この記事の監修者 和氣 良浩(わけ よしひろ) 弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士 弁護士歴20年(2006年登録)/大阪弁護士会/大阪大学法学部卒 専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生 この記事でわかること:Metaへの通報が通らなくても、打ち手はまだ残っています。①通報のやり方の見直し、②2025年4月施行の情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)に基づく削除申出、③権利侵害を根拠とした削除請求・発信者情報開示。この3段階を順に解説します。 「自社になりすました広告を見つけて、すぐFacebookで報告した。何日待っても消えない。その間もお客様から『この広告は本物ですか』と問い合わせが来る――」。こうしたご相談が増えています。通報ボタンを押して待つだけでは止まらないケースには、理由と対処法があります。 なりすまし広告の相談をする(弁護士法人ブライト) 1. なぜ通報しても、なりすまし広告は消えないのか Meta(Facebook・Instagram)への一般通報は、まずAIによる自動審査で処理されるのが基本です。ここに、通報が通らない典型的な理由が3つあります。 理由①:通報の「類型」が合っていない Metaの報告フォームは「スパム」「詐欺」「なりすまし」「知的財産権の侵害」など類型ごとに窓口が分かれています。なりすまし広告の被害なのに投稿用の「なりすまし報告」から送っている、商標権侵害なのに「詐欺」で送っている――類型がずれると、審査基準に当てはまらず「違反なし」と判定されがちです。 理由②:権利の根拠が示されていない 「うちの会社の名前が勝手に使われている」という事実の指摘だけでは、AI審査は本物と偽物を判別できないことがあります。商標登録番号、公式アカウントのURL、著作物(写真・LP)の出典など、権利者であることの根拠を添えているかどうかで、通り方が変わります。 理由③:消えても、同じ画像で別アカウントから再出稿される 1件消しても、同一の素材を使った広告が別のアカウントから繰り返し出稿されるパターンが典型です。1件ずつの通報では、いたちごっこになります。 2. まず見直したい、通報のやり方3つのチェック チェック 内容 ① 窓口の選択 広告のなりすましは「広告を報告」から。商標・著作権はブランド権利保護(Brand Rights Protection)/知的財産権の報告フォームから。投稿・アカウントのなりすましは「なりすまし報告」から ② 権利根拠の明示 商標登録番号・登録証、公式サイトURL、盗用された画像の原本など、権利者であることを示す資料を添付する ③ 証拠保全が先 通報が通って削除されると、証拠も消えます。スクリーンショット・広告URL・広告主アカウント名・表示日時を通報前に保存する ここまでは自社でできる対応です。それでも消えない場合、あるいは繰り返される場合に、次の法的ルートが出てきます。 3. それでも消えないとき①:情プラ法の「削除申出」を使う 2025年4月1日に情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)が施行され、Meta Platforms, Inc.(Facebook・Instagram・Threads)は同法の「大規模特定電気通信役務提供者」に指定されています。これにより、一般の通報とは別に、法律上の対応義務がある削除申出の窓口が使えるようになりました。 情プラ法上の義務 内容 申出窓口の整備(22条) 権利を侵害された者からの削除申出を、電子的に受け付ける方法を公表する義務 調査・判断の通知(23条・25条) 申出を受けたら遅滞なく調査し、原則7日以内に削除するかどうかの判断結果(調査に時間を要する場合はその旨)を申出者に通知する義務 削除基準の公表(26条) どのような場合に削除するかの基準を策定・公表する義務 一般通報との最大の違いは、「無視される」状態に法的な期限が設定されたことです。申出が権利侵害の主張として整理されていれば、プラットフォーム側は放置できません。逆にいえば、申出書面で「どの権利が・どの表示によって・どう侵害されているか」を法的に構成できるかどうかが結果を左右します。ここは弁護士の主戦場です。 情プラ法の削除申出について相談する 4. それでも消えないとき②:権利侵害を根拠とした削除請求・発信者情報開示 情プラ法の申出と並行して、なりすまし広告は実体法上の権利侵害として直接争えます。主な法的根拠は次の4つです。 商標権侵害(商標法):登録商標を無断使用した広告への差止請求 不正競争防止法2条1項1号:周知な社名・ブランド表示と混同させる行為 著作権侵害:公式サイトの写真・LP・キャッチコピーの盗用 名誉毀損・信用毀損:会社の信用を害する内容を含む場合 さらに、発信者情報開示の手続きによって広告の出稿者を特定し、損害賠償請求や刑事告訴につなげる道もあります。同じ素材で繰り返し出稿されるケースでは、出稿者本人に到達しない限り根本的には止まらないため、この手続きが重要になります。 各請求権の詳しい内容と初動対応の全体像は、こちらで解説しています。 → 関連:Facebook・Instagramのなりすまし広告/偽アカウントへの法的対応|法人ブランド保護を弁護士が解説 5. 通報だけで待ってはいけない理由――放置中に被害は進む 通報の結果を待っている間も、なりすまし広告は配信され続け、あなたの会社の名前で誰かが金銭をだまし取られている可能性があります。実際に顧客が被害に遭うと、会社としての対応(注意喚起・被害者対応・警察連携)が必要になります。 → 関連:なりすまし広告で自社の顧客が詐欺被害に――会社が取るべき初動対応 6. 弁護士に依頼すると何が変わるか 弁護士が介入すると、①通報・申出が「感情的な訴え」から「法的構成のある権利主張」に変わる、②情プラ法・実体法・開示請求のどのルートで攻めるかを事案に応じて組み合わせられる、③再出稿されたときに同じ構成で迅速に対応できる、という違いが生まれます。「削除できます」とお約束することはできませんが、削除される可能性を高め、繰り返しに歯止めをかける手段を体系的に打てるようになります。 費用は被害の範囲・対象の数によって異なりますので、まずは状況をお聞かせください。 弁護士に相談する(相談フォームへ) よくある質問 Q1. 通報を何度も繰り返せば、いつかは消えますか? A. 同じ内容の通報を繰り返しても、審査基準に当てはまらなければ結果は変わらないことが多いです。回数より、窓口の選択と権利根拠の示し方を変えること、それでも動かなければ情プラ法の削除申出に切り替えることをおすすめします。 Q2. 情プラ法の削除申出は、誰でもできますか? A. 申出の主体は、権利を侵害されたと主張する本人(法人を含む)やその代理人です。なりすまされた会社自身が申出できます。申出書面の法的構成が結果を左右するため、弁護士名義での申出も選択肢になります。 Q3. 申出から削除まで、どのくらいかかりますか? A. 情プラ法上、プラットフォーム事業者は申出から原則7日以内に判断結果(または調査中である旨)を通知する義務があります。ただし個別の事案により対応は異なり、削除が保証されるものではありません。並行して権利侵害ベースの請求を準備しておくのが実務的です。 関連記事 なりすまし広告/偽アカウントへの法的対応(全体像) なりすまし広告で顧客が詐欺被害に――会社が取るべき初動対応 企業法務サービス|みんなの法務部 顧問契約 120社超 / 弁護士歴 平均15年以上 / 大阪・全国対応 M&A・企業法務でお困りの経営者・法務担当者様へ 弁護士法人ブライトの「みんなの法務部」は、契約書・債権回収・労務トラブル・M&Aまで伴走支援します。 📄 法務チェックリスト 無料ダウンロード ▲ M&A・契約・労務の必須チェック項目をPDFで配布中 ▶ 顧問契約・スポット相談はこちら 📞 0120-929-739💬 LINE相談 平日 9:00-18:00(TEL)/ LINE 24時間受付