出入禁止・取引停止の通知書の書き方|そのまま使える文例2種と送り方【企業向け】

出入禁止・取引停止の通知書の書き方|そのまま使える文例2種と送り方【企業向け】

和氣 良浩

監修:和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士|大阪弁護士会

大阪で20年以上、中小企業の企業法務・顧問弁護士サービスを提供。顧問先141社に透明性の高いリーガルサポートを実践している。

「もう来ないでほしい」と思っていても、実際に伝える段になると手が止まります。本当に断ってよいのか、どう書けば角が立たないのか、後で訴えられないか——この3つで止まるケースがほとんどです。

結論から言えば、正当な理由があれば断れます。そして通知は、感情を書かず、事実と結論だけを短く書くのが最も安全です。長く書くほど反論の材料が増えます。

この記事では、大阪の顧問弁護士として企業の不当要求対応に関わってきた立場から、店舗向けの出入禁止通知書とBtoBの取引停止通知書の文例をそのまま使える形で示します。

この記事でわかること

  • 出入禁止・取引停止が法的に認められる根拠と、その限界
  • そのまま使える通知書の文例2種(店舗向け/BtoB取引停止向け)
  • 渡し方・送り方の選択と、記録として残すべきこと
  • 書いてはいけない一文と、やりすぎになる場面

通知書の内容と出し方を、大阪の弁護士が一緒に決めます

弁護士法人ブライトは、法務部がない会社の「外部法務部」。顧問先141社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが、大阪から現場の運用づくりまで伴走します。

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出入禁止・取引停止は認められるのか

認められます。根拠は2つあります。

⚖️ 断ることができる法的根拠

  • 施設管理権——店舗・事務所などの施設を管理する者は、その施設内の秩序を維持するために、特定の者の立入りを制限できると解されています。退去を求めたのに応じない場合は不退去罪(刑法130条後段・3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金)が問題になり得ます
  • 契約自由の原則——誰と契約するかは当事者の自由が原則です。継続的な取引関係にある場合は一定の制約を受けますが、不当要求が繰り返されている状況は取引を終了する正当な理由になり得ます

2026年10月1日から、事業主には顧客等からの著しい迷惑行為によって労働者の就業環境が害されないよう、雇用管理上必要な措置を講じる義務が課されます(改正労働施策総合推進法33条1項)。企業規模による猶予はありません。指針は、方針の明確化と周知、相談体制の整備、事後の迅速適切な対応に加えて、「特に悪質な場合の対処方針をあらかじめ定めて周知し、実際に対処できる体制を整えること」を求めています。この記事で扱う運用は、その体制整備の具体化にあたります。詳しくはカスハラ対策義務化に罰則はあるのかをご覧ください。

ただし、無制限ではありません

次の3つは実務上の注意点です。ここを外すと、断ったこと自体が争点になります。

  • 理由が正当であること——「気に入らないから」では通りません。これまでの言動の記録が根拠になります
  • 差別的な取扱いにならないこと——障害者差別解消法は不当な差別的取扱いを禁止し、合理的配慮の提供を義務づけています。意思疎通に時間がかかることを「迷惑行為」と扱ってはいけません
  • 継続的取引には配慮が要ること——BtoBで長年の取引がある相手を突然打ち切ると、予告期間の相当性が問題になることがあります

正当なクレームとカスハラの切り分けはカスハラと正当クレームの判断基準、出禁の手順全体はクレーマーを出禁にする手順と法的リスクで解説しています。

「この理由で断って大丈夫か」から確認します

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文例1|店舗・施設への立入りをお断りする通知書

店舗小売・飲食・宿泊・医療機関などを想定した文例です。A4一枚に収めるのが基本です。

立入りをお断りする旨のご通知(文例)

令和 年 月 日

〇〇 〇〇 様

〒〇〇〇-〇〇〇〇
大阪府〇〇市〇〇町〇-〇-〇
株式会社〇〇〇〇
〇〇店 店長 〇〇 〇〇 ㊞

当社施設へのご来店をお断りする件のご通知

拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。

さて、貴殿におかれましては、下記のとおり、当社従業員に対する言動および当社の業務運営に支障を及ぼす行為が繰り返されております。

1 令和〇年〇月〇日〇時頃、当社〇〇店において、当社従業員に対し「〇〇〇〇」と述べられたこと
2 令和〇年〇月〇日〇時頃、同店において、約〇時間にわたり当社従業員を拘束し、当社が対応できない旨を説明した後も同一の要求を繰り返されたこと
3 (以下、必要に応じて記載)

当社といたしましては、従業員の就業環境を確保する責務を負っており、上記のような行為が継続する状況を看過することはできません。

つきましては、本書面到達日以降、当社〇〇店をはじめとする当社施設へのご来店をお断りいたします。また、当社に対するお問い合わせは、書面またはメール(〇〇@〇〇)にてお願いいたします。

なお、本書面到達後もご来店いただいた場合や、上記のような行為が継続する場合には、当社として法的措置を検討いたしますことを申し添えます。

敬具

この文例の設計意図

  • 「記」で事実を箇条書きにする——日時と発言をそのまま挙げる。ここが記録の有無で決まります
  • 理由を「従業員の就業環境の確保」に置く——感情ではなく会社の責務として説明します
  • 問い合わせ窓口は残す——完全に遮断せず書面・メールに限定するほうが、対応が一方的だという批判を避けられます
  • 法的措置は「検討する」まで——具体的な罪名を書き並べると威圧的と受け取られかねません

記録から通知書の文面まで、一式でお作りします

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文例2|取引を終了する旨の通知書(BtoB)

取引先の担当者による不当要求、下請けいじめ的な言動、過剰な要求が続く場合を想定した文例です。継続的な取引ほど、予告期間を置くことが重要になります。

取引終了のご通知(文例)

令和 年 月 日

株式会社〇〇〇〇 御中

大阪府〇〇市〇〇町〇-〇-〇
株式会社〇〇〇〇
代表取締役 〇〇 〇〇 ㊞

お取引終了のご通知

拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。平素より格別のお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます。

さて、当社と貴社との間の〇〇に関するお取引につきまして、下記のとおりお取引を終了させていただきたく、ご通知申し上げます。

1 終了する取引 〇〇に関する取引全般
2 終了予定日  令和〇年〇月〇日(本書面到達後〇か月)
3 終了までの取扱い 既存の発注分については、当初の条件どおり履行いたします

当社といたしましては、令和〇年〇月〇日および同年〇月〇日に貴社ご担当者より当社従業員に対してなされた言動をはじめ、当社が対応いたしかねる要求が繰り返されている状況を踏まえ、今後のお取引の継続は困難であるとの判断に至りました。

終了までの引継ぎにつきましては、誠意をもって対応いたします。ご不明な点は、書面またはメール(〇〇@〇〇)にてご連絡くださいますようお願い申し上げます。

敬具

BtoBで特に注意すること

論点 実務上の考え方
予告期間 取引の期間・依存度・相手の準備に要する時間を踏まえて設定します。長年の継続的取引ほど長めに。契約書に解約条項があればまずそれに従います
既発注分の扱い すでに受けた発注は当初条件どおり履行すると明記すると、争いになりにくくなります
自社が発注側の場合 相手が中小受託事業者に当たるときは、取適法(旧・下請法)の報復措置の禁止に触れないよう注意が必要です。下請法違反11類型を参照してください
理由の書き方 詳細に書きすぎると反論の的になります。事実を2〜3件挙げ、結論に結びつける程度が適切です

渡し方・送り方と、書いてはいけない一文

作った通知書をどう届けるかで、証拠としての価値が変わります。

方法 向いている場面 注意
内容証明郵便(配達証明付き) 後に法的手続きを見据えている場合 いつ・誰に・どんな内容が届いたかを公的に残せます。迷ったらこれ
特定記録・簡易書留 到達の事実だけ残せば足りる場合 内容までは証明されません
店頭で手渡し 相手の住所が分からない場合 受領を拒まれることがあります。複数名で渡し、その場を記録してください
弁護士名義で送付 抑止効果を強めたい場合 会社が本気であることが伝わり、以後の連絡が弁護士宛に切り替わります

書いてはいけない一文

  • 相手の人格に触れる表現——「常識がない」等は、名誉毀損を主張される余地を作ります
  • 断定的な犯罪の指摘——「あなたの行為は脅迫罪です」と断定せず、「法的措置を検討します」にとどめます
  • 過去のすべてを並べ立てる——争点が増えるだけです。証拠がある事実だけを2〜3件
  • 感情的な前置き——「大変遺憾であり」等は不要。事実と結論だけで足ります

通知を出した後も行為が続く場合の進め方はカスハラを訴える方法、警察へ相談する判断は警察に通報すべきタイミングで解説しています。根拠となる記録の残し方は録音は証拠になるかもあわせてご覧ください。

弁護士名義での通知が有効かどうか、事案を見て判断します

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よくある質問

客を出入禁止にするのは法的に問題ありませんか?

正当な理由があれば問題ありません。根拠は施設管理権で、店舗や事務所を管理する者は施設内の秩序を維持するために特定の者の立入りを制限できると解されています。退去を求めたのに応じない場合は不退去罪(刑法130条後段・3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金)が問題になり得ます。ただし無制限ではありません。理由が正当であること、つまりこれまでの言動の記録が根拠として存在することが前提です。また障害者差別解消法は不当な差別的取扱いを禁じ合理的配慮の提供を義務づけていますので、意思疎通に時間がかかることを迷惑行為と扱ってはいけません。記録に基づいて判断し、通知は事実と結論だけを簡潔に書いてください。

通知書は内容証明で送るべきですか?普通郵便ではだめですか?

後に法的手続きを見据えているなら内容証明郵便(配達証明付き)をおすすめします。いつ・誰に・どのような内容の文書が届いたかを公的に証明できるためです。普通郵便では「受け取っていない」「そんな内容ではなかった」と言われたときに反証できません。到達の事実だけ残せばよい場面なら特定記録や簡易書留でも足ります。相手の住所が分からず店頭で手渡す場合は、受領を拒まれることがあるため複数名で渡し、その場の状況を記録してください。抑止効果を強めたい場合は弁護士名義での送付という選択もあり、以後の連絡先を弁護士に切り替えられる利点もあります。

長年取引のある会社との取引を、担当者の言動を理由に打ち切れますか?

打ち切ること自体は可能ですが、店舗の出入禁止より慎重な設計が要ります。契約自由の原則がある一方、継続的な取引関係では、突然の打ち切りについて予告期間の相当性が問題になることがあるためです。まず契約書に解約条項があるかを確認し、あればそれに従います。ない場合は、取引の期間・相手の依存度・代替先を探すのに要する時間を踏まえて予告期間を設定してください。既に受けた発注は当初条件どおり履行すると明記しておくと争いになりにくくなります。なお自社が発注側で相手が中小受託事業者に当たる場合は、取適法(旧・下請法)の報復措置の禁止に触れないよう注意が必要です。

通知書に「あなたの行為は脅迫罪です」と書いてもよいですか?

書かないことをおすすめします。犯罪の成否は最終的に捜査機関と裁判所が判断するもので、企業が断定すると、それ自体が名誉毀損だと主張される余地を作ります。実務では「当社として法的措置を検討いたします」という表現にとどめるのが一般的で、抑止効果としてはこれで十分に伝わります。同様に、相手の人格に触れる表現(「常識がない」等)も避けてください。通知書は短いほど安全です。証拠がある事実を2〜3件だけ挙げ、結論と今後の窓口を示す。この構成であれば、後から争点にされる余地を最小にできます。

大阪で出入禁止・取引停止の通知について相談できますか?

はい。弁護士法人ブライトは大阪を拠点に、通知書の文面作成から送付方法の選択、その後に行為が継続した場合の対応までご支援しています。オンラインでの打ち合わせにも対応しています。ご相談の際は、これまでの対応記録(日時・発言内容・対応者)、相手の氏名や連絡先など特定できる情報、店舗であれば防犯カメラ映像の有無をご用意いただけると、初回から具体的な見通しをお伝えできます。通知は一度出すと後戻りしにくいため、出す前に一度外部の目を入れておくことをおすすめします。

2026年10月の義務化に向けて、断る手順を先に決めておきませんか

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※本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律アドバイスではありません。具体的な問題については弁護士にご相談ください。記載内容は2026年9月時点の法令に基づきます。

本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
なお、本記事の内容に関する個別の質問や意見などにつきましては、ご対応できかねます。ただし、当該記事の内容に関連して、当事務所へのご相談又はご依頼を具体的に検討されている場合には、この限りではありません。
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