「あのお客さん、また来た」「今日もクレームの電話が来て、担当者が泣いている」——そんな状況が続いているのに、どこまでが我慢の範囲で、どこからが断っていいのか、判断がつかないという社長は少なくありません。 お客様を大切にしなければならないという意識が強いほど、「もう少し対応すれば収まるだろう」「訴えられたら困る」という考えが先に立ち、対応がずるずると長引きます。その間、現場の従業員は消耗し、離職につながることもあります。 カスハラ(カスタマーハラスメント)に対して、会社は法的にどこまで対応できるのか。罰則はあるのか。証拠はどう残すのか。この記事では、社長が「判断できる」状態になるための情報を整理します。 カスハラに「罰則」はあるのか――現行法の正直な整理 結論から言えば、現時点(2025年時点)で、カスハラ行為そのものを直接罰する独立した法律は存在しません。「カスハラ罰則」という言葉で検索する社長の多くは、「クレーマーに何か法的制裁を与えられるのか」を知りたいのだと思います。その期待に対して正直にお伝えします。 ただし、カスハラの内容によっては、すでに存在する刑法や民法の規定が適用できます。たとえば以下のようなケースです。 脅迫・強要:「訴えてやる」「お前の家を調べてやる」など脅しを伴う言動(刑法222条・223条) 名誉毀損・侮辱:SNSや口コミサイトへの虚偽の書き込み、従業員への侮辱的な言動(刑法230条・231条) 不退去:退去を求めても帰らない(刑法130条) 業務妨害:長時間の電話や来店で業務を妨げる(刑法234条) 民事上の不法行為:精神的苦痛を与えた場合の損害賠償請求(民法709条) つまり、「カスハラ専用の罰則」はないが、「カスハラに該当する行為を罰する既存の法律」は複数ある、というのが正確な整理です。会社として取るべき対応は、この既存の法律を使って、毅然と対応することです。 また、2024年11月施行の改正労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)の指針においても、カスタマーハラスメントへの対応が事業主の努力義務として明示されました。今後、罰則を含む立法化の議論が進む可能性もあります。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) なぜ「もう少し我慢すれば」という判断ミスが起きるのか 【図解】カスハラに「罰則」はあるのか――現行法のへの対応フロー ① 問題発生 → ② 事実確認・記録 → ③ 顧問弁護士に相談 → ④ 対応策の実行 ※ 弁護士に早期相談することで、リスクを最小化できます。 社長が正しい対応を取れない理由は、知識の不足だけではありません。判断の構造そのものに問題があることが多いです。 まず、「クレームと不当要求の区別」ができていないという問題があります。正当なクレームには誠実に対応すべきです。しかし、会社のミスの範囲を超えた金銭要求、担当者個人への人格攻撃、長時間拘束、繰り返しの電話——これらはもはやクレームではなく、不当要求またはハラスメントです。その境界線を社内で定義していない会社は、どこまでも引きずられます。 次に、「対応した事実が証拠になる」という怖さから動けないケースがあります。「謝罪したら責任を認めたことになるのでは」「断ったら逆に訴えられるのでは」——この不安が、適切な対応を遅らせます。 実際には、謝罪の内容と法的責任は必ずしも連動しませんし、不当要求に対して断ることは権利の行使です。ただ、その判断を一人でするのは難しい。だからこそ、事前に方針を整備しておくことが重要です。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 問題が起きる前にできること――予防フェーズの整備 カスハラは「起きてから対応する」ものと思われがちですが、対応方針をあらかじめ決めておくかどうかで、現場の消耗度が大きく変わります。 ①カスハラ対応方針の明文化 「どこからが不当要求か」「誰が判断するか」「どう対応するか」を社内で定義します。これは就業規則に組み込む形、または別途カスハラ対応規程として整備する形が一般的です。現場担当者が「これ以上は対応できません」と言うための根拠になります。 ②記録・録音の仕組みの整備 証拠は紛争になってから急に作れるものではありません。クレーム対応の記録フォーマットを作り、日時・内容・対応者をメモする習慣を作っておきます。電話対応であれば、録音できる体制を整えることも重要です(録音は法的に適法です)。 ③エスカレーションルールの設定 現場担当者が一人でカスハラに対応させられる状況は、最も避けなければなりません。「一定の要求が繰り返された場合は上司が交代する」「法的手段を示す場合は会社名義で書面を出す」といったルールをあらかじめ決めておきます。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 問題発生時の対応フロー――証拠の残し方を具体的に カスハラが発生した場合、以下のフローで対応することを基本とします。 記録を残す(日時・発言内容・対応者・経緯)「いつ・誰が・何を言ったか・どう対応したか」を書面またはデータで残します。「覚えているから大丈夫」は後日必ず崩れます。 要求の書面化を促す「要求内容を書面でいただけますか」と伝えることで、不当要求者は多くの場合、要求をエスカレートさせにくくなります。 対応範囲の明確化「会社として対応できる範囲はここまでです」と明確に伝えます。このとき、根拠(保険の適用範囲・契約内容・社内規程)を示せると、交渉の余地がなくなります。 弁護士への相談・代理人介入同じ相手と直接交渉を続けることが困難な場合、弁護士を代理人として介入させることで、窓口を一本化し、感情的なやりとりを遮断できます。 法的手段の告知・実行脅迫・強要・業務妨害が認められる場合は、警察への相談・被害届の提出も選択肢に入ります。民事では損害賠償請求や接触禁止の仮処分も活用できます。 弁護士法人ブライトの顧問先では、中古車販売・修理業者のケースで、従業員への直接的な金銭要求・強い口調での迫りに対し、弁護士が代理人として介入し、交渉窓口を一本化することで、不当な要求を断ち切ることに成功した事例があります。社長が「口頭で約束してしまった」という状況であっても、その法的拘束力を正確に評価し、払う必要のない補償を断ることができました。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 失敗事例の構造――なぜ相談が遅れ、なぜ証拠がなかったのか カスハラ対応で後悔する会社には、共通のパターンがあります。 「まだ話し合いで解決できると思っていた」 相談が遅れる最大の理由は、「もう少し対応すれば収まるだろう」という期待です。しかしカスハラの相手は、対応すればするほど「通じる相手だ」と判断して要求を強めることが多い。早期に方針を固め、対応できる範囲を明示することが、長期化を防ぐ唯一の方法です。 「記録を取っていなかった」 「言った・言わない」の水掛け論になった時、証拠がなければ不利です。口頭で「修理します」「補償します」と約束してしまった言葉が、後から「会社の約束」として使われるケースもあります。記録がない状態でのやりとりは、常に相手に有利に働きます。 「社員に一人で対応させてしまっていた」 担当者が一人でカスハラ相手と交渉を続けた結果、精神的に追い詰められ、離職につながったケースがあります。会社として組織で対応する体制を作っていなければ、従業員へのケアも、法的な対応も、どちらも遅れます。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) うちの会社ではどう考えればいいのか――業種別の視点 カスハラのリスクは、業種によって性質が異なります。自社に当てはまる視点を確認してください。 小売・サービス業:来店客からの長時間クレーム・土下座要求・SNS拡散脅迫。対面での対応が多いため、録音・記録の体制と、担当者の交代ルールが重要。 医療・介護:患者・家族からの過大要求(治療方針への干渉・過剰な謝罪要求)。応召義務との関係で「断れない」と思い込みやすいが、不当要求は断る根拠がある。 宿泊・飲食:口コミサイトへの虚偽投稿・過剰な補償要求。口コミ投稿が名誉毀損に該当する場合、削除請求・損害賠償請求が可能。 製造・修理業:施工・修理ミスをきっかけとした過大要求。「ミスの範囲内の補償」と「それを超える要求」の線引きが鍵。 共通して言えるのは、「会社として何ができて、何ができないのか」を事前に整理しておくことが、現場の判断を速くするという点です。その整理を一人でするのは難しく、弁護士と一緒に確認しておくことが最も効率的です。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 再発防止策――カスハラを「一件落着」で終わらせない 一度のカスハラ対応が終わっても、同じ問題は別の顧客・別の現場で繰り返されます。再発防止のために、以下の取り組みを検討してください。 対応事例の社内共有:「こういう要求には、こう対応した」という事例を現場間で共有し、対応ノウハウを蓄積します。 就業規則・カスハラ対応規程への組み込み:カスハラに遭った従業員が「会社が守ってくれる」と感じられる規程を整備します。これは採用・定着にも直結します。 定期的な研修:対応方針を作っても、現場が知らなければ意味がありません。年に一度でも、カスハラ対応の研修を実施します。 相談体制の整備:従業員が「これはカスハラかもしれない」と感じたときに、すぐ上司や会社に相談できる仕組みを作ります。一人で抱えさせない体制が、離職防止にもなります。 カスハラは一件対応しても次が来ます。重要なのは「その都度の対応」ではなく、カスハラ対応規程を就業規則に組み込み、現場が迷わず動ける体制を整えることです。弁護士法人ブライトの「みんなの法務部」では、就業規則・カスハラ対応規程の条項整備から、現場が困ったときの初動相談まで、継続的に支えることができます。顧問先 142社 の実名を公開しており、企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが対応します。一件ごとのスポット対応ではなく、「揉めないための体制作り」を一緒に進めることが、結果的に最もコストの低いリスク管理です。 よくある質問(Q&A) Q1. カスハラをした顧客を警察に訴えることはできますか? カスハラの内容によっては可能です。脅迫・強要・不退去・業務妨害などに該当する言動があれば、刑事事件として警察への相談・被害届の提出ができます。ただし、警察が動くためには「刑事事件として成立する行為」が必要です。どの行為が該当するかは、具体的な状況をもとに弁護士に確認することをお勧めします。 Q2. 顧客への対応を断ることはできますか?サービスを拒否しても問題ないですか? 正当な理由がある場合、サービスの提供を断ることは可能です。不当要求・ハラスメント行為は正当な理由に該当します。ただし業種によっては、応召義務(医療)や公共交通機関の乗車拒否禁止など、特別な規定がある場合もあります。断る方針を会社として文書で示し、対応記録を残すことが重要です。 Q3. 顧客に謝罪すると、法的に責任を認めたことになりますか? 必ずしもそうではありません。謝罪はコミュニケーション上の行為であり、法的責任の承認とは区別されます。ただし、「〇〇を支払います」「〇〇を対応します」といった具体的な約束は、法的拘束力を持つ可能性があります。謝罪の言葉と、具体的な補償の約束は分けて対応し、補償の約束は必ず会社として検討したうえで回答することが重要です。 Q4. SNSや口コミサイトに虚偽の悪評を書かれました。何か対応できますか? 虚偽の事実を書かれた場合、名誉毀損(刑法・民法)に該当する可能性があります。プラットフォームへの削除申請、発信者情報開示請求、損害賠償請求といった手段があります。ただし、事実に基づく批判は名誉毀損にならない場合もあるため、内容の精査が必要です。早めに弁護士に相談し、証拠(スクリーンショット等)を保全しておくことが重要です。 カスハラ対応・問題社員・解雇・退職勧奨など経営上の課題を継続的に相談できる顧問弁護士をお探しの方は、弁護士法人ブライト「みんなの法務部」にお問い合わせください。顧問先 142社 の実名を公開しており、企業法務部の弁護士歴平均14年以上の経験豊かな弁護士が対応します。企業法務窓口:06-4965-9590(平日9:00〜18:00) この記事の監修者 和氣 良浩(わけ よしひろ) 弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士 弁護士歴20年(2006年登録)/大阪弁護士会/大阪大学法学部卒 専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生 「みんなの法務部」というブライトの考え方 中小企業の社長に「専属の法務部」を持っていただく——これがブライトの顧問サービスの基本姿勢です。社内に法務部を置けない規模でも、契約書・労務・債権回収・M&Aまで日常的に相談できる体制を、月額固定で。企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームで、142社の顧問先と向き合っています。 ▶ みんなの法務部とは(詳しく見る) 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料)