フリーランス保護法(フリーランス・事業者間取引適正化法)で発注企業がすべき対応|契約書・支払期日・禁止行為【弁護士解説】

フリーランス保護法(フリーランス・事業者間取引適正化法)で発注企業がすべき対応|契約書・支払期日・禁止行為【弁護士解説】

和氣 良浩

監修:和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士|大阪弁護士会

大阪で20年以上、中小企業の企業法務・顧問弁護士サービスを提供。顧問先130社以上に透明性の高いリーガルサポートを実践している。

2024年11月1日に施行された「フリーランス保護法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律/通称:フリーランス・事業者間取引適正化等法)」は、個人事業主やひとり法人に業務を発注するすべての企業に義務を課す法律です。「うちは下請法の対象外だから関係ない」と考えている発注企業ほど、実は規制の対象になっているケースが少なくありません。

本記事では、大阪の弁護士法人ブライト「みんなの法務部」が、発注企業側が取るべき対応・既存の業務委託契約書の見直しポイント・違反時のリスクを実務目線で解説します。

フリーランス保護法、うちの契約書は大丈夫?

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フリーランス保護法とは|なぜ発注企業に義務が課されるのか

フリーランス保護法は、企業がフリーランス(個人事業主や、従業員を使わずに1人で事業を行う法人=「特定受託事業者」)に業務を委託する際の取引条件を適正化するための法律です。委託する側の企業(発注企業)を「業務委託事業者」、その中でも従業員を使用している事業者を「特定業務委託事業者」と呼び、規模の大小にかかわらず義務が課されます。

従来の下請法は「発注企業の資本金が一定額以上」という資本金要件があり、資本金の小さい企業同士の取引や、資本金要件を満たさない企業とフリーランスとの取引は対象外でした。フリーランス保護法にはこの資本金要件がないため、資本金の小さいスタートアップや個人事業主同士の取引であっても、相手がフリーランスであれば適用対象になり得ます。この点が、発注企業側で見落とされがちな最大のポイントです。

発注企業が負う5つの主な義務

フリーランス保護法が発注企業に課す義務は、大きく分けて5つあります。義務の内容によって「すべての業務委託事業者に課される義務」と「従業員を使用する特定業務委託事業者にのみ課される義務」があるため、まず自社がどちらに該当するかを整理する必要があります。

①取引条件の明示義務(すべての発注者に適用)

業務を委託する際は、書面または電磁的方法(メール・チャットツール等でも可)により、業務の内容・報酬の額・支払期日など、あらかじめ定められた事項を明示しなければなりません。口頭発注や、SNSのメッセージのみでの発注はこの義務違反にあたるおそれがあります。

②報酬の支払期日設定・支払義務(特定業務委託事業者に適用)

従業員を使用する発注企業は、フリーランスから成果物やサービスの提供を受けた日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に報酬を支払う期日を定め、実際にその期日までに支払う義務を負います。再委託(元請から受けた業務をさらにフリーランスへ委託する場合)については、元委託の支払期日から30日以内という特例が設けられています。

③7つの禁止行為(継続的業務委託・従業員を使用する発注者に適用)

1ヶ月以上の継続的な業務委託については、以下の7つの行為が禁止されます。

  • 受領拒否:フリーランスに責任がないのに、成果物の受け取りを拒否すること
  • 報酬の減額:あらかじめ定めた報酬額を、フリーランスに責任がないのに減額すること
  • 返品:受け取った成果物を、フリーランスに責任がないのに返品すること
  • 買いたたき:類似の取引の相場に比べて著しく低い報酬額を、一方的に定めること
  • 購入・利用強制:正当な理由なく、指定した物品の購入やサービスの利用を強制すること
  • 不当な経済上の利益の提供要請:金銭・役務等を提供させ、フリーランスの利益を不当に害すること
  • 不当な給付内容の変更・やり直し:フリーランスに責任がないのに、費用を負担せず内容変更・やり直しをさせること

これらは下請法の禁止行為と重なる部分が多いため、下請法対応の経験がある企業は比較的イメージしやすいはずです。

④ハラスメント対策に係る体制整備義務

フリーランスに対するセクハラ・パワハラ・マタハラ等の相談に対応する体制(相談窓口の設置等)を整備することが義務付けられています。従業員向けのハラスメント相談窓口とは別に、業務委託先のフリーランスからの相談も受け付けられる体制になっているかを確認する必要があります。

⑤中途解除等の事前予告義務

6ヶ月以上の継続的な業務委託契約を中途解除する場合、または契約を更新しない場合は、原則として30日前までに予告しなければなりません。予告なく突然契約を打ち切ることは、フリーランス側から見ればトラブルの典型パターンであり、実際に発注企業の顧問弁護士として関わる中でも、契約解除のタイミングを巡る相談は少なくありません。

5つの義務、すべて自社の運用で対応できていますか?

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下請法との違い・適用範囲の整理

発注企業からよく寄せられる質問が「うちはすでに下請法の対応をしているから、フリーランス保護法の対応は不要では」というものです。しかし、両者は適用範囲の考え方が異なるため、下請法の体制だけでは足りないケースがあります。

比較項目 下請法 フリーランス保護法
適用の基準 発注者・受注者双方の資本金額 資本金要件なし。相手が従業員を使わないフリーランス(特定受託事業者)かどうか
委託内容の範囲 製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託に限定 業務委託全般(限定なし)
支払期日 受領日から60日以内のできる限り短い期間内 受領日から60日以内のできる限り短い期間内(同様の考え方)
中途解除の予告 明文の規定なし 6ヶ月以上の継続契約は原則30日前予告が必要
所管官庁 公正取引委員会・中小企業庁 公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省(ハラスメント対策等)

実務上のポイントは、資本金要件がないため、下請法の対象にならなかった小規模な発注企業・スタートアップ企業も、フリーランスに業務を委託していれば規制対象になり得るという点です。「うちは規模が小さいから関係ない」という判断は通用しません。

発注企業が今すぐ見直すべき業務委託契約書のポイント

弁護士法人ブライトが顧問先の契約書レビューを行う際、フリーランス保護法の観点から特に確認するのは以下の項目です。

取引条件明示のフォーマット化

発注のたびに口頭やチャットでバラバラに条件を伝えている場合、明示義務の履行が証拠として残りにくくなります。業務内容・報酬額・支払期日・検収基準を網羅した発注書のひな形を用意し、発注のたびに交付する運用に切り替えることをおすすめします。

支払期日条項の見直し

「検収完了後●日以内」という定め方をしている契約書は注意が必要です。検収のタイミングを発注企業側が意図的に遅らせることで、実質的な支払いの先延ばしが起きる余地があるためです。給付を受領した日を起点とした支払期日の設定に修正することが望ましいといえます。実際に、顧問先企業の契約書交渉の場面でも、取引先から「検収完了後●日以内」という支払期日の定め方について修正を求められる場面が見られます。

中途解除条項への予告期間の追加

「発注者はいつでも本契約を解除できる」という条項のみになっている契約書は、フリーランス保護法上の30日前予告義務と整合しない可能性があります。解除・不更新の際の予告期間(原則30日以上)を契約書に明記しておくことで、運用上のトラブルを未然に防げます。

報酬減額・買いたたきにつながる条項の排除

物価高騰や協力業者の交渉力の差を背景に、発注企業側の都合だけで報酬を減額できるような条項が残っていないかも確認すべきポイントです。特に建設業や制作業のように、二次・三次の下請構造が生まれやすい業種では、元請としての責任の範囲が問題になりやすく、契約書の見直しと合わせて取引先ごとの実態把握が求められます。

また、インボイス制度導入後は、免税事業者であることを理由に一方的に報酬を減額する対応が「買いたたき」に該当するリスクがある点にも注意が必要です。消費税相当額の一律カットのような画一的な対応は避け、個別の交渉を経た合理的な単価設定であることを説明できるようにしておくことが重要です。

業務委託契約書のひな形、フリーランス保護法対応済みですか?

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違反した場合のペナルティ

フリーランス保護法違反が疑われる場合、公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省が、必要に応じて報告徴収や立入検査を行い、指導・助言、勧告といった段階的な対応をとります。勧告に従わない場合は事業者名等が公表されることがあり、さらに悪質な場合は命令が出され、命令に違反すると罰金が科される可能性があります。

行政処分そのものに加えて、社名が公表されることによる取引先・採用市場への信用面での影響も無視できません。特にBtoBの継続取引を前提とする企業にとって、コンプライアンス体制の不備が公になること自体が大きなリスクになります。

⚖️ フリーランス保護法に関連する主要な規律

  • 取引条件の明示義務:すべての業務委託事業者に適用
  • 報酬の支払期日(60日ルール):従業員を使用する特定業務委託事業者に適用
  • 7つの禁止行為:1ヶ月以上の継続的業務委託・特定業務委託事業者に適用
  • 中途解除等の30日前予告義務:6ヶ月以上の継続的業務委託に適用
  • 公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省による指導・助言、勧告、公表、命令:違反時の行政上の措置

発注企業が今すぐやるべきチェックリスト

チェック項目 確認のポイント
取引先にフリーランスがいるか棚卸しできているか 個人事業主・ひとり法人との取引を一覧化する
発注書・発注メールで取引条件を明示しているか 口頭のみの発注が残っていないか
報酬の支払期日が受領日から60日以内になっているか 「検収完了後●日以内」という定め方に偏っていないか
報酬減額・返品・買いたたきにつながる運用がないか 物価高騰・インボイス対応を理由にした一律減額がないか
フリーランス向けのハラスメント相談窓口があるか 従業員向け窓口と別に運用できているか
契約解除・不更新の予告期間を契約書に明記しているか 30日前予告のルールが盛り込まれているか

弁護士に相談すべきケース

フリーランス保護法への対応は、社内だけで進めようとすると、既存の契約書ひな形の何をどこまで直せばよいか判断がつきにくいという声をよく聞きます。以下のようなケースでは、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

  • 業務委託契約書のひな形が数年間見直されておらず、支払期日や解除条項が古いままになっている
  • 取引先(フリーランス)から契約条件について指摘・修正依頼を受けたが、社内で法的な妥当性を判断できない
  • 建設業やIT・制作業など、二次・三次の下請構造がある業種で、自社がどこまで元請としての責任を負うか整理したい
  • インボイス制度対応に伴う報酬の見直しが「買いたたき」にあたらないか確認したい
  • フリーランスとの契約を中途解除する予定があり、予告義務との関係で進め方を確認したい

大阪の弁護士法人ブライト「みんなの法務部」では、顧問契約の一環として提供している「法務ドック」を通じて、業務委託契約書・下請基本契約に添付するルール・秘密保持誓約書などをまとめてレビューし、フリーランス保護法・下請法双方の観点から必要な修正点を洗い出すサポートを行っています。

契約書の見直し、まずは現状把握から始めませんか

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よくある質問

Q. 従業員がいない小さな会社でもフリーランス保護法の対象になりますか?

A. 取引条件の明示義務は、従業員を使用しない事業者同士の取引であっても適用されます。一方、支払期日や7つの禁止行為に関する義務は、従業員を使用している「特定業務委託事業者」に課される義務です。自社が従業員を使用しているかどうかで義務の範囲が変わるため、個別に確認することをおすすめします。

Q. 既存の業務委託契約書をすべて作り直す必要がありますか?

A. 必ずしもすべてを作り直す必要はありません。支払期日・中途解除の予告期間・報酬減額に関する条項など、フリーランス保護法との整合性が問題になりやすい箇所を中心にレビューし、必要な部分だけを修正する対応が現実的です。大阪の弁護士法人ブライトでは、法務ドックを通じてこうした部分的な見直しを支援しています。

Q. 下請法対応をすでにしていれば、フリーランス保護法の対応は不要ですか?

A. 不要とはいえません。フリーランス保護法には下請法のような資本金要件がなく、委託内容の範囲も業務委託全般に広がっています。下請法の対象にならない取引でも、フリーランス保護法の対象になる場合があるため、別途の確認が必要です。

Q. 違反するとすぐに罰金が科されますか?

A. 直ちに罰金が科されるわけではありません。まずは指導・助言、勧告といった段階を経て、勧告に従わない場合に事業者名等の公表、さらに命令へと進みます。命令に違反した場合に罰金の対象となる仕組みです。ただし、勧告や公表の段階でも取引先からの信用に影響するため、早期の是正が重要です。

Q. 大阪の企業の場合、どこに相談すればよいですか?

A. 公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口のほか、契約書の個別の見直しについては顧問弁護士への相談が実務的です。大阪の弁護士法人ブライト「みんなの法務部」では、顧問先130社以上に対して契約書レビューを含む予防法務サービスを提供しています。

フリーランス保護法の対応、大阪の弁護士にご相談ください

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