執筆・監修
執筆:笹野 皓平 弁護士(弁護士法人ブライト 労災部部長/大阪弁護士会 登録2011年・修習64期)
監修:和氣 良浩 弁護士(弁護士法人ブライト 代表)
足場が設置されていなかった、安全帯が支給されなかった、手すりが不完全だった——足場からの転落事故は、多くの場合に会社側の安全配慮義務違反が根本原因です。労災保険を受給しながら、会社への損害賠償請求を並行して行うことで、慰謝料・逸失利益・介護費用など、労災保険だけではカバーできない損害を補填できます。
このページでは、足場転落事故で会社への損害賠償請求を検討している方・そのご家族に向けて、弁護士法人ブライトの実際の解決事例(最高1億1,000万円)と具体的な戦略を解説します。
この記事でわかること
- 足場転落で会社の責任を問える法的根拠(安衛法・安全配慮義務)
- 元請・発注者まで責任追及できるケースの条件と実例
- 後遺障害の等級認定で「失敗しない」ための弁護士の関与ポイント
- 「自分にも過失がある」と言われた場合の対処法
- 実際の解決事例(1億1,000万円で示談)の詳細
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足場転落事故と会社の安全配慮義務違反
安衛法が定める「足場設置義務」と違反の具体例
労働安全衛生法(安衛法)および労働安全衛生規則(安衛則)は、高所作業における足場の設置・点検・管理について詳細な義務を使用者・元請業者に課しています。
安衛則第563条は、墜落防止のための手すり設置を義務付け、同第564条は足場の組立・変更時の点検・補修を義務付けています。さらに、安衛則第518条・第519条は高さ2メートル以上の作業における墜落防止措置(足場・安全ネット・安全帯着用指示)を使用者の義務として定めています。
ブライトが扱ってきた足場転落事案では、以下のような義務違反が典型的に問題になります:
- 足場を設置せずに高所作業を指示した(安衛則518条・519条違反)
- 安全帯・ハーネスを支給せず、または着用を義務付けなかった
- 先行手すり工法を採用せず、手すりが後付けで設置された
- 足場の組立完了前または点検未実施の状態で作業を指示した
- 足場の幅・スペースが安衛則の規定(60cm以上が原則)を満たしていなかった
これらの義務違反が認められた場合、使用者の安全配慮義務違反(労働契約法5条、民法415条・709条)として損害賠償請求の根拠となります。
元請・発注者まで責任を問えるケース
建設現場では多重下請け構造が一般的です。直接の雇用主(三次・四次下請け)が廃業していたり、資力がなかったりしても、元請業者・発注者への責任追及が可能なケースが多くあります。
根拠となる法律・判例理論は複数あります。安衛法第29条は、元請業者に対して下請け業者の労働者を含む現場全体の安全管理義務を課しています。また、元請が現場の安全管理を実質的に支配・指揮監督していた場合、判例は「雇用関係に準ずる関係」として安全配慮義務を認める傾向があります(専門書『労働事件審理ノート(第4版)』等参照)。
ブライトが実際に対応した事案では、大手ゼネコン(大成建設)と一次下請(トーステ)にそれぞれ5,500万円ずつ、合計1億1,000万円で示談成立した例があります。直接の雇い主ではない元請への責任追及が実を結んだ典型事例です。
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足場転落事故でブライトに相談が来る「実際の状況」
受任前から「証拠保全」が勝敗を左右する
足場転落事故の損害賠償請求において、最も重要な初動は証拠保全です。事故後、会社・元請側は現場の状態を改変したり、事故原因の認定に有利な方向で書類を整えようとすることがあります。
ブライトでは受任前の段階から、以下の具体的な指示を依頼者・家族に行っています。
- 事故現場・足場・安全帯(または不設置の状況)の写真を即日撮影・保全
- 会社・元請から書類(示談書・損害賠償合意書・権利放棄書面)へのサインを求められても絶対に応じない
- 相手方との面談・話し合いの場での秘密録音
- 労基署への会社立ち会い同席(証拠取得の観点から反対しない)
- 大阪労働局・消防局への情報開示請求(死傷病報告書・救急活動報告書)
実際に「マンション5階外壁補修工事で7m転落・骨盤骨折・脊椎拘縮」の事案では、受任前から相手方との面談時の秘密録音・権利放棄書面への署名拒否を指示し、刑事・民事両面の証拠収集を並行して進めました。元請を含む4社の調書が検察送致され刑事手続きへ発展した事例です。
過失相殺の主張を退ける——「7割過失」も争える
足場転落の事案では、会社・保険会社側が「被災者にも安全確認を怠った過失がある」として過失相殺(損害賠償額の減額)を主張することがあります。
ブライトが担当した「脚立作業中転落・後遺障害8級・現場監督」の事案では、相手方が被災者側の過失を7割と主張してきました。しかし弁護士が上長の反省文を証拠として活用して会社側の安全義務違反を立証し、解決金1,500万円での任意和解を実現しました。「自分が現場監督だから自分の責任が重い」と諦めないことが重要です。
また、ヘルメット未着用・安全帯未使用などの被災者側の事情があっても、過失相殺を1割以内に抑えた事例もあります。会社が安全設備を用意していなかった・着用を義務付けていなかったという事実があれば、被災者の過失が大幅に減じられます。
実務書・専門文献
安全配慮義務違反の判断基準と過失相殺の実務については、以下の専門書が参考になります。
・『労働事件審理ノート(第4版)』(判例タイムズ社)——安全配慮義務違反の立証構造・過失相殺の判断基準を詳説
・『建設業の労働安全衛生法の実務』——安衛法・安衛則の義務条文と違反事例を体系的に整理
・厚生労働省『建設業における墜落・転落災害防止対策の強化について(令和元年度)』
足場転落事故の実際の解決事例
事例1:仮設タラップ転落・高次脳機能障害・合計1億1,000万円(建設業)
事故の概要
工場改修工事中、仮設タラップ(仮設足場階段)から転落。高次脳機能障害と下肢機能障害の重篤な後遺障害を負った。被災者は一人親方として特別加入していた。
複雑な事情
発注者・元請(大手ゼネコン)・一次下請・二次下請(破産)の多重下請け構造。二次下請けが破産していたため、元請・一次下請への責任追及が不可欠だった。過失相殺・介護費用の評価・労災給付との調整(損益相殺)が主要な争点となった。
弁護士の戦略
- 被災者がヘルメット着用をどの程度指示されていたかを詳細に聴取し、「着用義務を課していなかった会社側の落ち度」を前面に出すことで過失相殺を最大1割に抑制
- 一人親方の基礎収入の算定は、確定申告売上から真に必要な経費のみを控除する方法を採用し、逸失利益を最大化
- 将来介護費用を「随時介護」として計上し、介護開始年齢・期間を精緻に試算
- 交渉の長期化を防ぐため、訴訟・調停移行も示唆して相手方の引き延ばし戦術を封じた
結果
大成建設・トーステにそれぞれ5,500万円ずつ、合計1億1,000万円で示談成立。
事例2:足場未設置・安全帯なしでマンション7m転落・骨盤骨折・交渉中
事故の概要
マンション外壁補修工事中、安全帯・足場なしで高さ約7メートルから転落。骨盤・胸部骨折・脊椎拘縮(歩行困難)・肺炎・透析・ストーマ手術が必要な重篤状態。
複雑な事情
被災者は一人親方として特別加入しながら雇用主からも賃金を受領するダブルワーク形態。雇用主から「労災申請を待つよう」求められており未申請状態で相談に来た。
弁護士の対応
受任前から秘密録音・書面サイン拒否・相手方に多く話させる指示を実施。4社の調書が検察送致され刑事手続きへ。証拠収集・情報開示請求と民事交渉を並行進行中。
事例3:脚立作業転落・後遺障害8級・「7割過失」を退けて1,500万円
事故の概要
脚立を使用した高所作業中に転落。後遺障害8級認定。被災者は現場監督として安全指導を担う立場だったため、会社側が被災者に7割の過失があると主張した。
弁護士の対応
上長の反省文を証拠として活用し、会社側の安全義務違反(足場設置義務・安全帯支給義務)を立証。被災者が事故後も別会社で収入が増加していたことを踏まえて和解ラインを設定し、訴訟リスクを回避する現実的な落としどころを提示。
結果
解決金1,500万円で任意和解成立(訴訟移行を回避)。
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後遺障害等級認定で「失敗しない」ための弁護士の役割
足場転落事故では、脊椎・骨盤・四肢の重篤な後遺障害が残るケースが多く、後遺障害等級の認定結果が損害賠償額を大きく左右します。
等級認定で問題になりやすいポイントは以下のとおりです。
後遺障害診断書の記載内容に能動的に介入する
多くの被災者が気づいていませんが、後遺障害診断書に「可動域制限なし」「後遺障害に該当しない」と記載されてしまうケースがあります。医師は治療の専門家であり、後遺障害等級認定の基準(関節可動域測定の方法・角度基準など)に精通しているとは限りません。
ブライトでは、後遺障害診断書の記載内容を弁護士が事前にチェックし、必要であれば以下の対応を取ります:
- 医師への追記依頼・新規診断書の作成依頼(可動域測定値・因果関係・自覚症状の明記)
- 症状固定前から「どの等級を目標とするか」を逆算した治療継続の方針共有
- 精神障害(PTSD・うつ病)の労災申請を並行して検討し、早期受診を促す
診断書の内容次第で「7級→2級」など、等級が大幅に異なる事例も実際にあります。症状固定前・症状固定直後のご相談が最も重要です。
損害賠償の時効——「落ち着いてから」では遅い理由
会社への損害賠償請求(生命・身体に対する損害)は、被害者が損害および加害者を知った時から5年で時効を迎えます(改正民法724条の2・166条1項1号、2020年4月1日以降の事故に適用)。
「治療が落ち着いてから弁護士に相談しよう」と待っているうちに、気づけば症状固定から数年が経過していた——というケースがあります。時効管理・証拠保全の観点から、症状固定前でも弁護士への相談・受任を先行させることを強く推奨します。
なお、労災保険の給付(療養補償・休業補償)の時効は2年、障害補償・遺族補償の時効は5年(労災保険法42条)です。損害賠償と保険給付では時効期間が異なりますのでご注意ください。
こんな状況でも相談できます——一人親方・家族が窓口の場合
一人親方でも損害賠償請求は可能
「一人親方だから労災保険がない」「雇われていないから会社に請求できない」という誤解があります。一人親方でも労災保険に特別加入していれば保険給付を受けられます。さらに、元請・発注者への損害賠償請求(安全配慮義務違反・工作物責任)は特別加入の有無にかかわらず可能です。
ブライトの解決事例では、一人親方が元請ゼネコンに合計1億1,000万円の損害賠償を請求して示談に至った事例があります。元請が「直接の雇用関係がない」と主張しても、現場の安全管理を実質支配していた事実があれば責任を問えます。
家族が相談窓口になるケース
足場転落の被災者は重篤な状態で入院しているケースが多く、本人ではなく配偶者・親・兄弟が相談窓口になることは珍しくありません。ブライトでは家族からのご相談も受け付けており、本人が意識不明・重篤な状態でも緊急対応した実績があります。
「夫が足場から落ちて入院中で、会社から書類を渡されているが何をすればいいかわからない」という状況でもすぐにお電話ください。受任後、本人の回復後に追認する形での対応も実績があります。
転落・落下事故の関連ページ
足場転落と同様に、高所作業・転落事故に関連する損害賠償の解説ページです。ご自身の状況に合わせてご参照ください。
- 高所作業中の転落事故で会社に損害賠償請求できる?労災認定と安全配慮義務違反の判断基準(転落事故全般のハブ記事)
- 建設現場転落・安全配慮義務違反での損害賠償請求
- 脚立・はしごからの転落で労災|会社への損害賠償請求
- 労災で会社を訴える損害賠償請求の全体像
- 労災の後遺障害等級認定と損害賠償
弁護士法人ブライト 労災専門チームについて
弁護士法人ブライトは、建設業の足場転落・高所作業事故を含む労災損害賠償請求に特化した弁護士チームを擁しています。弁護士歴14年以上のベテラン弁護士が、安全配慮義務違反の立証から後遺障害等級認定のサポート、元請・発注者への責任追及まで一貫して対応します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 足場から落ちましたが、自分が安全帯を着用していませんでした。請求できますか?
安全帯を着用していなかったとしても、会社が安全帯を支給・着用を義務付けていなかったのであれば、会社側の義務違反が主たる原因として認められます。過失相殺(損害額の減額)を最小化するための交渉も弁護士が行います。ヘルメット未着用でも過失相殺を1割以内に抑えた事例があります。
Q2. 直接の雇用主が廃業しています。それでも請求できますか?
元請・一次下請・発注者への請求が可能です。安衛法29条による元請の安全管理義務、工作物責任(民法717条)など複数の法的根拠を組み合わせて請求します。廃業後でも時効が来る前であれば請求できるケースが多いです。
Q3. 一人親方ですが、元請に請求できますか?
可能です。労働契約がなくても、元請が現場の安全管理を実質的に支配していた場合、安全配慮義務を負うと認められた判例が多数あります。ブライトでは一人親方が元請から1億円超を回収した実績があります。
Q4. 労災保険は使いました。それ以上に会社に請求できますか?
労災保険と会社への損害賠償請求は別制度です。労災保険では慰謝料は一切支払われず、逸失利益も全額補填されません。保険給付と損害賠償の重複分は損益相殺で調整されますが、大多数の重篤事案では損害賠償の方が大幅に上回ります。
Q5. 足場転落で意識不明の家族がいます。家族が相談できますか?
はい、ご家族からの相談をお受けしています。配偶者・親・兄弟が相談窓口になることは珍しくありません。緊急の証拠保全指示も家族を通じて行います。受任後、本人の回復後に追認する形での対応も実績があります。
Q6. 症状固定前でも相談できますか?
症状固定前のご相談・受任を推奨しています。後遺障害診断書の記載内容への事前関与、時効管理、証拠保全の継続など、症状固定前から弁護士がサポートできることは多くあります。
Q7. 損害賠償の時効はいつまでですか?
生命・身体の侵害による損害賠償請求権は、損害および加害者を知った時から5年です(改正民法724条の2、2020年4月1日以降適用)。「落ち着いてから相談」では時効が来てしまう可能性があります。早めのご相談をお勧めします。
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症状固定前でも・家族からの相談でも対応します。
まとめ:足場転落の労災で会社に損害賠償請求するために
- 足場設置義務・安全帯着用指示義務違反(安衛則518条・519条・563条等)は、安全配慮義務違反(労契法5条・民法415条・709条)として損害賠償請求の根拠になる
- 元請・発注者も責任追及の対象——直接の雇用主が廃業していても諦めない
- 「自分にも過失がある」という主張には弁護士が反論できる。過失相殺を1割以内に抑えた実例あり
- 後遺障害診断書の記載内容には弁護士が介入し、等級認定の最大化を図る
- 損害賠償の時効は5年。「落ち着いてから」では遅くなる可能性がある
- 一人親方・家族からの相談・意識不明の被災者への緊急対応——全て対応実績あり
足場転落の労災損害賠償でご不明な点があれば、弁護士法人ブライトの労災専用フリーダイヤル(0120-931-501)にお電話いただくか、以下のボタンからお問い合わせください。
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