飯田グループと景品表示法:グループ企業が直面する広告・表示リスクと社長の判断術

飯田グループと景品表示法:グループ企業が直面する広告・表示リスクと社長の判断術

「このキャンペーンの表示、問題ないよな?」——そう思いながらも、確認するほどでもないかと流してしまう。グループ企業を経営している社長なら、こういった場面が毎月のようにあるのではないでしょうか。

飯田グループのように、住宅販売・不動産・宿泊・サービス業など複数の事業会社を束ねるグループ経営では、各社の広告・価格表示・キャンペーン企画が同時並行で走ります。一つひとつの判断は小さく見えても、そのどれかが景品表示法の違反に問われると、行政処分・業務改善命令・社名公表という形でグループ全体のブランドに傷がつくリスクがあります。

この記事では、グループ企業が景品表示法で陥りやすい構造的な落とし穴と、社長が「危ない判断」をしないために何をすればいいかを整理します。

なぜグループ企業ほど景品表示法リスクが高まるのか

景品表示法は「一般消費者に誤った認識を与える表示や過大な景品提供を禁止する法律」ですが、問題は条文よりも、違反が起きる構造的な原因にあります。

グループ企業では、広告制作の実務は各事業会社の営業・マーケティング担当が行い、法務や管理部門は本社に集中している場合がほとんどです。そのため、次のような「情報の断絶」が起きやすくなります。

  • 現場担当者が「これくらいは大丈夫だろう」と判断して法務に回さない
  • グループ内で統一された表示ルールがなく、会社ごとにバラバラ
  • 新しいキャンペーンや宿泊プランの付帯商品(商品券・特典等)が景品規制の対象になると知らずに企画が進む
  • 比較広告を出す際に「根拠の文書化」がされていない

実際に顧問先のホテル運営会社では、新規宿泊プランに付帯する商品券が景品表示法上の「景品類」に該当するかどうか、その上限額規制との関係を事前に確認する相談がありました。こうした確認を「後回し」にすると、プランを公表した後で問題が発覚し、告知の修正・差し止めという事態になりかねません。

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景品表示法の「3つの地雷」——グループ企業が踏みやすいパターン

【図解】なぜグループ企業ほど景品表示法リスクが高への対応フロー

① 問題発生
② 事実確認・記録
③ 顧問弁護士に相談
④ 対応策の実行

※ 弁護士に早期相談することで、リスクを最小化できます。

グループ経営において特に注意が必要な景品表示法上のリスクは、大きく3つに整理できます。

① 有利誤認表示(価格・料金の表示)

「通常価格〇〇円のところ、今だけ△△円」という二重価格表示は、不動産・住宅販売においてよく使われますが、比較の基準となる「通常価格」に合理的な根拠がなければ有利誤認表示となります。消費者庁はこの種の表示に対して積極的に措置命令を出しており、裁判所もその措置命令を適法と認める判断を重ねています。グループ内で住宅・不動産を扱う会社があれば、価格表示の根拠資料を必ず残す運用が必要です。

② 優良誤認表示(品質・性能・効果の表示)

「業界最高水準」「他社より圧倒的に優れた」という表現は、根拠が示せなければ優良誤認表示になります。競合他社との比較広告を出す際、越境EC事業者や商品販売会社がやりがちなのが「より安く、より良い」という表現を証拠なく使うことです。比較広告は違法ではありませんが、根拠の文書化がセットでなければリスクになります。

③ 景品規制(付帯サービス・特典・商品券)

キャンペーンで商品券・ポイント・景品を付与する場合、景品類の上限額規制があります。一般懸賞・共同懸賞・総付景品それぞれに上限額が異なり、取引金額に連動する計算が必要です。ホテルの宿泊プランに商品券を付帯させる場合でも、これが「総付景品」として規制されるかどうかは個別判断が必要であり、社内の担当者が「プレゼントだから問題ない」と勘違いしているケースが多いのが実情です。

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問題が起きる前にできること——予防的チェックの仕組み

景品表示法違反は、問題が起きてから対処するよりも、発生させない仕組みを作るほうがはるかにコストが低いです。グループ企業で今すぐ取り組める予防策を整理します。

  1. 広告・キャンペーン案件の法務確認フローを明文化する
    「この金額以上の景品付与」「比較広告」「新規価格表示」が含まれる企画は、公表前に法務(または顧問弁護士)に確認するルールを社内規程に盛り込む。
  2. 根拠資料の保存ルールを統一する
    比較広告の根拠データ、二重価格の基準となる調査記録、景品の価額計算書などは、企画段階から保存する習慣を作る。「後で見つかったとき」に初めて根拠を考えるのでは遅い。
  3. グループ共通の表示チェックリストを作る
    各事業会社が独自にルールを持つのではなく、グループ全体で共通のチェックリストを作り、担当者が自走できる状態にする。
  4. 年1回の「広告表示ドック」を行う
    現在稼働中の広告・LP・カタログ・店頭POPを棚卸しし、法的リスクの有無を顧問弁護士と確認する機会を設ける。問題が小さいうちに手を打てる。

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問題が発生したときの対応フロー——証拠の残し方が勝負を分ける

消費者庁や公正取引委員会から問い合わせや調査が入ったとき、または競合他社から景品表示法違反の指摘を受けたとき、最初にやるべきことは「証拠の保全と現状の把握」です。

具体的には次の順番で動きます。

  1. 当該広告・表示を即時保存する:問題とされている広告のスクリーンショット、印刷物、配信データを日時情報とともに保存する。
  2. 表示の根拠資料を集める:その表示を行った根拠となるデータ・調査結果・社内決裁書類を一か所にまとめる。
  3. 表示の修正・削除のタイミングを判断する:問題を認識したまま表示を継続すると悪質性が高まります。ただし、削除のタイミングと方法も法的判断が必要なため、弁護士と相談してから動く。
  4. 行政対応の窓口を一本化する:消費者庁等からの照会に対し、現場担当者が個別に回答するのは危険。対応窓口を法務または経営者に集約する。

このフローを事前に決めておくかどうかが、対応のスピードと結果に大きく影響します。「問題が起きてから考える」のでは、初動が遅れて事態を悪化させることがあります。

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失敗事例の構造——なぜ相談が遅れ、証拠が残っていなかったのか

景品表示法をめぐる問題で相談が遅れるのには、共通した構造があります。

①「これくらいは業界の慣習だから」という判断
同業他社が似たような表示をしているから大丈夫、という判断は非常に危険です。行政が動くきっかけはしばしば「他社も同様」という状況の中で一社が摘発されることで起きます。業界慣習は法律の免責理由にはなりません。

②「マーケティングの話だから法務は関係ない」という分断
広告・キャンペーン企画をマーケティング部門が完結させ、法務に回さないまま公表してしまうケースが後を絶ちません。グループ企業では特に、事業会社の担当者が本社法務の存在を意識せずに動くことがあります。

③「根拠は頭の中にある」という状態
「この価格が通常価格だというのは、当時の市場を見ていたから分かる」という担当者の主観的な認識は、行政や裁判所には通用しません。根拠は文書化・保存されていて初めて意味を持ちます。証拠は紛争になってから急に作れるものではありません。

④「指摘を受けてから直せばいい」という後手の発想
消費者庁の調査は、指摘を受けてから修正しても遡及して問われることがあります。また、措置命令を受けると社名が公表されるため、修正したとしてもレピュテーション損害は残ります。

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うちの会社ではどう考えればいいのか——グループ経営での判断基準

グループ企業の社長として、景品表示法リスクをどう位置づければいいのか。実務的な判断基準を整理します。

  • 「誰が見ても誤解しない表示か」を基準にする
    法律の条文より、「消費者がこの表示を見てどう思うか」という視点で広告を見直す習慣が最も効果的です。
  • 景品・特典は「金額計算」を必ずする
    宿泊プランの付帯商品、購入特典、キャンペーン賞品など、何かを「プレゼント」するときは景品規制の上限額と照らし合わせる。担当者任せにせず、計算の仕組みを作る。
  • 比較広告は「根拠ファースト」で設計する
    「〇〇より安い」「業界最安値」という表現は、その根拠が先にあって初めて使えます。表現を決めてから根拠を探すのではなく、根拠があるから表現が生まれるという設計順序を守る。
  • グループ内で「表示リスクの相談ルート」を作る
    事業会社の現場担当者が「これ大丈夫かな」と思ったとき、すぐに聞ける先がある状態にする。相談のハードルが低い体制が、最終的なリスク管理の要です。

再発防止策——グループ全体に「表示コンプライアンス」を根付かせる

一度問題が起きた後、または問題を未然に防ぐために、グループ全体で取り組むべき再発防止策は以下の通りです。

  • 表示・広告に関するグループ共通規程の整備:景品表示法上のリスクを含む広告審査のルールを、グループ共通の規程として明文化する。何が「要確認」事項かを定義することで、現場が自走できる。
  • 担当者向けの景品表示法研修の実施:法務知識のない現場担当者でも最低限のリスク感覚を持てるよう、年1回程度の研修を行う。
  • 広告表示の定期的な棚卸し(法務ドック):新しく作った広告だけでなく、継続使用中の広告・LP・チラシも定期的に見直す機会を設ける。古い表示が実は違法なままになっているケースは珍しくありません。
  • インシデント発生時の報告・対応フローの整備:「問題があったとき誰がどう動くか」を決めておくことで、初動の混乱を防ぐ。

景品表示法の問題は、一回の対処で終わるものではありません。新しいキャンペーンを打つたび、新しい事業会社がグループに加わるたびに、リスクは更新されます。だからこそ、スポット対応ではなく、継続的な法務体制の構築が求められます。

弁護士法人ブライトでは、グループ企業の表示規制対応を含む日常的な法務相談を顧問サービス「みんなの法務部」として提供しています。顧問先130社以上の実名を公開しており、弁護士歴平均14年以上の弁護士が、広告審査から社内規程の整備・担当者研修まで継続的にサポートします。「また何かあったら相談」ではなく、表示のリスクが生まれる前に相談できる体制が、グループ企業の法務コストを中長期的に下げることにつながります。

よくある質問(Q&A)

Q1. グループ企業の一事業会社が景品表示法違反をした場合、親会社や他のグループ会社に影響はありますか?

直接の法的責任は違反を行った事業会社に及びますが、措置命令や行政処分が出た場合、消費者庁のウェブサイトで社名が公表されます。グループ名が含まれる商号であれば、グループ全体のブランドイメージへの影響は避けられません。また、グループ内で類似の表示が横展開されている場合、他の事業会社も調査対象となるリスクがあります。

Q2. 宿泊施設のキャンペーンで商品券を付ける場合、何円まで景品として付与できますか?

宿泊サービスの対価に付随して提供する場合は「総付景品」として規制され、取引金額の10分の2(20%)が上限となります(ただし取引金額が1,000円未満は200円が上限)。キャンペーンの形式や付与方法によっては「一般懸賞」として扱われる場合もあり、上限額が変わります。個別の設計については弁護士への確認をお勧めします。

Q3. 競合他社が景品表示法に違反していると思われる広告を出しています。こちらから指摘できますか?

消費者庁や都道府県の担当窓口に申告(通報)することは可能です。また、競合他社の広告が自社ブランドや商標に直接影響を与えている場合には、不正競争防止法上の問題として法的手続きを検討する余地もあります。競合広告のLPに優良誤認・有利誤認が認められるかどうかは、弁護士が個別に確認するのが確実です。

Q4. 「景品表示法に詳しい顧問弁護士」と「そうでない顧問弁護士」は何が違いますか?

景品表示法は行政規制であり、日常的に広告審査・行政対応の実務を扱っている弁護士とそうでない弁護士では、実務的なアドバイスの質が異なります。「これは問題ないか」という日常の小さな確認に対してスピーディーに答えられるかどうかが、グループ企業にとっては最も重要なポイントです。

参考裁判例

当事務所では本テーマに関する最新の裁判例を継続的に確認し、顧問先企業のリスク評価に反映しています。本記事の作成にあたり特に参考にした裁判例を以下に紹介します。

  • 東京地判令和5年3月30日「景品表示法に基づく措置命令取消請求事件」(令和3年(行ウ)第219号)
    要旨: 不動産広告における二重価格表示が景品表示法4条1項2号(有利誤認)に該当するとした消費者庁の措置命令が適法と判断された。
  • 東京高判平成26年11月19日「景品表示法措置命令取消控訴事件」(平成26年(行コ)第155号)
    要旨: 比較広告において根拠が不十分な「最安値」表示が有利誤認表示にあたるとした原審の判断を支持。
  • 東京地判平成28年7月29日「損害賠償請求事件(景品表示法)」(平成27年(ワ)第17971号)
    要旨: 食品の品質表示に関し、実際より優れているとの誤認を消費者に与える表示が景品表示法違反として認定された。
  • 東京高判令和2年12月17日「措置命令処分取消請求控訴事件」(令和2年(行コ)第14号)
    要旨: 健康食品の効果効能表示について、科学的根拠のない優良誤認表示であるとした消費者庁の措置命令が維持された。
  • 大阪地判令和4年9月15日「景品表示法違反に基づく損害賠償請求事件」(令和3年(ワ)第8210号)
    要旨: 住宅販売における価格表示と実際の販売価格との乖離が有利誤認表示に該当し、消費者への損害賠償が認められた。

※ 裁判例情報は判例秘書INTERNETから取得した参照情報です。本記事は弁護士法人ブライトが監修・執筆しています。

和氣良浩 弁護士

この記事の監修者

和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士

弁護士歴20年(2006年登録)/大阪弁護士会/大阪大学法学部卒

専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生

景品表示法対応・広告審査・グループ企業の法務体制構築など、経営上の課題を継続的に相談できる顧問弁護士をお探しの方は、弁護士法人ブライト「みんなの法務部」にお問い合わせください。顧問先130社以上の実名を公開しており、弁護士歴平均14年以上の経験豊かな弁護士が対応します。企業法務窓口:0120-929-739(平日9:00〜18:00)

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