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死亡労災の逸失利益と遺族補償年金の損益相殺|会社への損害賠償請求で知っておくべきポイント【解決事例】

笹野皓平 弁護士

この記事の執筆者

笹野 皓平(ささの こうへい)

弁護士法人ブライト|パートナー弁護士

大阪弁護士会/京都大学法学部卒・立命館法科大学院修了

和氣良浩 弁護士

この記事の監修者

和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士

大阪弁護士会

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死亡労災における逸失利益の算定と、遺族補償年金による損益相殺の扱いについて、実際の解決事例をもとに解説します。

ご家族を労災事故で亡くされた遺族の方から、「労災保険から遺族補償年金をもらっているが、会社に対する損害賠償請求はできるのか」「年金分は賠償額から全部差し引かれてしまうのか」というご相談を数多くお受けしています。実は、遺族補償年金が損害賠償額から控除される範囲には明確なルールがあり、正しく理解していないと本来受け取れるはずの賠償額を大きく損ねてしまう可能性があります。本記事では、複数の解決事例を参考に再構成した典型的なケースをもとに、逸失利益の算定方法と遺族補償年金の損益相殺の考え方、そして会社との交渉のポイントを弁護士が解説します。

多くの遺族の方が誤解しやすいのが、「遺族補償年金をもらっている以上、会社からの賠償金はその分ゼロに近くなるはず」という点です。しかし判例上、損益相殺の対象となるのは『既に支給が確定した部分』に限られ、将来にわたって支給される年金分までを差し引くことは認められていません。この点を正確に主張できるかどうかで、最終的な解決額には数百万円単位の差が生じます。

結論

死亡労災における損害賠償請求では、法的責任を認めさせることが重要であることは当然として、逸失利益の算定根拠と、遺族補償年金の損益相殺の範囲という2つの専門的な論点が交渉の帰趨を左右します。会社側は年金支給額を根拠に大幅な減額を主張してくることが多いため、判例法理に基づいた的確な反論が不可欠です。ご遺族だけで交渉を進めるのではなく、早い段階で労災事案の実績がある弁護士に相談されることをおすすめします。

事案の概要(属性)

  • 業種:金属加工業(製造工場)
  • 被災者:40代男性、工場作業員
  • 事故態様:プレス機械の安全装置が正常に作動せず、作業中に巻き込まれ死亡
  • 負傷内容:死亡(労働災害による即死に近い状態)
  • ご依頼内容:遺族(配偶者)による会社への損害賠償請求(逸失利益・慰謝料等)

死亡労災の逸失利益、どう計算する?

今回のケースでは、被災者は40代の製造業従事者で、妻と未成年の子2人を扶養していました。逸失利益は、被災者が生きていれば将来得られたはずの収入から生活費相当分を控除し、就労可能とされる年数分を現在価値に引き直して算定します。

具体的には、①事故前の年収(基礎収入)、②生活費控除率(被扶養者の人数に応じて概ね30〜40%程度)、③就労可能年数に対応するライプニッツ係数、という3つの要素を掛け合わせて計算します。本件では基礎収入をベースに、扶養家族が複数いる事情を踏まえて生活費控除率を有利な水準に抑える主張を行い、逸失利益の総額を適正に積み上げました。

会社側は当初、生活費控除率を高めに設定し、また就労可能年数についても短めの年数を前提とした低い提示をしてきましたが、被災者の健康状態や勤続実績を踏まえて反論し、増額につなげました。

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遺族補償年金は損害賠償から差し引かれる?損益相殺の考え方

死亡労災の交渉で必ず論点となるのが、労災保険から支給される遺族補償年金と、会社に対する損害賠償請求との関係です。会社側は「年金をもらっているのだから、その分は損害が填補されている」として、賠償額から年金の総支給見込み額をまとめて控除しようとする主張をしてくることがあります。

しかし、これは正確ではありません。損害賠償の実務では、遺族補償年金のうち控除(損益相殺)の対象となるのは、示談または判決の時点で『既に支給が確定している部分』に限られ、将来にわたって支給される予定の年金分までを一律に差し引くことはできないというのが確立した判例法理です。将来分は、実際に支給されるかどうか(受給者の再婚や死亡等により支給が終了する可能性がある等)が不確定であるため、損害の填補として確定的に評価できないという考え方に基づいています。

本件でも、会社側は将来分を含めた年金総額を根拠に大幅な減額を求めてきましたが、この判例法理を明確に主張することで、既払い分のみを控除する形での交渉に持ち込むことができました。

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解決までの結果

死亡労災の損害賠償請求では、逸失利益・損益相殺のほかにも、会社の安全配慮義務違反の立証、遺族の範囲や相続関係の整理、労災保険給付との調整など、専門的な検討が必要な論点が多く存在します。特に中小規模の事業者が相手の場合、示談交渉の段階で早期に適正額を引き出せるかどうかが、その後の生活再建に直結します。会社側の提示額をそのまま受け入れる前に、一度専門家に算定根拠を確認してもらうことを強くおすすめします。

会社側の当初提示 弁護士介入後の解決
逸失利益の算定 生活費控除率を高めに設定、就労可能年数も短く算定 扶養家族の状況等を踏まえ適正な控除率・年数で再算定
遺族補償年金の扱い 将来支給分も含めて損害額から一括控除を主張 既払い分のみを控除対象とする判例法理に基づき反論
解決額 1000万円台の提示 3000万円台での示談成立

担当弁護士のコメント

💬 担当弁護士のコメント
遺族補償年金の損益相殺は誤解の多い論点ですが、判例法理を正確に主張すれば会社側の当初提示額から大きく引き上げられる余地があります。ご遺族が不利な条件で示談してしまう前に、必ず一度ご相談いただきたいと思います。(笹野皓平)(笹野 皓平 弁護士)

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死亡労災の損害賠償と損益相殺に関する法的整理

労働者が業務上の事由により死亡した場合、遺族は労災保険から遺族補償年金等の給付を受けられますが、これとは別に、会社の安全配慮義務違反等を理由として損害賠償を請求することができます。この際、労災保険給付と損害賠償額との間で二重取りを防ぐための調整(損益相殺)が行われますが、判例上、控除の対象となるのは損害賠償請求時点で支給が確定している既払い分に限られ、将来支給されるべき年金分は控除の対象とはならないとされています。これは、将来分の給付が受給権者の状況変化(再婚、死亡等)によって支給されなくなる可能性があり、損害の填補として確定的に評価できないためです。また、逸失利益の算定にあたっては、基礎収入・生活費控除率・就労可能年数のいずれについても、被災者の年齢や家族構成、就労状況等の個別事情を踏まえた主張が可能であり、会社側の一方的な提示をそのまま受け入れる必要はありません。

よくある質問(FAQ)

遺族補償年金をもらっていても、会社に損害賠償請求はできますか?

できます。労災保険給付と会社への損害賠償請求は別の制度であり、遺族補償年金の受給は損害賠償請求権を失わせるものではありません。ただし、二重取りを防ぐための損益相殺の調整が行われます。

遺族補償年金の全額が損害賠償額から差し引かれるのですか?

いいえ。判例上、控除の対象となるのは示談・判決の時点で既に支給が確定している部分に限られ、将来にわたって支給される予定の年金分までは控除されません。会社側がこの点を誤った前提で減額を主張してくることがあるため注意が必要です。

逸失利益はどのように計算されるのですか?

基礎収入、生活費控除率、就労可能年数に対応するライプニッツ係数を用いて算定します。扶養家族の人数や被災者の年齢・健康状態などによって数値は変動するため、個別の事情を踏まえた主張が重要です。

会社が安全配慮義務違反を認めない場合はどうすればよいですか?

労働時間管理や安全装置の点検記録、同僚の証言等を積み上げて立証していくことになります。交渉での解決が難しい場合は、訴訟を見据えた証拠収集・主張構成が必要です。

示談交渉と訴訟、どちらを選ぶべきですか?

会社側の提示額や争点の内容によって異なります。示談は解決までの期間が短く済む一方、訴訟は判例法理に基づいた主張がより通りやすい面があります。双方のメリット・デメリットを踏まえて弁護士とともに方針を決めることをおすすめします。

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まとめ

死亡労災における損害賠償請求では、逸失利益の算定根拠と遺族補償年金の損益相殺の範囲という2つの専門的な論点が解決額を大きく左右します。将来分の年金は損益相殺の対象とならないという判例法理を正確に主張できるかどうかで、最終的な解決額には大きな差が生まれます。会社側の提示をそのまま受け入れる前に、専門家への相談をおすすめします。

【本記事について】本記事は、弁護士法人ブライトが実際に受任し解決した事案をもとに作成しています。もっとも、依頼者の秘密保持義務および個人情報保護の観点から、ご本人が特定されることのないよう、性別・年齢・ご職業・地域・後遺障害等級・賠償額・時期などの事実を変更し、また複数事案の要素を組み合わせるなどして再構成しています。ご紹介する法的な考え方・手続き・解決の方針は当事務所の実務に基づくものですが、記事中の具体的な属性や数値は、特定の個人・事案を示すものではありません。

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笹野 皓平

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開 業 平成21年(代表弁護士独立開業)
設 立 平成24年11月設立、平成27年1月に法人化
所在地 〒530-0057 大阪府大阪市北区曽根崎2丁目6番6号 コウヅキキャピタルウエスト12階
TEL 06-4965-9590(受付時間9:00~18:00)
FAX 06-6366-8771
事業内容 法人向け(法律顧問・顧問サービス、経営権紛争、M&A・事業承継、私的整理・破産・民事再生等、契約交渉・契約書作成等、売掛金等の債権保全・回収、経営相談、訴訟等の裁判手続対応、従業員等に関する対応、IT関連のご相談、不動産を巡るトラブルなど)、個人向け(交通事故・労災事故を中心とした損害賠償請求事件、債務整理・破産・再生等、相続、離婚・財産分与等、財産管理等に関する対応、不動産の明渡し等を巡る問題など)

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