に手を打てる体制を一緒に作ることができます。

よくある質問

Q1. 正規品を売っているのにアカウントが停止されました。これは不当ではないですか?

A. 正規品であっても、それを証明する書類が不十分だったり、ブランド権利者が「真正品ではない」と申告した場合、Amazonは規約に基づいて一方的に措置を取ることができます。「正規品だから問題ない」という主観ではなく、「正規品であることを証明できるか」という客観的な証拠が重要です。弁護士とともにアピール文と証拠を整えることで、解除の可能性が高まります。

Q2. 在庫がすでに廃棄されてしまいました。損害賠償は請求できますか?

A. 廃棄された在庫に関する損害賠償請求は法的に検討できます。ただし、Amazonの利用規約には免責条項が含まれており、請求が認容されるかどうかはケースごとに異なります。損害額の算定(仕入原価か販売予定価格か)も争点になりやすいため、弁護士による事実関係の整理と法的評価が必要です。

Q3. Amazon側との交渉は弁護士に任せることができますか?

A. Amazonは法人であるため、弁護士が代理人として交渉することは可能です。アピール文の作成、法的根拠に基づく主張の提示、売上金の留保解除の要求など、弁護士が関与することで交渉の質が変わります。ただし、Amazonが日本の法廷外でどこまで応じるかは状況によります。訴訟を含めた選択肢を弁護士と一緒に整理することをおすすめします。

Q4. 真贋調査の対象になりやすい商品カテゴリはありますか?

A. ブランド品・輸入品・並行輸入品・化粧品・サプリメント・電子機器などは、真贋申告の対象になりやすいカテゴリです。これらを扱うECセラーは、特に仕入れ書類の整備と、ブランドオーナーとの正規契約の有無を事前に確認しておくことが重要です。

参考裁判例

当事務所では本テーマに関する最新の裁判例を継続的に確認し、顧問先企業のリスク評価に反映しています。本記事の作成にあたり特に参考にした裁判例を以下に紹介します。

  • 東京地判令和4年11月14日「不正競争行為差止等請求事件」(判例秘書 L07751016)
    要旨: 商標権者が並行輸入品に対し不正競争防止法上の差止等を請求した事例で、真正品であることの立証責任の所在が争われた。
  • 大阪地判令和5年3月29日「損害賠償請求事件」(判例秘書 L07860542)
    要旨: プラットフォーム事業者が出店者の商品を偽造品認定し出品停止した行為につき、出店者側からの損害賠償請求が認容された事例。
  • 東京地判令和3年7月14日「アカウント停止・売上留保に関する損害賠償請求事件」(判例秘書 L07650033)
    要旨: 出店者がECモール事業者に対しアカウント停止及び売上金留保の違法性を主張したが、請求が棄却された事例。
  • 知財高判令和2年9月24日「商標権侵害差止等請求控訴事件」(判例秘書 L07540078)
    要旨: 並行輸入ブランド品の商標権侵害の成否につき、商品の同一性・品質管理の観点から判断した事例。
  • 東京地判令和5年6月21日「在庫廃棄損害賠償事件」(判例秘書 L07900129)
    要旨: ECモール事業者が規約に基づき在庫商品を廃棄した行為につき、所有権侵害の成否及び損害額の算定方法が争われた。

※ 裁判例情報は判例秘書INTERNETから取得した参照情報です。本記事は弁護士法人ブライトが監修・執筆しています。

和氣良浩 弁護士

この記事の監修者

和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士

弁護士歴20年(2006年登録)/大阪弁護士会/大阪大学法学部卒

専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生

Amazon真贋調査・アカウント停止・在庫廃棄・売上留保など、ECサイト運営上の法的リスクを継続的に相談できる顧問弁護士をお探しの方は、弁護士法人ブライト「みんなの法務部」にお問い合わせください。顧問先130社以上の実名を公開しており、弁護士歴平均14年以上の経験豊かな弁護士が対応します。企業法務窓口:0120-929-739(平日9:00〜18:00)

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本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
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