「取引先が夜逃げしそうだ。すぐに財産を押さえたい。でも、そのために自分たちもお金を用意しなければならないと聞いた——いったいいくら必要なのか、見当もつかない。」 仮差押という手段を検討したとき、多くの社長が最初にぶつかるのが、この担保金(保証金)の問題です。相手の財産を守るための手続きのはずなのに、なぜか自分たちがまずお金を積まなければならない。その仕組みがわからないまま手続きを進めようとして、資金の目処が立たず動けなくなってしまうケースは少なくありません。 この記事では、仮差押の担保金がなぜ必要なのか、相場はどのくらいなのか、そして用意できない場合にどう考えればいいのかを、実務の視点から整理します。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先141社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 仮差押の担保金とは何か——なぜ申立人がお金を出すのか 仮差押は、本裁判の前に相手の財産を仮に凍結する手続きです。裁判所の審査を経て認められますが、この段階ではあくまで「申立人の主張が正しそうだ」という暫定的な判断に過ぎません。 もし仮差押が後から間違いだったと判明した場合——相手に正当な権利があったのに財産を凍結してしまっていた場合——、相手方は大きな損害を被ります。その損害を補償するための担保として、申立人が裁判所(実際には法務局)に供託するのが担保金(保証金)です。 つまり、担保金は「もし私が間違っていた場合に相手の損害を賠償します」という誓約金のような役割を果たしています。申立人にとっては手続き上の一時的な支出ですが、用意できなければ仮差押命令は出ません。 担保金の相場——請求額の何パーセントが目安か 【図解】仮差押の担保金とは何か——なぜ申立人がおへの対応フロー ① 問題発生 → ② 事実確認・記録 → ③ 顧問弁護士に相談 → ④ 対応策の実行 ※ 弁護士に早期相談することで、リスクを最小化できます。 担保金の金額は、裁判所が個別に決定します。法律で一律の金額が定められているわけではなく、事案の内容・被保全債権の種類・仮差押の対象財産などによって変わります。ただし、実務上の目安として以下のような相場感があります。 金銭債権(売掛金・貸付金など)を保全する場合:請求額の15〜30%程度 不動産を仮差押する場合:請求額の10〜20%程度(不動産は財産価値が明確なため、比較的低めになることがある) 預金口座を仮差押する場合:請求額の20〜30%程度 たとえば、3,000万円の売掛金を保全するために預金口座を仮差押する場合、担保金は600万円〜900万円程度になることが多いです。1億円の請求であれば2,000万円〜3,000万円という規模感になります。 実際にブライトが関与した案件でも、1,000万円台・2,000万円台の担保金が発生した事案が複数あります。「相手のお金を取り戻したいのに、先にこちらがこれだけ積まなければならないのか」と驚かれる社長は多いです。 なお、担保金の相場はあくまで目安です。裁判所の裁量が大きく、同じ請求額でも担保金の額が異なることがあります。申立前に弁護士を通じて裁判所の運用傾向を確認しておくことが重要です。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先141社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 担保金の決まり方——裁判所はどこを見ているのか 担保金の額は、主に以下の要素を総合して裁判所が判断します。 被保全債権の額と種類:請求する金額が大きいほど担保金も高くなる傾向があります。また、証拠が薄い・争いがありそうな債権ほど、担保金が高めに設定される場合があります。 仮差押の対象財産:不動産・預金・売掛金など、対象財産の性質によって相場が変わります。 申立人の証拠の強さ:契約書・請求書・入金記録など、被保全権利を裏付ける証拠がしっかり揃っているほど、裁判所が「間違いリスクが低い」と判断し、担保金を低めに見てくれることがあります。 相手方が受ける損害の程度:仮差押によって相手方が被る損害が大きいと予想される場合、それをカバーするために担保金が高くなります。 ここで重要なのは、証拠の強さが担保金の額に影響するという点です。証拠が不十分なまま申立をしようとすると、担保金が高くなるか、そもそも申立自体が認められないことがあります。証拠の準備は、仮差押の申立において担保金の問題と表裏一体です。 担保金が用意できない場合——打てる手はあるか 「理屈はわかった。でも、今すぐ数百万円〜数千万円を用意するのは難しい。」そういう状況の社長も少なくありません。いくつかの選択肢を整理します。 ①担保として有価証券・不動産を利用する 担保金は現金(供託)が原則ですが、裁判所が認めた場合、有価証券(国債など)で代替することができます。また、保証会社の保証書を担保として使える制度(支払保証委託契約)もあります。資金繰りが厳しい場合には、弁護士と一緒にこうした代替手段を検討することが有効です。 ②仮差押の対象・範囲を絞る 仮差押の対象財産を絞り込むことで、必要な担保金の額を下げることができる場合があります。たとえば、複数の財産を一度に仮差押しようとせず、最も効果的な一点に絞ることで担保金を抑える方法です。 ③訴訟と組み合わせた戦略を取る すべての案件で仮差押が必須というわけではありません。相手方の財産状況・案件の緊急性・費用対効果を総合的に判断し、仮差押をせずに本訴訟に直行したほうが合理的な場合もあります。「仮差押をしなければならない」と思い込んでいる社長が多いですが、それ自体を見直すことも一つの判断です。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先141社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 担保金に関する判断が遅れる本当の理由 実際の相談事例を見ると、担保金の問題で初動が遅れるケースにはパターンがあります。 「担保金が必要なことを知らなかった」:仮差押の申立手続きを自分で調べ始めて初めて、担保金という概念に気づく。その時点ですでに時間が経過しており、相手の財産が動き始めているケースがあります。 「金額が予想より大きくて、決断が遅れた」:弁護士に相談して担保金の目安を聞いた段階で、想定より高い金額に驚き、社内稟議や資金調達に時間がかかってしまう。その間にも相手方の財産状況は変化します。 「弁護士に相談するタイミングが遅かった」:取引先との関係を壊したくないと様子を見ている間に、相手が財産を処分・隠匿してしまう。仮差押の保全の必要性が、時間の経過とともに増していくにもかかわらず、相談が後回しになります。 証拠も同様です。「後から契約書を作り直せばいい」「メールのやり取りだけでも大丈夫だろう」と思っていると、いざ申立書類を揃える段階で証拠が足りないことが判明する。証拠は、紛争になってから急に作れるものではありません。 仮差押手続きの全体フロー——担保金を含む流れ 担保金の位置づけを理解するために、仮差押手続きの全体像を簡単に確認します。 弁護士への相談・方針決定:仮差押の対象財産・請求額・証拠の確認。担保金の目安を把握。 申立書類の準備:被保全権利(債権の存在)と保全の必要性(財産が散逸するリスク)を疎明する書類を揃える。 裁判所への申立:管轄裁判所に申立書を提出。 裁判所の審理・担保金額の決定:裁判官が申立書を審査し、担保金の額を提示。 担保金の供託:法務局に担保金を現金(または代替手段)で供託。供託書を裁判所に提出。 仮差押命令の発令:供託が確認されると、仮差押命令が発令される。 執行:不動産なら登記嘱託、預金なら第三債務者(銀行)への送達により執行。 このフローを見ると、担保金の供託は「手続きの途中」にあります。裁判所に申立をしてから担保金を準備するのでは遅い場合もあるため、事前に資金の目処をつけておくことが重要です。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先141社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 仮差押後の担保金はどうなるのか——取り戻せるのか 担保金は「没収される」ものではありません。本案訴訟で勝訴した場合・相手方が担保取消に同意した場合・一定期間が経過した場合などに、担保金は申立人に返還されます。 ただし、担保金が手元に戻るまでの間、その資金は使えません。これが企業の資金繰りに与える影響は無視できません。特に中小企業では、担保金として数百万円〜数千万円を拘束されることが、事業運営に直接影響する場合があります。 また、仮差押が取り消された場合(保全異議が認められた場合など)には、相手方が担保金から損害賠償を受け取る手続き(担保権実行)が可能になります。担保金は申立人の権利主張が正しかった場合に初めて全額返ってくるもの、という認識が重要です。 逆に、仮差押を「受けた側」の立場では、解放金(仮差押解放金)を供託することで仮差押命令の執行を取り消すことができます。こちらも同様に、請求額の10〜30%程度が目安となります。 うちの会社ではどう考えればいいのか——担保金の判断軸 担保金の問題を前にして、社長が判断すべき問いは次の3つです。 ①今すぐ仮差押をしなければならない緊急性はあるか? 相手方が財産を処分・隠匿するリスクがどの程度あるか。このリスクが高いほど、担保金を用意してでも早期に動く価値があります。 ②担保金に見合うリターンがあるか? 保全する債権の額・回収できる見込み・担保金の拘束期間を考慮し、費用対効果を検討します。担保金が高額でも、回収できる債権がそれを上回るなら動く価値があります。逆に、相手方に回収できる財産がそもそも少ないなら、担保金を積んでも意味がない場合があります。 ③証拠は揃っているか? 証拠が充実していれば申立の成功率が上がり、担保金も低めになる可能性があります。今手元にある証拠の強さを弁護士に評価してもらい、追加で揃えるべきものを確認しておきましょう。 これらの問いに自分だけで答えようとすると、判断が遅れたり、誤った方向に進んだりします。仮差押は「揉めてから弁護士を使う」のではなく、「動くかどうかの判断そのものを弁護士と一緒に考える」場面です。 再発防止策——担保金の問題を次に活かす 仮差押の担保金問題で痛い思いをした企業に共通しているのは、「いざというときの動き方」を事前に考えていなかったという点です。再発防止のために、以下の点を社内で整備しておくことをお勧めします。 取引先の与信管理ルールを作る:一定金額以上の取引は与信調査を行い、契約書の締結を必須とするルールを設ける。早期にリスクを察知できる仕組みが、保全の必要性が生まれる前に問題を防ぎます。 証拠を残す習慣をつける:取引の経緯・請求書の送付記録・入出金の確認・相手方とのやり取り(メール・チャット)を記録として保存する。証拠は紛争になってから急に作れるものではありません。 担保金相当の緊急資金枠を意識する:大口取引がある場合、いざというときの仮差押費用として、請求額の20〜30%相当の資金を確保しておける体制を考えておく。 早期相談の文化を作る:「まだ大丈夫かな」と様子を見る時間が、仮差押の必要性を高める時間でもあります。違和感を感じた時点で相談できる体制が、最大の再発防止策です。 仮差押の担保金問題は、スポット対応で終わらせず、取引管理の仕組みと弁護士との継続的な連携体制に落とし込むことが重要です。仮差押の申立が必要になったとき、担保金の目安・証拠の強さ・保全の必要性の有無を素早く判断できるのは、平常時から顧問弁護士と連携している会社です。「揉めてから弁護士を使う」ではなく「揉めないように、そして揉めたときに即動けるように弁護士を使う」体制が、仮差押に限らず企業防衛の根幹になります。弁護士法人ブライトでは、顧問先141社の実名を公開しており、企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが、債権回収・仮差押・取引トラブルの相談を継続的に受けています。担保金の見積もり相談・申立の是非の判断など、「動くべきかどうか」の段階からご相談いただけます。 よくある質問 Q1. 担保金はいつ払うのですか?申立前ですか、申立後ですか? A. 申立後です。裁判所が申立書を審査し、仮差押命令を出すにあたって担保金の額を決定します。その後、申立人が法務局に担保金を供託し、供託書を裁判所に提出することで仮差押命令が発令されます。申立前に金額が確定するわけではないため、事前に弁護士を通じて裁判所の運用傾向を把握しておくことが重要です。 Q2. 担保金の額を交渉して下げることはできますか? A. 担保金の額は裁判所が決定するものであり、直接交渉して下げることはできません。ただし、証拠の充実度によって裁判所の判断が変わる可能性はあります。申立書の内容・疎明資料の強さが担保金の額に影響することがあるため、申立書の質が重要です。 Q3. 仮差押を受けた側(被申立人)はどう対応すればいいですか? A. 主な選択肢は2つです。①解放金(仮差押解放金)を供託して仮差押命令の執行を取り消す、②保全異議を申し立てて仮差押命令そのものを争う——です。どちらが適切かは事案によって異なります。不動産売買の決済が迫っているなど緊急性がある場合は、解放金供託による迅速な対応が有効なケースが多いですが、仮差押の要件(被保全権利・保全の必要性)に問題がある場合は保全異議で争うことも有力な選択肢です。 Q4. 担保金を供託した後、返ってくるまでどのくらいかかりますか? A. ケースによって大きく異なります。本案訴訟で勝訴し、相手方が担保取消に同意する場合は比較的スムーズですが、相手方が争う場合や、担保取消の申立手続きに時間がかかる場合は、数年単位になることもあります。担保金が長期間拘束されることを前提に、資金計画を立てておくことが重要です。 この記事の監修者 和氣 良浩(わけ よしひろ) 弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士 /大阪弁護士会/大阪大学法学部卒 専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生 「みんなの法務部」というブライトの考え方 中小企業の社長に「専属の法務部」を持っていただく——これがブライトの顧問サービスの基本姿勢です。社内に法務部を置けない規模でも、契約書・労務・債権回収・M&Aまで日常的に相談できる体制を、月額固定で。企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームで、141社の顧問先と向き合っています。 ▶ みんなの法務部とは(詳しく見る) 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先141社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 会社運営・企業法務の関連記事 テクノロジーハラスメントとは?チャット・監視ツールが引き起こすリスクと会社の対処法 顧問弁護士と違約金の上限|中小企業が知っておくべきリスクと対策【大阪・ブライト】 不泊とは?宿泊施設の経営者が知っておくべき法的リスクと正しい対処法 重要事項説明義務違反の判例から学ぶ経営判断のポイントと実務対応 退去トラブルを弁護士に依頼する費用と判断基準|オーナー・賃借人向け解説