執筆・監修
笹野 皓平(ささの こうへい)
弁護士法人ブライト|労災事業部 部長
大阪弁護士会(2011年登録)|修習64期
代表監修
和氣 良浩(わけ よしひろ)
弁護士法人ブライト 代表弁護士
この記事の結論
高所作業中の転落事故で会社に安全配慮義務違反(労働契約法5条・民法415条)があれば、労災保険とは別に損害賠償請求ができます。足場未設置・安全帯未配備など会社の法的義務違反を立証することで、慰謝料・逸失利益・介護費用など数千万〜1億円超の賠償を獲得できます。ブライト解決実績:合計1億1,000万円(建設業・配管工・タラップ転落)。
「足場もなく高い場所で作業して落ちた」「安全帯を付けるよう言われていなかった」——高所作業中の転落事故は、会社が労働安全衛生法上の義務を果たしていない状態で起きることが多く、損害賠償額が数千万〜1億円超に及ぶ案件が少なくありません。
しかし多くの被災者は「労災保険をもらったから、これ以上は請求できない」と誤解しています。労災保険と会社への損害賠償請求は別ルートであり、慰謝料・逸失利益の全額は労災保険では補填されません。
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高所作業の転落事故で会社に損害賠償請求できる法的根拠
安全配慮義務違反(労働契約法5条・民法415条)とは
会社(使用者)は、労働者が安全に働けるよう必要な措置を講じる安全配慮義務を負っています(労働契約法5条)。この義務に違反して労働者が負傷した場合、会社は民法415条(債務不履行)または709条(不法行為)に基づく損害賠償責任を負います。
高所作業における安全配慮義務の具体的内容は、労働安全衛生法・同規則で詳細に定められています。
- 足場の設置義務:高さ2メートル以上の場所で作業する場合、労働安全衛生規則518条により作業床・手すりの設置が義務付けられています
- 墜落制止用器具(安全帯)の使用義務:足場設置が困難な場合は、安全帯の使用と取付設備の整備が義務(安衛則518条・519条)
- 作業主任者の選任:つり足場・張り出し足場等では足場の組立て等作業主任者の選任が必要(安衛法14条・安衛則565条)
- 安全教育の実施義務:新規採用者・作業内容変更時の安全衛生教育(安衛法59条)
これらの義務を怠って事故が発生した場合、会社の安全配慮義務違反が成立し、損害賠償請求の根拠となります。被災者に過失があっても、過失相殺として損害額が減額されるだけで、請求権そのものは消滅しません。
労災保険と損害賠償請求は「別の手続き」
労災保険(療養補償・休業補償・障害補償給付)を受け取っていても、それとは別に会社への損害賠償請求が可能です。損益相殺(二重取り禁止)により同一損害項目の重複受給はできませんが、労災保険が補填しない慰謝料・逸失利益差額・介護費用などは全額請求できます。
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安全配慮義務違反を立証するポイント
足場・安全帯の「設置状況」が立証の核心
ブライトが実際に対応した案件では、「高さ3メートルの外壁補修工事で足場も安全帯も設置されていなかった」「脚立作業で安全帯の取付設備が整備されていなかった」「タラップ(仮設階段)の手すりが設置されておらず安全基準を満たしていなかった」など、明らかな安全基準違反が多数確認されています。
立証に使える主な証拠は以下のとおりです。
- 労働基準監督署の災害調査復命書:情報開示請求で入手可能。会社が隠したい調査内容が記録されている
- 死傷病報告書(様式23号):会社が労基署に提出した事故報告書。事実と異なる記載がある場合は修正申し入れ可能
- 事故現場の写真・動画:足場の有無・安全帯取付設備の有無・墜落防止措置の状況
- 安全教育記録・作業指示書:危険性の説明が行われていたか
- 目撃者の証言:同僚や他の作業員の証言は会社の義務違反の補強証拠になる
元請け・一次下請けへの責任追及
建設現場の転落事故では、直接の雇用主(二次・三次下請け)が廃業していても、元請け・一次下請けへの責任追及が可能なことがあります。労働安全衛生法15条の元請業者の安全管理義務、実質的な指揮命令関係に基づく安全配慮義務の拡張(最高裁昭和59年4月10日判決等参照)、工作物責任など複数の根拠を組み合わせます。
ブライトが対応した転落事故案件では、元請ゼネコンと一次下請に対してそれぞれ5,500万円、合計1億1,000万円で示談が成立した実績があります(一人親方・タラップ転落・高次脳機能障害・下肢機能障害)。
被災者に過失があっても請求できる——過失相殺の実務
「ヘルメットを着けていなかった」「安全帯を付け忘れた」など、被災者側にも落ち度があるケースがほとんどです。しかし、過失があっても請求は可能です。過失相殺(民法418条・722条2項)により損害額が減額されるだけで、請求権は失われません。ブライトの実績では、ヘルメット未着用の案件で「過失相殺1割以内」に抑えた事例があります。
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損害賠償で請求できる項目と金額の目安
労災保険でカバーされない損害項目一覧
| 損害項目 | 労災保険での補填 | 会社への請求 |
|---|---|---|
| 慰謝料(入通院・後遺障害) | ゼロ(対象外) | 全額請求可能 |
| 休業損害差額 | 給付基礎日額の60% | 残40%を追加請求可能 |
| 逸失利益 | 障害補償給付(一部) | 不足分を追加請求可能 |
| 将来介護費用 | 介護補償給付(上限あり) | 超過分を全額請求可能 |
| 葬儀費用(死亡時) | 葬祭料(上限あり) | 超過分を請求可能 |
後遺障害等級別の賠償額レンジ(弁護士基準)
| 後遺障害等級 | 主な症状例(転落系) | 後遺障害慰謝料 | 賠償総額目安 |
|---|---|---|---|
| 1〜2級 | 脊髄損傷・高次脳機能障害(要介護) | 2,370〜2,800万円 | 5,000万〜1億円超 |
| 5〜7級 | 下肢機能障害・複数部位骨折 | 1,000〜1,051万円 | 3,000〜5,000万円 |
| 9〜10級 | 下肢骨折・可動域制限 | 550〜690万円 | 1,500〜3,000万円 |
| 12〜14級 | 椎体骨折・局部神経症状 | 94〜290万円 | 300〜1,000万円 |
損害賠償請求の時効は症状固定から5年
転落事故での損害賠償請求権の時効は、改正民法724条の2・166条1項により、損害および加害者を知った時から5年(生命・身体の侵害による損害賠償の場合)です。通常は症状固定の時点が起算点となります。なお、労災保険給付の時効(療養・休業補償は2年、障害・遺族補償は5年/労災保険法42条)とは別の計算なので混同しないことが重要です。
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弁護士法人ブライトの解決事例
事例1. タラップ転落・高次脳機能障害・合計1億1,000万円示談(建設業・配管工)
40代男性の配管工(一人親方)が、設備工事中に仮設タラップ(手すりなし)から転落し、高次脳機能障害・下肢機能障害の重篤な後遺障害を負いました。多重下請け構造で雇用主は破産済みのため、元請大手ゼネコン・一次下請への責任追及が唯一の手段でした。ブライトは過失相殺を最大1割に抑え、一人親方の基礎収入を適正に算定。将来介護費用を随時介護として最大化した結果、合計1億1,000万円で示談が成立しました。
事例2. 脚立転落・過失相殺7割主張を退け・解決金1,500万円
30代女性の職長(内装仕上げ工)が、脚立使用中の転落で後遺障害8級の認定を受けました。相手方は「職長として安全指導する立場だったため被災者側の過失は7割」と主張。ブライトは上長の反省文を証拠として会社側の義務違反を立証し、解決金1,500万円で任意和解を成立させました。
事例3. 専門外作業中の高所落下・後遺障害7級・解決金3,000万円
50代男性の鉄骨工が、元請けから指示された専門外の解体作業中に器具が破損し高所落下。複数部位骨折・後遺障害7級認定。直接の雇用会社が廃業していたためブライトが元請けへの責任追及を実施し、解決金3,000万円+借入金免除で和解(依頼者手残り約2,204万円)。
事例4. 足場なし外壁塗装転落・刑事・民事並行対応(骨盤骨折・ストーマ手術)
60代男性の塗装工(一人親方)が、安全帯・足場なしで高所転落し骨盤・胸部骨折・脊椎拘縮・ストーマ手術が必要な重篤状態に。ブライトは受任前から「秘密録音」「書面へのサイン拒否」を具体的に指示し、労働局・消防機関への情報開示請求を主導。刑事手続きも発展中で証拠収集・交渉を並行進行中。
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事故後にやってはいけないこと
- 会社から渡された示談書・権利放棄書を内容確認せずにサインする
- 「労災申請しなくていい」「治療費は全部出す」という口頭約束を信じる
- 会社提示の示談金をそのまま承諾する(弁護士基準の1/10以下のケースが頻繁にあります)
- 過失があるからと諦めて相談しない
- 後遺障害診断書の内容を主治医に任せきりにする
よくある質問(FAQ)
Q1. 足場はありましたが安全帯がありませんでした。会社に請求できますか?
安全帯(墜落制止用器具)の使用・取付設備の整備は労働安全衛生規則で義務付けられています。安全帯の未配備・取付設備未整備は会社の安全配慮義務違反に当たります。請求できます。まずは弁護士にご相談ください。
Q2. 雇い主の下請け会社が倒産していますが、元請けに請求できますか?
元請けへの責任追及は可能なケースが多くあります。労働安全衛生法15条の元請業者の安全管理義務や、実質的な指揮命令関係に基づく安全配慮義務の拡張を根拠に請求します。ブライトはこの類型で1億1,000万円の解決実績があります。
Q3. 一人親方でも会社に損害賠償を請求できますか?
一人親方でも、元請・発注者への損害賠償請求は可能です。労働契約法上の安全配慮義務は、指揮命令関係が認められれば一人親方と元請の間にも成立するとされています。ブライトでは一人親方案件で1億1,000万円超の解決実績があります。
Q4. 労災申請は会社がしてくれません。どうすればいいですか?
被災労働者本人が直接、労働基準監督署に申請できます(自主申請)。また、会社が労災申請を拒む行為は「労災隠し」として労働基準法違反になります。弁護士がサポートして申請手続きを進めることが可能です。
Q5. 家族が転落事故で意識不明です。家族として何をすればいいですか?
まず会社に対して「弁護士確認前にはどんな書類にもサインしない」と宣言してください。事故現場の写真・目撃者の連絡先・会社とのやり取りを記録してください。家族からの相談・受任にも対応しています。早急に弁護士にご連絡ください。
Q6. 症状固定前ですが今すぐ相談できますか?
症状固定前の相談・受任を推奨しています。時効管理・証拠保全・後遺障害診断書への介入など、症状固定前から弁護士が行える対応は多くあります。「まだ治療中だから」と遠慮する必要はありません。
まとめ
- 高所作業転落事故で足場未設置・安全帯なしなどの義務違反があれば、損害賠償請求が可能(労働契約法5条・民法415条)
- 労災保険と損害賠償請求は別ルート——慰謝料・逸失利益の全額は労災保険でカバーされない
- 被災者に過失があっても請求は可能(過失相殺で減額されるだけ)
- 直接の雇用主が廃業していても元請・発注者への請求が可能なケースが多い
- ブライト解決実績:合計1億1,000万円(建設業・タラップ転落・高次脳機能障害)
- 損害賠償請求の時効(生命・身体侵害)は損害・加害者を知った時から5年(民法724条の2)
「自分にも過失があった」「相手が大企業だから」「労災保険をもらったから」——そんな思い込みが、受け取れるはずの補償を大きく減らしています。まずはお電話かLINEで、実績ある弁護士にご相談ください。
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