家族・親族間の賃貸借を解約・退去させる方法 兄弟・姉妹・子どもに家や部屋を貸しているが、「売却したい」「自分で使いたい」という理由で退去してほしい——こうした相談は家族関係が絡むだけに、言い出しにくく長引きがちです。 法的には、無償(使用貸借)か有償(賃貸借)かで解約の難易度が大きく変わります。 まずその区別を確認することが出発点です。 この記事では、親族間の建物使用関係を終わらせる方法を法的に整理して解説します。 1. まず確認すること——「使用貸借」か「賃貸借」か 使用貸借(無償貸与) 賃料をもらっていない(タダで貸している)場合は使用貸借(民法593条)に該当します。 使用貸借は、賃貸借より貸主の権限が強く、以下の場合に返還請求できます。 契約で定めた目的を達した時 契約で定めた期間が満了した時 当事者が返還時期・目的を定めなかった場合は、使用収益をするのに足りる期間の経過後いつでも返還請求できる(民法597条3項) 長年親族に無償で貸していた場合、すでに「使用収益に足りる期間」が過ぎていることが多く、貸主は比較的自由に返還を求めやすい状況です。 賃貸借(有償貸与) 賃料(家賃)をもらっている場合は賃貸借(民法601条)に該当します。 賃貸借の解約には、普通借家の場合正当事由が必要です(借地借家法28条)。親族だからといって正当事由の判断が緩くなるわけではありません。 正当事由として認められやすい例: 所有者自身が高齢で老後の生活費のために売却が必要 所有者が自ら居住する必要がある 建物の老朽化・耐震性の問題 → ご相談はこちら:/corporationlaw/ 電話:0120-929-739(受付 9:00〜18:00) 2. 契約書がない場合——親族間の口頭貸借の扱い 親族間では「書面なし・口頭だけ」の貸し借りが多く見られます。 このような相談がよくあります。 > 「20年以上前から姉に部屋を貸している。契約書は一切ない。売却のために退去してほしいが、姉は応じない」 契約書がなくても法的な貸借関係は成立します。ただし以下の点が争点になりやすいです。 争点 確認すべき事情 使用貸借か賃貸借か 家賃の支払い実績・振込記録の有無 賃料の額 過去の通帳記録・領収書 契約開始時の合意内容 当時の家族間のやり取り(証言・メモ等) 賃料の実績がない、または名目だけ(固定資産税程度)の支払いであれば、使用貸借と判断されることが多く、貸主側に有利です。 3. 解約・退去を求める手順 ステップ1:解約通知を送る まず書面(できれば内容証明郵便)で解約の意思を伝えます。 使用貸借の場合: 「返還をお願いします」という通知で足りますが、理由(売却・老後資金確保など)を添えると交渉がスムーズです。 賃貸借の場合: 期間の定めのない普通賃貸借は、貸主側から6ヶ月前の解約申入れ+正当事由が必要です(借地借家法27条・28条)。 ステップ2:話し合い(交渉) 書面を送った後、相手方と話し合いを行います。 退去時期の合意 立退料の支払いの有無・金額 転居先の紹介・費用サポートの可否 親族間の場合、感情的になりやすいため、弁護士を代理人として交渉させることで関係を維持しながら解決できることがあります。当事者同士が直接話すと関係悪化に直結しがちです。 ステップ3:交渉不成立の場合——建物明渡訴訟 交渉が決裂した場合は、建物明渡請求訴訟を提起します。 裁判所が明渡しを命じる判決を下せば、強制執行(強制退去)が可能になります。 賃貸借の場合は正当事由の立証が必要であり、立退料の支払いが命じられることも多いです。 4. 立退料——払わなければならないか 使用貸借の場合: 原則として立退料の支払い義務はありません。 賃貸借の場合: 正当事由を補完するために立退料を支払うことが必要になるケースがあります。特に、借家人側に転居の負担(高齢・身体的事情など)がある場合は、立退料の提示が解決を早める効果があります。 立退料の金額は、借家人の受ける損失(引越し費用・家賃差額・生活への影響等)を考慮して算定するのが一般的です。 5. 代理人が就いた場合の対処 相手方(親族)が弁護士をつけて対応してきた場合は、こちらも弁護士を立てて代理人間交渉に切り替えましょう。 直接連絡を続けると感情的な対立が深まり、解決が遠ざかります。弁護士を間に入れることで、冷静・合理的な解決が期待できます。 相続財産に絡む場合(相続した不動産を親族に貸している等)は、遺産分割調停・家事調停の活用も有効です。 → 関連記事:賃貸物件の原状回復費用を減らすための交渉ポイント → 関連記事:ゴミ屋敷の入居者を退去させる方法 → みんなの法務部サービスの詳細はこちら:/corporationlaw/service/ 電話:0120-929-739(受付 9:00〜18:00) よくある質問 Q. 家賃をほとんど払っていない親族でも、退去させるのは難しいですか? A. 家賃の実績がない(または固定資産税程度の名目金額)であれば、使用貸借として扱われることが多く、返還請求は比較的しやすい状況です。ただし相手が争う場合は交渉・訴訟に発展することもあるため、弁護士にご相談ください。 Q. 親族間の問題なので、弁護士に頼むと関係が壊れませんか? A. むしろ当事者同士が直接交渉するより、弁護士を介することで感情的な衝突を避けられることが多いです。弁護士は法律上の根拠に基づいて話し合いを進めるため、関係が修復しやすくなるケースもあります。 Q. 売却のために退去してもらいたいのですが、正当事由になりますか? A. 所有者の老後の生活費確保・資金需要を理由とした売却は、正当事由として認められやすい事情のひとつです。ただし借家人側の事情(高齢・体調不良等)によっては立退料が必要になることもあります。具体的な状況をご相談ください。 Q. 費用はどのくらいかかりますか? A. 交渉段階から対応するか、訴訟まで進むかによって費用は異なります。みんなの法務部では初回相談無料でご案内していますので、まず現状をお聞かせください。 監修:弁護士法人ブライト 大阪・神戸を拠点に企業法務・顧問弁護士サービスを提供。みんなの法務部として中小企業の法的リスク対応を日々サポートしています。 本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の事案に対する法律アドバイスではありません。個別の対応については弁護士にご相談ください。