社内パワハラへの初期対応。パワハラ相談対応で失敗しないためのポイントを解説

社内パワハラへの初期対応。パワハラ相談対応で失敗しないためのポイントを解説

年々、ハラスメントに対する意識は高まりを見せており、事業主にはその対策を講じる法的義務が課せられています。また、従業員からハラスメントについて相談を受けた際には、初期対応が極めて重要です。今回の記事では、パワハラ問題が起きた際の対応手順やパワハラ防止策についてポイントを解説します。

社内パワハラを放置すると、会社はどれだけ損をするのか?初期対応の失敗が招く3つのコストと正しいステップ

この記事でわかること

  • パワハラ相談を放置・初動を誤った場合に発生する3つの具体的コスト
  • 実際に放置で深刻な損害を受けた事例の教訓
  • 相談受付から解決までの正しい初期対応ステップと、顧問弁護士が機能するタイミング

あなたの会社、こんな状況ではありませんか?

「あの上司、ちょっと言い方がきつい気はするけど、仕事はできるから…」「本人同士の問題だし、まず様子を見ようか」「ハラスメントの訴えが来たけど、どこまで本気で調査すればいいのか」——中小企業の経営者や人事担当者から、こうした声を頻繁に耳にします。

パワハラの相談や訴えを受けたとき、「すぐに大ごとにしたくない」「事実関係が不明なうちは動けない」という心理が働くのは自然なことです。しかし、その「少し待ち」の判断が、後から想定外の大きなコストに化けるケースが後を絶ちません。

2020年6月(中小企業は2022年4月)から、パワハラ防止措置は法律上の義務となりました。相談があった時点で会社は適切に対処する責任を負っています。それでも「放置」「先延ばし」「見て見ぬふり」という対応をとり続ける会社は少なくなく、結果として多大なコストを支払うことになっています。

本記事では、「放置したらどれほど損をするか」を具体的に示したうえで、初期対応の正しいステップを解説します。

パワハラを放置した場合に発生する3つのコスト

コスト①:損害賠償・慰謝料請求(数十万〜数百万円)

被害者が会社に対して損害賠償を求める訴訟・労働審判を起こした場合、会社が問われるのは「パワハラ行為者の使用者責任」と「職場環境配慮義務違反」の2つです。特に、相談を受けていたにもかかわらず何も対処しなかったという事実が証明されると、慰謝料に加えて弁護士費用の一部も損害として認められるケースがあります。

裁判例を見ると、精神的損害の慰謝料だけで50万〜150万円の範囲が多く見られますが、休職・失職による逸失利益まで含めると300万円を超えるケースも珍しくありません。さらに、会社側の訴訟対応のための弁護士費用も別途発生します。

コスト②:退職ドミノと採用・教育コスト(1人あたり100万円超)

パワハラが放置された職場では、被害者本人だけでなく「見ていた周囲の社員」も次々と離職します。厚生労働省の調査では、中途採用者1人あたりの採用コストは平均100万円以上(求人広告・エージェント費用・入社後の教育コスト込み)とされています。

10名が退職すれば採用・教育コストだけで1,000万円規模の損失になる計算です。ベテラン社員が抜けることによる生産性低下・受注機会損失を加えると、その実質的なダメージはさらに膨らみます。

コスト③:未払い残業代の連鎖請求(数百万円規模)

パワハラが起因となった退職者が弁護士を立てて請求してくる内容は、慰謝料だけとは限りません。退職後に未払い残業代の請求が来るケースが増えています。「パワハラを受けていた頃から、残業代もきちんと払われていなかった」という複合的なクレームになると、1件あたりの和解金も高額になります。

さらに、1件の残業代請求が表面化すると、SNSや退職者コミュニティ経由で情報が広まり、過去の退職者が複数名まとめて同じ弁護士事務所に依頼してくるという「連鎖請求」が発生しやすくなります。1件の放置が複数の請求を呼ぶ、という連鎖が特に危険です。

実際に起きた事例:放置が招いた深刻な損害

事例①:パワハラ社員の放置→10名退職→残業代300万円請求(物流業)

ある物流業の会社では、業務への習熟度が高いという理由から、パワハラ傾向のある社員を長年にわたって放置していました。問題の社員と同じ部署に配属されるたびに社員が離職し、最終的に10名以上が会社を去りました。

数年後、その問題社員自身も退職。退職から数ヶ月後、弁護士を通じて未払い残業代の請求書が届きました。請求金額は300万円超。就業規則に固定残業代(みなし残業)の規定がなく、「残業込みの給与」という口頭の慣習だけで運用していたことが請求の根拠になりました。

この残業代交渉の最中に、過去に退職した別の社員3名も別の弁護士事務所を通じて残業代請求を開始。最終的に150〜200万円での和解となりました。担当した弁護士によると、「就業規則に固定残業代の定めがあれば、全額認められなかった可能性が高い。書類整備を早い段階でしておけば、防げたコストだった」とのことです。

パワハラ社員を放置したことによる複数退職が、就業規則の不備と組み合わさって「複数の残業代請求」という形で会社に返ってきた典型的な事例です。問題社員を放置していた会社が直面した3つのリスクでも詳しく解説していますが、こうした「負の連鎖」は、放置期間が長いほど被害額が大きくなります。

事例②:不正疑惑社員の問題放置→証拠不足で懲戒解雇が困難に(サービス業)

あるサービス業の会社では、経理担当社員が外部業者からリベートを受け取っている疑惑が浮上しました。ただ、会社は「証拠が固まるまで様子を見ようか」という判断をとりました。すると当該社員は診断書を提出して休職に入り、会社は身動きが取れない状態になりました。

業者からの証言はあるものの決定的な物証がなく、担当弁護士の見立ては「懲戒解雇は証拠不足のため困難。退職勧奨を試みるか、証拠収集を続けるしかない」という状況でした。「疑惑が出た段階で書面による事実確認と証拠保全のフローを設計すべきだった。弁護士が早期に入っていれば、面談の設計と録音・証拠収集のタイミングを一緒に作れた」とのことです。

パワハラ問題も同様です。「様子を見ている間」に当事者の記憶が薄れ、証拠が消え、被害者が退職して事実確認が困難になります。問題が表面化した段階で動けるかどうかが、その後のコストを大きく左右します。

パワハラ相談を受けたときの正しい初期対応ステップ

ステップ1:相談者の安全確保と秘密保持の確約(即日対応)

相談があった当日中に行うべきことは、相談者の安全確保です。具体的には、加害者と物理的に距離をとれるよう座席変更・業務分担の見直しを検討すること、そして「相談内容を加害者側に漏らさない」という秘密保持を明確に伝えることです。

多くの被害者は「相談したことで状況が悪化するのでは」という不安を抱えています。「相談してよかった」と思える環境を作ることが、適切な事実確認を進めるための前提になります。

ステップ2:事実確認(ヒアリングと記録化)

被害者・加害者・第三者(目撃者・関係者)それぞれから個別にヒアリングを行います。この際のポイントは3つです。

  • ヒアリングは必ず複数名で実施する:1対1での聴取は「言った・言わない」のリスクを生みます。
  • 聴取内容は書面化し、当事者に内容確認のサインをもらう:後々の証拠として機能します。
  • 加害者への事情聴取は被害者のヒアリング後に行う:先に加害者側と話すと、口裏合わせのリスクが生じます。

ステップ3:調査結果に基づく措置の検討

ヒアリング結果をもとに、パワハラの有無・程度を判断します。パワハラと認定できる場合は、就業規則の懲戒規定に基づいた処分(口頭注意・文書警告・減給・降格・出勤停止・懲戒解雇)を検討します。ただし、処分の重さが事実関係に対して不均衡な場合、逆に加害者から「不当懲戒」として訴えられるリスクもあります。処分レベルの判断には法的な視点が必要です。

また、パワハラと認定されなかった場合でも、「職場環境として不適切だった」と判断されれば、加害者・被害者双方への指導・教育の実施と記録が必要です。

ステップ4:再発防止策の策定と記録保管

措置を取った後は、再発防止策を文書化して保管してください。具体的には、ハラスメント防止規程の整備・相談窓口の設置・定期的な研修実施などが挙げられます。これらの取り組みを書面として残しておくことが、万が一紛争になったときに「会社は適切に対応した」という証拠になります。

「顧問弁護士がいれば、この段階で防げた」という視点

ここまで読んで、「うちには法務担当者も顧問弁護士もいないから、こんな対応は難しい」と感じた方もいるかもしれません。しかし、それがまさに問題の核心です。

先ほどの物流業の事例で発生した数百万円の残業代請求も、サービス業の懲戒解雇困難の問題も、いずれも「早い段階で法的なアドバイスを受けていれば防げた、あるいは大幅に損害を減らせた」というケースです。

顧問弁護士がいる会社の場合、パワハラ相談が来た時点で「このヒアリング、どう進めればいいですか」と気軽に相談できます。また、就業規則の固定残業代規定の整備、懲戒処分の相当性チェック、加害者への通知文書の作成なども、事前に依頼しておくことができます。顧問弁護士は必要?重要性・利用すべき場面・費用対効果の判断基準で詳しく解説していますが、中小企業にとって顧問弁護士は「問題が起きたら使う専門家」ではなく、「問題が起きる前に備えるパートナー」として機能します。

また、ハラスメント問題に際して加害者への退職勧奨を検討する場面では、適切な進め方でないと逆に会社が訴えられるリスクがあります。退職勧奨で違法と言われないための進め方も参考にしていただくと、こうした場面でのリスク管理に役立ちます。

月額数万円の顧問費用と、数百万円の訴訟リスク・退職コストを天秤にかけたとき、どちらが合理的か——経営者として、この判断を先延ばしにすることのコストは小さくありません。

顧問契約 130社超 / 企業法務部の弁護士歴平均14年以上 / 大阪・全国対応

経験豊富な専属チームが、
貴社の”法務部”になります

労務トラブル・パワハラ対応・就業規則整備まで、顧問弁護士として伴走支援します。

📄 法務チェックリスト 無料ダウンロード

▲ 労務・契約・ハラスメント対応の備えをまとめた実務チェックリスト

よくある質問(FAQ)

Q1. パワハラの相談を受けてから数週間が経ってしまいました。今からでも適切な対応は間に合いますか?

A. 間に合います。ただし、時間が経てば経つほど証拠が失われ、関係者の記憶も薄れていくため、できる限り早く動くことが重要です。現時点でもヒアリングの実施・記録化・再発防止策の整備は可能であり、「対応しようとした」という事実を作ることが、後の法的紛争での会社の立場を守ることにつながります。「すでに遅い」と判断して放置を続けることが最もリスクを高める行動です。迷っているなら今すぐ初動を始めてください。

Q2. パワハラ対応を弁護士に相談・依頼する場合、費用はどのくらいかかりますか?

A. スポット相談(単発での法律相談)の場合、1時間あたり1〜3万円程度が一般的です。ヒアリング設計・書面作成・調査結果のリーガルチェックなどを個別に依頼する場合は、その都度費用が発生します。顧問契約を締結している場合は、パワハラ相談への初期アドバイスや書面作成が顧問料の範囲内でカバーされるケースが多く、トータルのコストは大幅に下がります。「何か起きてからスポットで相談する」より「顧問として日常的に相談できる体制を作る」方が、費用対効果が高い場合がほとんどです。

Q3. 加害者とされた社員が「自分はパワハラをしていない」と主張しています。会社はどう対応すればよいですか?

A. 「加害者が否定している」という状況は珍しくありません。この場合に重要なのは、会社が「どちらかの言い分を信じる」のではなく、「事実確認の手続きを適切に踏んだ」という記録を残すことです。被害者・加害者・第三者それぞれへのヒアリングを書面化し、双方の主張を記録に残してください。その上で合理的な判断を下し、判断の根拠を文書で残すことが、後の紛争で会社を守る基盤になります。加害者の否定を理由に調査を止めてしまうことが、最もリスクの高い対応です。

監修:弁護士法人ブライト 企業法務チーム
大阪・神戸を拠点に企業法務・顧問弁護士サービスを提供。中小企業の法的リスク対応を日々サポートしています。

労務トラブルの対応を弁護士に相談したい経営者の方へ

弁護士法人ブライト(大阪・梅田)は、問題社員対応・解雇・残業代請求・ハラスメント調査・就業規則整備まで、企業側の立場で労務問題に対応しています。
労務に強い弁護士をお探しの経営者の方へ(サービス案内)

※本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律アドバイスではありません。具体的な問題については弁護士にご相談ください。

企業の法律問題でお困りの経営者様へ

弁護士法人ブライト|顧問先130社以上の実績・企業法務部の弁護士歴平均14年以上。まずはお気軽にご相談ください。

無料相談を申し込む 📞 0120-929-739
本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
なお、本記事の内容に関する個別の質問や意見などにつきましては、ご対応できかねます。ただし、当該記事の内容に関連して、当事務所へのご相談又はご依頼を具体的に検討されている場合には、この限りではありません。
  • 記事カテゴリ
  • 成功事例
    インタビュー
契約
人事労務
債権回収
消費者
炎上
会社運営