この記事の監修者 和氣 良浩(わけ よしひろ) 弁護士法人ブライト|代表弁護士 大阪弁護士会 取扱分野:顧問弁護士・企業法務・債権回収・M&A・事業再生 「そろそろ外に出すか」——院内の未収金リストを前に、事務長と医事課でこの話が出たとき、次に出てくるのはたいてい同じ3つの問いです。いくらかかるのか。どれだけ手間が減るのか。任せたあと、うちは何を決めることになるのか。 この記事は、その3つに順番に答えます。あわせて、院内でやり切る場合と外に出す場合の分かれ目、1件だけ頼む形と複数件をまとめて預ける形の違いも整理します。 先に、いちばん大事なところを書いておきます。弁護士に委任しても、回収できる金額や回収率をお約束することはできません。これは事務所の姿勢の問題ではなく、弁護士職務基本規程29条2項が「事件について、依頼者に有利な結果となることを請け合い、又は保証してはならない」と定めているためです。回収の見込みを数字で請け合う説明があれば、それ自体が制度の建て付けから外れています。委託を検討するときに見ていただきたいのは、回収率の約束ではなく、工程が止まらずに回るかどうか、そして院内の手間がどれだけ実際に軽くなるかです。 大阪で企業法務を扱う弁護士法人ブライトが、医療機関の未収金を継続してお預かりする場合を念頭に、費用の考え方・進め方・院内の作業の変わり方を実務の順序どおりに書きます。なお本稿は一般的な整理であり、個別の債権について判断するものではありません。実際の対応は事案ごとに弁護士へご確認ください。 院内でやるか外に出すか、判断材料から整理します 未収金の概算件数・金額帯・経過期間・院内の対応状況をうかがったうえで、お引き受けできるかどうかと進め方をご案内します。弁護士法人ブライトは大阪で医療機関の未収金を継続受託する体制を用意しています。顧問先142社・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームで対応します。 医療費・未収金回収の継続受託を見る 外部法務部サービスを見る 06-4965-9590(企業法務窓口)LINEで相談する 院内でやり切るか、外に出すか——分かれ目は4つ 「金額が大きいものだけ弁護士へ」という切り分けをしている医療機関は多いのですが、これだけで決めると外れます。金額は4つある判断軸のうちの1つでしかありません。 (1)金額——1件ではなく「束」で見る 医療機関の未収金は、1件あたりが小さく件数が多いという形になりやすい債権です。1件5万円の債権を単体で見れば「弁護士に頼むほどではない」となりますが、同じ患者さまに複数月ぶんが積み上がっている、あるいは同じ類型(自費診療・差額ベッド・入院時の食事療養費など)で似た未収が並んでいるなら、束として扱った途端に意味が変わります。 院内で見るべきなのは「1件あたりの金額」ではなく、同じ処理を何度繰り返しているかです。 (2)件数——同じ作業が何度も起きているか 督促状を書く、送る、返事を待つ、電話をかける、記録に残す。1件ぶんなら30分の作業でも、月に20件あれば10時間です。しかもこの作業は、医事課の中でも特定の職員に寄りがちで、その人が異動・退職した瞬間に止まります。 件数が一定以上あり、かつ毎月新しく発生している状態は、「難しい案件だから外に出す」のではなく「同じ工程を安定して回すために外に出す」という判断になります。継続で預ける形が向くのはこちらのパターンです。 (3)時効の残り——残り期間が判断の順番を決める 診療費・入院費の債権にも消滅時効があります。詳しくは医療費(診療費・入院費)の消滅時効は何年かで整理していますが、実務上の要点は単純です。時効の残りが短い債権は、迷っている時間そのものがコストになります。 院内リストを「残り1年未満/1〜3年/それ以上」で並べ替えると、どこから手を付けるかは自然に決まります。残りが短い束から先に相談する、というだけで判断はかなり軽くなります。 (4)相手の状況——連絡が取れるか、所在が分かるか 次の状況にあたる債権は、院内の督促だけでは前に進みません。 転居先が分からず、郵便が戻ってくる 患者さまが亡くなっており、誰に請求するか整理できていない(患者が亡くなったあとの医療費は誰に請求するか) 入院時の身元保証書はあるが、その書面で請求できるかに不安がある(入院の身元保証人に医療費を請求できるか) 請求内容そのものに争いがある(診療内容や自費の説明をめぐる主張が出ている) 本人から「弁護士に相談している」と言われた とくに最後の2つは、院内の担当者がそのまま応対を続けると、後の手続で不利な材料を残すことがあります。 判断軸 院内で続けてよいことが多い 外に出す検討に入ることが多い 金額(束で) 単発・少額で、支払意思が確認できている 同一患者さまに複数月ぶんが累積、または同種の未収が並んでいる 件数・頻度 年に数件で、担当者の余力の範囲に収まる 毎月発生し、督促作業が特定の職員に集中している 時効の残り 十分に残っており、分割等の合意で更新できている 残りが短い、または経過年数を院内で把握できていない 相手の状況 連絡が取れ、支払時期の話ができている 連絡不通・所在不明・死亡・請求内容に争いがある・相手方に代理人が付いた ※ 目安であり、これに当てはまれば必ず受託できる・回収できるというものではありません。 「この束は外に出すべきか」の切り分けから相談できます リストをお持ちいただければ、時効の残り・相手の状況・件数の3点で仕分けし、院内で続けるぶんと委託するぶんの線を一緒に引きます。大阪の弁護士法人ブライトが、医療法人・クリニックの未収金を継続してお預かりしています。 医療費・未収金回収の継続受託を見る 外部法務部サービスを見る 06-4965-9590(企業法務窓口)LINEで相談する 単発で頼むのと、継続で預けるのはどう違うか 同じ「弁護士に依頼する」でも、1件ごとに委任する形と、一定範囲の未収金をまとめて継続的に預ける形とでは、委任の単位も、費用の建て方も、院内の窓口の作り方も変わります。 単発(1件ごとの委任)——「1件が重い」ときの形 争いがある1件、金額が大きい1件、法的手続まで進むことが最初から見えている1件。こうした債権は、その事件について個別に委任契約を結び、着手から解決までを1本の案件として進めるのが自然です。 この形が向くのは、案件の輪郭がはっきりしていて、終わりが見えているときです。逆に、毎月少しずつ生まれる未収金をこの形で処理しようとすると、1件ごとに委任契約を作り、1件ごとに資料をそろえ、1件ごとに報告を受けることになり、院内の事務がかえって増えます。 継続(範囲を決めて預ける)——「同じ工程が毎月起きる」ときの形 継続で預ける場合は、1件ずつではなく「どの範囲の未収金を、どの段階から、どこまで任せるか」を先に決めます。たとえば「経過◯か月を超えたもの」「院内督促を2回行っても入金がないもの」といった条件を置き、その条件に当たったものを定期的に引き渡す形です。 この形にすると、次が変わります。 窓口が固定される——誰が弁護士に渡すか、誰が入金情報を返すかが決まるので、担当者が代わっても止まりません 資料の形式が統一される——毎回ゼロから資料を作らず、同じ様式で渡せるようになります 報告がまとまる——1件ずつではなく、対応段階・入金・次の予定をまとめて受け取れます 予防側にはね返る——回収の現場で見えた原因(説明のタイミング、限度額の案内漏れ、書式の不備)が、院内の運用改善に戻せます 4つめが継続の本質です。回収だけを外に出しても、同じ未収金は翌月また生まれます。高額療養費・限度額適用認定証で未収金を「作らない」や医療費の分割払い合意書の作り方で書いたような入口の運用に手が入って、初めて総量が下がります。 比べる点 単発(1件ごとの委任) 継続(範囲を決めて預ける) 委任の単位 その1件 あらかじめ決めた条件に当たる未収金 費用の建て方 その案件の着手・成果・実費で組む 業務範囲と件数を前提に、基本料と成功報酬の組合せを含めて設計する 院内の窓口 案件ごとに担当者が付く 引き渡しと入金連絡の窓口を固定する 資料の渡し方 1件ずつそろえる 同じ様式でまとめて渡す 報告 案件の節目ごと 対応段階・入金・次の予定を定期的にまとめて 予防への波及 その案件の範囲にとどまる 回収現場で見えた原因を院内の運用・書式に戻せる 向く場面 争いがある/金額が大きい/終わりが見えている1件 毎月発生し、同じ工程を繰り返している 弁護士法人ブライトは継続してお預かりする形でお受けしています 弁護士法人ブライトでは、企業法務の案件について個別単発案件のみのご依頼はお受けしておりません。医療機関の未収金についても、医療費・未収金回収の継続受託としてお預かりする形をとっています。 理由は前の項に書いたとおりです。1件だけを切り出して回収しても、翌月には同じ形の未収金がまた立ちます。院内の運用(説明の順序、書式、限度額の案内、分割の決裁基準)に一緒に手を入れられる関係でなければ、総量は下がりません。私たちが「法務部がない会社の、外部法務部」という言い方をしているのも、外から1件を処理する立場ではなく、会社(法人)の中の機能として継続的に関わることを前提にしているからです。 なお、ご相談の結果すべてをお引き受けできるとは限りません。対象範囲・開始時期・費用は、件数と資料を拝見したうえでご案内します。 費用は「相場表」ではなく「工程」で考える 費用の話で最初に申し上げたいのは、相場表を探すより、何にいくらかかる建て付けなのかを分解したほうが早いということです。分解する軸は2つあります。「弁護士報酬か、実費か」と「どの工程まで進んだか」です。 まず「弁護士報酬」と「実費」を分ける 弁護士に支払う金額は、事務所が受け取る報酬と、手続のために外部へ出ていく実費に分かれます。混ぜたまま見積りを読むと、比較も稟議もできません。 実費の代表例は次のとおりです。 申立手数料(収入印紙)——裁判所に納める費用。請求額に応じて決まります 郵便切手(予納郵券)——裁判所が書類を送るために預ける費用 戸籍・住民票等の取得費用——所在調査や相続人調査で必要になります 通信費・記録の取得費用——内容証明の郵送費など 実費は工程によって大きく変わります。たとえば支払督促の申立手数料は、民事訴訟費用等に関する法律の別表第二(一一の項)により、訴えを提起する場合の手数料の2分の1の額と、一定額との合算額とされています。手続の選び方が、そのまま実費の水準に効くということです。どの手続を選ぶかは医療費の未収金はどの手続で回収する?支払督促・少額訴訟・通常訴訟の使い分けで整理しています。 報酬の「型」は大きく3つ 弁護士報酬の組み方は事務所ごとに異なりますが、部品としては次の3つの組合せで説明できます。 型 発生のしかた 医療機関から見た性質 着手時に発生する報酬 結果にかかわらず、受任の時点で発生する 固定費。件数が読めると予算化しやすい 成果に応じて発生する報酬 回収できた金額に応じて発生する 変動費。回収できなければ発生しない部分 時間に応じて発生する報酬 要した時間に応じて発生する 争いがある案件や、調査の量が読めない案件で使われる ※ 実際にどの型をどう組み合わせるかは、業務範囲・件数・債権額・経過期間によって変わります。金額は個別のお見積りでご案内します。 継続で預ける場合は、これに「範囲内で回る作業」と「範囲外の追加対応」の線引きが加わります。通知の発送や連絡の調整までは範囲内、裁判手続に進む場合は別途——という形が典型です。ここが曖昧なまま始めると、後から「これは追加ですか」というやり取りが毎回発生します。最初に線を引いておくこと自体が、事務の手間を減らします。 なぜこの記事に一律の金額表を載せないのか 理由は2つあります。1つは制度です。かつては日本弁護士連合会が統一の報酬基準を定めていましたが、これは廃止され、2004年(平成16年)4月から各事務所が自ら報酬基準を作成して事務所に備え置く仕組みに変わりました。弁護士の報酬に関する規程3条は次のように定めています。 第三条 弁護士等は、弁護士等の報酬に関する基準を作成し、事務所に備え置かなければならない。2 前項の基準には、報酬の種類、金額、算定方法、支払時期その他弁護士等の報酬を算定するために必要な事項を明示しなければならない。 弁護士の報酬に関する規程(日本弁護士連合会会規第68号)3条 つまり「業界共通の相場」という基準は制度として存在しません。ウェブ上の相場表は各事務所の基準を集めたものにすぎず、御院の案件にそのまま当てはまる保証はありません。 もう1つは、未収金の委託そのものが個別性の高い設計になるからです。対象の件数、1件あたりの債権額、発生からの経過期間、通知までを任せるのか法的手続まで含めるのか——この組合せで、適した費用の建て方は変わります。一律の金額表を先に出すと、御院の条件に合わない数字が判断の基準になってしまいます。だから範囲を決めてから見積りを出す、という順序をとっています。見るべきは相場表ではなく、目の前の事務所が出す見積書と委任契約書です。 一般企業の債権回収における費用の構造については債権回収を弁護士に依頼する費用|着手金・成功報酬・実費でも整理していますので、基本的な考え方はそちらも参考にしてください。 見積書は求めてよい。委任契約書には何が書かれるか 同じ規程は、依頼しようとする方から申出があったときは報酬見積書の作成・交付に努めること(4条)、受任に際して報酬とその他の費用を説明すること、そして報酬に関する事項を含む委任契約書を作成すること(5条)を定めています。なお、顧問契約等の継続的な契約に基づく場合など、規程上は委任契約書の作成を要しない場面もあります(同規程5条3項・弁護士職務基本規程30条2項)。ただし継続でお預かりする場合ほど範囲と清算方法があいまいになりやすいため、書面で確認しておくことをおすすめします。作成する委任契約書に記載すべき事項も、次のとおり具体的に決まっています。 委任契約書に記載される事項(弁護士の報酬に関する規程5条4項) 医療機関が確認しておきたい点 受任する法律事務の表示及び範囲 どの範囲の未収金が対象か。通知まで/交渉まで/法的手続までのどこで線が引かれているか 報酬の種類 着手時・成果時・時間制のどれをどう組み合わせているか 報酬の金額・算定方法 「回収額の◯%」なのか、件数単位なのか。実費と分けて書かれているか 報酬の支払時期 いつ請求が立つか。院内の支払サイトと合うか 委任契約の解除ができる旨・中途終了時の清算方法 途中でやめるときに何がどう精算されるか この5項目は、そのまま稟議書の確認欄に使えます。「範囲」と「中途終了時の清算」の2つは、継続でお預けになる場合はとくに読み込んでおいてください。 この項の根拠 弁護士の報酬に関する規程(日本弁護士連合会会規第68号)2条・3条・4条・5条 弁護士職務基本規程29条(受任の際の説明等)・30条(委任契約書の作成) 民事訴訟費用等に関する法律(申立手数料) 見積りの前に、範囲と工程を一緒に決めます 件数・債権額・経過期間・対応範囲を確認したうえで、弁護士報酬と実費を分けてご案内します。裁判手続など追加対応が必要になる場合も、進める前に費用対効果を含めて協議します。大阪の弁護士法人ブライトへお気軽にご相談ください。 医療費・未収金回収の継続受託を見る 外部法務部サービスを見る 06-4965-9590(企業法務窓口)LINEで相談する 回収の結果を約束できない理由は、制度の側にある 有利な結果を請け合うことは禁じられている 冒頭にも書いたとおりです。弁護士職務基本規程は、受任にあたっての説明について次のように定めています。 第二十九条 弁護士は、事件を受任するに当たり、依頼者から得た情報に基づき、事件の見通し、処理の方法並びに弁護士報酬及び費用について、適切な説明をしなければならない。2 弁護士は、事件について、依頼者に有利な結果となることを請け合い、又は保証してはならない。3 弁護士は、依頼者の期待する結果が得られる見込みがないにもかかわらず、その見込みがあるように装って事件を受任してはならない。 弁護士職務基本規程29条 ですから、「当事務所なら◯%回収できます」という説明は、そもそも制度上できません。逆に言えば、そうした説明が出てきたときは、その一点だけで判断材料になります。 では何を見て委託先を選ぶか 回収率を約束できない以上、比較すべきは次のような点になります。 見通しの説明が具体的か——「回収は難しいかもしれないが、時効の管理はできる」「所在調査から始める必要がある」といった、条件つきの見通しが出てくるか 工程が止まらない設計になっているか——誰が何をいつまでに、が決まっているか。担当者が代わっても回るか 報告の形が決まっているか——対応段階・入金・次の予定が、こちらから催促せずに届くか 費用対効果を先に協議する姿勢があるか——法的手続に進むかどうかを、費用の見通しとセットで相談してくれるか 医療機関の事情を前提に話が通じるか——応招義務、保険請求の確定、患者さまへの配慮といった前提を説明せずに済むか 費用倒れの線引きは医療機関が持つ 少額の債権について、法的手続に進めば実費と手間が回収見込額を上回ることがあります。ここで「進めるか、やめるか」を決めるのは弁護士ではなく医療機関です。弁護士は、進んだ場合にかかる費用と見通しを示し、判断の材料をそろえる役になります。 この線引きを事前に決めておくと、毎回悩まずに済みます。たとえば「回収見込額が◯万円を下回り、かつ所在不明のものは、法的手続に進めず貸倒れの処理に回す」といった基準です。基準づくり自体も、継続でお預かりしている場合はご一緒できる部分です。 院内の手間はどう変わるか——医事課が渡すもの、やめられること ここがいちばん聞かれるところです。「任せたら楽になる」と言われても、渡すための作業が重ければ意味がありません。順に見ていきます。 最初の相談では、患者さまの情報を出す必要はありません 初回のご相談でうかがうのは、次の4点だけで足ります。 対象にしたい未収金のおおよその件数 金額帯(1件あたりの中心はいくらくらいか、合計はどの程度か) 経過期間(いつごろ発生したものが中心か) 院内でいまどこまで対応しているか(督促状は出しているか、電話はしているか、誰がやっているか) 氏名・診療内容を含む資料は、この段階では不要です。受渡しの方法をご案内したうえで、必要になった時点でお送りいただきます。リストを作るところから時間がかかってしまうと、相談そのものが先送りになります。概算で構いませんので、まず状況をお聞かせください。 受任が決まったあとに渡す資料 実際にお預かりする段階で必要になるのは、おおむね次のものです。すでに医事課のシステムから出力できるものが大半で、新たに作り起こすものは多くありません。 渡すもの 形 どこから出るか 注意点 未収金の一覧 表計算(CSV等) 医事会計システムの未収一覧 患者番号・診療年月・金額・入金額・残額の列があると早い 請求の内訳 請求書・明細の控え 医事会計システム 保険請求が確定した後の金額かどうかを確認 入金の履歴 表計算または帳票 医事会計システム・経理 一部入金・分割入金の履歴は時効の判断に効く これまでの督促の記録 控え・記録メモ 医事課の対応記録 送付日と方法(普通郵便/内容証明)が分かる形で 取り交わした書面 写し 診療録とは別の保管 入院申込書・身元保証書・分割払い合意書など 連絡先の情報 一覧に併記 患者登録情報 郵便が戻っている場合はその事実も 督促の記録は、あとから作れません。いつ・どの方法で・誰に送ったかの記録は、院内対応の段階から残しておいてください。書式と残し方は医療機関の督促状・内容証明の書き方にまとめています。 個人情報の扱いは、渡す前に院内で3点だけ決める 診療情報を含む資料が院外に出ることになりますので、次の3点を先に整理しておくと後で戻りません。 利用目的の確認——院内掲示やホームページの個人情報の取扱いに、医療費の請求・回収に関する事務が含まれているか 渡す範囲を絞る——回収に必要な範囲を超える診療情報(詳細な病名・経過など)まで渡していないか 受渡しの方法を決める——郵送か、暗号化したファイルか。誰が送り、誰が受け取るか なお個人情報保護法27条5項1号は、利用目的の達成に必要な範囲内で取扱いを委託することに伴って個人データが提供される場合、その提供先は「第三者」に当たらないものとしています。あわせて、厚生労働省の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(平成29年4月14日通知・令和8年4月1日最終改正/同日施行)が医療機関向けの整理を示しています。御院の運用に当てはめた整理は、契約の前に弁護士と一緒に確認するのが確実です。 やめられる作業と、院内に残る作業 作業 委託前 委託後 督促状の文面づくり 担当者が都度作成 院内対応ぶんは統一書式に固定し、委託ぶんは弁護士が作成 電話での支払交渉 医事課が対応 委託したぶんは弁護士側で対応。院内は「弁護士に委任しています」とご案内するだけ 支払条件の相談への応対 その場で判断を迫られる 弁護士側で受け、院内の基準に沿って整理 時効の管理 担当者の記憶・個別の管理表 対象債権は弁護士側でも管理。院内リストと突き合わせる 入金の消込 医事課・経理 院内に残る。入金があった事実を決めた方法で弁護士へ返す 請求額の確定(保険請求の反映) 医事課 院内に残る。金額が動いたら速やかに連絡 診療を続けるかの判断 医療機関 院内に残る。支払いの問題とは切り分ける 表のとおり、消えるのは「交渉」と「文面づくり」で、残るのは「金額の確定」と「入金の連絡」です。残る2つは医事課にしかできない仕事であり、かつ、ここが滞ると弁護士側の工程も止まります。委託の効果は、この2つをどれだけ軽い型にできるかでほぼ決まります。 「どの資料を、どの形で渡すか」から設計します 医事会計システムから出せる形に合わせて受渡しの様式を決め、院内の窓口と連絡の方法を先に固定します。入金情報の返し方まで決めておくことで、担当者が代わっても工程が止まりません。大阪で顧問先142社の企業法務を担う弁護士法人ブライトが対応します。 医療費・未収金回収の継続受託を見る 外部法務部サービスを見る 06-4965-9590(企業法務窓口)LINEで相談する 任せたあとはどう進むか——4つの段階と、止まりやすいところ 継続でお預かりする場合の流れは、おおむね次の4段階です。受け皿となるサービスページにも同じ流れを載せていますので、院内でご説明いただくときはそちらもお使いください。 段階1 対象・範囲の確認 件数、金額、経過期間、既存の対応をうかがい、お引き受けできるかどうかと費用をご案内します。ここで「どの条件に当たるものを引き渡すか」を決めます。時効の残りが短いものを先に回す、といった順番もこの段階で決めます。 段階2 資料の受領と方針の確認 請求内容と入金履歴を確認し、弁護士が対応方針を判断します。この段階でよく出てくるのが、「そもそも請求額が確定していない」という問題です。レセプトの返戻・査定、限度額適用認定証の後日提出などで金額が動く可能性がある債権は、先に金額を固めます。金額が違う書面を出してしまうと、後の交渉でも手続でも足を引っ張ります。 段階3 連絡・支払いの調整、必要なら法的手続へ 対象の方への連絡や支払いに関する調整を、個別の事情に応じて進めます。ここでの分岐は3つです。 支払いの合意ができる——一括または分割で合意し、書面にします。分割であれば、その書面が時効の更新にもなります 連絡が取れない・所在が分からない——所在の調査や、相続人の調査に進みます 争いがある/応じない——支払督促・少額訴訟・通常訴訟のいずれに進むかを、費用対効果を含めて協議します 3つめに進むかどうかは、前述のとおり医療機関のご判断です。弁護士は見通しと費用を示します。 段階4 入金と対応状況の報告、そして次の仕込み 入金と対応状況を報告し、次に必要な手続があれば協議します。継続でお預かりしている場合は、ここで翌月ぶんの引き渡しも同時に回ります。1件ずつの依頼と違い、報告と引き渡しが同じサイクルに乗るので、院内の事務は月次の定例作業になります。 止まりやすいのは「入金情報が弁護士側に届かない」ところ 実務でいちばん多い詰まりがこれです。患者さまが窓口や振込で支払われたのに、その情報が弁護士側に届かないまま督促が続く。医療機関にとっても、患者さまにとっても、避けたい事故です。 防ぐ方法は単純で、入金情報の返し方を先に決めておくことに尽きます。 返す頻度を決める(例:週1回、決まった曜日) 返す窓口を1つにする(担当者個人ではなく、部署のアドレス等) 入金が1円でもあったら返す(一部入金も対象。時効の判断に影響します) 「入金なし」の月も、その旨を返す(沈黙を「まだ来ていない」と読ませない) 段階 主に弁護士側が行うこと 医療機関側で必要なこと 1 対象・範囲の確認 受任可否と費用のご案内、引き渡し条件の設計 概算の件数・金額帯・経過期間・院内対応の状況を伝える 2 資料の受領・方針確認 請求内容と履歴の確認、方針の判断 一覧・履歴・書面の写しを決めた様式で渡す/請求額を確定させる 3 連絡・調整・手続 通知、連絡、支払条件の調整、手続の追行 法的手続に進むかの判断/院内の支払条件の基準を示す 4 報告・次の判断 対応状況・入金・次の予定の報告 入金情報を決めた頻度・窓口で返す/翌月ぶんを引き渡す ※ 各段階に要する期間は、件数・相手方の状況・手続の選択によって大きく変わります。 報告と引き渡しを、月次の定例作業に落とします 対応段階・入金・次の予定をまとめてお返しし、同じサイクルで翌月ぶんをお預かりします。入金情報の返し方まで先に決めるので、督促の行き違いが起きにくくなります。大阪の弁護士法人ブライトが、医療機関の未収金を継続受託しています。 医療費・未収金回収の継続受託を見る 外部法務部サービスを見る 06-4965-9590(企業法務窓口)LINEで相談する どこまでが医療機関の判断として残るか 「任せる」と言っても、医療機関が手を離せない判断があります。むしろ、ここを弁護士に丸投げしてしまうと、あとで院内の方針と食い違います。残るのは次の4つです。 残る判断① 誰に請求しないと決めるか すべての未収金を機械的に請求対象にするわけではありません。生活の状況、地域との関係、これまでの経緯。請求を控えるという判断があり得ますし、それは医療機関の経営判断です。「対象から外す」という判断を医療機関が持っている限り、回収は経営方針の範囲内に収まります。 残る判断② どこで法的手続に進むか 前述のとおり、費用対効果の線引きは医療機関が決めます。弁護士から出すのは、その手続に進んだ場合の見通しと費用です。基準を先に決めておけば、案件ごとに決裁を回す必要がなくなります。 残る判断③ 減額・免除・貸倒れの線引き 回収できない債権をいつまで帳簿に残すかは、経理・税務の判断と重なります。この点は顧問税理士と相談する領域ですが、「法的な回収手段を尽くしたか」という事実の部分は弁護士側で記録が残ります。院内の判断材料として使えるよう、対応の履歴を残す形にしておくことをおすすめします。 残る判断④ 診療を続けるかどうかは、支払いと切り離す これは判断が「残る」というより、切り離さなければならないものです。未払いがあることだけを理由に診療を拒むことは、応招義務との関係で原則として認められません。判断の枠組みは未収金があると診療を断れる?応招義務と医療費不払いの判断枠組みで整理しています。 弁護士に回収を委任していても、この整理は変わりません。支払いの問題は支払いの手続で、診療の問題は医学的な判断で。院内で説明する際も、この切り分けを崩さないでください。 決めること 主体 請求対象に含めるか、外すか 医療機関 請求額の確定(保険請求・限度額の反映) 医療機関 連絡の方法・トーン、支払条件の枠 医療機関と弁護士で協議 法的手続に進むかどうか 医療機関(弁護士が見通しと費用を提示) 手続の選択と追行、書面の作成 弁護士 減額・免除・貸倒れの処理 医療機関(税務は顧問税理士と) 診療を継続するかどうか 医療機関(医学的判断・応招義務の枠組みで) 弁護士以外に委託する選択肢との関係(制度上の整理) 「回収代行に頼めないのか」というご質問をいただくことがあります。ここは制度の建て付けを知っておくと迷いません。優劣の話ではなく、法律がそれぞれに与えている役割が違うという話です。 債権回収会社(サービサー)が扱えるのは、法律で決められた「特定金銭債権」 債権回収会社は、債権管理回収業に関する特別措置法にもとづき法務大臣の許可を受けた株式会社です(同法3条)。ただし同法が扱いを認めているのは、同法2条1項が列挙する「特定金銭債権」に限られます。列挙されているのは、金融機関等の貸付債権、リース・クレジットに関する債権、資産の流動化に関する債権、法的倒産手続や取引停止処分を受けた者が有していた金銭債権などです。 医療機関が患者さまに対して有する診療費・入院費の債権は、この列挙には含まれていません。したがって、通常の未収金について債権回収会社に管理・回収を委託するという選択肢は、制度上とりにくいということになります。これは債権回収会社の能力の問題ではなく、法律が業務範囲を限定している結果です。 集金代行・収納代行は「事務の代行」であって、交渉や手続の代理ではない 口座振替の収納、請求書の発送、入金の突合といった事務の代行サービスは、医療機関でも広く使われています。これらは未収金を「作らない」側で効く仕組みであり、実際に有用です。 一方で、支払いに応じない相手との交渉、支払条件の合意、法的手続の追行は、事務の代行とは性質が異なります。どこまでが事務の代行で、どこからが法律事務なのかを、契約前に確認しておくことが重要です。 弁護士法72条・73条が置かれている理由 弁護士法は次のように定めています。 (非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。 弁護士法72条 あわせて73条は、他人の権利を譲り受けて、訴訟その他の手段によってその権利を実行することを業とすることを禁じています。委託する側の医療機関にとって実務的に大事なのは、「委託した先が、その業務を行える法的な立場にあるか」を契約前に確認しておくことです。ここが曖昧なまま進むと、取り交わした合意の効力や、その後の法的手続で問題が生じることがあります。 この項の根拠 弁護士法72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)・73条(譲り受けた権利の実行を業とすることの禁止) 債権管理回収業に関する特別措置法2条1項(特定金銭債権の定義)・3条(営業の許可) 個人情報の保護に関する法律27条5項1号(委託に伴う提供) 弁護士に相談すべきケース 未収金の督促が特定の職員に集中し、その人が抜けたら止まる状態になっている——難しい案件かどうかではなく、工程が属人化していることが問題です 毎月一定数の未収金が新たに立っている——1件ずつの依頼ではなく、継続で預ける形が合います 院内リストの経過年数を把握できていない——時効の残りが分からないまま置かれている債権は、判断を先送りしただけ失います 郵便が戻ってくる、連絡が取れない債権が溜まっている——所在の調査は院内では手段が限られます 患者さまが亡くなり、誰に請求するか整理できていない——相続人の調査と、相続放棄が出た場合の扱いが必要です 請求内容に異議が出た、相手方に代理人が付いた——院内の担当者が応対を続けると不利な材料が残ることがあります 身元保証書や分割の書面はあるが、その書面で請求できるか不安がある——書面の点検から始めるのが早道です 回収を外に出す前に、そもそも未収金を減らす側から手を付けたい——限度額の案内、分割の決裁基準、書式の統一が入口です よくある質問 何件くらいからまとめて委託する意味がありますか? 件数だけで決まるものではありません。判断の実質は「同じ工程を繰り返しているか」です。毎月新たに未収が立ち、督促の作業が定期的に発生しているなら、件数が多くなくても継続で預ける形が合います。逆に、年に数件で担当者の余力の範囲に収まっているなら、院内で続けながら書式と記録の残し方だけ整える、という選択もあります。件数・金額帯・経過期間をうかがえば、どちらが合うかの整理からご一緒できます。 少額の未収金も対象になりますか? 継続してお預かりする件数、債権額、経過期間を踏まえて、受託の範囲と採算の見通しをご相談します。少額であることだけを理由に一律にお断りするものではありません。ただし、すべての債権をお引き受けできるとは限らず、回収をお約束するものでもありません。少額の債権については、法的手続に進むかどうかの線引きを先に決めておくほうが、結果として院内の判断は軽くなります。 費用はいくらぐらいかかりますか? 業務範囲と件数を確認したうえで、個別にお見積りします。金額をこの記事に書けないのは、統一の報酬基準が廃止され、各事務所が自ら基準を作る仕組みになっているためです(弁護士の報酬に関する規程3条)。ご確認いただきたいのは、①弁護士報酬と実費が分けて書かれているか、②どこまでが範囲内で、どこからが追加対応か、③中途で終了した場合の清算方法、の3点です。裁判手続などの追加対応が必要になる場合は、進める前に弁護士報酬と実費を区別してご案内し、費用対効果を含めて協議します。 弁護士費用の支払いで源泉徴収は必要ですか? 所得税法204条1項は「居住者に対し国内において次に掲げる報酬……の支払をする者」に源泉徴収義務を課しており、同項2号に弁護士の業務に関する報酬が挙げられています。条文が対象としているのは居住者(個人)への支払であるため、弁護士法人に対して支払う報酬は、この規定による源泉徴収の対象にはなりません。弁護士法人ブライトへのお支払いもこれに当たります。経費処理や貸倒れの扱いを含め、税務の具体的な処理は顧問税理士にご確認ください。 患者さまとの関係が悪くなりませんか? ここは最初に方針を決めておく部分です。医療機関としてどこまでの連絡を望まれるか、どの段階で法的手続に進むか、支払いに関する事情をどう考慮するかを確認したうえで、その方針に沿って進めます。支払いに関する事情を伺って個別に判断する必要がある場面では、弁護士が対応します。また、請求内容に異議が出ている場合は、回収を急ぐ前にその中身を確認します。支払いの問題と、診療を継続するかどうかの判断は、切り離して扱います。 院内の督促でどこまでやってから相談すればよいですか? 「やり切ってから」と考える必要はありません。むしろ、時効の残りが短い債権や、郵便が戻ってきている債権は、院内対応を重ねるほど選択肢が減ります。院内で整えておくと後が早いのは、①未収金の一覧(患者番号・診療年月・金額・残額)、②入金の履歴、③これまでの督促の記録(日付と方法)、の3つです。これらがそろっていれば、相談の初回から具体的な仕分けができます。 大阪の病院ですが、まず何から相談すればよいですか? 未収金のおおよその件数・金額帯・経過期間・院内の対応状況の4点をお聞かせください。初回に患者さまの氏名や診療情報をお送りいただく必要はありません。弁護士法人ブライトは大阪を拠点に、医療法人・クリニックの未収金回収を継続してお預かりし、あわせて院内書式の整備や限度額の案内といった「未収金を作らない」側の運用にも関わっています。顧問先142社の企業法務を担っており、企業法務部の弁護士歴平均14年以上の弁護士が対応します。お電話(06-4965-9590/平日9:00〜18:00)またはLINEからご連絡ください。ご相談の内容をうかがったうえで、お引き受けできるかどうかをお伝えします。 未収金の対応を、継続できる形に整える 概算の件数・金額帯・経過期間・院内の対応状況をお聞かせください。院内で続けるぶんと委託するぶんの線引きから、資料の受渡し、報告の形までまとめて設計します。すべてをお引き受けできるとは限らず、回収をお約束するものではありません。大阪・弁護士法人ブライト/企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが対応します。 医療費・未収金回収の継続受託を見る 外部法務部サービスを見る 06-4965-9590(企業法務窓口)LINEで相談する この記事と併せて読まれている記事 医療費・未収金回収の継続受託|病院・医療法人向け 医療費(診療費・入院費)の消滅時効は何年か 未収金があると診療を断れる?応招義務と医療費不払いの判断枠組み 医療費の未収金はどの手続で回収する?支払督促・少額訴訟・通常訴訟の使い分け 医療機関の督促状・内容証明の書き方 入院の身元保証人に医療費を請求できるか 患者が亡くなったあとの医療費は誰に請求するか 高額療養費・限度額適用認定証で未収金を「作らない」 医療費の分割払い合意書の作り方 債権回収を弁護士に依頼する費用(一般の企業間取引向け) 企業法務トップ 未収金の回収を継続して預けられる弁護士をお探しの医療機関は、弁護士法人ブライトへお問い合わせください。院内で続けるぶんと委託するぶんの線引き、資料の受渡し、報告の形まで一緒に設計します。顧問先142社の企業法務を担っており、企業法務部の弁護士歴平均14年以上の弁護士が対応します。企業法務窓口:06-4965-9590(平日9:00〜18:00) 法務部がない会社の、外部法務部。 顧問より一歩、会社の中へ——これが弁護士法人ブライトの顧問サービス(みんなの法務部プラン)の基本姿勢です。医療法人・クリニックでも、未収金の回収から院内規程・契約書・労務まで日常的に相談できる体制を。企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームで、142社の顧問先と向き合っています。 ▶ 外部法務部サービスを詳しく見る