減給の限度額(労基法91条)と等級ダウン|どこまで下げられるか【大阪・使用者側 弁護士解説】

減給の限度額(労基法91条)と等級ダウン|どこまで下げられるか【大阪・使用者側 弁護士解説】

「勤務態度が改善しないので減給したい。ただ、どこまで下げていいのかがわからない」——顧問先の社長から、この形の相談は繰り返し届きます。ネットで調べると「給与の10%まで」と書いてある。一方で「1日分の半額まで」とも書いてある。どちらが正しいのか、そもそも自社のケースにどちらが当てはまるのかが判別できない。判断がつかないまま先送りにしているうちに、周囲の社員の不満が溜まっていく——大阪の中小企業でよく見る停滞のかたちです。

結論から書きます。「減給」と呼ばれているものは、法的にはまったく別の3つのルートに分かれます。そして、労働基準法91条の限度額(1回は平均賃金1日分の半額、総額は賃金総額の10分の1)が効くのは、そのうち1つだけです。残りの2つには91条の上限はかかりませんが、代わりに別のハードルが立ちます。この整理をしないまま金額の話を始めるから、「10%か、半額か」で混乱します。

この記事では、①3つのルートの見分け方、②労基法91条の限度額の具体的な計算、③降格・等級ダウンに伴う減給で問われること、④合意で下げる場合の落とし穴、⑤実行前にそろえるべき書類と記録——を、会社側(使用者側)の実務目線で整理します。

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「減給」は3つのルートに分かれる——まず自社のケースがどれかを決める

金額の上限を調べる前に、自社が検討しているのがどのルートなのかを確定させてください。ここを取り違えると、必要のない上限に縛られたり、逆に必要な手続きを飛ばしたりします。

【図解】その「減給」はどのルートか——3分岐の判定

賃金を下げたい
「過去の非違行為への制裁」か?

①YES=懲戒としての減給
労基法91条の上限がかかる
(1回=平均賃金1日分の半額/総額=賃金総額の10分の1)
②NO・職位や等級を下げる
=降格・等級ダウンに伴う低下
91条の上限はかからない/人事権の濫用が争点
③NO・条件そのものを変える
=合意による労働条件の変更
91条の上限はかからない/自由な意思に基づく合意が争点

※ 同じ「月20万円下がる」でも、根拠が違えば争われ方も必要書類も変わります。

①懲戒処分としての減給——制裁だから上限がある

就業規則の懲戒規定にもとづき、過去の非違行為(無断欠勤・業務命令違反・服務規律違反など)への制裁として賃金の一部を差し引くものです。労働基準法91条が「制裁規定の制限」として上限を定めているのは、このルートだけです。

制裁である以上、労働契約法15条の懲戒権濫用のルールもそのまま働きます。同条は、懲戒が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は権利濫用として無効になると定めています。金額が91条の枠内でも、事実認定が甘ければ処分自体がひっくり返ります。

②降格・等級ダウンに伴う賃金の低下——91条の枠外

役職を解く(役職降格)、あるいは職能資格・グレードを引き下げる(等級ダウン)ことで、役職手当が付かなくなったり、等級に対応する基本給が下がったりする場合です。これは「制裁として賃金を差し引く」のではなく、職位・等級が変わった結果として賃金額が変わるものなので、91条の上限は適用されません。

その代わり、下げ幅の大きさそのものが「人事権の濫用ではないか」という形で正面から争われます。91条の上限がない分、実務上はむしろこちらのほうが危険が大きい、というのが率直な感覚です。

③合意による労働条件の変更——91条の枠外だが「同意の質」を問われる

労働契約法8条は、労働者と使用者は合意によって労働条件を変更できると定めています。本人の同意を得て賃金額そのものを変える場合がこれにあたり、やはり91条の上限はかかりません。ただし、賃金という重要な条件を不利益に変更する合意については、書面があるかどうかではなく「労働者の自由な意思に基づいてされたと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか」という厳しい見方をされます。

比較軸 ①懲戒としての減給 ②降格・等級ダウン ③合意による変更
労基法91条の上限 かかる かからない かからない
主な根拠 就業規則の懲戒規定
労契法15条
就業規則・賃金規程
人事権
労契法8条
個別合意
下げられる幅 ごく小さい(後述の計算参照) 制度上の等級差の範囲 合意した範囲
効果の期間 原則として一時的 継続的 継続的
争われる中心 非違行為の事実認定と相当性 人事権の濫用・規程上の根拠 同意が自由な意思によるか
必ず要る書類 調査記録・弁明の記録・処分通知書 規程・評価の記録・辞令 説明資料・合意書
3つのルートの比較(会社側の実務整理)

なお、遅刻・早退・欠勤に対応する分の賃金を支払わないこと(ノーワーク・ノーペイの控除)は、そもそも制裁ではないので91条の対象外です。ただし、遅刻した時間を超えて差し引く部分は制裁と評価され、91条の上限がかかります。「30分の遅刻で1時間分カット」といった運用は、この差分が制裁部分になります。

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労基法91条の限度額——2つの上限の正しい計算

労働基準法91条(制裁規定の制限)は、就業規則で減給の制裁を定める場合について、次のように定めています。「その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない」。上限が2つあり、両方を同時に満たす必要があります。

上限その1:1回の額は「平均賃金1日分の半額」まで

ここでいう「1回」は、1つの非違行為(1件の懲戒事由)につき1回という意味です。1か月に何回まで、という意味ではありません。別々の非違行為が2件あれば、それぞれについて上限まで減給できます。

基準になる「平均賃金」は労働基準法12条の定義によります。算定事由が発生した日以前3か月間に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦日数)で割った額です。所定労働日数ではなく暦日数で割る点、賞与など3か月を超える期間ごとに支払われる賃金は総額に含めない点が、実務でよく間違えるところです。

上限その2:総額は「一賃金支払期の賃金総額の10分の1」まで

「一賃金支払期」は、月給制なら1か月です。その月に支払われる賃金の総額の10分の1を超える減給は、たとえ非違行為が10件あってもできません。超える分は翌月以降に繰り越して差し引くという処理になります。

実際に計算してみる(数値は説明のためのモデルです)

月給30万円(基本給25万円+手当5万円、残業なし)の社員について、直前3か月の賃金総額が90万円、その期間の総日数が92日だったケースで計算します。

手順 計算 結果
①平均賃金を出す 900,000円 ÷ 92日 約9,782円
②1回の減給の上限 9,782円 ÷ 2 4,891円
③その月の総額の上限 300,000円 ÷ 10 30,000円
④非違行為が1件のとき ②が上限 最大4,891円
⑤非違行為が3件のとき 4,891円 × 3件(③の範囲内) 最大14,673円
労基法91条の限度額の計算モデル(月給30万円の場合)

数字を見て「思ったより小さい」と感じた方が多いはずです。実際、月給30万円の社員に対する1件あたりの減給は5,000円弱にしかなりません。ここが、経営者の実感と法律のあいだで最も大きくずれる部分です。「懲罰として痛みを感じさせたい」という発想で減給を選ぶと、この上限で必ず行き詰まります。

実務では、減給という選択肢は「本人に金銭的な打撃を与える手段」ではなく、次の段階(出勤停止・降格・退職勧奨・解雇)へ進むための正式な記録を1つ積み上げる手段として位置づけたほうが機能します。処分の重さの順序と手続きの全体像は、懲戒処分の進め方|譴責・減給・出勤停止・懲戒解雇の5段階と手続きで整理しています。

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91条をめぐる4つの誤解——「10%まで下げられる」は正確ではありません

誤解1:「月給の10%まではカットできる」

最も多い誤解です。10分の1はその月の減給の合計額の天井であって、1回で下げられる額ではありません。1回の上限は平均賃金1日分の半額なので、月給30万円なら約5,000円。10%=3万円を1回で差し引けば、それだけで違法な減給になります。「10%までなら安全」という情報だけを頼りにすると、この一点で足をすくわれます。

誤解2:「1件の非違行為を理由に、毎月減らし続けられる」

減給の制裁は、その事由1件について1回きりが原則です。1件の遅刻を理由に「今後6か月間、毎月2万円減額する」といった運用は、実質的に賃金額そのものを引き下げる措置であり、制裁としての減給の枠を超えていると評価されるリスクが高くなります。継続的に賃金を下げたいのであれば、ルート②か③を検討することになります。

誤解3:「出勤停止で無給にするのも91条の上限に引っかかる」

就業規則にもとづく出勤停止の期間中、働いていない分の賃金を支払わないこと自体は、一般に減給の制裁には当たらないと解されています。労務の提供がないことに対応する不支給だからです。ただし、出勤停止の期間が社会通念上あまりに長ければ、処分としての相当性(労契法15条)が別途問題になります。

誤解4:「賞与を減らすのは自由」

賞与も賃金です。査定の結果として賞与額が下がるのと、制裁として賞与から差し引くのとでは意味が違い、後者は減給の制裁として91条の規制が及ぶと解されています。「賞与でまとめて調整する」という発想は、実務では危険な回避策になりやすい部分です。

実務では、こうした誤解が就業規則そのものに埋め込まれていることが少なくありません。当事務所が顧問先の懲戒規定を確認した案件でも、いざ減給処分を検討する段になって、担当弁護士から「そもそも就業規則を改訂しないと、この規定では処分に耐えられない」という指摘が入り、処分の検討と並行して規程の改訂に着手した例があります。減給を検討して初めて自社の規定が使えないと分かる——この順番になっている会社は、決して少数派ではありません。

降格・等級ダウンに伴う減給——91条の枠外だが、別のハードルが立つ

「懲戒の減給では5,000円しか下げられないなら、降格させて等級を下げればいい」——ここまで読むと、そう考えたくなります。方向としては正しいのですが、91条という分かりやすい物差しが外れる代わりに、判断が難しい争点に入ります。

役職降格と等級ダウンは別物として扱う

役職(部長・課長など)を解くことは、原則として人事権の行使として比較的広い裁量が認められます。一方、職能資格や社員等級の引き下げは、いったん認めた職務遂行能力の評価を下げる措置であり、就業規則・賃金規程に引き下げの根拠となる定めがあることが前提と考えられています。根拠規定がないまま等級を下げれば、賃金の不利益変更そのものだと反論されます。

実務では、代理人が就いた事案でまず突かれるのがここです。当事務所が扱った顧問先の相談でも、休職から復職した社員を一般職に降格したうえで別拠点へ配転したところ、相手方代理人から「就業規則上の根拠も本人の同意もなく無効であり、賃金の不利益変更にあたる」と正面から主張された例があります。規程の文言をその場で用意することはできないので、争いになってから慌てても手当てが効きません。

下げ幅が大きいほど、濫用と評価されやすくなる

降格に伴う賃金の低下幅は、その社員の賃金構成によって大きく変わります。手当の比重が高い設計の会社ほど、役職を外した瞬間の落差が大きくなります。

実務では、この落差そのものが交渉の火種になります。当事務所が対応した顧問先の相談に、能力不足を理由に降格を検討したところ、対象者の賃金のうち手当が3分の2近くを占めていたケースがありました。担当した弁護士からは、手当のカット自体は制度上可能だとしても、カット幅が大きすぎれば人事権の濫用を問われかねないこと、そして法的な当否とは別に「その額を切れば通常は退職される」という実務上の帰結を、両方あわせて経営判断すべきだという整理が示されています。

そのうえで採られた方針は、一方的な通告ではなく、職務内容と報酬をセットで組み直して再合意するというものでした。会社が求める役割と、それに対応する対価を明示し、達成できない場合にどうするか(さらに見直すのか、その判断までにどれだけの期間を置くのか)まで含めて事前に握る。一方的に下げるより手間はかかりますが、紛争化の確率は明確に下がります。降格そのものの手順は、問題社員を降格させるには?社長が知っておくべき手順と失敗しないための準備に詳しくまとめています。

等級制度そのものが整っているか

等級ダウンを使いたいのであれば、等級の定義・昇格降格の要件・等級と賃金の対応が制度として書かれていることが出発点です。制度の側から見た等級ダウンと減給の考え方は、社員等級ダウンと減給は適法?実務判断の考え方で扱っています。本記事(労基法91条の限度額)と合わせて読むと、「制裁で下げる」と「制度で下げる」の違いが立体的に見えるはずです。

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合意で下げる——「同意書がある」は安全の保証ではない

3つ目のルートが、本人の同意を得て賃金額を変更する方法です。上限もなく、話がついていれば最も穏当に見えます。ところが、後日ひっくり返る事案が最も多いのもこのルートです。

問われるのは書面の有無ではなく「自由な意思」の中身

賃金の不利益変更に対する同意については、署名押印があるだけでは足りず、その同意が労働者の自由な意思に基づくものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するかが検討されます。具体的には、①減額の理由が説明されたか、②減額後の金額と影響を理解できる情報が示されたか、③断る選択肢が実質的にあったかが見られます。

実務では、書面の形式より「説明したことが残っているか」で結論が変わります。当事務所が受けた顧問先の相談に、試用期間の経過後に本人の同意を得て月額をおよそ3分の1減額したケースがありました。雇用契約書は都度巻き直しており、合意書面としては形が整っていたのですが、担当弁護士の見立ては「合意書面があるかどうかではなく、その合意が自由な意思によるものだったと客観的に示せるか」が核心だというものでした。そこで示された打ち手は、単なる同意書ではなく減額の理由を説明し、その説明を受けたうえで合意したという経過を書き込んだ書面にする、というものです。

確認書を取りにいくこと自体がリスクになる場面がある

同じ案件で、もう一つ実務的に重要な指摘が出ています。あとから確認書を取りにいくと、本人がそれをきっかけに「金額が不当だった」と言い出すおそれがある、という点です。証拠を厚くする行為が、眠っていた紛争を起こす引き金になり得る。関係が良好なうちに取るのか、取らずに現状を維持するのか、取るとしてどんな文面と伝え方にするのか——ここは法的な正解が一つに決まらず、関係性を踏まえた判断になります。

このケースで最終的に採られたのは、対象者本人が減額に納得している状況を会社側へのヒアリングで確認したうえで、減額の経緯と自由意思による合意、および口約束のままになっていた手当の取り扱いを明記した簡潔な書面を取り交わす、という方針でした。分量を増やすほど良いわけではなく、争点になりそうな点だけを短く固定するほうが受け入れられやすい、という判断です。

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減給を実行する前にそろえる5点

どのルートを選ぶにしても、実行前に手元にそろっているべきものはほぼ共通しています。相談を受けたときに最初に確認するのが、この5点です。

# そろえるもの 無いとどうなるか
1 就業規則の懲戒規定・賃金規程(現行版・周知の記録つき) 処分の根拠がなく、規定の不備を理由に処分自体が無効と主張される
2 非違行為の事実を裏づける資料(日時・内容・関係者) 「言った・言わない」になり、事実認定で負ける
3 本人に弁明の機会を与えた記録 手続き的な相当性を欠くとして、内容が正しくても覆る
4 それまでの注意・指導の記録(口頭も含め文書化) いきなり重い処分に飛んだと評価される
5 処分通知書(根拠規定・事実・金額・算定根拠を明記) 後日、処分の範囲や理由を会社が説明できなくなる
減給の実行前チェックリスト(会社側)

「記録が無い指導」は、無かったものとして扱われる

実務で最も差がつくのが4番です。当事務所が顧問先の労務相談で繰り返し伝えているのは、プロセスを踏むことと、それを記録化しておくことはセットだという点です。あとから労働者側が不満を述べたときに、「会社としてやれることはやってきた」と立証するために記録が要る。担当弁護士からは、能力に関する目標設定はできるだけ本人自身に立てさせるほうがよい、という具体的な助言も出ています。会社が一方的に決めた目標ではなく、本人が設定した目標だからこそ、未達が続いたという事実が説得力を持つからです。

もう一つ、段階の踏み方についての実例があります。繰り返し注意しても改善されない服務規律違反について、当事務所の担当弁護士は「注意を重ねても直らない以上は懲戒処分の対象になり、その先には減給もあり得る」ことを整理したうえで、会社としてはまず文書に残して通知したいという方針を示しました。いきなり金銭に手をつけるのではなく、書面での通知を1段挟む。この1段があるかどうかで、後の処分の見え方が変わります。段階的な対処の考え方は、勤務態度が悪い社員・遅刻を繰り返す社員への対応業務命令に従わない社員への対応もあわせてご覧ください。

通知書には「算定根拠」まで書く

減給の処分通知書には、対象となる事実、適用する就業規則の条項、減給額、そしてその額が労基法91条の範囲内であることの算定根拠(平均賃金の額とその半額、当月の賃金総額の10分の1)まで書いておくことをお勧めします。書けないということは、計算していないということです。ここを書面化しておくと、後日の説明が一段楽になります。

大阪の中小企業でよくある相談場面と、弁護士に相談するタイミング

大阪の中小企業からいただく相談で、減給が絡む場面はおおむね次のかたちに分かれます。

  • ずるずる続いている勤務態度不良:注意はしているが記録がなく、いきなり減給に踏み切ってよいか迷っている。
  • 能力不足の管理職:役職を外したいが、賃金がどこまで下がるのか、本人が受け入れるのかが読めない。能力不足・成果が出ない社員への対応(PIP)の段取りとセットで検討する場面です。
  • すでに本人が労働組合や弁護士に相談している:この段階で一方的に減給すると、処分の当否だけでなく「報復ではないか」という主張が加わります。
  • 賃金制度そのものが実態に合っていない:手当の比重が大きい、等級と賃金の対応が曖昧、といった構造的な問題。個別処分より制度側の手当てが先になります。

相談のタイミングとしては、金額を決める前が最も効果的です。金額と通知の文面が固まってから相談を受けると、打てる手は「そのまま出すか、撤回するか」の二択に狭まります。撤回は、それ自体が会社の判断能力への不信を招きます。逆に、事実関係の整理段階で入れば、そもそも減給が最適な手段なのか、指導記録の積み上げから始めるべきなのか、という選択肢を残したまま進められます。

弁護士法人ブライトでは、問題社員対応について会社側(使用者側)の立場から相談をお受けしています。顧問先130社以上を実名公開し、企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームで、大阪を中心とした中小企業の「外部法務部」として日常的な労務判断に伴走しています。ご相談は顧問契約の有無にかかわらず承っており、代理人としてお受けする段階では顧問プランまたは法務ドックとあわせてご案内しています。問題社員対応の全体像は問題社員対応の特化ページ、対応手順の総論は問題社員への対応手順を弁護士が解説をご覧ください。

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よくある質問(Q&A)

Q1. 減給の限度額は「月給の10%まで」で合っていますか?

正確ではありません。10分の1は「その月に行う減給の合計額」の上限です。1回あたりの上限は別にあり、平均賃金1日分の半額までです。月給30万円のモデルケースでは、1回あたり約4,891円、その月の合計で30,000円が上限になります。1回で3万円を差し引けば、合計額の枠内であっても1回あたりの上限に違反します。

Q2. 就業規則に減給の規定がなくても、減給できますか?

制裁としての減給は、就業規則に制裁の種類と程度を定めていることが前提です。労働基準法89条9号は、表彰及び制裁の定めをする場合には、その種類と程度を就業規則に記載しなければならないとしています。規定がないまま制裁として賃金を差し引けば、根拠を欠く処分になります。まずは規程の整備からになります。

Q3. 降格すれば、91条の上限を気にせず大きく下げられますか?

91条の上限そのものはかかりません。ただし、就業規則・賃金規程に等級引き下げの根拠があること、評価の経過が記録されていること、下げ幅が相当であることが必要になります。特に手当の比重が大きい賃金設計の会社では落差が大きくなり、人事権の濫用という主張を受けやすくなります。「上限がない」ことと「自由に下げられる」ことは別です。

Q4. 本人が同意書に署名すれば、どれだけ下げても問題ありませんか?

署名だけでは十分とはいえません。賃金の不利益変更への同意は、自由な意思に基づくものと認めるに足りる合理的な理由が客観的にあるかが検討されます。減額の理由を説明したこと、説明を受けたうえで合意したという経過が書面に残っていること、断る余地が実質的にあったことが重要になります。同意書のフォーマットよりも、説明の記録のほうが効きます。

Q5. 大阪で減給や降格を検討していますが、社労士と弁護士のどちらに相談すべきですか?

制度設計や就業規則の整備、行政手続きは社会保険労務士の領域と重なります。一方、個別の社員との紛争が視野に入る場面——本人が争う姿勢を見せている、労働組合や代理人が出てきている、処分の有効性が争点になる——では、弁護士に相談されることをお勧めします。弁護士法人ブライトでも、制度面は社労士の先生と連携しながら進めることがあります。大阪の中小企業では、まず事実関係を整理した段階でご相談いただくのが実際的です。

Q6. すでに減給を実施してしまいましたが、上限を超えていました。どうすればよいですか?

超過部分は賃金の未払いとして扱われる可能性があります。まずは超過額を正確に計算し、対応方針(返還・追加支給・処分の見直し)を検討することになります。時間が経つほど選択肢が狭まる領域ですので、早い段階でご相談ください。

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※本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律アドバイスではありません。具体的な問題については弁護士にご相談ください。本記事に登場する事例は、実際の相談から複数の要素を組み替えて再構成した匿名化事例であり、金額・数値は説明のためのモデルです。


和氣良浩 弁護士

この記事の監修者

和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士

弁護士歴20年(2006年登録)/大阪弁護士会/大阪大学法学部卒

専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生

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