執筆・監修者
執筆:笹野 皓平(ささの こうへい)弁護士|弁護士法人ブライト 労災事故部統括・登録2011年・修習64期
監修:和氣 良浩(わけ よしひろ)弁護士|弁護士法人ブライト 代表
会社が労災を認めない。
その”本当の理由”と、会社への損害賠償という道。
「これは労災ではない」という会社の言葉は、法的には一意見にすぎません。労災に当たるかを決めるのは会社ではなく労働基準監督署
です。事業主証明がなくても申告はでき、会社が「業務外」「本人の不注意」と主張しても、弁護士が証拠を揃えて会社への損害賠償まで切り替えます。
「会社が労災を認めない」には、実は2つの意味がある
多くの記事はこの2つを区別せずに解説しています。しかし、どちらの問題なのかによって、取るべき対応はまったく変わります。
①申請への非協力
会社の態度:事業主証明を拒む/手続きに協力しない
主な争点:労災保険給付を受けられるか
ゴール:労基署への申請受理・給付決定
②賠償責任の否認
会社の態度:「会社に落ち度はない」「本人の不注意だ」
主な争点:安全配慮義務違反・使用者責任
ゴール:会社への損害賠償(慰謝料・逸失利益等)
既存の解説記事の多くは①の「手続き」しか扱いません。しかし、重い後遺障害や死亡に至った事故ほど②が本丸になります。会社が労災を頑なに認めないとき、その本当の理由は「②損害賠償を負いたくない」ことが少なくないのです。
「会社が労災を認めない」——その言葉の裏にある本当の恐怖
多くの記事は「会社の事業主証明なしでも申請できます」と書いて終わります。しかし重傷・後遺障害が残る事故では、認定が通るかどうかよりも「その後に会社へ損害賠償請求できるか」が本丸です。
会社が労災を認めたがらない「本当の理由」
多くの記事は「会社が認めなくても申請できます」と書いて終わります。しかし、なぜ会社がそこまで頑なに認めたがらないのか——その構造を知ることが、対応の第一歩です。
申請に手間がかかる
労働者死傷病報告書の提出や労災保険の給付手続きは、社内担当者にとって負担です。「兼務で手が回らない」「面倒だ」という理由だけで手続きを怠るケースがあります。
労災保険料(メリット制)が上がる
労災保険は発生率に応じて保険料が増減する「メリット制」です。労災件数が増えると会社の保険料負担も増えるため、これを避けたい会社があります。
監督署の調査・法令違反の発覚を避けたい
安全配慮義務違反など会社側に法律違反がある場合、労災を認めると調査が入り、それが明るみに出ることを恐れて否定することがあります。労災を隠す行為(労災かくし)は労働安全衛生法違反の犯罪です(同法100条・労働安全衛生規則97条、公訴時効3年)。
その先の「損害賠償」を避けたい(本当の核心)
労災を認めれば「業務上の事故」と確定し、会社の安全配慮義務違反を問われやすくなります。保険料の上昇は数万〜数十万円の問題ですが、損害賠償は数百万〜数千万円規模になり得ます。入口で否認し、その後の損害賠償請求そのものを封じたい——これが本当の理由であることが少なくありません。
そもそも労災に当たるか決めるのは会社ではない
会社が「労災ではない」と言っても、それは一意見にすぎません。判断するのは労働基準監督署です。
業務災害とは、労働者の業務上の負傷・疾病・障害または死亡のことです(労働者災害補償保険法7条1項1号)。業務災害と認められるには「業務遂行性」(業務を遂行しているときに起きた傷病であること)と「業務起因性」(業務が原因で傷病が起こったといえること)の2つの基準を満たす必要があります。
- 労働者災害補償保険法23条により、会社には労災申請への協力義務があります。しかし会社が事業主証明を拒否しても、「事業主証明拒否理由書」を別紙で添付すれば空欄のまま提出できます。
- 労基署はこれを受理する義務があり、事業主に対して任意に事実確認を行った上で業務起因性を判断します。
- 誤って健康保険で治療してしまった場合も、後から労災へ切り替えが可能です(協会けんぽ・健保組合への届出、立替分の求償)。
治療費の給付。労災指定病院であれば窓口負担なしに直接給付されます。
休業4日目から給付基礎日額の60%+特別支給金20%が支給されます。
症状固定後、後遺障害等級に応じて給付されます。
死亡労災において、ご遺族から請求する給付です。
各請求書は所轄の労働基準監督署に郵送・持参で提出します。「事業主証明がないから受け付けられない」という対応は違法であり、労働局等への申し入れで是正されます。
「会社が認めないから諦めた」が引き起こす3つのリスク
時間が経つほど選択肢が狭まります。証拠は消え、時効は近づきます。
- 事故現場の写真・目撃者の記憶・安全点検記録は時間とともに消えます。業務記録の保存期間が過ぎると、会社が任意に廃棄できます(労働基準法109条:使用者の記録保存義務は原則5年間・当分の間は3年間。健康診断個人票等は労働安全衛生規則により5年間の保存義務があります)。
- 「後で証拠を集めよう」では手遅れになることがあります。弁護士への早期相談が証拠保全の鍵です。
- 労災不認定への審査請求:処分を知った日の翌日から3か月以内(労働保険審査官及び労働保険審査会法5条)
- この期間を過ぎると審査請求ルートが閉じます。「もう少し待ってから」では間に合わない場合があります。
- 労災保険給付そのものにも時効があります:療養・休業補償給付は2年、障害・遺族補償給付は5年(労災保険法42条)。会社への損害賠償請求の時効(5年)とは別制度・別期間なので、混同しないよう注意が必要です。
- 会社への損害賠償請求権(生命・身体侵害):主観的起算点から5年(民法724条の2・166条1項1号。2020年4月1日以降の損害)
- また、事故発生時(客観的起算点)から20年が経過したときも消滅時効により権利が消滅します(民法724条2号。2020年4月の改正民法により、旧「除斥期間」から「消滅時効」に整理されました)。
- 「まだ時間がある」と思っていても、症状固定・治療終了・会社との折衝が長引けばあっという間です。
今すぐ動く——証拠保全の具体的な手順
会社が動かない・隠蔽しているかもしれない状況でも、取れる手段があります。
事故直後に現場をスマートフォンで記録する。足場・機械・通路・照明・標識など、事故状況を示すものをすべて撮影。後から立ち入りを拒否される前に動く。
業務中の事故であることを示す書類。シフト表・業務命令書・メール・LINE・Slackのやり取りを保存する。会社支給端末は退職とともに返却を求められるため早期に確保。
事故を目撃した同僚・上司・取引先の名前と連絡先を控える。後に「覚えていない」「当時はいなかった」と会社側が主張した場合の証拠になる。
会社の安全管理が不十分だったことを示す記録(または記録がないこと)。定期点検なし・安全訓練未実施・保護具未支給などが安全配慮義務違反の根拠になる。
事故直後の受診記録が業務起因性の証拠になる。「受診が遅れた」「別の病院に行った」場合でも、事故と受傷の関連を示す資料として重要。
「業務外だ」「あなたの不注意だ」という会社の発言をメモする(日時・発言者・発言内容)。会社が後から言い分を変えた場合の証拠になる。
「証拠がない」「会社が協力しない」という状況でも、弁護士が動ける手段(証拠保全申立・文書送付嘱託・証人尋問等)があります。諦める前に一度相談してください。これがブライトが労災認定・会社対応で一貫して大切にしている考え方です。
ブライトの対応フロー——認定から損害賠償への切り替えまで
認定・不認定どちらの場合でも、会社への損害賠償を追及する道があります。
初回相談・証拠の棚卸し(着手金0円)
事故状況・業務起因性の見立て・会社の対応・現在手元にある証拠を弁護士がヒアリング。労災認定の見込みと、万一不認定の場合の会社への直接請求ルートを同時に提示します。
証拠保全・申告書作成サポート
業務起因性を示す書類(業務日報・作業指示・事故直後の診断書・現場写真)を整備します。会社が証拠を出さない場合、証拠保全申立(民事訴訟法234条)や文書提出命令(民事訴訟法220条)を活用します。
労基署申告・不服申立(認定ルート)
労働基準監督署への申告書類(様式5号・7号等)の方向性を設計します。不認定になった場合は審査請求理由書を作成し、3か月の期限内に対応します。再審査請求・行政訴訟まで対応可能です。
会社への損害賠償請求——本丸
労災認定・不認定に関わらず、安全配慮義務違反(労働契約法5条・民法415条・709条)を根拠に会社へ損害賠償を請求します。認定されていれば業務起因性の証明が容易になり、不認定でも安全配慮義務違反の独自立証で請求できます。
交渉・調停・訴訟——解決まで
まず内容証明郵便で会社に損害賠償を請求します。交渉で解決しない場合、労働審判・民事訴訟に切り替えます。会社が組織的に対抗してくる場合でも、企業法務に精通したブライトが正面から対応します。
「認定されなかった」では、終わらない。
会社への損害賠償という道があります。
弁護士が証拠保全から損害賠償請求まで一貫して対応します。
ブライトが対応する「会社が認めない」ケース
一致しないケースでも、まず相談してください。ブライトは判断してから断ります。
「証拠がない」「会社が強い」「弁護士費用が心配」——こうした不安を抱えて相談に来る方がほとんどです。まず話してみてください。
解決事例(抽象化・匿名)
以下は個人が特定されないよう事実を変えた概要です。同様の結果を保証するものではありません。
転落事故で会社が「被災者の不注意」として労災を否定。証拠保全・安全管理記録の不備を立証し、損害賠償を追及。
建設業・30代。足場工事中の転落で骨盤骨折。会社は「墜落制止用器具(安全帯)を着けていなかった被災者の不注意」として業務外と主張。しかし現場の定期安全点検記録が存在せず、安全衛生規程も形骸化していたことを立証(労働安全衛生法20条・21条の義務違反)。安全配慮義務違反を根拠に損害賠償請求を行い解決。
労基署に「業務起因性なし」と判断されたが、審査請求で業務起因性を認定させ、会社への損害賠償に切り替えた事案。
製造業・40代。機械操作中の挟まれ事故で手指を骨折。労基署の初回判断は「被災者の操作ミス・業務起因性低い」として不支給処分。業務マニュアルの不備・ヒヤリハット記録の欠落を補強資料として審査請求を申立て。審査官が業務起因性を認め、支給決定に変更。その後安全配慮義務違反で損害賠償請求。
派遣社員として勤務中、派遣先が本来の業務範囲外の作業を指示して受傷。派遣先の安全配慮義務違反を立証して損害賠償を実現。
物流倉庫・20代派遣社員。本来の担当外の重量物運搬を派遣先から口頭で指示され、腰部・膝部を負傷。労働基準監督署も「安全規定違反の可能性がある」と言及。派遣先の指示書類(LINE送信記録)・業務外作業の実態を証拠化し、派遣先事業者に安全配慮義務違反(民法709条)を追及して解決。
労基署が不支給決定・審査請求も棄却。それでも会社への安全配慮義務違反追及に切り替え、解決金を得たケース。
施設勤務・雨の日に濡れた床で転倒し肩を負傷(腱板断裂)。会社は「業務中ではない」と非協力で、労基署は不支給決定、審査請求も棄却された。再審査請求で行政判断を覆すより、会社への損害賠償請求に主戦場を切り替えるべきと判断。事故直後の報告内容・当日の天候の客観証拠・同僚証言を固め、内容証明で交渉した。
目撃者のいない死亡事故で会社が「私病で倒れただけ」と全面拒否。専門家の力を借りて転落の事実を立証し、和解に至ったケース。
業務中に頭部から出血して倒れ死亡。目撃者なし。会社は「転落ではなく私病」としてゼロ回答。転落か私病かが最大の争点となり、人がどのような体勢で落下するかを専門の鑑定で立証。「平らな地面で倒れただけでは説明できない負傷部位」を根拠に、転落の事実を反論・構築した。
| ご遺族にとって何が変わるか | Before(ゼロ回答時) | After(ブライトに依頼後) |
|---|---|---|
| 会社の主張 | 「夫の死は持病のせい」と会社から拒絶され、何もできない絶望 | 故人の死が業務上の事故として法的に認められ、3,000万円台の補償 |
| 名誉・尊厳 | 夫の名誉が傷つけられたまま放置される苦しみ | 「夫の死が事故として認められ、名誉が回復された」と感じられる |
| 精神的負担 | 遺族として会社・元勤務先と直接対峙する精神的負担 | 弁護士が窓口になり、職場や元勤務先と直接対峙せずに正当な補償を獲得 |
※After は過去の解決事例を抽象化したものです。同様の結果を保証するものではありません。
企業法務に精通しているからこそ、会社側がどう反論してくるかを先読みして証拠設計できます。これがブライトが労災認定・会社対応で一貫して大切にしている考え方です。
弁護士に依頼する前と後——何が変わるか
| 場面 | 依頼前(一人で対応) | ブライトに依頼後 |
|---|---|---|
| 会社の態度 | 「業務外です」「保険会社に確認中です」と繰り返し、進展しない | 弁護士からの内容証明で会社が交渉テーブルに着く |
| 証拠の確保 | 「証拠がない」「会社が出してくれない」と手詰まり | 証拠保全申立・文書送付嘱託等の法的手段で資料を確保 |
| 労基署対応 | 不認定通知を受け取ったが、次の手がわからない | 3か月の審査請求期限内に理由書を作成して申立て |
| 賠償金額 | 労災保険給付のみ受け取り、慰謝料は0円 | 慰謝料・逸失利益を弁護士基準で上乗せして請求 |
| 精神的な変化 | 「会社と一人で戦えるのか」という孤立感と恐怖が続く | 「弁護士が全部交渉してくれる」という安心感で治療に集中できる |
※After は過去の解決事例を抽象化したものです。同様の結果を保証するものではありません。
費用と報酬——着手金0円・完全成功報酬
| 費目 | 金額 | 説明 |
|---|---|---|
| 着手金 | 0円 | 依頼時の費用は一切かかりません |
| 成功報酬 | 回収額の一定割合 | 賠償金・示談金を受け取った段階でのみ発生 |
| 法律相談料 | 0円(初回) | 電話・LINE・来所、すべて初回は無料 |
| 審査請求対応 | 要相談 | 行政不服申立の場合は個別設計。実費は別途 |
※報酬額の詳細は弁護士費用規程に基づき、事案の複雑さ・金額に応じて初回相談時にご説明します。
ブライトでは、労災給付請求(着手金0円・実費予納金のみ)と会社への損害賠償請求(安全配慮義務違反)を分けて契約設計することがあります。「まず給付だけ確実に取りたい」という方にも、「会社にも責任を取らせたい」という方にも、過不足のない費用設計でお応えします。
担当弁護士——笹野皓平が労災認定・会社対応を担当
企業法務にも精通するブライトだからこそ、会社側の反論を先読みした証拠設計・交渉戦略が組めます。「認定されなかった」「証拠がない」という状況でも、法的手段を尽くして被災者の正当な権利を取りに行きます。
監修:和氣 良浩(わけ よしひろ)弁護士(代表)。弁護士法人ブライトは顧問先130社以上を実名公開。企業の内側の論理を知るからこそ、会社との損害賠償交渉で実質的な差が生まれます。
労災事案は複数弁護士による役割分担体制で対応します。笹野弁護士が難件・訴訟移行案件の対応を担い、有本 喜英弁護士が建設・製造業の現場知見を踏まえた実務(証拠収集・主治医対応・労基署対応・会社との交渉実務)を担当します。一人の弁護士が抱え込むことによる遅延・見落としを防ぐ体制です。
証拠が薄くても、会社が強くても。
まず1本、電話してください。
審査請求の3か月・損害賠償の5年時効を確認した上で、次のステップを弁護士がご案内します。
ご相談から解決まで
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申告・不服申立
損害賠償請求
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よくあるご質問
Q会社が事業主証明を書いてくれません。労災申請はできますか?
Q労災が「不認定」になりました。諦めるしかありませんか?
Q会社が証拠を出してくれません。どうすれば良いですか?
Q労災認定を受けました。これで会社の責任は終わりですか?
Q派遣社員ですが、会社(派遣先)への損害賠償を請求できますか?
Q損害賠償の時効はいつまでですか?
Q会社から「示談書にサインしてほしい」と言われました。どうすべきですか?
Q会社から「本人の不注意だ」と言われました。諦めるしかありませんか?
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