株式譲渡M&Aの手続き完全ガイド【売り手・経営者向け】定款確認から名義書換まで大阪の弁護士が解説

株式譲渡M&Aの手続き完全ガイド【売り手・経営者向け】定款確認から名義書換まで大阪の弁護士が解説

和氣 良浩

監修:和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士|大阪弁護士会

大阪で20年以上、中小企業の企業法務・顧問弁護士サービスを提供。顧問先130社以上に透明性の高いリーガルサポートを実践している。

株式譲渡はM&Aの中で最もシンプルかつ多用されるスキームです。しかし「手続きを間違えた」「定款の株式譲渡制限を見落とした」「名義書換を怠ったまま経営権移転した」といったトラブルが中小企業のM&Aでは頻発しています。この記事では、大阪の企業法務弁護士が株式譲渡の手続き全体を解説します。

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株式譲渡とは何か:会社法上の定義と2つの類型

株式譲渡とは、株主が保有する株式を第三者に譲渡する行為です(会社法127条)。M&Aの文脈では、売り手の経営者(株主)が保有株式の全部または過半数を買い手に譲渡することで、実質的な経営権の移転を実現します。

株式譲渡には2つの方向があります:

  • 第三者譲渡:会社外部の者への譲渡。定款に株式譲渡制限がある非公開会社では取締役会または株主総会の承認が必要(会社法136条・139条)
  • 相続・合併による移転:当事者の意思によらない移転。定款の譲渡制限の適用外

中小企業の株式譲渡で最初に確認すること:定款の株式譲渡制限

日本の中小企業の99%以上は非公開会社(株式に譲渡制限がある会社)です。非公開会社では定款に「株式を譲渡するには取締役会(または株主総会)の承認を要する」と規定されており(会社法107条1項1号)、この承認なく株式を譲渡しても会社に対抗できません(会社法134条)。

M&Aを進める前に必ず確認すべき事項:

  1. 定款に株式譲渡制限条項があるか
  2. 承認機関は取締役会か株主総会か
  3. 「会社が承認しない場合の買取請求制度」(会社法140条)の手続き

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株式譲渡の具体的な手続きフロー(8ステップ)

ステップ 内容 法的根拠
1. 譲渡承認申請 売り手が会社に対して株式譲渡の承認を申請 会社法136条
2. 取締役会または株主総会で承認 定款所定の機関で承認決議。2週間以内に通知なければ承認擬制 会社法139条・145条
3. NDA締結 買い手候補と秘密保持契約を締結 民法(契約自由)
4. 法務DD実施 買い手が対象会社の法的リスクを調査
5. 株式譲渡契約書の締結 価格・表明保証・補償条項等を記載した最終契約書 会社法128条
6. クロージング(代金支払) 株式代金の支払いと株式の引き渡しを同時実施
7. 株主名簿の名義書換 会社に対する名義書換請求。これがないと会社に対抗不可 会社法133条
8. 登記変更(役員交代の場合) 取締役変更登記(経営陣が変わる場合) 会社法911条・915条

特に重要なのはステップ7の名義書換です。株式を取得しても名義書換を会社に請求しなければ、会社に対して株主としての権利を行使できません(会社法130条)。M&Aクロージング後に速やかに手続きすることが必要です。

株式譲渡契約書に必須の記載事項

株式譲渡契約書(Stock Purchase Agreement:SPA)には以下の条項が必要です。

基本条項

  • 譲渡株式の数・価格(一株あたりの価格と総額)
  • クロージング日・条件(前提条件:Conditions Precedent)
  • 代金支払方法

表明保証条項(Representations and Warranties)

売り手が買い手に対して「現時点での会社の状態に関する事実」を保証する条項です。典型的な表明保証事項:

  • 財務諸表の正確性
  • 簿外債務の不存在
  • 訴訟・紛争の不存在(またはその開示)
  • 許認可の有効性
  • 重要契約の有効性(チェンジオブコントロール条項の不存在)
  • 労務問題(残業代未払い・ハラスメントクレーム)の不存在

補償条項(Indemnification)

表明保証違反があった場合の補償責任を定めます。補償額の上限(Cap)・下限(Basket)・補償請求期限(通常1〜3年)を明記します。

株式評価の方法:中小企業M&Aで使われる主要3手法

株式譲渡価格の決定には客観的な企業価値評価(バリュエーション)が必要です。

手法 概要 適している場面
純資産価額法 会社の純資産(資産−負債)に基づく評価 資産保有型・清算価値の確認
収益還元法(DCF) 将来のキャッシュフローを割引率で現在価値に換算 収益性の高い成長企業
類似会社比較法(マルチプル法) 同業種・同規模の上場会社のEV/EBITDAなどで比較 同業他社との比較が可能な場合

中小企業のM&Aでは純資産価額法をベースに収益還元法で補正する「折衷法」がよく用いられます。弁護士法人ブライトでは、株式評価ガイドを無料配布しています。

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中小企業M&A 株式評価ガイド(無料ダウンロード)

株式譲渡で経営者が陥りやすいミス5選

1. 定款の株式譲渡制限を確認しないまま進める

会社の承認なく譲渡した場合、会社に対して株主権を対抗できません。必ず定款確認から始めてください。

2. 名義書換の失念

クロージング後に名義書換を怠ると、株主総会での議決権行使や配当受領ができません。

3. 表明保証の範囲が狭い

「知っている限りで」という限定付き表明保証にすると、後からリスクが発覚しても補償を受けられない可能性があります。

4. チェンジオブコントロール条項の確認漏れ

主要取引先との契約に「支配権変更があった場合に契約を解除できる」条項があると、M&A後に取引を失うリスクがあります。DD段階で全主要契約を確認することが必要です。

5. 税理士・弁護士なしで進める

株式譲渡益の課税(申告分離課税20.315%)と組織再編税制の選択は早期から税理士・弁護士が関与することで最適化できます。

よくある質問(FAQ)

株式譲渡制限がある会社でM&Aを進めるにはどうすればよいですか?

定款で定められた承認機関(取締役会または株主総会)に対して株式譲渡承認申請を行います。会社が不承認とした場合は、会社自身または指定買取人が株式を買い取る手続きに移行します(会社法140条)。M&Aの相手先が確定する前に、この手続きの流れを弁護士に確認しておくことをお勧めします。

株式譲渡と事業譲渡はどちらが多いですか?

中小企業M&Aでは株式譲渡が約7割を占めます。手続きがシンプルで、許認可・契約・従業員関係がそのまま引き継がれるためです。ただし簿外債務も引き継ぐリスクがあるため、法務DDは必須です。

株式譲渡の名義書換はいつ行えばよいですか?

クロージング(代金支払い・株式引き渡し)と同時またはその直後に行うことを推奨します。名義書換前は会社に対して株主権を行使できないため、経営権の実質的な移転が名義書換で完結します。

大阪で株式譲渡・M&Aの弁護士費用の目安は?

法務DDが50〜200万円、契約書作成・交渉が30〜100万円が相場です。顧問弁護士契約がある場合は顧問料の範囲内でカバーできるケースもあります。弁護士法人ブライトでは、まず無料相談でご状況をお聞きしてから費用の目安をご案内します。

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本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
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