顧問弁護士の「利益相反」とは?社長が知らないまま損するリスクと正しい確認方法

顧問弁護士の「利益相反」とは?社長が知らないまま損するリスクと正しい確認方法

「この弁護士、本当にうちの味方でいてくれているのだろうか」——そんな疑問がふと頭をよぎったことはありませんか。顧問弁護士に相談したとき、何となく歯切れが悪い。全力で動いてくれている感じがしない。あるいは、取引先も同じ弁護士事務所を使っていることを後から知って、なんとなく不安になった。そういう「言葉にならないもやもや」の正体が、法律の世界では「利益相反」と呼ばれる問題です。

難しい言葉に聞こえますが、本質はシンプルです。「同じ弁護士が、対立する両方の側にいる」状態のことです。これが起きると、弁護士はどちらかの味方に徹することができなくなり、社長が本来受けられるはずの法的サポートが骨抜きになってしまいます。

この記事では、利益相反がなぜ起きるのか、どうすれば事前に確認できるのか、そして万一そういう弁護士に頼ってしまっていたときにどう動けばいいのかを、社長の視点でお伝えします。

「利益相反」とは何か——社長が知っておくべき本質

弁護士には、同時に複数の依頼者の案件を担当するとき、その依頼者間の利益が対立してはならないというルールがあります。弁護士法や弁護士職務基本規程で明確に定められており、違反すれば懲戒処分の対象になる深刻な問題です。

たとえば、次のようなケースが典型です。

  • A社の顧問弁護士が、A社と取引紛争になったB社からも相談を受けていた
  • ある弁護士事務所がM&Aの売り手側と買い手側の両方のアドバイザーになっていた
  • 社長個人の問題と会社の問題で、利害が食い違うケースを同一弁護士が担当していた

こういう状況では、弁護士は片方に有利なアドバイスをすれば、もう片方を裏切ることになります。結果としてどちらにも踏み込んだアドバイスができないか、あるいは無意識にどちらか一方に有利な行動を取ってしまう。社長にとっては、「費用を払って頼んでいるのに、本当の意味での味方がいない」という最悪の状態になります。

大切なのは、悪意のある弁護士だけが利益相反を起こすわけではないということです。弁護士の側も、案件数が増えるなかで「気づいていなかった」ということが起こりえます。だからこそ、社長の側も基礎知識を持って確認することが必要なのです。

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なぜ判断ミスが起きるのか——利益相反に気づかない構造

【図解】「利益相反」とは何か——社長が知っておくへの対応フロー

① 問題発生
② 事実確認・記録
③ 顧問弁護士に相談
④ 対応策の実行

※ 弁護士に早期相談することで、リスクを最小化できます。

社長が利益相反に気づきにくい理由には、いくつかの構造的な要因があります。

①「顧問弁護士」への信頼が確認を止める

長年付き合っている弁護士には、信頼感がある。それ自体は良いことですが、信頼が「確認しなくていい」という思考停止に変わると危険です。「先生なら大丈夫だろう」という感覚が、利益相反という視点そのものを持たせなくします。

②「同じ事務所の別の弁護士」は別人格と思いがち

「担当弁護士は違うから問題ない」という理解も、実務上は危うい場合があります。弁護士職務基本規程では、同じ事務所内での情報共有が想定されており、「同じ事務所の弁護士が対立当事者を担当している」こと自体が利益相反に該当するケースがあります。

③問題が表面化するまで気づかない

普段の顧問業務では利益相反は見えません。問題が発覚するのは、「いざ紛争になったときにその弁護士が動けなくなった」というタイミングです。つまり、最も弁護士が必要な場面で、突然サポートが失われるという事態になります。これが利益相反の一番怖いところです。

④M&Aや株式譲渡など、関係者が複雑なときほど見落としやすい

取引の当事者が複数いる場面——たとえば株式の売買や事業承継、業務提携の交渉など——では、関係者が増えるほど利益相反のリスクも高まります。「そういう話は弁護士が処理してくれているから」と丸投げにしていると、気づいたときには手遅れになることもあります。

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問題が起きる前にできること——予防のための確認ステップ

利益相反は、事後に発覚すると対処が非常に難しくなります。顧問弁護士との契約前、または新しい案件を相談するタイミングで、以下の確認を習慣にしてください。

① 顧問契約時に「利益相反の確認義務」を明文化する

顧問契約書に「他の依頼者との利益相反の有無を随時開示すること」という条項を盛り込むことが有効です。書面に残すことで、弁護士側も継続的にチェックする意識が生まれます。まだ顧問契約を締結していないか、または現在の契約書を見たことがないという方は、一度確認してみてください。

② 新案件を相談するたびに「他に関係者を知っているか」を聞く

取引先や相手方の社名を弁護士に伝えたとき、「その会社(または関係者)と、うちの事務所で何か関係はありますか」と確認する習慣を持ちましょう。「そんな失礼なことを聞いていいのか」と遠慮する社長も多いですが、これは当然の確認です。むしろ、きちんとした弁護士ほどこの質問を歓迎します。

③ M&Aや株式譲渡では、双方が別々の弁護士を立てる

利害が対立する当事者間では、それぞれが独立した弁護士を立てるのが原則です。「費用を抑えるために一人の弁護士に頼む」という選択は、後から大きなコストになる可能性があります。

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問題発生時の対応フロー——「この弁護士、大丈夫か」と思ったら

すでに顧問弁護士に依頼している案件で、利益相反の疑いが浮かんだとき、どう動けばいいのか。以下の順番で考えてください。

  1. まず記録を残す:「いつ、何を相談し、どんな回答があったか」をメモに残してください。弁護士との会話内容・メール・書面はすべて保管します。万一、弁護士会への申立てや損害賠償が必要になったとき、証拠になります。
  2. 別の弁護士に相談する:利益相反を懸念している弁護士に「利益相反がありますか」と直接聞くことも大切ですが、並行して別の弁護士に「この状況はどう見えるか」をセカンドオピニオンとして聞くのが現実的です。
  3. 辞任・解任を検討する:利益相反が事実であれば、弁護士は辞任義務を負います。また依頼者側から解任することも可能です。ただし、進行中の案件がある場合は引き継ぎのタイミングを慎重に考える必要があります。
  4. 弁護士会への申立てを検討する:明らかな規程違反があった場合は、各都道府県の弁護士会に対して懲戒申立てを行うことができます。これは最終手段ですが、選択肢として知っておくことが大切です。

なお、証拠は紛争になってから急に作れるものではありません。「おかしい」と感じたそのタイミングから記録を始めることが、後の手を守ります。

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失敗事例の構造——なぜ相談が遅れ、なぜ証拠が残らなかったのか

実際の相談で見えてくる失敗パターンには、共通の構造があります。

「まさかうちの弁護士に限って」という思い込み

長年付き合ってきた弁護士に対して、「この先生がそんなことをするはずがない」という信頼が、確認を遅らせます。問題が顕在化しても、「単なるミスだろう」「忙しいだけだろう」と解釈し、相談のタイミングを逃してしまいます。

「言った・言わない」を証明できない

弁護士への相談が電話口頭のみで、メールや書面の記録がない。何をいつ相談したかが記録されていないため、「そんな話は聞いていない」と言われたときに反論できません。顧問弁護士との日常的なやりとりでも、重要な指示や相談内容は文字で残す習慣が不可欠です。

「問題が表に出てから」動こうとする

紛争が表面化してから「実は前からおかしかった」と相談が来るケースがあります。しかしその時点では、過去の利益相反によって弁護士が「知りすぎた情報」を持っており、別の弁護士への引き継ぎにも支障が出ることがあります。早期に疑問を持った段階で動くことが、損失を最小化します。

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うちの会社ではどう考えればいいのか——規模別・場面別の整理

「利益相反の話はわかった。でも、自社に当てはめるとどうなるのか」。ここが社長にとって一番必要な視点です。

中小企業・オーナー企業の場合

社長個人・家族・会社の三者が関係する案件(相続、株式譲渡、事業承継など)では、利益相反リスクが特に高まります。たとえば、会社の顧問弁護士が社長個人の家族間紛争にも関与しているとき、「どちらの利益を優先するか」という問題が生じる可能性があります。案件の性質によって弁護士を分けるという判断が必要な場面があることを知っておいてください。

取引先と同じ弁護士事務所を使っているとき

普段は問題がなくても、取引先と紛争になった瞬間にその弁護士は動けなくなります。「うちの顧問弁護士が、相手方の取引先とも関係がある」ということは、普段の顧問業務の中では見えにくいです。契約締結や取引条件の交渉など、相手方の利益と自社の利益が対立する可能性がある場面では、必ず確認することをルール化してください。

スポット依頼と顧問契約の違い

単発(スポット)の法律相談では、弁護士側のチェックが甘くなりやすいという現実があります。継続的な顧問契約の下では、弁護士は常に依頼者の状況を把握しており、利益相反のチェックも継続的に行われます。スポット依頼だけで弁護士を使っている会社ほど、利益相反の見落としリスクは高くなります。

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再発防止策——「次も起きないようにする」ための仕組みづくり

一度利益相反の問題に直面した会社は、同じことを繰り返さないための体制を整える必要があります。具体的には以下の三点が有効です。

  • 顧問契約書に利益相反チェック条項を明記する:何かが起きてから確認するのではなく、定期的に(少なくとも年1回以上)弁護士から利益相反がないことの確認を受ける条項を入れる
  • 相談内容を必ず文書化する:口頭相談を原則としない。Slackやメールなど、記録が残るチャネルでやりとりする習慣をつける
  • 案件ごとに関係者リストを整理する:新規取引・M&A・紛争案件のたびに、関係当事者の一覧を弁護士に共有し、利益相反チェックを明示的に依頼する

これらは特別なことではなく、経営管理の一部として組み込めるものです。「揉めてから弁護士を使うのではなく、揉めないように弁護士を使う」という発想が、長期的なコスト削減にもつながります。

利益相反のような問題はスポット対応で解決できるものではありません。本質的な予防には、弁護士との継続的な関係と、法務の仕組みを社内に根づかせることが必要です。弁護士法人ブライトでは、顧問先130社以上の実名を公開し、「みんなの法務部」として社長の日常的な意思決定を支える体制を整えています。弁護士歴平均14年以上のチームが、利益相反チェックを含む顧問業務を継続的に担います。「この判断、本当に大丈夫か」を気軽に確認できる環境があるだけで、社長の判断の質は大きく変わります。

よくある質問

Q. 弁護士が利益相反を「知らなかった」と言えば免責されるのですか?

A. 弁護士職務基本規程では、弁護士は利益相反がないかを「積極的に調査・確認する義務」を負っています。「知らなかった」という主張は、調査義務を怠った場合には免責になりません。依頼者側としては、弁護士がきちんとチェックしているかを確認する権利があります。

Q. 同じ弁護士事務所でも担当が違えば問題ないのでは?

A. 必ずしもそうとは言えません。弁護士職務基本規程では、同一事務所内での情報共有を前提として、事務所全体として利益相反を回避することが求められています。担当者が異なっていても、利益相反に該当するケースがあります。

Q. 顧問弁護士を変えるには何をすればいいのですか?

A. 弁護士との委任契約は、依頼者側からいつでも解除できます(民法651条)。ただし、進行中の案件がある場合は、引き継ぎの時期や方法を慎重に検討する必要があります。新しい顧問弁護士候補に事前相談しながら進めるのが安全です。

Q. 利益相反があった弁護士に損害賠償を請求できますか?

A. 利益相反によって具体的な損害が生じた場合は、委任契約上の債務不履行または不法行為として損害賠償を請求できる可能性があります。ただし、損害の立証が必要です。そのためにも、やりとりの記録を日頃から残しておくことが重要になります。

和氣良浩 弁護士

この記事の監修者

和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士

弁護士歴20年(2006年登録)/大阪弁護士会/大阪大学法学部卒

専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生

利益相反の確認・顧問弁護士の見直し・法務体制の整備など、経営上の法的課題を継続的に相談できる顧問弁護士をお探しの方は、弁護士法人ブライト「みんなの法務部」にお問い合わせください。顧問先130社以上の実名を公開しており、弁護士歴平均14年以上の経験豊かな弁護士が対応します。企業法務窓口:0120-929-739(平日9:00〜18:00)

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本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
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