なりすまし広告で自社の顧客が詐欺被害に|会社が取るべき初動対応を弁護士が解説

なりすまし広告で自社の顧客が詐欺被害に|会社が取るべき初動対応を弁護士が解説

和氣良浩 弁護士

この記事の監修者

和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士

弁護士歴20年(2006年登録)/大阪弁護士会/大阪大学法学部卒

専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生

この記事でわかること:なりすまし広告で自社の顧客が金銭被害に遭ったとき、会社が負う法的責任の考え方と、取るべき対応の3本柱(①顧客への注意喚起 ②広告を止める ③加害者の責任追及)を、時系列で解説します。

「御社のFacebook広告を見て振り込んだのに、商品が届かない」。ある日、こんな問い合わせが自社のサポート窓口に届く――なりすまし広告被害の多くは、この形で発覚します。会社自身も「名前を勝手に使われた被害者」ですが、対応を誤ると顧客の信頼を失うのは自社です。順に整理します。

なりすまし広告の被害対応を相談する

1. まず押さえたいこと――会社に賠償責任はあるのか

結論からいえば、第三者が勝手に出したなりすまし広告による詐欺被害について、なりすまされた会社が当然に賠償責任を負うわけではありません。被害者をだましたのは第三者であり、会社自身に落ち度(過失)がない限り、法的な賠償義務は基本的に観念しにくい構造です。

ただし、次の2点には注意が必要です。

  • 「知りながら放置した」と評価されるリスク:被害の申告を受けたのに注意喚起も削除要請もしないまま被害が拡大すると、道義的な非難にとどまらず、信用の毀損が深刻化します
  • 対応の巧拙がそのままブランドに跳ね返る:被害者から見れば「あの会社の名前で騙された」事実は消えません。誠実な初動が、最大のブランド防衛になります

個別のケースで責任の有無が問題になり得るかは事情によって異なりますので、判断に迷う場合は早めに弁護士へご相談ください。

2. 初動対応の3本柱と時系列

時期 やること 目的
直後〜24時間 証拠保全(広告のスクリーンショット・URL・広告主アカウント・振込先)/被害顧客からの聞き取り/社内共有と窓口一本化 後の削除請求・刑事告訴・開示請求の土台づくり
〜72時間 公式サイト・公式SNS・メールでの注意喚起/Metaへの通報・削除要請 被害の拡大防止(①の柱)と広告の停止(②の柱)
1〜2週間 情プラ法に基づく削除申出/発信者情報開示・刑事告訴の検討 繰り返しへの歯止めと加害者の責任追及(③の柱)

発覚直後の動き方の詳細は、こちらの「72時間以内の初動対応7ステップ」で解説しています。
→ 関連:Facebook・Instagramのなりすまし広告/偽アカウントへの法的対応

3. 顧客・世間への注意喚起――出し方で結果が変わる

注意喚起は「早く・具体的に・断定しすぎず」が原則です。

  • 早く:被害申告が1件でもあれば、他にも進行中の被害がある前提で動く
  • 具体的に:偽広告の特徴(使われている画像・誘導先URL・偽の振込先の存在)と、公式の連絡手段・ドメインを明示する
  • 断定しすぎず:出稿者が特定できていない段階で特定の個人・事業者を名指しすると、逆にこちらが名誉毀損を問われるリスクがあります

「当社とは一切関係がありません」の一文だけで済ませず、被害に遭った方への案内(警察・消費生活センターへの相談先)まで載せると、誠実さが伝わります。

4. 広告を止める――通報で消えないときは法的ルートへ

Metaへの一般通報で削除されれば良いのですが、通報が通らない・同じ素材で再出稿されるケースは珍しくありません。その場合は、2025年4月施行の情報流通プラットフォーム対処法に基づく削除申出(申出から原則7日以内の判断通知義務)や、商標権・不正競争防止法などの権利侵害を根拠とした削除請求に切り替えます。
→ 関連:なりすまし広告を通報しても消えないときの対処|情プラ法の削除申出と法的手段

広告を止める法的手段について相談する

5. 被害者対応と警察連携――「追及する姿勢」がブランドを守る

会社に賠償義務がないとしても、被害者への対応方針は経営判断として決めておく必要があります。実務では次の整理が基本になります。

  • 被害者には、警察(サイバー犯罪相談窓口)・振込先金融機関(振り込め詐欺救済法に基づく口座凍結の申出)・消費生活センターへの相談を具体的に案内する
  • 会社としても被害届・刑事告訴や、発信者情報開示による出稿者の特定を検討する――「会社も本気で追いかけている」事実が、被害者と世間からの信頼をつなぎとめます
  • 個別の金銭補償を行うかどうかは、法的義務の問題ではなく顧客関係の経営判断として、基準を決めてから対応する

6. 再発防止――監視と対応体制を仕組みにする

なりすまし広告は一度きりで終わらないことが多く、「見つけたら都度対応」では現場が疲弊します。①公式アカウントの認証取得と公式導線の明示、②自社名・代表者名・主力商品名での定期的な広告監視、③発覚時の対応フロー(証拠保全→注意喚起→通報→法的措置)の文書化、の3点を仕組みにしておくと、次の被害での初動が数日単位で速くなります。

こうした平時の体制づくりから発覚時の法的対応までを一気通貫で支援するのが、顧問弁護士の役割です。広告・SNSまわりのリスクを日常的に相談できる体制に関心があれば、企業法務サービス「みんなの法務部」をご覧ください。

再発防止の体制づくりを相談する(みんなの法務部)

よくある質問

Q1. 被害に遭った顧客から返金を求められています。応じる義務はありますか?

A. 第三者のなりすまし広告による被害について、なりすまされた会社が当然に返金義務を負うわけではないと考えられます。ただし個別の事情(自社の関与・過失の有無)によって評価が変わり得るほか、応じるかどうかは顧客関係の経営判断でもあります。基準を決める前に弁護士へご相談ください。

Q2. 警察は動いてくれますか?

A. 詐欺被害そのものの被害届は、金銭をだまし取られた被害者本人からの届出が基本です。会社としては、商標権侵害・信用毀損等での被害申告や、証拠を整理して被害者の届出を支援する形で警察と連携します。証拠保全の質が捜査の入口を左右します。

Q3. 出稿者が海外にいる場合、打つ手はありますか?

A. 発信者情報開示や損害賠償請求のハードルは上がりますが、広告の削除・停止はMeta経由の対応(通報・情プラ法の申出・権利侵害ベースの削除請求)で足りるため、被害の拡大防止は可能です。どこまで追及するかは費用対効果を見て判断します。

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