「もう歩けないかもしれない」——その先にある会社の責任
建設現場での高所転落事故で脊髄を損傷し、下肢に麻痺が残ったとき、多くの方が本当に恐れているのは「歩けなくなること」そのものだけではありません。その先にある「この先の生活をどう支えるのか」「会社は責任を取ってくれるのか」「家族に迷惑をかけてしまうのではないか」という、生活そのものが崩れてしまう不安です。労災保険から給付は受けられても、将来にわたる介護費用や、二度と元の仕事に戻れないことによる収入の損失までは、労災保険だけではカバーしきれません。
多くの記事は「労災保険から障害補償給付が受けられます」と書いて終わります。しかし、高所からの転落で脊髄を損傷するような重篤な事故では、労災保険の給付だけでは将来必要になる介護費用・改造費用・逸失利益をまかないきれないケースがほとんどです。労災保険給付はあくまで最低限の補償であり、会社に安全配慮義務違反があったかどうかを立証し、会社に対して別途、損害賠償を請求できるかどうかが、その先の生活を左右する本丸の論点になります。
結論
高所からの転落で脊髄損傷・下肢麻痺の後遺障害が残った場合、労災保険の障害補償給付とは別に、会社の安全配慮義務違反を根拠とした損害賠償請求ができる可能性があります。ポイントは、①足場・作業床・墜落制止用器具(安全帯)の設置状況に会社側の不備がなかったか、②将来の介護費用・住宅改造費まで含めた損害額を適正に算定できるか、の2点です。過失相殺(労働者側の落ち度)を理由に会社側が責任を否定・軽減しようとしてくることが多いため、専門知識を持つ弁護士による交渉・立証が重要になります。
事案の概要(属性)
- 業種:建設業(下請企業に所属する作業員)
- 被災者:30代男性
- 事故態様:建設現場の高所作業床(地上数メートルの高さ)で作業中に足を滑らせて転落
- 負傷内容:脊髄損傷による下肢麻痺(対麻痺)
- ご依頼内容:労災保険の障害補償給付とは別に、元請・下請双方の安全配慮義務違反を理由とした損害賠償請求
相談時の状況「もう元の生活には戻れない」
ご依頼者は、労災保険から障害補償給付(年金)を受給できることは分かっていたものの、「この給付だけで、車椅子生活になった今後の暮らしを支えられるのか」という大きな不安を抱えていました。自宅の改修、将来の介護、仕事に戻れないことによる収入減——考えなければならないことが多すぎて、どこから手をつければよいのか分からない状態でした。
さらに、事故現場に設置されていた足場や墜落制止用器具(安全帯)用のフック設置状況について、会社側から「墜落制止用器具を適切に使用していなかったのではないか」という趣旨の説明があり、「自分にも落ち度があるのだから、会社に強く言えないのではないか」と、請求すること自体をためらう気持ちもありました。
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争点となったポイント「墜落制止用器具を取り付ける設備がなかった」
本件で最大の争点となったのは、次の3点です。
- 会社側(元請・下請)の安全配慮義務違反の有無:作業床の端に手すり等の墜落防止設備が設置されていたか、墜落制止用器具を使用する前提として墜落制止用器具を取り付けるための設備(親綱等)が用意されていたか。
- 過失相殺の割合:会社側は「墜落制止用器具の使用方法に問題があった」として、ご依頼者側の過失を大きく主張してきました。
- 将来介護費・逸失利益の算定:下肢麻痺により将来にわたり随時の介護が必要となる見込みであり、その費用をどう算定するかが損害額全体を大きく左右しました。
ブライトの方針・対応
ブライトはまず、事故現場の写真・作業手順書・元請と下請間の安全管理体制に関する資料を取り寄せ、墜落制止用器具を取り付ける親綱や、作業床の端における墜落防止設備の設置状況を精査しました。墜落制止用器具を「使っていなかった」のではなく、そもそも墜落制止用器具を正しく使うための設備が現場に整っていなかったことを、写真・現場図面をもとに主張しました。
過失相殺についても、会社側の当初主張(重い過失を負わせる主張)に対し、墜落防止設備の不備という会社側の一次的な義務違反を前面に立て、過失割合を大きく圧縮する方向で交渉しました。
将来介護費についても、下肢麻痺により日常的に随時の介護が必要である実情を具体的に説明し、将来にわたる介護費用・住宅改造費・逸失利益を積み上げて損害額を算定しました。
【ブライトのポリシー】
会社側から「墜落制止用器具の使い方が悪かった」と過失を大きく主張されると、被災者の方はどうしても「自分にも責任があるのだから」と請求をためらいがちです。しかし、墜落制止用器具を適切に使うための設備自体が現場に用意されていなければ、責められるべきは会社の安全管理体制です。
「ブライトは、会社が持ち出す『本人の不注意』という言葉を鵜呑みにしない。設備・体制の不備まで遡って会社の責任を問う。」
これが、ブライトが高所転落労災で一貫して大切にしている考え方です。
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解決までの結果
交渉の結果、会社側(元請・下請)は安全配慮義務違反の一部を認め、過失相殺についても当初の主張から大幅に圧縮されました。将来介護費・逸失利益・慰謝料を積み上げた損害賠償金として、示談交渉により1億円台の解決金を獲得しました。労災保険からの障害補償年金とは別に受け取れる金額であり、示談成立までの期間は相談開始から約1年でした。
| Before(ご相談時点) | After(解決後) |
|---|---|
| 「もう元の生活には戻れない」という将来への強い不安。会社の「本人の不注意」という主張に反論できずにいた | 会社の安全管理体制の不備が認められ、将来の介護・生活を支える賠償金(1億円台)を獲得 |
| 労災保険の給付だけで今後の生活が成り立つのか分からず、請求をためらっていた | 労災保険給付とは別に、将来介護費・住宅改修費まで含めた損害賠償を受け取れることが分かり、生活の見通しが立った |
※本事例は複数の解決事例を組み合わせた典型例です。同様の結果を保証するものではありません。
担当弁護士のコメント
💬 担当弁護士のコメント
「高所転落による脊髄損傷は、後遺障害が生涯にわたって残るケースが多く、将来介護費まで見据えた損害賠償の算定が欠かせません。会社側から過失を主張されても、安全管理体制の不備まで遡って立証できれば、過失割合は大きく変わります」(笹野 皓平 弁護士)
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高所転落・脊髄損傷の労災で知っておきたい法的知識
会社の安全配慮義務(労働契約法5条)
会社(使用者)は、労働者が安全に働けるよう必要な配慮をする義務(安全配慮義務)を負っています(労働契約法5条)。高所作業においては、労働安全衛生法・労働安全衛生規則により、作業床の設置、手すり等の墜落防止設備、墜落制止用器具(フルハーネス型)の使用とその取付設備の整備が義務付けられています。これらの義務を怠った状態で転落事故が起きた場合、会社の安全配慮義務違反が認められる可能性が高くなります。
労災保険給付と会社への損害賠償請求は別制度
労災保険からの障害補償給付・障害年金は、あくまで最低限の補償です。会社に安全配慮義務違反がある場合には、労災保険ではカバーされない慰謝料・逸失利益の全額・将来介護費などを、会社に対して別途請求することができます(労働契約法5条・民法415条または709条に基づく損害賠償請求)。
過失相殺と将来介護費の算定
会社側は「本人の不注意」を理由に過失相殺(賠償額の減額)を主張してくることが多くありますが、安全設備の不備など会社側の義務違反が認められれば、過失割合は大きく圧縮されます。また、下肢麻痺など重度後遺障害が残った場合は、将来にわたる介護費用・住宅改修費用まで含めて損害額を算定することが、適正な賠償を受けるための重要なポイントです。なお、労災保険から支給される障害補償給付(年金)は損害賠償額から損益相殺されますが、国から支給される特別支給金は、損害のてん補を目的とするものではなく、被災労働者の社会復帰の促進等を目的とする給付であるため、控除の対象外です。
会社への損害賠償請求権の消滅時効
会社への損害賠償請求権には消滅時効があります。生命・身体の侵害による損害賠償請求権は、不法行為に基づく場合は損害及び加害者を知った時から5年、安全配慮義務違反(債務不履行)に基づく場合は権利を行使できることを知った時から5年(行使できる時から20年)です。治療・リハビリが長期化している場合も、早めに弁護士へご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 労災保険から障害年金をもらっていますが、それとは別に会社に賠償請求できますか?
はい、できます。労災保険の給付と、会社の安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求は別制度です。労災保険給付では慰謝料や将来介護費の全額はカバーされないため、会社の責任が認められれば、その不足分を会社に請求することができます(なお、労災保険からすでに受け取った分は損益相殺として調整されます)。
Q2. 「墜落制止用器具を使っていなかった自分にも責任がある」と会社に言われました。それでも請求できますか?
墜落制止用器具の使用状況だけで請求を諦める必要はありません。墜落制止用器具を正しく使うための設備(親綱・取付設備)自体が現場に整っていたかどうかが重要な論点になります。設備の不備があれば、会社側の安全配慮義務違反が認められる可能性が高くなりますので、まずは現場の状況を弁護士にご相談ください。
Q3. 将来の介護費用はどうやって計算するのですか?
将来介護費は、後遺障害の程度・必要な介護の内容(常時介護か随時介護か)・平均余命等をもとに算定します。下肢麻痺など重度の後遺障害では、将来にわたる高額な介護費用が損害賠償額の中で大きな割合を占めることが多く、専門的な算定が必要です。
Q4. 元請と下請、どちらに責任を追及すればよいですか?
現場の指揮監督関係や、どちらが安全設備を管理していたかによって、元請・下請の双方、またはいずれか一方に責任を追及できる場合があります。実際の指揮系統や設備の管理状況を精査した上で、請求先を判断する必要があります。
Q5. 弁護士に依頼する費用が心配です。
ブライトは労災の会社への損害賠償請求について、初回相談無料・完全成功報酬制で対応しています。着手金をかけずにご依頼いただける場合がありますので、まずはお気軽にご相談ください。
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まとめ
- 高所転落による脊髄損傷・下肢麻痺は、労災保険給付だけでは将来の生活を支えきれないケースが多い
- 墜落制止用器具・墜落防止設備の設置状況次第で、会社の安全配慮義務違反が認められる可能性がある
- 「本人の不注意」という会社の主張を鵜呑みにせず、設備・体制面の不備まで確認することが重要
- 将来介護費・逸失利益まで含めた適正な損害賠償額の算定には専門知識が必要
高所からの転落事故で重い後遺障害が残った方は、労災保険の手続きと並行して、会社への損害賠償請求も検討してください。弁護士法人ブライトの無料相談をご利用いただけます。
まずは弁護士法人ブライトへご相談ください
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