少額訴訟で勝訴判決を得た後の強制執行|回収までの手順と社長が知っておくべきリスク

少額訴訟で勝訴判決を得た後の強制執行|回収までの手順と社長が知っておくべきリスク

「少額訴訟で勝ったのに、相手がお金を払ってこない」——そんな連絡を受けると、正直、腹が立つより先に途方に暮れる感覚があると思います。裁判に勝った。書類もある。なのにお金が来ない。どうすればいいのか、誰に聞けばいいのかわからない。この記事はそういう状況にある社長に向けて書いています。

少額訴訟は60万円以下の金銭トラブルを1回の期日で解決できる制度で、弁護士なしでも使いやすい手続きです。ただ、「判決を取る」ことと「お金を回収する」ことは、まったく別の話です。この2つをセットで考えていないと、勝訴しても回収ゼロという結果になります。

少額訴訟で判決が出た後に何が起きるのか

少額訴訟で勝訴判決(または和解調書)が出ると、それは「債務名義」と呼ばれる公文書になります。この債務名義があると、相手の財産を国の力を借りて差し押さえる「強制執行」の申立ができるようになります。

ただし、判決が出ても相手が自発的に支払う義務を”すぐに果たしてくれるとは限りません”。そもそも相手に支払い能力がない場合、支払う気がない場合、連絡が取れなくなる場合——現実にはこういったケースが多くあります。判決は「勝ちの証明書」ではありますが、「回収の保証書」ではないのです。

そのため、少額訴訟を活用する場合は、判決を取る前から「相手にどんな財産があるか」「差し押さえが現実的かどうか」を見ておくことが重要になります。

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なぜ「判決を取っても回収できない」が起きるのか——判断ミスの構造

【図解】少額訴訟で判決が出た後に何が起きるのかへの対応フロー

① 問題発生
② 事実確認・記録
③ 顧問弁護士に相談
④ 対応策の実行

※ 弁護士に早期相談することで、リスクを最小化できます。

社長がこの問題で判断を誤りやすいのには、いくつかの理由があります。

まず、「裁判で勝てば解決する」という思い込みです。テレビドラマや日常感覚では「裁判に勝つ=相手が従う」というイメージがあります。しかし、民事裁判の判決は、相手が従わなければ自動的に執行されるものではありません。回収するには強制執行という別の手続きが必要で、それには相手の財産情報が不可欠です。

次に、「少額訴訟は手軽だから、その後も手軽に進む」という誤解です。少額訴訟の申立自体はシンプルですが、強制執行の手続きはそれなりに複雑です。裁判所に申立書を出し、対象となる財産(預貯金口座・給与・不動産など)を特定しなければなりません。相手がどこの銀行に口座を持っているか、どこに勤めているかがわからなければ、差し押さえはできません。

そして最大の落とし穴が、「相手の財産を調べる手段がないと思い込んでいる」点です。実は一定の条件を満たせば、裁判所を通じて相手の財産を調査する制度(財産開示手続・第三者からの情報取得手続)があります。これを知らずに「どうせ無理だ」と諦める社長は少なくありません。

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問題が起きる前にやっておくべきこと——予防と証拠の残し方

少額訴訟と強制執行の問題は、トラブルが起きてから動き始めると手遅れになりやすいです。取引が始まる段階、あるいはトラブルの兆候が出た段階で動くことが、回収率を大きく左右します。

具体的には以下のような準備が有効です。

  • 取引先の基本情報を記録しておく:会社名・代表者名・口座情報(可能な範囲で)・登記情報。これが後の財産調査の出発点になります。
  • 請求書・督促のやり取りを記録に残す:メール・LINEのスクリーンショット・電話記録など。「払う」という言質があれば尚良いです。
  • 契約書に支払条件と遅延損害金を明記する:口頭の約束だけでは少額訴訟でも証明が難しくなります。
  • 相手の支払い能力を事前にチェックする:登記情報・信用調査・取引銀行名の把握など、取引開始前に確認できることはしておく。

「証拠は、紛争になってから急に作れるものではない」——これは企業法務の現場で繰り返し出てくる言葉です。督促のやり取りも、相手の約束も、記録に残っていなければ裁判でも使えません。

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問題発生時の対応フロー——強制執行の手順を整理する

少額訴訟で勝訴判決・和解調書を得た後、相手が支払わない場合の流れは以下のとおりです。

  1. 債務名義の確保と執行文付与の申請:少額訴訟判決には原則として仮執行宣言が付くため、確定を待たずに強制執行に着手できます。ただし手続き上、執行文の付与や送達証明書の取得が必要になる場合があります。
  2. 相手の財産の特定:差し押さえ対象となる財産(預貯金・給与・売掛金・不動産等)を特定します。これが実務上もっとも難しいステップです。
  3. 強制執行の申立:財産の種類によって申立先の裁判所や手続きが異なります。預貯金差押は相手の銀行の本店所在地を管轄する地方裁判所、給与差押は相手の住所地を管轄する地方裁判所に申し立てます。
  4. 財産が見つからない場合——財産開示手続・第三者情報取得手続の活用:相手の口座情報や勤務先が不明な場合、裁判所を通じて相手本人に財産を開示させる手続き(財産開示手続)や、銀行・市区町村・年金機構などの第三者から情報を取得する手続きが使えます。令和2年の法改正でこの制度は使いやすくなりました。

なお、少額訴訟の判決に不服がある場合、相手は「異議申立」をすることができます。異議が出ると通常訴訟に移行するため、最初から通常訴訟を視野に入れた準備が必要なケースもあります。

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失敗事例の構造——なぜ相談が遅れ、なぜ回収できなかったのか

顧問先からの相談の中で、少額訴訟と強制執行に関して「もっと早く相談してくれれば」と感じるケースがいくつかあります。共通しているのは次のような構造です。

「なぜ相談が遅れたのか」

少額訴訟は「自分でできる」という印象が強いため、弁護士への相談を後回しにしがちです。実際、申立自体は自分でできます。ただ、判決後の強制執行の段階で「相手の財産がわからない」「どこに何を申し立てればいいかわからない」と詰まって、初めて相談に来るケースが多いです。このとき、すでに相手が財産を隠したり、口座を解約したりしていることがあります。

「なぜ証拠が残っていなかったのか」

「払ってもらえればいい」という気持ちから、督促を口頭でしか行っていないケースがあります。電話で「来月には払う」と言われてそのまま待ち続け、気づけば時間が経過——。口頭のやり取りは証拠にならないため、少額訴訟でも立証に苦労します。LINEや書面でやり取りを残していれば、請求の根拠がより明確になります。

「なぜ財産が見つからなかったのか」

個人の取引先の場合、銀行口座や勤務先を事前に把握していないケースが大半です。法人相手でも、登記上の本店と実態が乖離しているケースがあります。財産調査の手段があることを知らなければ、「どうせ取れない」と諦めてしまいます。

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うちの会社ではどう考えればいいのか——規模・状況別の判断軸

少額訴訟と強制執行をどう活用するかは、相手が個人か法人か、金額の大きさ、相手との今後の関係性によって判断が変わります。

相手が個人の場合:財産開示手続・第三者情報取得手続が有効になるケースがあります。ただし相手に財産がない場合(いわゆる「取れない相手」)は、手間とコストをかけても回収が難しいため、費用対効果を見極める必要があります。

相手が法人の場合:法人名義の預貯金や売掛金を差し押さえる選択肢があります。ただし、法人が実質的に機能していない(ペーパーカンパニー化している)場合は、差し押さえできる財産がないこともあります。

金額が60万円を超えている場合:少額訴訟は使えません。通常訴訟か、支払督促という別の手続きを検討します。支払督促は書面審査のみで進む手続きで、相手が異議を申し立てなければ強制執行に移れます。

「次の一手」として社長が今すぐできることは、相手の財産に関する情報を整理することです。銀行名・口座の有無・勤務先・不動産の有無——これらを確認したうえで弁護士に相談すると、回収の見込みと手続きの選択肢が格段に明確になります。

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再発防止策——次のトラブルで同じ目に遭わないために

一度、少額訴訟や強制執行を経験した社長に共通する学びは「取引の入口で回収を考える」という視点です。トラブルが起きてから動くのではなく、トラブルが起きにくい取引の仕組みを作ることが再発防止の本質です。

  • 取引基本契約書に遅延損害金・期限の利益喪失条項を入れる:1回でも支払いが遅れた場合に一括請求できる条件を整えておく。
  • 請求書・督促のやり取りは必ず書面・メールで行う:口頭での約束は証拠にならない。
  • 一定額以上の取引には保証金や前払いを検討する:信用情報が不明な相手との大きな取引はリスクがある。
  • 定期的に未収債権の状況を棚卸しする:放置しているうちに時効(原則5年)が来ることがある。

これらは「法務的な整備」に見えますが、実際には営業・経理・総務が連携して動く仕組みの問題です。社内でルールを決めておくだけで、相手に「払わなくても何もされない」という甘えを持たせない抑止力になります。

少額訴訟と強制執行の問題は、スポット対応で1件を解決して終わりにするより、取引の仕組みそのものを見直す機会として捉えるほうが、会社にとっての長期的なリターンが大きくなります。顧問弁護士がいれば、「この契約書で大丈夫か」「この督促の文面で証拠として使えるか」といった日常の小さな判断を随時確認できます。弁護士歴平均14年以上の弁護士チームによる顧問先130社以上との継続的な関係の中で、弁護士法人ブライトが提供しているのは「揉めてから使う弁護士」ではなく、「揉めないように日常の判断を支える、みんなの法務部」としての機能です。未収債権の対応フローや取引基本契約書の整備も、顧問関係の中で継続的にブラッシュアップすることができます。

よくある質問

Q1. 少額訴訟の判決が出たのに相手が無視しています。どうすればいいですか?

判決(債務名義)があれば強制執行の申立が可能です。相手の財産(預貯金・給与・不動産等)を特定して、管轄の地方裁判所に差押命令の申立を行います。財産が不明な場合は財産開示手続・第三者情報取得手続を活用できます。まず、相手についてわかっている情報(取引銀行・勤務先・不動産の有無など)を整理したうえで弁護士に相談するのが第一歩です。

Q2. 強制執行をするには費用がかかりますか?

裁判所への申立費用(収入印紙・郵便切手等)は数千円〜数万円程度ですが、弁護士に依頼する場合は別途費用がかかります。回収できる金額と費用を天秤にかけて判断することが重要です。ただし、少額であっても放置すると「払わなくて良かった」という前例を作ることになるため、金額だけでなく取引の性質も考慮してください。

Q3. 相手がどこの銀行に口座を持っているかわかりません。調べる方法はありますか?

令和2年の民事執行法改正により、債務名義を持っている場合に限り、裁判所を通じて銀行等の金融機関に口座情報の照会ができる「第三者からの情報取得手続」が整備されました。申立には条件がありますが、以前に比べて財産調査の選択肢は広がっています。この手続きは弁護士が申し立てることが一般的です。

Q4. 少額訴訟ではなく支払督促を使ったほうがいい場合はありますか?

相手が争う可能性が低い(債務の存在が明確で、相手も認識している)場合は、支払督促のほうが手続きが簡易で早く進むことがあります。ただし相手が異議を申し立てると通常訴訟に移行します。一方、少額訴訟は期日に双方が出席して主張・証拠を出すため、証拠が整っていれば1回で判断が出やすいメリットがあります。どちらが適切かは状況によって異なるため、申立前に弁護士に確認することをお勧めします。

少額訴訟・強制執行・未収債権の回収など、取引上のトラブルを継続的に相談できる顧問弁護士をお探しの方は、弁護士法人ブライト「みんなの法務部」にお問い合わせください。顧問先130社以上の実名を公開しており、弁護士歴平均14年以上の経験豊かな弁護士が対応します。企業法務窓口:0120-929-739(平日9:00〜18:00)

和氣良浩 弁護士

この記事の監修者

和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士

弁護士歴20年(2006年登録)/大阪弁護士会/大阪大学法学部卒

専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生

料金は明朗です

スタンダード(中小企業向け/顧問先の95%) 月額 5万円(税別)
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