元従業員の脅迫行為への法的対応(刑事・民事) 解雇や退職合意の後も、元従業員が「追加で金を払え」「潰してやる」といった脅迫的な行動をやめない——そんな相談が増えています。 追加支払いで解決しようとすると、要求がエスカレートするだけです。 早い段階で法的手段を取ることが、会社を守る唯一の対応です。 この記事では、元従業員の脅迫・嫌がらせへの法的対応を刑事・民事の両面から解説します。 1. こんな行為が「脅迫」になる このような相談がよくあります。 > 「元従業員を解雇し、退職金相当の金額を支払い合意書を交わした。しかしその後も追加請求を続け、『会社を潰すぞ』という発言や、反社会勢力との関係を匂わせる言動が続いている」 脅迫・強要に該当しうる行為の例: 「訴えてやる」「潰してやる」などの発言を繰り返す SNS・メール・電話で執拗に連絡を続ける 元従業員の家族・知人を経由した圧力 取引先・顧客への嫌がらせ 「反社会勢力とつながりがある」などの示唆 自宅・会社への押しかけ・侵入の予告 これらの行為は、程度・態様によって脅迫罪(刑法222条)・強要罪(刑法223条)・不正競争防止法違反・業務妨害罪などに該当する可能性があります。 2. まずやること——証拠の保全 法的対応の前に、証拠を保全することが最優先です。 保全すべき証拠の例 証拠の種類 保存方法 脅迫的なメッセージ(LINE・メール・SMS) スクリーンショット+PDF化 電話での発言 録音(事前に録音アプリを準備) 手紙・書面 原本保管+コピー SNSの投稿・DM スクリーンショット(日時表示を含めて) 目撃証言 複数人でその場の状況を記録 証拠なしに「脅された」と主張しても、刑事・民事ともに対応が難しくなります。記録・保存を徹底してください。 → ご相談はこちら:/corporationlaw/ 電話:0120-929-739(受付 9:00〜18:00) 3. 刑事的対応——警察への相談・告訴 警察への相談・被害届 まず最寄りの警察に相談しましょう。脅迫的な言動が明らかな場合、被害届の受理・捜査につながる可能性があります。 警察が動くかどうかは証拠の質・量によって左右されます。「言った・言わない」になりやすい口頭での脅迫より、文書・録音で記録されたものの方が受理されやすい傾向があります。 告訴状の提出 被害届よりも強力な対応が告訴状の提出です。告訴状は犯罪事実を特定した書面であり、受理されると警察に捜査義務が生じます。 告訴状の作成・提出は弁護士に依頼することをおすすめします。要件を満たした告訴状は警察が無視しにくく、捜査開始の呼び水になります。 書類偽造が疑われる場合 合意書・受領書などの書類に偽造・変造の疑いがある場合は、私文書偽造(刑法159条)・偽造私文書行使(刑法161条)としての告訴も視野に入れてください。偽造の証明には筆跡鑑定や作成経緯の客観的記録が重要です。 4. 民事的対応——接触禁止・損害賠償 接触禁止の仮処分(民事保全) 「脅迫行為・連絡行為を止めてほしい」という場合、裁判所に接触禁止の仮処分を申し立てる方法があります。 本訴訟(正式な裁判)より早く効力が生じるため、被害が継続している段階での対応として有効です。 申立ての要件は「保全の必要性(本案判決を待っていては損害が回復困難)」と「被保全権利(接触禁止を求める根拠となる権利)」の疎明です。 損害賠償請求 脅迫的行為・業務妨害によって生じた損害(営業上の損失・精神的苦痛)については、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求が可能です。 住所調査(弁護士法23条照会) 相手方の現在の住所が不明な場合、弁護士は弁護士法23条の2に基づく照会(23条照会)で住所を調査できます。これは訴訟提起・仮処分申立てのための前提手続きとして活用されます。 5. 「追加で払えば解決する」は禁物 脅迫的な元従業員に対して追加の支払いで解決しようとするのは危険です。 一度支払うと「また請求できる」と学習させてしまう 支払いが「会社側に非があった」という証拠として使われるリスク 要求額がエスカレートする可能性 退職合意書・解雇通知で解決済みの案件は、そこで完結させるのが基本方針です。追加請求には法的手段で対応することを社内でも共有しておきましょう。 → 関連記事:問題社員を解雇する前に準備すべき証拠と手順 → 関連記事:労働審判で会社側が対応すべきポイント → みんなの法務部サービスの詳細はこちら:/corporationlaw/service/ 電話:0120-929-739(受付 9:00〜18:00) 6. 弁護士に相談すべきタイミング 脅迫的な言動が繰り返されている 取引先・顧客への嫌がらせが始まった SNSで会社の悪口を書き続けている 会社・自宅への押しかけが予告されている 書類の偽造・改ざんが疑われる こうした状況が1つでもあれば、迷わず弁護士に相談することをおすすめします。初動を誤ると、後から取り返しのつかない事態になるリスクがあります。 よくある質問 Q. 脅迫的なメッセージを受けた場合、まず何をすればいいですか? A. まずスクリーンショット・録音など証拠の保全を行ってください。その上で弁護士に相談し、警察への相談・被害届・告訴状のどの手段が適切かを判断してもらうことをおすすめします。 Q. 「訴えてやる」という発言は脅迫罪になりますか? A. 法律上の手段(訴訟)を示唆するだけでは原則として脅迫罪は成立しません。ただし「家に乗り込む」「会社を潰す」「報復する」などの発言は、害悪の告知として脅迫罪・強要罪に該当しうる場合があります。個別の事情は弁護士に確認してください。 Q. 合意書を交わして退職させたのに、また請求してくることはありますか? A. 合意書の内容・有効性によって対応が変わります。「この合意書で全て解決」という清算条項(宥恕条項)が入っていれば、原則として新たな請求は認められません。合意書の内容を弁護士に確認してもらうことをおすすめします。 Q. 費用はどのくらいかかりますか? A. 相談内容・手続きの種類(警察対応・仮処分・訴訟等)によって異なります。みんなの法務部では初回相談無料でご案内しています。まずはご相談ください。 監修:弁護士法人ブライト 大阪・神戸を拠点に企業法務・顧問弁護士サービスを提供。みんなの法務部として中小企業の法的リスク対応を日々サポートしています。 本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の事案に対する法律アドバイスではありません。個別の対応については弁護士にご相談ください。