既往症があるからと後遺障害を諦める前に。審査請求で等級認定を覆し、適正な賠償を勝ち取った解決事例をご紹介します。
労災事故で腰やひざなどを負傷した際、「以前から持病があったから」という理由で後遺障害が認定されなかったり、想定より低い等級にとどまったりするケースは少なくありません。しかし、既往症があるからといって、後遺障害の認定や損害賠償請求が諦めなければならないわけではないのです。今回は、転落事故で腰を負傷した被災者の方が、当初取得した診断書の記載内容によって不利な状況に立たされながらも、弁護士の関与により診断書を見直し、審査請求を経て後遺障害8級の認定を勝ち取り、会社との示談交渉で600万円台の解決に至った事案をもとに、コンポジット(合成)事例としてご紹介します。
既往症があるケースでは、最初に取得した診断書の一文が命取りになることがあります。当事務所では、診断書の記載内容を医学的・法的な観点から精査し、必要に応じて、診断書の記載が誤解を招く表現になっていたり実態を反映していないおそれがあるように見えたりする場合には、きちんとした記載に改めてもらったうえで審査請求に臨みます。単に「不服がある」と申し立てるのではなく、認定を覆すための医証を揃えてから動く点が、解決の分かれ目になります。
結論
本件では、既往症の記載がある診断書のまま申請を続けていれば、後遺障害が認定されなかった可能性が高い状況でした。しかし、弁護士が診断書の内容を精査し、総合病院の専門医に後遺障害診断書を作成し直してもらったうえで審査請求を行った結果、後遺障害8級の認定を得ることができました。その後の会社との示談交渉でも、相手方が既往症を理由に大幅な素因減額を主張しましたが、訴訟移行時のリスクとメリットを整理したうえで交渉を進め、最終的に600万円台での示談成立に至りました。既往症があるからと諦める前に、まずは診断書の内容と申請プロセスを専門家に確認することが重要です。
事案の概要(属性)
- 業種:製造業(金属加工工場)
- 被災者:60代男性・現場作業員
- 事故態様:高所作業中に足場から転落し腰部を強打
- 負傷内容:腰椎圧迫骨折(既往の腰痛が悪化したと診断書に記載)
- ご依頼内容:後遺障害等級認定への審査請求、および会社に対する損害賠償請求
ご相談時の状況|既往症の記載がある診断書が認定の壁に
依頼者の方は、高所作業中に足場から転落し、腰部を負傷しました。治療の甲斐なく症状が残ったため、後遺障害の申請に向けて大学病院で診断書を取得したところ、その診断書には「既往歴:腰痛」との記載がありました。さらに、その診断の根拠となった別のクリニックの診療情報提供書にも「以前から腰痛があった」という記載が残されていたのです。
この記載がある限り、今回の事故と現在の症状との因果関係が薄いとみなされ、後遺障害が認定されない、あるいは低い等級にとどまるリスクが非常に高い状況でした。依頼者は労災申請を進める中でこの不安を強く感じ、当事務所へご相談くださいました。
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争点|既往症と後遺障害の因果関係、そして診断書の書き方
本件で最大の争点となったのは、既往症である腰痛が今回の症状にどこまで影響しているのか、という点でした。既往歴に腰痛があると記載されたままでは、後遺障害が認定されないおそれがあるだけでなく、損害額としても大きく減額されてしまう可能性があります。この点は、ご依頼者にあらかじめ丁寧にご説明しておくべき事項でした。
そこで、当初の診断書の記載内容そのものを精査し、依頼者にとって少しでも有利な記載や解決方法がないかを検討しました。その結果、総合病院の専門医に、改めて後遺障害診断書を作成し直していただく対応を取ることとしました。
解決までの流れ|審査請求から会社との示談交渉まで
新たな後遺障害診断書と、既往症と今回の負傷との因果関係を整理した意見書を添えて、当初の等級認定に対する審査請求を行いました。その結果、後遺障害8級の認定を得ることができました。
等級認定後は、会社に対する損害賠償請求(安全配慮義務違反)に移行しました。当方は1000万円台の損害賠償を請求しましたが、相手方からは既往症を理由とした大幅な素因減額を前提とする解決金の提示がなされました。
8級の認定は得ていたものの、訴訟に移行すれば診断書作成の経緯や医療記録の内容を争われる可能性があり、年齢を踏まえた逸失利益がどこまで認められるかという論点も残っていました。そこで、判決になった場合に想定される合理的な着地点を複数のパターンで整理したうえで、交渉方針を固めました。
最終的に、示談条項に「将来の労災給付等に影響を及ぼさない」旨の一文を入れることになりましたが、相手方から求償リスクを懸念する声が上がりました。これに対しては、求償のリスクは抽象的には常に存在するものであり、この条項によって新たに求償の可能性が生じるわけではないこと、むしろ今回の解決金が労災給付等による損害の補填と同質のものではないことを明確にする趣旨であることを説明し、理解を得ています。
交渉の結果、600万円台での示談が成立しました。
当事務所の労災被害者向け対応方針
- ご相談は何度でも無料
- 着手金0円・完全成功報酬制(原則としてご依頼者様に持ち出しの負担が生じない設計)
- 後遺障害等級認定への審査請求から会社への損害賠償請求まで一貫してサポート
- 既往症・素因減額といった専門的な争点にも、医証の見直しから対応
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解決までの結果
| Before(ご相談前) | After(ご依頼後) | |
|---|---|---|
| 後遺障害等級 | 既往症の記載により非該当・低等級のおそれ | 審査請求により8級認定 |
| 会社からの提示額 | (弁護士介入後に提示) | 600万円台で示談成立 |
| 診断書の内容 | 既往歴の記載が事故との因果関係を否定しかねない内容 | 専門医による後遺障害診断書を再取得 |
| ご依頼者の心境 | 認定されないのではという強い不安 | 「意向を汲んでもらい感謝している」との安心感 |
既往症があると賠償金は減る?「素因減額」の考え方
労災事故の被害者にもともと基礎疾患や既往症があった場合、それが症状の悪化や後遺障害の発生に影響したとして、賠償額から一定割合を差し引く「素因減額」という考え方が使われることがあります。本件でも、相手方は既往症の腰痛を理由に大幅な減額を想定していたとみられます。
しかし、素因減額は自動的に適用されるものではなく、既往症と事故による症状との因果関係の程度、事故前の症状の有無や治療歴など、個別の事情を丁寧に精査したうえで判断されるべきものです。診断書の記載一つで大幅な減額を受け入れてしまうと、本来認められるべき賠償額を大きく損なう可能性があります。だからこそ、診断書の内容を医学的・法的に検証し、必要であれば記載内容を見直してもらうことが重要になるのです。
担当弁護士のコメント
💬 担当弁護士のコメント
既往症の記載があるからといって、後遺障害が認められないと決めつける必要はありません。診断書の記載が誤解を招く表現になっていたり実態を反映していないおそれがあるように見えたりする場合には、きちんとした記載に改めてもらうことが可能ですし、審査請求という正式な手続きも用意されています。諦める前に、一度専門家にご相談いただきたいと思います。(笹野 皓平 弁護士)
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後遺障害等級認定に不服がある場合の「審査請求」とは
労働基準監督署による後遺障害等級の認定結果に納得できない場合、労働者災害補償保険審査官に対して「審査請求」を行うことができます。この審査請求は、決定を知った日の翌日から3か月以内に行う必要があり、期限を過ぎると原則として不服申立てができなくなるため注意が必要です。
審査請求を行う際には、単に不服を述べるだけでなく、当初の認定の根拠となった診断書や検査結果を精査し、必要に応じて専門医による新たな後遺障害診断書や意見書を提出することが、認定を覆すための重要なポイントになります。とくに既往症がある場合は、事故前後の症状の変化や治療経過を医学的に整理し、事故による影響を裏付ける資料を揃えることが求められます。
また、審査請求で等級が認められた後は、その等級を前提として会社に対する損害賠償請求(安全配慮義務違反に基づく請求)を進めることになります。労災保険からの給付だけではカバーされない慰謝料や逸失利益の一部などについては、会社との示談交渉や訴訟によって請求していくことになります。
よくある質問(FAQ)
後遺障害等級の認定結果に納得できません。どうすればよいですか?
労働者災害補償保険審査官に対する審査請求という制度があります。決定を知った日の翌日から3か月以内に手続きを行う必要がありますので、早めに専門家へご相談ください。
既往症(持病)があると後遺障害は認定されにくいのでしょうか?
既往症の有無だけで一律に認定が否定されるわけではありません。事故前後の症状の変化や治療経過を医学的に整理し、事故による影響を明確に示す資料を揃えることで、認定される可能性は十分にあります。
診断書の記載内容が不利な場合、書き直してもらうことはできますか?
診断内容そのものを変えることはできませんが、診断書の記載が誤解を招く表現になっていたり実態を反映していないおそれがあるように見えたりする場合には、より詳しい経過を把握している専門医に改めて後遺障害診断書を作成してもらうことで、きちんとした記載に改めてもらえる可能性があります。診断書の記載を精査したうえで対応を検討します。
審査請求と会社への損害賠償請求は別々に進める必要がありますか?
はい、審査請求は労災保険の給付に関する手続きであり、会社に対する損害賠償請求は別の手続きです。多くの場合、まず等級認定を確定させたうえで、その等級を踏まえて会社との交渉や訴訟を進めます。
既往症を理由に会社から大幅な減額(素因減額)を主張されています。応じるしかないのでしょうか?
素因減額は個別の事情を踏まえて判断されるべきもので、相手方の主張する割合をそのまま受け入れる必要はありません。因果関係の程度を精査したうえで、適正な減額幅を交渉していくことが可能です。
弁護士に依頼すると費用はどのくらいかかりますか?
当事務所では着手金0円・完全成功報酬制を採用しており、ご相談も無料です。まずは費用のご負担を気にせずご相談いただけます。
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まとめ
既往症の記載がある診断書のままでは、後遺障害が認定されない、あるいは著しく低い等級にとどまるリスクがあります。しかし、診断書の内容を精査し、必要であれば専門医による後遺障害診断書を取得したうえで審査請求を行うことで、適正な等級認定を得られる可能性があります。さらに、その後の会社との交渉でも、既往症を理由にした過大な素因減額に安易に応じる必要はありません。既往症があることで後遺障害や賠償請求を諦めかけている方は、まず一度、専門家にご相談ください。
まずは弁護士法人ブライトへご相談ください
労災事故・会社への損害賠償請求を扱う弁護士が、あなたのケースを丁寧にお聞きします。
- 初回相談は無料
- 完全成功報酬制・着手金0円から対応可能
- 会社への損害賠償請求も対応






