監修:和氣 良浩(わけ よしひろ) 弁護士法人ブライト|代表弁護士|大阪弁護士会 大阪で20年以上、中小企業の企業法務・顧問弁護士サービスを提供。顧問先130社以上に透明性の高いリーガルサポートを実践している。 この記事の結論 試用期間満了・本採用拒否の要点 本採用拒否は「解雇」に準じる:「試用期間だから自由に断れる」は誤りです。客観的な合理的理由と社会通念上の相当性が必要です(三菱樹脂事件・最高裁大法廷1973年12月12日)。 30日前までに通知する:試用期間満了時の本採用拒否は、原則として試用期間終了の30日前(遅くとも2週間前)に書面で本人に通知します。直前の通告はトラブルの原因になります。 問題点を事前に記録・告知していたかが鍵:試用期間中に問題行動・能力不足を書面(業務日報・注意書・面談記録)で記録し、本人に告知していなければ本採用拒否は「突然の通告」とみなされ、無効リスクが高まります。 手続きミスは会社の負けに直結する:実務上、本採用拒否が無効とされる事案の多くは「能力不足は認定できるが、指導・告知なしに突然拒否した」ケースです。内容より手続きで負けることが多い。 試用期間が終わる。問題のある社員をこのまま本採用していいのか、しかし「本採用拒否」は法的にどう進めればいいのか――。 大阪の中小企業の経営者から、ブライトにこういった相談が届きます。「試用期間が来月末で終わります。この社員は正直うまくいっていないのですが、本採用しなくてもいいですよね?」と。 答えは「条件を満たしていれば本採用拒否は可能」です。ただし、条件と手順を間違えると、後で労働審判・損害賠償請求に発展します。このページでは、試用期間満了が近づいた経営者が「今すぐ何をすべきか」を実務フローで解説します。 試用期間満了が近い。本採用拒否を検討している。まず弁護士に確認してください 弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずは無料でご相談ください。 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る 無料で相談する 本採用拒否を検討すべき状況とそうでない状況 経営者が「本採用したくない」と思う理由はさまざまです。ただし、その理由のすべてが本採用拒否の根拠になるわけではありません。まず「本採用拒否が法的に通じる状況」と「法的に難しい状況」を整理します。 本採用拒否が認められやすい状況 最高裁判所の三菱樹脂事件判決(1973年12月12日)および、その後の裁判例で本採用拒否が有効とされたケースには、以下の共通点があります。 経歴詐称が採用後に判明した:学歴・資格・前職の詐称は、採用の前提を崩すため有力な根拠になります。ただし業務と無関係な詐称(勤続年数1年の誤記など)は根拠として弱い。 勤務態度の問題が記録に残っている:無断欠勤・遅刻の繰り返し・業務命令への反抗的対応などが書面で記録されており、その都度本人への告知がなされている場合。 能力の著しい不足が採用時の期待と乖離している:「即戦力として採用したが、基本業務もこなせない」という場合で、指導記録と客観的な評価が存在する場合。 試用期間中に不正行為・ハラスメントが確認された:横領・セクハラ・パワハラが客観的証拠(目撃者・映像・メッセージ)で確認できる場合。 本採用拒否が認められにくい状況(注意が必要) 「なんとなく合わない」「職場の雰囲気に合わない」という抽象的理由のみ 問題点を一度も告知せずに突然本採用を拒否する場合 能力不足の指摘はしたが、改善の機会を与えていない場合 社員の属性(性別・年齢・国籍・障害・妊娠)に関連する理由 就業規則に試用期間・本採用拒否の規定がない(手続きの根拠が不明確) 法的根拠:試用期間の法的性質 解約権留保付き労働契約:試用期間中の雇用は「解約権留保付き労働契約」(三菱樹脂事件・最高裁大法廷1973年12月12日)。通常の解雇よりも広い範囲で解約できる権利を会社が留保しているにすぎない。 労働契約法16条:解雇は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でない場合は無効」とする規定は試用期間中の本採用拒否にも適用される。 労働基準法21条4号:試用期間開始後14日以内なら解雇予告なしで解雇可能。14日を超えると30日前の予告または解雇予告手当が必要。 「この社員、本採用を拒否できますか?」顧問弁護士に相談してください 弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずは無料でご相談ください。 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る 無料で相談する 本採用拒否の実務フロー:試用期間終了が近い会社が踏むべき5つのステップ 「試用期間が残り1〜2ヶ月になった」という段階から経営者が踏むべき実務手順を、弁護士法人ブライトが顧問先企業に案内する内容に沿って解説します。 ステップ1:記録の棚卸し(試用期間終了の1〜2ヶ月前) 最初にやることは「法的に使える記録があるか」の確認です。本採用拒否の正当性は、証拠の有無で決まります。 確認すべき記録は以下の通りです。 業務日報・週報(当該社員の行動・成果が記録されているか) 遅刻・欠勤記録(タイムカード・出勤簿・メール・Slackのログ) 上司からの注意・指導の記録(口頭のみは弱い。メール・Chatwork等のテキスト記録) 面談の記録(評価面談・指導面談の日時・内容・社員の反応) 採用時の条件と現状のギャップを示す資料(採用票・職務記述書) この段階で記録が不足している場合、すぐに記録を作成し始めることが重要です。ただし、後付けで記録を作ると「証拠隠滅」の疑いを持たれることがあるため、日付・作成者・事実のみを記載し、主観的評価は入れないようにします。 ステップ2:問題点の書面告知と改善機会の付与(試用期間終了の1ヶ月前まで) 記録があっても、本人に問題点を一度も伝えていなければ本採用拒否は無効になるリスクが高い。大阪地裁の裁判例でも「使用者が具体的な問題点を伝えず、改善の機会を与えないまま本採用を拒否した」ケースは無効とされています。 面談を設定し、以下を書面(面談記録・通知書)で実施してください。 問題点を具体的に告知する(「遅刻が○月○日・○月○日・○月○日と3回あった」など日時・事実を明示) 改善目標・期限を示す(「残り○週間で○の水準を達成できるよう取り組んでほしい」) 改善できない場合は本採用しない可能性があることを伝える 社員のサインまたは受領確認を取る 大阪の複数の中小企業から受けた相談では、「試用期間中は何も言わなかったが、終了1週間前に急に呼び出して本採用しないと伝えた」というケースが最もトラブルになりやすいパターンです。 ステップ3:就業規則・雇用契約書の確認(試用期間終了の1ヶ月前) 本採用拒否を進める前に、自社の就業規則と雇用契約書を確認します。 確認事項 理由・注意点 試用期間の定めはあるか 就業規則に「試用期間○ヶ月」の規定がない場合、試用期間の法的根拠が不明確になる 本採用拒否の事由は規定されているか 就業規則に本採用拒否の事由を列挙している場合、その事由に該当することが必要 雇用契約書に試用期間の記載はあるか 雇用契約書に試用期間の記載がなければ「試用期間中だ」という主張の根拠が弱くなる 試用期間の延長規定はあるか 規定がなければ一方的な延長は認められない(社員の同意が必要) 就業規則の周知はなされているか 就業規則は社員に周知していなければ効力を生じない(労働基準法106条) 就業規則に不備がある場合、本採用拒否の手続きと並行して整備が必要です。顧問弁護士に就業規則の確認・改定を依頼するのがこのタイミングです。 ステップ4:本採用拒否の通知(試用期間終了の30日前が目安) ステップ1〜3を経て、本採用拒否を決定したら、書面で通知します。 口頭のみの通告は避けてください。後で「聞いていない」「そんな話はなかった」という紛争の原因になります。 通知書には以下の内容を記載します。 雇用した日・試用期間の開始日・終了日 本採用を拒否する旨の明記 本採用拒否の具体的な理由(就業規則の該当条項と事実の両方) 雇用終了の日付 会社代表者の署名・押印 労働基準法上、試用期間中の解雇は「試用開始後14日以内なら予告不要、14日超なら30日前の予告または解雇予告手当が必要」です(同法21条4号・20条)。試用期間満了時の本採用拒否も、裁判例の傾向として30日前の通知が相当とされています。 ステップ5:社員の反応への対応準備(通知後〜終了まで) 本採用拒否の通知後、社員から「不当だ」「撤回しろ」という反応が来ることがあります。想定すべき事態と初動対応を整理しておきます。 異議申し立て・撤回要求:記録に基づいて理由を書面で再度説明します。感情的なやり取りは避け、事実のみを伝えます。 弁護士・労働組合からの連絡:会社側の弁護士(または顧問弁護士)に即日連絡し、対応を委ねます。直接交渉は避けてください。 労働基準監督署への申告:監督署の調査には誠実に対応します。記録があれば対応できます。 労働審判の申立て:申立てから40日以内に第1回期日が指定されます。顧問弁護士がいれば対応を委ねます。 「試用期間を延長する」という選択肢 本採用拒否を判断しきれない場合、試用期間の延長という選択肢があります。ただし、試用期間の延長は社員の同意が必要です(就業規則に延長規定があっても同意が原則)。 一方的な延長通知は、後で「無効な延長だった」と主張される原因になります。延長する場合は以下を確認してください。 就業規則に試用期間延長の規定があるか 延長の理由・期間・評価基準を書面で社員に示しているか 社員の同意書(または同意を確認した書面)を取っているか 弁護士法人ブライトが顧問先企業に案内するのは「延長は1回・最長3ヶ月まで」を原則とすること。延長を繰り返すと「実質的に本採用されている」とみなされるリスクが高まります。 本採用拒否が無効とされた実例とブライトの対応実務 試用期間満了後に本採用拒否が無効とされたケースには、共通のパターンがあります。弁護士法人ブライトが大阪の企業から受けた相談事例(匿名化・一般化)を踏まえて解説します。 パターン1:「指導の記録なし」で負けたケース 小売業の会社で採用した社員が業務指示を無視し続けた。試用期間終了直前に本採用を拒否したところ、社員から「一度も注意されたことはない、突然の解雇だ」と主張された。 会社側は「問題は明らかだった」と反論しましたが、書面の注意記録がなく、上司の証言のみでは信用性が弱いと評価されました。和解で3ヶ月分の賃金に相当する解決金を支払うことになりました。 教訓:試用期間中の問題行動は、その都度メール・書面で記録し、本人に受領確認を取ること。 パターン2:「面談の記録なし」で無効リスクが高まったケース IT企業で採用した中途社員が、スキル不足で業務に支障が出ていた。試用期間3ヶ月の終了時に本採用拒否を通知したところ、「改善の機会を与えてもらっていない」と主張された。 会社は「口頭で何度も伝えた」と言いましたが、面談記録・改善指示書が存在せず、立証が困難でした。労働審判で会社が和解金を支払う結果となりました。 教訓:試用期間中の指導・面談は「書面化」が絶対条件。口頭での話し合いだけでは法的手続きに耐えられない。 ブライトが実務でとっている対応 弁護士法人ブライトが顧問先企業の試用期間トラブルに関与する場合、以下の順番で確認します。 記録の有無・質の確認(使える記録か、後付けリスクはないか) 就業規則の整合性確認(本採用拒否の事由・手続きが規定されているか) 通知書の文案チェック(理由の特定性・事実の明示・法的リスクの評価) 社員への通知方法の確認(書面交付・内容証明・受領確認) 社員の反応への初動プランの提案 本採用拒否の通知書を出す前に、弁護士にチェックを受けてください 弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずは無料でご相談ください。 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る 無料で相談する 本採用拒否を迷った時:本採用するという選択 本採用拒否を検討しながら、最終的に「本採用する」判断をするケースも少なくありません。弁護士法人ブライトが大阪の顧問先企業と実際に協議する場面でも、「リスクを承知で本採用拒否する」よりも「条件付きで本採用し、就業規則の整備と指導記録の強化で将来のリスクを下げる」という判断をするケースがあります。 本採用するが条件を整えるという場合、以下を並行して進めます。 就業規則の見直し(業務改善プログラム・PIPの手続き規定) 能力・態度の評価記録の仕組みを整備する 問題が継続する場合の対応手順を事前に決めておく 必要に応じて業務改善プログラム(PIP)を活用する 試用期間が終わった後に問題が出た場合は、本採用後の解雇・退職勧奨という別の手続きが必要になります。問題社員対応の意思決定ハブで選択肢と手順を確認してください。 顧問弁護士が試用期間管理で果たす役割 弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業130社以上の外部法務部として、採用から退職まで一貫してサポートしています。試用期間管理において顧問弁護士が担う役割は以下の通りです。 採用時:就業規則・雇用契約書の整備 試用期間の定め・本採用拒否の事由・手続きを就業規則と雇用契約書に明確に規定します。この段階で不備があると、後の手続きがすべてぐらつきます。弁護士歴平均14年以上のチームが、大阪の中小企業の実情に合った規定を整備します。 試用期間中:指導記録の方法アドバイス 「どんな事実をどう記録すれば法的に使えるか」を上司・管理職にアドバイスします。感情的な評価ではなく、事実ベースの記録の書き方を具体的に指導します。 試用期間終了前:本採用拒否の可否判断と通知書作成 「この記録で本採用を拒否できるか」の判断と、通知書・面談対応の準備を行います。弁護士が通知書を起案・チェックすることで、後の紛争リスクを最小化します。 紛争が起きた場合:労働審判・訴訟対応 本採用拒否の通知後に社員側から争われた場合、労働審判の準備・代理人対応まで一貫して対応します。大阪の顧問先企業においては、記録が整っているケースでの解決率が高くなっています。 顧問契約を結んでいない企業でも、まず無料相談をご利用ください。相談後に顧問契約を検討するという流れで問題ありません。 試用期間・本採用拒否の対応は、大阪の顧問弁護士チームにご相談ください 弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずは無料でご相談ください。 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る 無料で相談する よくある質問 試用期間3ヶ月の終了直前に本採用を拒否しました。30日前の通知ができていませんでしたが、無効になりますか? 裁判例の傾向として、試用期間満了時の本採用拒否は「解雇」に準じる扱いを受けるため、30日前の予告または解雇予告手当(労働基準法20条・21条)が必要とされることがほとんどです。直前の通知しかできていない場合でも、本採用拒否の理由が客観的に正当であれば「手続き違反」として解雇予告手当の支払いで対処できることがあります。ただし個別の事情によって結論が変わるため、大阪の使用者側弁護士に早急に相談することを推奨します。 試用期間中に問題を指摘せず、満了時に本採用を拒否しました。書面の記録が一切ありません。今からでも間に合いますか? 記録がない状態での本採用拒否は、法的リスクが高い状況です。ただし、すべてが終わりではありません。①現時点での事実を正確に整理する②上司・同僚の証言を記録化する③本採用拒否の通知前に弁護士に相談し、どこまでの根拠で対応できるかを評価してもらうという手順を踏んでください。弁護士法人ブライトでは大阪の中小企業から「今からでも間に合いますか」という相談を多数受けており、状況に応じた現実的な対応方針を提案しています。 試用期間を延長したいのですが、社員の同意がなくてもできますか? 原則として、試用期間の延長には社員の同意が必要です。就業規則に「試用期間を延長することがある」という規定があっても、一方的な延長通知は争われた場合に「無効な延長」とされるリスクがあります。延長する場合は、①就業規則に延長規定があることを確認する②延長の理由・延長後の評価基準・期間を書面で示す③社員の同意書を取得するという手順を踏んでください。同意が得られない場合は、試用期間満了時の本採用拒否か、本採用後の対応(業務改善プログラム等)を検討することになります。 採用後に経歴詐称が判明しました。試用期間中でなくても本採用を取り消せますか? 経歴詐称が採用の前提条件に関わる重大な事実であれば、試用期間中に限らず、本採用後でも解雇・採用取り消しの根拠になり得ます。重要なのは「詐称の内容が業務に直接影響するか」「詐称がなければ採用しなかったといえるか」という点です。たとえば「資格保有が採用条件だったが実際には保有していなかった」ケースは有力な根拠になります。一方で「勤続年数を1年多く記載していた」という程度では解雇の根拠として弱い。詐称が判明したら、まず弁護士に相談し、対応方針を決めてから動いてください。 大阪の顧問弁護士に試用期間の相談をするタイミングはいつがいいですか? 最も効果的なタイミングは「採用時」です。就業規則・雇用契約書の整備と、試用期間中の記録方法をアドバイスしてもらうことで、問題が起きた時のリスクを大幅に下げられます。問題が起きてからの相談でも対処は可能ですが、できることの選択肢が狭まります。弁護士法人ブライトでは、試用期間の相談を含む労務全般について、顧問契約不問でまず無料相談を受け付けています。試用期間終了が近い場合は早急にご連絡ください。 試用期間・本採用拒否について、大阪の顧問弁護士チームにご相談ください 弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずは無料でご相談ください。 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る 無料で相談する 参考文献(当事務所蔵書) 試用期間は判例上「解約権留保付労働契約」と位置づけられ(最大判昭48.12.12・三菱樹脂事件)、本採用拒否がどのような場合に許されるか、通常の解雇とどう異なるかは労働審判でも定番の争点とされています(豊川義明ほか『労働審判=紛争類型モデル〔第2版〕』(大阪弁護士協同組合、2013年))。 豊川義明ほか『労働審判=紛争類型モデル〔第2版〕』(大阪弁護士協同組合、2013年) 石嵜信憲ほか『労働契約解消の法律実務〔第3版〕』(中央経済社、2018年)