カスタマーハラスメント対策の義務化(2026年10月)に企業が今すぐやること|体制整備チェックリスト【弁護士解説】

カスタマーハラスメント対策の義務化(2026年10月)に企業が今すぐやること|体制整備チェックリスト【弁護士解説】

和氣 良浩

監修:和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士|大阪弁護士会

大阪で20年以上、中小企業の企業法務・顧問弁護士サービスを提供。顧問先130社以上に透明性の高いリーガルサポートを実践している。

2026年10月、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策は「やった方がよい取り組み」から「事業主の法的な義務」に変わります。改正労働施策総合推進法により、企業規模を問わず、顧客等からの著しい迷惑行為から従業員を守るための雇用管理上の措置を講じることが求められるようになります。

弁護士法人ブライトの「みんなの法務部」には、すでに多くの経営者から「何を、いつまでに、どこまでやればよいのか」という相談が寄せられています。本記事では、義務化の中身と、中小企業が現実的に取り組める体制整備のチェックリストを、企業法務を専門とする弁護士の視点で解説します。

カスハラ対策の体制整備、何から始めればよいか迷ったら

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2026年10月、カスハラ対策は「努力目標」から「義務」に変わる

何が変わるのか

これまでもパワーハラスメント防止指針の中で「顧客等からの著しい迷惑行為」への対応が「望ましい取り組み」として触れられてきました。しかし、改正労働施策総合推進法の施行により、これが事業主の雇用管理上の措置義務として法律に明記されます。「うちは大企業じゃないから関係ない」という理屈は通用しません。従業員を1人でも雇用している事業主であれば、原則として対象になります。

なぜ今、法制化されたのか

背景には、小売・飲食・医療・介護・運送・不動産・金融など、対人業務を持つ業種で従業員の離職や精神疾患が深刻化してきた実情があります。弁護士法人ブライトが大阪の中小企業から受ける相談でも、業種を問わず「顧客からの理不尽な要求にどう線を引けばよいか」という悩みが増えています。法制化は、企業が対応を「個人の頑張り」に委ねてきた構造そのものを見直す契機になります。

業種別によくある相談の傾向

弁護士法人ブライトに寄せられる相談を業種別に整理すると、次のような傾向が見えてきます。あくまで一般的な傾向であり、個別の事情によって対応は異なります。

業種 よくある相談内容
宿泊・飲食業 サービス内容への過大な要求、長時間の居座り、従業員個人への執拗な叱責
医療・介護 治療結果への不満を理由にした返金要求、スタッフへの威圧的な言動
不動産・住宅関連 契約後のクレームを盾にした過大な補修・値引き要求
小売・EC 返品・返金対応を巡るSNSでの誹謗中傷の示唆、コールセンターへの長時間クレーム電話
士業・専門サービス サービス内容への不満から、担当者個人への攻撃的な言動に発展するケース

業種が異なっても、対応の型は共通しています。「事実確認」「要求内容と態様の相当性の評価」「窓口の一本化」という3段階の流れを社内で共有しておくことが、どの業種でも体制整備の出発点になります。

企業に求められる4本柱|方針策定・相談体制・対応手順・研修

厚生労働省の指針が示す枠組みは、パワーハラスメント防止措置と同様に大きく4つの柱で構成される見込みです。中小企業が押さえるべきポイントを整理します。

求められる対応 中小企業の最低ライン
①方針の明確化・周知 カスハラを許容しない旨の方針を策定し、従業員・取引先に周知 就業規則・社内規程への一文追加+朝礼や掲示での周知
②相談体制の整備 相談窓口を設置し、担当者が適切に対応できる体制を作る 総務・店長など相談先を明確化。難しい場合は外部窓口(顧問弁護士等)の活用
③対応手順の整備 被害発生時の事実確認・被害者保護・行為者への対応フローを定める 「誰が」「どの段階で」「誰に報告するか」を1枚のフローにまとめる
④研修・周知啓発 管理職・現場従業員への研修を実施し、対応スキルを共有 年1回程度の簡易研修+新入社員へのオリエンテーション組み込み

ポイントは、4本柱すべてを完璧に整えることよりも、「うちの会社はカスハラを許容しない」という姿勢を明文化し、従業員が孤立しない仕組みを作ることです。豪華なマニュアルより、実際に機能する短い手順書のほうが現場では役に立ちます。

4本柱の整備、自社だけで進めるのは大変です

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【経営者の方へ】体制整備は「やった方がいい」ではなく「義務」です

現場任せにしてきた経営者の方へ

「クレーム対応は現場の店長・担当者に任せている」という体制のままでは、2026年10月以降は法的なリスクになります。措置義務の名宛人は事業主(会社・経営者)です。現場のベテラン社員の経験則に頼った対応では、義務を果たしたとは評価されません。

総務部長や現場マネージャーがこの記事を読んでいる場合は、この一文を経営者に共有してください。「体制整備をするかどうか」は経営判断ではなく、すでに「いつ・どこまでやるか」という実行フェーズの話になっています。予算と権限を持つ経営層の関与なしに、4本柱は完成しません。

悪質クレームと正当な要求の線引き|何が「カスハラ」に当たるか

体制整備で最も現場が悩むのが「どこからがカスハラで、どこまでが正当なクレームか」という線引きです。厚生労働省のカスタマーハラスメント対策企業マニュアルでは、おおむね次の2つの観点で判断するとされています。

  • 要求内容の妥当性:商品・サービスに瑕疵や過失があるか。要求が社会通念上相当な範囲か
  • 要求手段・態様の相当性:暴言・威嚇・長時間拘束・土下座の強要・SNSでの誹謗中傷予告など、手段が社会通念に照らして不相当でないか
正当なクレーム(対応すべき) カスハラ(毅然と拒否してよい)
商品の不良・接客ミスなど事実に基づく指摘と、相当な範囲の改善要求 土下座の強要、長時間の拘束、暴言・脅迫、社会通念を超える金銭要求
担当者の変更や再発防止策の説明を求める行為 特定の担当者個人への執拗な攻撃、SNSでの実名公開の示唆
書面や記録での正式な回答を求める行為 同じ内容を繰り返し電話・訪問して長時間にわたり従業員を拘束する行為

大阪の中小企業から寄せられる相談として多いのは、「最初は正当なクレームだったが、対応が長引くうちに要求がエスカレートしていくケース」です。この場合、途中から「これはカスハラである」と会社として認定し、対応窓口を一本化する判断が重要になります。判断に迷う段階で顧問弁護士に相談できる体制があると、現場が孤立せずに済みます。

中小企業が現実的にやること|今日からできる体制整備チェックリスト

大企業のような専門部署を置けない中小企業でも、以下のチェックリストを順に潰していけば、義務化に対応する最低限の体制は整います。

チェック項目 目安の工数
□ カスハラを許容しない旨を就業規則・接客マニュアルに明記した 半日〜1日
□ 相談窓口(社内担当者または顧問弁護士)を決め、従業員に周知した 1日
□ クレーム対応の記録様式(日時・要求内容・対応者)を用意した 半日
□ 「悪質と判断したら現場対応を打ち切り、窓口を会社(または弁護士)に一本化する」フローを決めた 1日
□ 電話録音・防犯カメラなど、客観的な証拠を残す仕組みを確認した 半日
□ 管理職向けに年1回、30分程度の簡易研修を実施する予定を組んだ 研修準備1日

現場対応で従業員に徹底させたい3つの原則

  • 1人で抱え込ませない:長時間の一人対応は精神的負担が大きく、会社の安全配慮義務違反にもつながる
  • その場で確約しない:返金や慰謝料相当の金銭対応は「持ち帰って検討する」を徹底し、即断させない
  • やり取りは記録に残す:口頭でのやり取りも、後で「言った・言わない」にならないよう簡単なメモを残す

窓口を弁護士に一本化する効果

悪質性が高いと判断した段階で、連絡窓口を弁護士に切り替えることには実務上大きな意味があります。相手方は「弁護士が介入した」という事実だけで態度を軟化させることが少なくありません。内容証明郵便や書面での通知に切り替えることで、感情的なやり取りを避け、記録に残る形でのコミュニケーションに移行できます。

悪質クレームの窓口を弁護士に一本化しませんか

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従業員の安全配慮義務との関係|会社が負う法的責任

カスハラ対策義務化と並んで押さえておくべきなのが、労働契約法上の安全配慮義務です。会社は従業員が生命・身体の安全を確保しつつ働けるよう配慮する義務を負っています。顧客からの著しい迷惑行為を認識しながら会社が対策を怠り、従業員が精神疾患を発症するなどの被害が生じた場合、会社が安全配慮義務違反として損害賠償責任を問われる可能性があります。

これは今回の法改正を待つまでもなく、既に確立された法理です。つまり、カスハラ対策の義務化は「新しい義務が突然降ってきた」というより、従来から存在した安全配慮義務の具体的な中身を法律で明確化したものと理解するのが実態に近いといえます。

⚖️ 関連する法的枠組み

  • 労働施策総合推進法の改正:カスタマーハラスメント防止のための雇用管理上の措置を事業主の義務として明記(2026年10月施行予定)
  • 労働契約法5条(安全配慮義務):使用者は労働者がその生命・身体等の安全を確保しつつ労働できるよう必要な配慮をする義務を負う
  • パワーハラスメント防止指針:カスハラ対策の内容を検討する上での実務上の参考枠組み(4本柱の考え方の土台)

施行時期・具体的な指針の細目は今後の政省令・指針改正で確定します。最新の適用範囲は個別に弁護士へご確認ください。

整備を怠った場合に企業が負うリスク

法的リスク

措置義務そのものへの違反には、行政指導・勧告の対象となる可能性があります。加えて、対策を怠った結果として従業員に精神的・身体的な被害が生じた場合、前述の安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求のリスクが現実化します。

人材流出のリスク

カスハラ対応を現場任せにしている会社では、対人業務を担う従業員から「会社が守ってくれない」という不信感が広がり、離職につながりやすい傾向があります。人手不足が続く業種ほど、体制整備の遅れがそのまま採用競争力の低下に直結します。

レピュテーションリスク

会社側の対応が不適切だった場合、SNSなどを通じて「従業員を守らない会社」という評判が広がるリスクもあります。逆に、毅然とした対応方針を対外的に示している会社は、悪質なクレーマーから狙われにくくなるという副次的な効果も期待できます。

顧問弁護士に相談すべきタイミングと相談窓口としての活用法

体制整備は自社だけでも一定程度は進められますが、次のような場面では顧問弁護士の関与を検討することをおすすめします。

  • 就業規則・接客マニュアルへの規定追加を、実効性のある文言で作成したいとき
  • 個別のクレーム対応が悪質化し、内容証明郵便での通知や取引・来店の拒否を検討するとき
  • 従業員からハラスメント被害の申告があり、会社としての初動対応(事実確認・被害者保護)に不安があるとき
  • 研修の設計や、管理職向けの実践的な対応マニュアルを整備したいとき

弁護士法人ブライトの「みんなの法務部」では、こうした体制整備を単発の相談で終わらせず、顧問契約の中で継続的にアップデートしていくことを重視しています。法改正や指針の見直しがあった際に、その都度マニュアルを見直せる体制があることが、中小企業にとっての本当の安心につながります。大阪を中心に顧問先130社以上を実名で公開し、弁護士歴平均14年以上のチームが対応する体制を整えています。

義務化への対応、顧問弁護士と一緒に進めませんか

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よくある質問

Q. カスハラ対策の義務化は何人以下の会社なら対象外ですか?

A. 明確な従業員数の下限は設けられない見込みです。パワーハラスメント防止措置と同様、原則としてすべての事業主が対象になると理解しておくのが安全です。小規模事業者向けには簡易的な対応方法が示される可能性がありますが、「体制を全く作らなくてよい」ということにはなりません。

Q. すでに接客マニュアルがある場合、何を追加すればよいですか?

A. 既存マニュアルに「会社としてカスハラを許容しない」という方針の一文と、悪質と判断した場合の窓口切り替えルールを追加するだけでも、大きな前進になります。ゼロから作り直す必要はなく、既存の運用に組み込む形で十分対応可能です。

Q. 大阪の中小企業でも顧問弁護士に体制整備を依頼できますか?

A. 可能です。弁護士法人ブライトは大阪を拠点に、顧問先130社以上(実名公開)へ企業法務サービスを提供しています。カスハラ対策の方針策定から、悪質クレーム発生時の代理対応まで一貫してサポートしています。

Q. 従業員がすでにカスハラで精神的に不調を訴えている場合、まず何をすべきですか?

A. まずは当該従業員をその顧客対応から外し、安全を確保することが最優先です。そのうえで事実関係を記録し、必要に応じて産業医・医療機関への相談を案内してください。会社としての対応が遅れると安全配慮義務違反を問われるリスクが高まるため、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

Q. 悪質なクレーマーへの対応を弁護士に依頼すると、費用はどれくらいかかりますか?

A. 通知書の作成・送付程度であればスポット対応も可能ですが、継続的な相談体制を整えたい場合は顧問契約の中で対応する方が費用対効果に優れるケースが多いです。具体的な費用は状況により異なるため、まずは無料相談でご状況をお聞かせください。

まずは体制整備の現状診断から始めませんか

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本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の事案に対する法律アドバイスではありません。法改正の施行時期・詳細は今後の政省令・指針で確定するため、個別の対応については弁護士にご相談ください。

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本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
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