育児休業中・産休中の問題社員への対応|解雇・降格・懲戒のルールを弁護士解説【会社側・使用者側】

育児休業中・産休中の問題社員への対応|解雇・降格・懲戒のルールを弁護士解説【会社側・使用者側】

和氣 良浩

監修:和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士|大阪弁護士会

大阪で20年以上、中小企業の企業法務・顧問弁護士サービスを提供。顧問先130社以上に透明性の高いリーガルサポートを実践している。

「育休中の社員がSNSで会社批判を投稿していた」「復職後に全然違う部署に回そうとしたら解雇と言われた」「育休前の業績評価の問題を復職後に指摘したい」——大阪の弁護士法人ブライトの「みんなの法務部」では、こうした育休・産休がらみの労務相談が増えています。

育児介護休業法は育休・産休取得者への不利益取扱いを厳しく禁じていますが、すべての対応が禁止されているわけではありません。適法な範囲での対応手順を理解することが重要です。

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育休・産休中の社員を解雇できないのか?法的な原則と例外

育児介護休業法16条・労働基準法19条の解雇禁止

育児介護休業法16条は「育児休業申出があった後、育児休業の開始前または育児休業期間中に当該育児休業申出をした労働者を解雇してはならない」と定めています。産前産後休業中も労働基準法19条により解雇は原則禁止です(産後8週間は絶対禁止・その後30日間も禁止)。

これに違反した解雇は無効です(育児介護休業法10条「不利益取扱いの禁止」)。ただしすべての解雇が禁止されているわけではなく、例外があります

例外として認められるケース

以下のケースは育休中でも解雇が認められる場合があります。

ケース 条件 注意点
事業の廃止・大幅縮小(整理解雇) 整理解雇の4要件を満たす 育休取得が選定理由になっていないこと
重大な非違行為(横領・暴力等) 就業規則上の懲戒解雇事由に該当 弁明機会の付与・懲戒委員会は必須
有期契約の雇用期間満了 雇い止めが不当でないこと 育休取得が雇い止め理由の場合は違法

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育休中に発覚した問題行為への対応

育休前の行為が後で発覚した場合

育休に入る前の問題行動(横領・情報漏洩・経費不正)が育休中に発覚した場合、懲戒処分の対象になります。ただし、「育休を利用して不問にした」と後から疑われないよう、発覚後は速やかに事実確認を進めることが重要です。

重要な原則:懲戒処分の理由が「育休取得」と無関係であることを明確にする必要があります。「育休を取ったから目をつけて調べた」という状況を作ってはいけません。

育休中の情報漏洩・競業行為

育休中でも秘密保持義務は継続します。顧客情報の持ち出し・競合他社での副業・会社情報のSNS漏洩などは懲戒処分の対象です。弁護士法人ブライトの「みんなの法務部」の顧問先でも、育休中の社員が競合他社の準備作業をしていた事例(役員候補での採用後に発覚したケースと類似)がありました。

育休中の連絡義務違反

会社は育休中の社員に対して、業務の引き継ぎや復職の意向確認など必要最低限の連絡を行うことができます。一方で、過度な連絡(毎日の業務報告要求・急な出勤要請等)は育休の妨害として問題になります。

解雇以外の対応手段

懲戒処分(戒告・減給・降格)

育休中でも懲戒処分は可能です。ただし、手続きの適正(弁明機会の付与・懲戒委員会の開催)は必ず踏みます。就業規則の懲戒事由に該当することが前提です。

復職時の職種変更

育休後の復職は「原則として同一の職務・地位」への復職が求められます。しかし、業務上の必要性があり不利益が大きくない場合は職種変更が認められることがあります。「会社の組織変更による業務廃止」「本人の能力・資質が変化したことの証拠」などが根拠になります。

「育休を取ったことへの報復」と疑われないよう、職種変更の理由を書面で明確にすることが重要です。

退職勧奨の正しい進め方

育休中・復職後の退職勧奨は慎重に行う必要があります。特に次の点に注意します。

  • 面談は1回1時間程度・回数を絞る(圧力にならないよう)
  • 「辞めなければ部署を変える」「居場所がない」等の発言は退職強要として違法
  • 本人が拒否したら即座に退職勧奨を中止し、通常業務に戻す
  • 退職条件(退職金・有休の買い取り等)を提示してから交渉する

育休後の復職拒否・条件変更のリスクと注意点

育休後の復職に際して「育休前と同じポジション・条件で受け入れることが難しい」という状況は中小企業でよくあります。この場合のリスクを理解した上で対応する必要があります。

育児介護休業法10条は「不利益取扱いの禁止」として、育休取得を理由とした解雇・降格・給与削減・不利益な配置転換を禁止しています。違反した場合、都道府県労働局からの勧告(男女雇用機会均等法19条1項)や損害賠償請求(最高裁平成26年10月23日・広島中央保健生協事件:マタハラ・育ハラの損害賠償)のリスクがあります。

⚖️ 育休・産休に関連する主要法令・判例

  • 労働基準法19条:産前産後休業中および休業後30日間の解雇禁止
  • 育児介護休業法10条:育休取得を理由とした不利益取扱いの禁止
  • 育児介護休業法16条:育休期間中の解雇禁止
  • 最高裁平成26年10月23日(広島中央保健生協事件):育休後の降格は原則として育介法10条違反(本人の自由意思による同意等の例外あり)
  • 男女雇用機会均等法9条3項:妊娠・出産・産休取得を理由とした解雇は無効

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育休・産休中の問題社員対応で弁護士に相談すべきサイン

以下のいずれかに当てはまる場合は、自己判断で動く前に弁護士へ相談することを強くお勧めします。育ハラ・マタハラと判断されれば、会社の損害賠償リスクは数百万円規模になりえます。

相談すべきサイン 放置するリスク
育休前に問題のあった社員が育休中で、どう対応すべきか迷っている 育休明けに問題が悪化し、手遅れになる
育休者の復職にあたり、ポジション・給与条件を変えざるをえない 育介法10条違反・損害賠償請求のリスク
育休者が復職を拒否し、会社と交渉しようとしている 労働審判・あっせんで会社が敗れる可能性
育休中に重大な非違行為(横領・競業等)が発覚した 「育休を狙い撃ちにした」と主張されるリスクがある

弁護士法人ブライトが顧問先で経験した育休・産休トラブルの傾向

大阪の弁護士法人ブライト「みんなの法務部」の顧問先130社以上で蓄積された育休・産休絡みのトラブル傾向をまとめます(個社情報は匿名化)。

最も多いパターンは「育休前の問題行動をそのままにして復職させ、復職後に指導しようとしたら育ハラと言われた」というケースです。育休前に問題が発生した場合は、育休に入る前の段階で弁護士のアドバイスのもと事実確認と記録化を完了させておくことが最善です。

次に多いのが「復職受け入れ体制が整わず、職種変更を告げたところ不服申立をされた」というパターンです。職種変更の理由となる組織変更・業務廃止の経緯を文書で残し、育休取得との無関係を明確にしておく必要があります。

弁護士歴平均14年以上のチームが、こうした育休・産休トラブルに関する対応方針の策定から書面作成まで伴走します。

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よくある質問

Q. 育休中の社員が会社のSNSを批判していた場合は?

A. 秘密保持義務違反・不名誉行為として懲戒処分の対象になりえます。ただし処分前に弁明機会を与える必要があります。育休中という事実だけで処分が軽くなるわけではありません。

Q. 育休中に他社でアルバイトをしていたことが発覚した場合は?

A. 就業規則に副業禁止規定があれば懲戒処分の対象となります。また育児休業給付金の不正受給(ハローワーク)の問題が生じる可能性もあります。大阪の弁護士法人ブライトにご相談ください。

Q. 復職後に業務能力が著しく低下していた場合は?

A. 育休取得を理由とした扱いとならないよう、まず具体的な能力低下の記録を残し、指導・改善機会を設けます。一定期間の指導後も改善がない場合、普通解雇の検討が可能ですが弁護士への相談が必須です。

Q. 育休後に「育休前のポジションは廃止」となった場合は?

A. 組織変更による真の業務廃止であれば、代替ポジションへの配置転換を提案することで対応できます。ただし「育休取得への報復」と疑われないよう、組織変更の経緯を文書で残しておくことが重要です。

Q. 育休を申請した直後に問題行動が発覚した場合の順序は?

A. 育休申請後でも重大な非違行為(横領・暴力等)を理由とした懲戒処分は可能です。ただし処分の理由が育休申請と無関係であることを証明できる形で記録を整備し、弁護士の指示のもと手続きを進めることが必須です。「育休申請への報復」と受け取られる対応は絶対に避けてください。

Q. 産休中の社員を整理解雇(リストラ)の対象にできますか?

A. 整理解雇の4要件(人員削減の必要性・解雇回避努力・被解雇者選定の合理性・手続の妥当性)を満たせば可能ですが、産休取得が選定理由になっていないことの証明が困難なケースが多く、リスクは非常に高いです。事前に必ず弁護士へご相談ください。

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なお、本記事の内容に関する個別の質問や意見などにつきましては、ご対応できかねます。ただし、当該記事の内容に関連して、当事務所へのご相談又はご依頼を具体的に検討されている場合には、この限りではありません。
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