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じん肺・振動障害・騒音性難聴の職業病で会社に損害賠償請求|時効・立証・過失相殺の反論

執筆・監修

執筆:笹野 皓平 弁護士(労災事業部部長・修習64期・登録2011年/弁護士法人ブライト)
監修:和氣 良浩 弁護士(代表・修習57期・登録2004年/弁護士法人ブライト)

弁護士歴平均14年以上のチームが監修。労災の損害賠償請求を専門に取り扱っています。

この記事でわかること(結論)

  • じん肺・振動障害(手腕振動症候群)・騒音性難聴は、会社への損害賠償請求が可能な職業病。根拠は安全配慮義務違反(労働契約法5条・民法415条・709条)。
  • 「何十年も前のことだから時効だ」という誤解が多い。民法改正後は損害及び加害者を知った時から5年が時効(民法724条の2)。潜伏期間の長い職業病でも請求できるケースがある。
  • じん肺の場合はじん肺法に基づく粉塵管理義務・健康診断義務違反が会社の過失の核心。
  • 振動障害は振動工具取扱作業者への健康診断(安衛則594条以下)を怠った場合に会社の過失が認められやすい。
  • 騒音性難聴は騒音健康障害防止のための指針(昭和50年基発651号・改正版)に基づく騒音管理義務の懈怠が争点になる。

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職業病で会社の責任を問える法的根拠

じん肺・振動障害・騒音性難聴はいずれも、職場での有害因子への長期曝露によって生じる職業病です。会社には、これらの有害因子から労働者を守るための具体的な法的義務があります。

その義務の根拠は3層構造になっています。

  1. 労働契約法5条の安全配慮義務(一般的義務)
  2. 労働安全衛生法・関係省令・業種別特別規則(具体的義務を定める)
  3. じん肺法・石綿障害予防規則等の特別立法(職業病特有の義務)

会社がこれらの法令上の義務を怠った場合、民法415条(債務不履行)または民法709条・715条(不法行為・使用者責任)に基づく損害賠償請求が可能です。

じん肺(珪肺・石綿肺)の損害賠償請求

じん肺とは

じん肺は、粉塵(石英・石綿・石炭等)の長期吸入により肺に不可逆的な線維化が生じる疾患です。じん肺法(昭和35年法律第30号)が専用の法律として存在します。建設業・採石業・製造業・トンネル工事従事者に多く発生します。

会社の義務(じん肺法上)

  • じん肺法3条・4条:粉塵作業に従事する労働者へのじん肺健康診断の実施義務(採用時・配置換え時・定期)
  • じん肺法7〜9条:じん肺管理区分に応じた就業制限・配置転換義務
  • 労安衛規則592条以下(粉塵障害防止規則):防じんマスクの配備・使用義務・局所排気装置等の設置義務

損害賠償額の目安

病状区分内容賠償額の目安
管理区分2・3(軽〜中等度)じん肺所見・肺機能低下数百万円〜1,000万円程度
管理区分4(重度)著しい肺機能障害・合併症1,000万円〜3,000万円程度
死亡(じん肺による呼吸不全等)死亡慰謝料・逸失利益3,000万円〜1億円超

石綿(アスベスト)関連疾患

石綿による中皮腫・石綿肺は、石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号)に基づく石綿濃度測定・防護措置義務の懈怠が争点になります。潜伏期間が20〜50年に及ぶため、退職後・長期間後に発症するケースが多いです。

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振動障害(手腕振動症候群)の損害賠償請求

振動障害とは

チェーンソー・削岩機・グラインダー等の振動工具を長期使用することで生じる末梢循環障害(白ろう病)・末梢神経障害・筋骨格系障害の総称が手腕振動症候群(振動障害)です。建設業・林業・採石業・製造業(金属加工)に多発します。

会社の義務(労安衛法上)

  • 労安衛規則594条〜605条(振動工具取扱作業者への健康診断):年1回以上の特殊健康診断実施義務
  • 振動ばく露限界値(ELV・EAV)の管理義務(EU振動指令準拠の国内指針)
  • 使用時間制限・防振手袋の配備
  • 異常所見者に対する就業制限・配置転換

振動障害の損害賠償の特徴

振動障害は、症状が自覚されるまでに数年〜十数年かかるため、就業期間中に健康診断で「異常所見」が指摘されていながら会社が適切な措置を取らなかったケースでは、会社の過失が明確になります。

実務書では、「振動障害に関する損害賠償請求では、会社が健康診断結果を把握していながら就業制限を怠った事実が過失認定の核心になることが多い」とされています。

騒音性難聴の損害賠償請求

騒音性難聴とは

85dB以上の騒音に長期継続して曝露されることで生じる不可逆的な感音難聴です。製造業・建設業・採石業・航空機整備等の騒音作業場で発生します。

会社の義務

  • 騒音健康障害防止のための指針(昭和50年基発651号・平成4年改正・令和5年改正):騒音作業場の特定・騒音レベルの測定・騒音作業従事者への特殊健康診断実施義務
  • 労安衛規則52条以下(特殊健康診断):騒音作業従事者への年2回の健康診断
  • 防音保護具(耳栓・防音イヤーマフ)の配備・着用義務
  • 騒音源の隔離・遮音措置

「じん肺 労災認定 されない」という検索について

じん肺・騒音性難聴の労災認定において「認定されない」という経験をされた方が複数います。労災認定の判断は、認定基準(じん肺のX線区分・騒音性難聴の聴力レベル等)に基づきますが、認定されなかった場合でも民事での損害賠償請求は可能です。労災認定の有無と会社の安全配慮義務違反の有無は別個に判断されます。

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時効の問題|「昔のことだから請求できない」は早計

職業病の損害賠償請求で最も多い誤解が「時効が過ぎているから請求できない」というものです。

請求の種類時効期間起算点
損害賠償請求(民法724条の2・166条1項)5年損害及び加害者を知った時から
不法行為に基づく損害賠償(民法724条1項)3年損害及び加害者を知った時から(旧法・2020年3月31日以前の事案)
労災保険・療養/休業補償給付2年給付事由が生じた日の翌日
労災保険・障害/遺族補償給付5年給付事由が生じた日の翌日

じん肺・石綿関連疾患は潜伏期間が20〜50年に及ぶため、「損害及び加害者を知った時」(=職業病と診断され、それが業務起因であると認識した時点)からの5年が時効の起算点になります。退職後・発症後でも、診断を受けてから5年以内であれば請求可能です。

「30年前に働いた現場のじん肺だから時効だ」と自己判断する前に、必ず弁護士に時効の起算点を確認してください。

証拠の収集方法

職業病の損害賠償請求に必要な証拠と、その収集方法を整理します。

証拠の種類内容入手先
医療記録診断書・画像所見・肺機能検査結果等主治医・医療機関
健康診断記録特殊健康診断の結果(異常所見の有無・時期)会社・産業医・個人保存分
職歴証明どの作業場でいつからいつまで働いたか雇用保険の履歴・年金記録・同僚の証言
作業環境記録粉塵濃度・騒音レベル・振動ばく露量の測定記録会社への文書提出要求・労基署の資料
労災認定書類労基署の業務上疾病認定書・不支給決定書労働基準監督署

弁護士に依頼するメリット

  • 時効の起算点の正確な判断:職業病は個別事情で起算点が変わるため弁護士の判断が不可欠
  • 会社への証拠開示要求:健康診断記録・作業環境測定記録の開示を文書で要求する
  • 医師との連携による業務起因性の立証:専門医の意見書取得をサポート
  • 複数事業主への責任追及:複数の会社で就労した場合の責任割合の整理
  • 会社側反論への対処:「個人の喫煙が原因だ」(じん肺)・「高齢化による難聴だ」(騒音性難聴)等の素因減額主張への反論
  • ブライトは企業側の顧問弁護士も担うため(顧問先130社以上の実名公開)、会社側がどのような防御論理を立てるかを熟知した上で請求に臨む

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よくある質問(FAQ)

Q1. 退職後に職業病と診断された場合でも請求できますか?

A. はい。退職後に診断された場合でも、診断(損害及び加害者を知った時)から5年以内であれば請求できます。時効の起算点は個別事情によるため、弁護士に確認してください。

Q2. 「じん肺は個人の喫煙習慣のせいだ」と言われましたが?

A. じん肺の原因として喫煙が影響する場合はありますが、それは「素因減額」の問題です(賠償額が一定程度減額される可能性)。粉塵曝露が主要因であれば損害賠償請求は可能です。弁護士が医学的意見書を活用して反論します。

Q3. 複数の会社で働いていた場合、どの会社に請求できますか?

A. 複数の会社での就労が原因に関与している場合、各会社への責任割合を整理した上で請求できます。責任の分担は会社間で争いになることが多いため、弁護士の関与が重要です。

Q4. 振動障害で後遺症が残った場合の後遺障害等級は?

A. 振動障害による末梢血管障害・神経障害・関節障害の程度に応じて、労災後遺障害等級12〜3級程度(症状の範囲・重症度による)が認定されます。正確な等級は専門医の診断と弁護士による申請サポートが必要です。

Q5. 騒音性難聴は「年齢のせい」と言われています。

A. 加齢による難聴(老人性難聴)と騒音性難聴は、オージオグラムの特徴的なパターン(4,000Hz dip)で区別できます。専門医の診断があれば、業務起因性の立証が可能です。

Q6. 会社が倒産していても請求できますか?

A. 清算結了前であれば破産債権として届け出ることができます。また、使用者賠償責任保険が付保されている場合は保険会社への直接請求も可能です。弁護士に確認してください。

まとめ

じん肺・振動障害・騒音性難聴は、会社の法令上の義務(じん肺法・労安衛法・特殊健康診断義務等)を怠った場合に損害賠償請求が可能な職業病です。

  • じん肺はじん肺法・粉塵障害防止規則上の義務違反が争点
  • 振動障害は年1回以上の特殊健康診断義務違反・使用時間管理義務違反が争点
  • 騒音性難聴は騒音健康障害防止指針・特殊健康診断義務違反が争点
  • 「時効が過ぎた」は自己判断せず弁護士に確認を(診断から5年)
  • 「労災が認められなかった」場合でも民事の損害賠償請求は別途可能

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  • この記事を書いた人

笹野 皓平

弁護士法人ブライト パートナー弁護士: あなた自身や周りの方々がよりよい人生を歩んでいくために、また、公正な社会を実現するために、法の専門家としてサポートできることを日々嬉しく感じています。

本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
なお、本記事の内容に関する個別の質問や意見などにつきましては、ご対応できかねます。ただし、当該記事の内容に関連して、当事務所へのご相談又はご依頼を具体的に検討されている場合には、この限りではありません。

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  • パートナー弁護士 笹野 皓平

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  • 弁護士 有本 喜英

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事務所概要

事務所名 弁護士法人 ブライト(大阪弁護士会所属)
開 業 平成21年(代表弁護士独立開業)
設 立 平成24年11月設立、平成27年1月に法人化
所在地 〒530-0057 大阪府大阪市北区曽根崎2丁目6番6号 コウヅキキャピタルウエスト12階
TEL 0120-931-501(受付時間9:00~18:00)
FAX 06-6366-8771
事業内容 法人向け(法律顧問・顧問サービス、経営権紛争、M&A・事業承継、私的整理・破産・民事再生等、契約交渉・契約書作成等、売掛金等の債権保全・回収、経営相談、訴訟等の裁判手続対応、従業員等に関する対応、IT関連のご相談、不動産を巡るトラブルなど)、個人向け(交通事故・労災事故を中心とした損害賠償請求事件、債務整理・破産・再生等、相続、離婚・財産分与等、財産管理等に関する対応、不動産の明渡し等を巡る問題など)

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