この記事の監修者 和氣 良浩(わけ よしひろ) 弁護士法人ブライト|代表弁護士 大阪弁護士会 取扱分野:顧問弁護士・企業法務・広告表示・債権回収 「注釈を付けておけば大丈夫だと思っていたのに、考査で止められた」「※印は打ってあるのに、なぜ差し戻されるのか分からない」——広告を出す側の社内で、いちばん繰り返し起きる差し戻しがこの型です。 理由はひとつで、打消し表示は「付けたかどうか」では評価されないからです。評価されるのは、強調表示とセットで、読む人が実際にその内容を認識できるかどうか。消費者庁が公表している留意点も、実態調査の結果も、一貫してこの一点を見ています。文字を小さくして隅に置いた注釈は、法的には「書いていない」に限りなく近い扱いになり得ます。 この記事では、大阪で企業法務を扱う弁護士法人ブライトが、広告を出す側の担当者(販促・EC・通販・制作・考査・管理部門)に向けて、消費者庁の一次資料に沿って文字の大きさ・位置・距離・動画の秒数・スマホでの見え方のOK/NGを対照表にまとめ、出稿前に社内で通せる確認手順まで整理します。なお、個別の表示が景品表示法に触れるかどうかは表示全体から判断される領域です。本記事は一般的な整理であり、個別の広告について結論を示すものではありません。 その注釈、出してよいか毎回止まっていませんか 「どこまで小さくしてよいか」を毎回議論しているうちは、差し戻しは減りません。弁護士法人ブライトは大阪で、広告表現の確認を出稿の流れに入ってお預かりしています。顧問先140社・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが対応します。 広告審査の継続受託を見る 外部法務部サービスを見る 06-4965-9590(企業法務窓口)LINEで相談する 結論——「注釈を付けたか」ではなく「強調表示と一体で認識できるか」で決まる まず結論から。打消し表示の適否は、次の3つの関門を全部通ったかで判断されます。1つでも落ちれば、注釈があっても「一般消費者が正しく認識できない」と評価され得ます。 関門 問い 落ちたときに起きること ①気付けるか そこに注釈があることに気付くか 文字が小さい・隅に一括・背景と同化・別画面 ②読み終えられるか 表示されている間に読み切れるか 動画の秒数不足・情報量過多・スクロールで消える ③読んで分かるか 読んだ内容を理解できるか 専門用語・二重否定・条件が入り組んだ書き方 出発点は「打消し表示が要らない強調表示にできないか」 実務でいちばん見落とされているのがここです。消費者庁は、事業者に求められる姿勢として、まずは打消し表示がなくても強調表示だけで実際を認識できる内容にすることが求められるとし、打消し表示は「やむを得ず」使うものという位置づけを取っています。 つまり、注釈の文字サイズを何ポイントにするかを議論する前に、キャッチコピー側を直せないかを先に検討するのが正しい順番です。「全員」を「初回のお客様は」に、「無料」を「初月無料(2か月目以降◯円)」に書き換えれば、そもそも打消し表示が不要になることは珍しくありません。差し戻しが多い会社ほど、この順番が逆になっています。 「※で書いた」が通らない法的な理由 景品表示法5条は、商品・役務の内容について実際のものより著しく優良だと示す表示(1号・優良誤認)と、取引条件について著しく有利だと誤認される表示(2号・有利誤認)を禁じています。ここで判断の対象になるのは表示全体から一般消費者が受け取る認識であり、注釈が物理的に紙面やページ上に存在するかどうかではありません。 したがって、「例外がある旨は※で書いてあります」という説明は、一般消費者がその※に気付けない・読み切れない・読んでも分からない状態であれば、抗弁として機能しません。ここが、社内の考査と現場の感覚が最もズレる点です。 押さえておく条文の骨格 景品表示法5条(不当な表示の禁止)1号=優良誤認、2号=有利誤認。違反すると7条の措置命令、8条の課徴金納付命令(対象期間の売上額×3%。ただし算定額が150万円未満のときは命じられない)、48条の罰金(優良誤認・有利誤認に当たる表示をしたこと自体に科され得るもので、100万円以下)の射程に入ります。措置命令に従わなかった場合は46条(2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)が別にあり、49条は法人に対する両罰規定を置いています。また7条2項は、優良誤認に当たるかの判断に必要なときに表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、提出がなければ不当表示とみなす(不実証広告規制)と定めています。あわせて22条は、事業者に表示の管理体制の整備を義務づけています。 キャッチ側を直すか、注釈を直すか。判断の入口からご相談ください 打消し表示の議論は、強調表示の書き換えで消えることがあります。大阪から、出稿前の判断を確認の作業ごとお預かりします。 広告審査の継続受託を見る 外部法務部サービスを見る 06-4965-9590(企業法務窓口)LINEで相談する 全媒体に共通する4要素——文字の大きさ・バランス・配置・背景 消費者庁は、適切な表示方法かどうかを文字の大きさ、強調表示との大きさのバランス、配置箇所、背景との区別などから総合的に判断するとしています。紙面・動画・Web(PCとスマートフォン)のどの媒体でも共通してかかる4要素です。 ①文字の大きさ——「何ポイント以上」という数値基準は示されていない 最初に押さえるべき現実として、公表資料に「◯ポイント以上ならよい」という基準はありません。示されているのは、その表示物を一般消費者が実際に目にする状況において適切な大きさで表示する必要がある、という考え方です。手に取って読む紙媒体と、駅構内で離れて見るポスターでは、適切な大きさが違うという整理になっています。 裏を返せば、社内で「8ポイントなら通る」といった固定ルールを置くこと自体は否定されませんが、それは社内の運用目安であって、法的な安全圏ではないという前提で扱う必要があります。 ②強調表示とのバランス——単独の大きさより「比」で見る 打消し表示は強調表示と「対」の関係にあるため、強調表示から受ける印象が強いほど、打消し表示はより明瞭に行う必要があるとされています。強調表示の近くに置いてあっても、強調が大きな文字で打消しが小さな文字であれば、強い方に注意が向いて気付けない、という評価になり得ます。 実態調査で使われたWeb広告の表示例は、強調表示が最大48ポイント、打消し表示が10ポイント程度という構成でした。この表示例では、各強調表示に気付いた回答者のうち84.3%〜94.2%が、その強調表示に対する打消し表示を見落としていました。10ポイントは決して読めない大きさではありません。落ちた原因は文字そのものの大きさではなく、強調表示との比です。 ③配置箇所——「※」は場所の代わりにならない 配置は、打消し表示だと認識させるための重要な要素とされています。判断では、強調表示とどの程度離れているかに加えて、それぞれの文字の大きさも勘案されます。 実務でとくに効くのは、強調表示の近くに「※」を打っておけば、離れた場所に本文を置いてよい、という運用は支持されていないという点です。消費者庁は、強調表示の近くに打消し表示の存在を連想させる「※」等の記号が表示されていたとしても、離れた別の画面に打消し表示がある場合で、他の表示によっても気付かないときは問題となるおそれがある、と明示しています。 ④文字と背景の区別——コントラストと「模様」の両方 明るい水色・オレンジ・黄色の背景に白文字、といった対照的でない組み合わせは、気付かれないおそれがあるとされています。加えて見落とされがちなのが背景の模様です。無地の単色ではなく複数の色彩が入り組んだ写真の上に注釈を重ねると、コントラスト比の計算上は足りていても区別がつきにくい、という評価になり得ます。実態調査のグループインタビューでも「背景の写真に文字が同化しており、打消し表示に気付かなかった」という意見が挙がっています。 表1:全媒体共通の4要素|落ちやすい形と、通しやすい形 要素 落ちやすい形(NG方向) 通しやすい形(OK方向) 文字の大きさ 見落とすほど小さい/媒体の見られ方(離れて見るポスター等)を考えていない その媒体を実際に目にする距離・状況で読める大きさ。判断根拠を社内に記録する 強調表示とのバランス 強調が大きく打消しが極端に小さい(例:48pt対10pt) 強調が強いほど打消しも明瞭に。比で設計し、キャッチが大きくなったら注釈も見直す 配置箇所 強調表示から離れた場所・ページ下部に一括/「※」だけ打って本文は別の場所 強調表示に隣接。可能なら同じ文の中・同じ枠内に置く 背景との区別 淡色背景に白文字/写真や模様の上に重ねる 無地の背景に対照的な色。強調表示と文字色・背景色をそろえて「一体」に見せる 書きぶり 強調表示と矛盾する内容を注釈で打ち消す(例:商品には効果がない旨を注釈で書く) 強調表示との関係が文脈で分かる表現。矛盾するなら強調表示の側を直す この項の根拠(一次資料) 消費者庁「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点(実態調査報告書のまとめ)」第2の1・2⑴(文字の大きさ/バランス/配置箇所/背景との区別) 同 第2の2⑸ウ(「※」等の記号があっても、離れた別の画面にある場合の評価) 消費者庁「打消し表示に関する実態調査報告書(一部訂正)」概要 表示例①(強調最大48ポイント・打消し10ポイント程度/見落とし84.3%〜94.2%) 媒体別のOK/NG——紙面・動画・Web(PC)・スマートフォン 共通の4要素に加えて、媒体ごとに固有の落とし穴があります。社内の考査基準を1本にまとめている会社ほど、媒体を横断したときに事故が起きます。 紙面広告——「隅の一括注意書き」がいちばん危ない 紙面は、読む側に時間の制約がなく能動的に読める媒体です。それにもかかわらず、視線調査では、強調表示に注意を向けた人は、そこから離れた箇所には注意が向かない可能性があることが判明しています。とくに、紙面の隅に小さい文字だけで一括して並べた注意書きは、注意が向かない可能性があることが確認されました。 実態調査では、新聞広告の打消し表示のうち8ポイント未満の小さな文字で表示されているものが56.9%、配置は強調表示から「5cm以内」が最も多く76.5%でした。距離は近くても文字が小さい、という組み合わせが実務の主流だということです。加えて、注意書きの内容を理解するのに他の情報と結びつけて読む必要がある場合、それらが一体として認識できるように置かれていないと、内容を認識できないおそれがあるとされています。 動画広告——秒数・音声・画面またぎ・場面数の4点 動画は、手元に残らないという決定的な特徴があります。留意点は、表示時間に加えて、強調表示と打消し表示が別の画面になっていないか、音声で読み上げているのは強調表示だけではないか、内容の異なる強調と打消しが何場面も出てこないかを挙げています。 数字で見ると、実態調査では打消し表示の表示時間が2秒以下のものが42.4%、強調表示の後や別画面に打消し表示が出るものが20.3%でした。そして15秒の動画で2秒間だけ、強調表示は音声と文字・打消し表示は文字のみという表示例では、強調表示に気付いた回答者の92.5%が打消し表示を見落としています。75秒の動画で3場面×5秒ずつ表示した例でも、97.6%が6つの打消し表示のうち少なくとも1つを、91.3%が半数以上を見落としました。 ここから導かれる実務上の方針は明確です。重要な条件は、文字と音声の両方で、他の情報を同じ画面に入れずに伝える。留意点も、商品・サービスの選択にとって重要な内容を表示する場合には、文字と音声で同じ内容を表示するとともに、その内容だけに注意を向けられるよう他の情報を同一画面に含めないことが求められる、としています。 Web広告(PC)——1スクロール離れたら別物と考える PCのWeb広告では、スクロールが必要な場所にある打消し表示は、同一画面内にあるものより読まれない傾向が確認されています。実態調査で、強調表示から1スクロール下に打消し表示を置いた表示例では、強調表示に気付いた回答者の67.7%が打消し表示を見落とし、その内訳として57.6%が「文字が小さい」、40.5%が「画面を下に移動させる必要があり、文字の存在に気づきにくい」と回答しました。 なお、実態調査で「強調表示から打消し表示までスクロールが必要」だった広告はPCで21.2%、スマートフォンで13.6%でした。数としては少数派ですが、落ちたときの見落とし率が高い構成だと理解しておくべきです。 Web広告(スマートフォン)——アコーディオンとCVボタンの2大事故 スマートフォンは、留意点が最も紙幅を割いている媒体です。固有の論点は6つ——アコーディオンパネル、コンバージョンボタンの位置、強調表示との距離、文字の大きさ、文字と背景の色や模様、そして他の画像等に注意が引きつけられないかです。 アコーディオン(開閉パネル)に注釈を畳む運用は、実務で非常によく使われますが、調査結果は厳しいものでした。「よくある質問」のパネルに打消し表示を入れた表示例では、強調表示に気付いた人のうち44.9%がどの項目もタップせず、一部だけタップした人でも83.4%〜93.8%がパネル内の打消し表示を見落としています。留意点は、ラベルに抽象的な表現を使っていて、タップする必要性に気付けないときは問題となるおそれがあるとしたうえで、パネル内の内容を通常の画面の強調表示に隣接した箇所にも表示することを求めています。 もうひとつがコンバージョンボタン(申込み・購入ボタン)の位置です。健康食品の表示例では、強調表示に気付いた人の68.2%〜81.3%が打消し表示を見落とし、ボタンをタップした人に限ると79.3%〜86.8%まで上がりました。ボタンを押すと自動で注文フォームまで飛ぶ設計だと、その間にある注釈を物理的に通り過ぎてしまうためです。 一般消費者側の実態としても、スマートフォンで購入・申込みをしたことがある551人のうち39.2%が「打消し表示を見落として誤認して購入・申込みをしたことがある」と回答しています。ここは、行政の指摘だけでなく、解約・返金の問い合わせとして自社に返ってくる論点でもあります。 表2:媒体別のOK/NG対照表 媒体 落ちやすい形(NG方向) 通しやすい形(OK方向) 関連する実測値 紙面・チラシ 紙面の隅に小さい文字で注意書きを一括掲載/強調表示と字体・色・背景が違う 強調表示に隣接して配置。文字の大きさ・色・背景をそろえ、一体として読ませる 新聞広告の打消し表示のうち8pt未満が56.9% 動画(短尺) 2秒程度しか出さない/打消しだけ文字のみ/注意を引く人物・商品画像と同じ画面に小さく置く 文字と音声で同じ内容を伝え、その画面に他の情報を入れない 15秒動画・2秒表示・文字のみの例で見落とし92.5% 動画(長尺) 強調表示の後や別画面に打消しを出す/内容の違う強調と打消しを何場面も重ねる 強調と打消しを同一画面に。場面数と情報量を絞る 75秒・3場面の例で97.6%が1つ以上見落とし Web(PC) 強調表示から1スクロール以上下に注釈を置く/ページ最下部に一括 同一画面内に。やむを得ず離す場合は、強調表示の側で存在と内容の見当がつく書き方にする 1スクロール下の例で見落とし67.7% スマホ(構成) 「よくある質問」等のアコーディオンに畳む/ラベルが抽象的 通常の画面の強調表示の隣にも同じ内容を出す。タップさせる前提にしない 44.9%がどの項目もタップせず スマホ(導線) CVボタンが強調表示と同じ画面、注釈はもっと下。押すと自動で注文フォームへ飛ぶ ボタンに到達する前に、操作なしで注釈が目に入るようにする ボタンを押した人の見落とし79.3%〜86.8% スマホ(見た目) 強調表示より小さい文字/画像の上に重ねる/目立たない色 同じ画面の他の表示と比べても注意を引く大きさに。強調表示と色・背景をそろえる スマホでの購入経験者の39.2%が見落としで誤認経験 この項の根拠(一次資料) 消費者庁「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点(実態調査報告書のまとめ)」第2の2⑵〜⑸(紙面/動画/Web(PC)/Web(スマートフォン)) 消費者庁「打消し表示に関する実態調査報告書(一部訂正)」概要 第3の2・第4(8pt未満56.9%/5cm以内76.5%/2秒以下42.4%/後・別画面20.3%/スクロール要 PC21.2%・スマホ13.6%/表示例②③④⑤) 消費者庁「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書(概要)」第3の4・5、第4の2(購入経験者551人の39.2%/表示例①アコーディオン/表示例②③コンバージョンボタン) 媒体をまたぐと基準が崩れる、という会社は多いです 紙・動画・Web・スマホで落ちる理由は別物です。弁護士法人ブライトは大阪を拠点に、媒体ごとの確認の型づくりからお預かりしています。企業法務窓口:06-4965-9590(平日9:00〜18:00) 広告審査の継続受託を見る 外部法務部サービスを見る 06-4965-9590(企業法務窓口)LINEで相談する 「ちゃんと書いてある」のに落ちる4類型——内容の側の問題 ここまでは見せ方の話でした。もう一方の軸が書いてある内容が理解できるかです。消費者庁は、内容の側で問題になりやすい型を4つに分類しています。差し戻しの理由が「文字は読めるのに意味が通らない」であれば、この4類型のどれかに当たっていないか確認してください。 ①例外型——「一部対象外」でごまかす 強調表示に対して何らかの例外がある旨を書いているが、読んでも内容を理解できない型です。読み手は「例外なく使える」という認識のままになります。「一部商品は対象外です」「店舗により異なります」のように、どれが対象外なのかを読み手が特定できない書き方が典型です。 ②別条件型——割引の重ね掛けと、定期購入の解約条件 割引期間や割引料金を強調する一方で、その適用に別途の条件があることを注釈に書いている型です。消費者庁はとくに、適用条件や期間の異なる複数の割引がある複雑な料金体系で、全部の割引が乗った金額と、ある特定の割引の期間だけを並べて強調する構成を名指しで挙げています。通信・サブスクリプション系で頻出する形です。 もうひとつが定期購入です。初回価格の安さを強調し、解約条件を注釈に置いた結果、読み手が契約期間内の総額を誤認する——この型も明示的に挙げられています。初回価格と総額、継続回数の縛り、解約の締切日は、注釈ではなく本文側で扱うのが安全です。 ③追加料金型——「全て込み」と書いた後に別料金 「全て込み」などと追加料金が発生しないかのように強調しておきながら、別に追加料金が発生する旨を注釈に置く型です。設置費・送料・初期費用・オプションの必須指定などが該当します。「込み」と書くなら何が込みで何が別かを同じ文の中で言い切る、が実務上の分かれ目になります。 ④試験条件型——成分の試験結果で、商品の効果を語る 表示された効果・性能は、試験・調査によって客観的に実証された内容と適切に対応している必要があります。問題になるのは、商品ではなく成分について行った試験の結果をもとに、商品に効果があるかのように見せる構成です。注釈に試験条件が書いてあっても、外来語・業界用語・技術用語を含んでいて理解できなければ、読み手は「商品にその効果がある」と受け取ります。 さらに踏み込んだ指摘として、商品に効果があるかのような強調表示に対し、「成分に効果があるだけで実際の商品には効果がない」旨を注釈で書くような、強調表示と打消し表示が矛盾する場合は、誤認され問題となるおそれがあるとされています。矛盾は注釈で解消できません。 表3:内容の側の書き換え例 類型 落ちやすい書き方 書き換えの方向 例外型 「※一部対象外商品があります」 対象外の範囲を特定できる形にする(対象カテゴリ名・型番群・除外店舗を明記) 別条件型(割引) 「月々◯◯円!」+注釈に4つの割引の適用条件 本文で「◯か月目まで◯円、以降◯円」と期間別の実額を出す 別条件型(定期購入) 「初回◯円」+注釈に回数縛りと解約期限 本文で「初回◯円・2回目以降◯円・最低◯回・解約は次回発送の◯日前まで」まで書く 追加料金型 「工事費コミコミ」+注釈に「別途、出張費・撤去費」 「◯◯は含みます/△△は別料金です」を同じ文の中で言い切る 試験条件型 「◯%低減」+注釈に専門用語の試験条件 誰が読んでも分かる語で、何を対象に・どんな条件で測ったかを書く。商品と成分を混同させない この項の根拠(一次資料) 消費者庁「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点(実態調査報告書のまとめ)」第3の2⑴〜⑷(例外型/別条件型/追加料金型/試験条件型) 体験談に「個人の感想です」を付ける運用が通らない理由 打消し表示の中で、実務と行政の見方が最も大きくズレているのが体験談です。 打消し表示を付けても、受け取る認識は変わらない 消費者庁は、実態調査の結果から、商品を実際に使った人の体験談を見た一般消費者は「大体の人が効果・性能を得られる」という認識を抱き、「個人の感想です。効果には個人差があります」といった打消し表示に気付いたとしても、その認識が変容することはほとんどないと整理しています。 さらに、広告物は商品の効果・性能を訴求する目的で使うものである以上、そこで効果をうたいながら「効果、効能を表すものではありません」と書くのは、訴求していることと矛盾しており、意味をなしていないとまで述べています。定型文を末尾に付けておけば足りる、という運用は支持されていません。 求められているのは、注釈ではなく3つの数字 では何が求められるか。留意点は、体験談で誤認を招かないようにするには、事業者が行った調査における次の3点を明瞭に表示すべきとしています。 被験者の数および属性 そのうち体験談と同じような効果・性能等が得られた者が占める割合 体験談と同じような効果・性能等が得られなかった者が占める割合 また、商品の使用にあたって併用が必要な事項(食事療法・運動療法など)がある場合や、特定の条件を満たす人しか効果を得られない場合は、その旨を明瞭に表示する必要があるとされています。この3つの数字を出せないのであれば、体験談の使用自体を見直すのが、実務上いちばん安全な判断になります。 この項の根拠(一次資料) 消費者庁「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点(実態調査報告書のまとめ)」第4の1・2(体験談に関する景品表示法上の考え方/求められる表示方法) 体験談・お客様の声の扱いは、業種を問わず止まりやすい論点です 「使えるか・使えないか」ではなく「どう出すか」で分かれます。大阪から、判断に迷った1本を起点にご相談を承ります。 広告審査の継続受託を見る 外部法務部サービスを見る 06-4965-9590(企業法務窓口)LINEで相談する 出稿前に通す確認手順と、社内に残す記録 ここまでの整理を、社内で回せる形に落とします。差し戻しが多い会社に共通するのは、チェック項目の不足ではなくチェックする順番と、見る画面が決まっていないことです。 出稿前に通す7つの問い そもそも注釈が要らない強調表示にできないか(ここを飛ばさない) 強調表示と打消し表示は同じ画面・同じ枠・同じ文脈にあるか 打消し表示の文字は、強調表示との比で見て明瞭か 背景は無地か。写真・模様の上に重ねていないか (動画)重要な条件を文字と音声の両方で伝えているか。その画面に他の情報を入れていないか (スマホ)アコーディオンに畳んでいないか。CVボタンに到達する前に、操作なしで注釈が目に入るか 注釈の文章を、社内の別部署の人が一読して意味を取れるか(例外型・別条件型・追加料金型・試験条件型のどれかになっていないか) 校了データではなく「読者が見る画面」で確認する これが実務でいちばん効きます。デザインデータを大きなモニタで拡大表示して確認している限り、文字が小さくて気付けないという最大の論点は発見しようがありません。確認は次の条件で行ってください。 紙・チラシ=実寸で出力し、実際に読まれる距離で見る(ポスターなら離れて見る) Web=実機のスマートフォンで、拡大せずに上から順にスクロールする スマホ=CVボタンを実際にタップして、その動線で注釈を通り過ぎないか確かめる 動画=等倍で1回だけ見る(巻き戻さない・一時停止しない) とくに動画の「1回だけ見る」は重要です。制作側は同じ動画を何十回も見ているため、読めるはずだという感覚が固定されます。実態調査の結果も、1回見るだけでは全ての打消し表示を認識できない、という点を問題にしています。 残しておく記録 景品表示法22条は、事業者に表示の管理体制の整備を義務づけています。表示の根拠資料の保管はその中心です。また7条2項の不実証広告規制により、優良誤認の疑いを持たれたときは期間を定めて裏付け資料の提出を求められ、出せなければ不当表示とみなされます。出稿後に慌てて集める種類の資料ではありません。 打消し表示まわりで残すべきものは、最低限この4点です。 実際に掲載された版の現物(紙は実寸、Webはスマートフォン実機のスクリーンショット全画面分、動画は本編ファイル) 強調表示の裏付け資料(試験報告書・調査の生データ・対象範囲) 体験談を使った場合は、被験者数・効果が得られた割合・得られなかった割合の根拠 社内で誰がいつ確認し、どの点をどう直したかの記録 指摘を受けたときの初動 行政から連絡が来た場合、掲載を止めるかどうかと、既に購入した方への対応をどうするかは、別々に決める必要があります。景品表示法には、違反の疑いがある行為について事業者が是正措置計画の認定を申請できる確約手続(26条以下)の枠組みもあります。自己判断で表示だけ差し替えて経緯を残さないと、後から説明ができなくなります。連絡を受けた段階の資料を保全したうえで、弁護士にご相談ください。 自社でできること、自社では決められないこと 最後に、線引きの整理です。 自社でできること。強調表示の書き換えによる注釈の削減、上記7つの問いによる一次チェック、実機・実寸での見え方の確認、根拠資料と確認履歴の保管、媒体別の社内基準づくり。ここは外部に出さず社内で回すほうが速く、出稿のたびに精度も上がります。 自社では決めにくいこと。グレーゾーンの最終判断(「この大きさ・この距離で足りるか」は数値基準がないため、事例の蓄積と全体評価が要ります)、根拠資料が不実証広告規制に耐えるかの評価、体験談の割合開示をどこまで行うか、媒体考査で落ちた表現の代替案づくり、そして行政から連絡が来たときの対応。ここは判断を誤ったときの影響が措置命令・課徴金という形で出るため、外部の目を入れる価値があります。 継続で預ける形もあります。弁護士法人ブライトは、出稿のたびに単発で相談する形ではなく、広告表現の確認という作業ごと、出稿の流れに入ってお預かりする形をご用意しています。判断の理由を蓄積していくので、2回目以降は「前回こう整理した」から始められます。大阪を拠点に、顧問先140社の企業法務を担っており、企業法務部の弁護士歴平均14年以上の弁護士が対応します。 「この注釈で出してよいか」を、確認の作業ごとお預かりします 判断に迷った1本をお持ちいただくのが、確認の型を決めるいちばん良い材料になります。媒体・商材・出稿頻度をお聞かせください。 広告審査の継続受託を見る 外部法務部サービスを見る 06-4965-9590(企業法務窓口)LINEで相談する よくあるご質問 打消し表示は何ポイント以上にすれば問題ありませんか? 公表されている資料に「◯ポイント以上なら問題ない」という数値基準はありません。消費者庁が示しているのは、表示物の媒体ごとの特徴を踏まえ、一般消費者が実際に目にする状況において適切と考えられる大きさで表示する必要がある、という考え方です。判断では文字そのものの大きさだけでなく、強調表示との大きさのバランス、配置箇所、背景との区別も総合的に勘案されます。社内で「最低◯pt」というルールを置くこと自体は有用ですが、それを満たせば安全というものではない、という前提で運用してください。 強調表示の近くに「※1」と打って、注釈本文をページ下部にまとめる方式はどうですか? リスクの高い構成です。消費者庁は、強調表示の近くに打消し表示の存在を連想させる「※」等の記号が表示されていたとしても、強調表示から離れた別の画面に打消し表示が表示されている場合で、他の表示によっても気付かないときは、内容を正しく認識できないと考えられるとしています。紙面でも、隅に小さい文字だけで一括して並べた注意書きは注意が向かない可能性があることが視線調査で判明しています。強調表示に隣接した箇所に置き、文字の大きさ・色・背景をそろえて一体として認識できるようにすることが求められます。 スマートフォンで画面が狭く、強調表示の隣に注釈を入れる余白がありません。 消費者庁は、打消し表示の文字量が多く強調表示に隣接して表示できないような場合について、画面上に強調表示が表示された時点や、強調表示の画面からスクロールした時点で、一般消費者が特に操作等を行うことなく打消し表示を認識できるようにすることも有効であると考えられる、としています。ポイントは「操作を要求しない」ことです。タップして開くアコーディオンや、リンク先に飛ばす方式は、開かれない・戻られないという前提で設計する必要があります。 動画広告で、打消し表示は何秒出せばよいですか? 秒数の基準も示されていません。判断では、画面が表示されている時間に加えて、その画面に含まれる強調表示と打消し表示の文字量も勘案されるとされています。実態調査では、打消し表示の表示時間が2秒以下のものが42.4%を占め、15秒の動画で2秒間だけ文字のみで表示した例では、強調表示に気付いた回答者の92.5%が打消し表示を見落としていました。秒数を伸ばすより、重要な条件を文字と音声の両方で伝え、その画面に他の情報を入れないほうが確実です。 大阪の会社ですが、出稿前の表現確認を継続して相談できますか? ご相談いただけます。弁護士法人ブライトは大阪を拠点に、広告表現の確認を出稿の流れに入って継続的にお預かりする形をご用意しています。紙・動画・Web・スマートフォンで確認すべき点が異なるため、まずは主に使っている媒体と、直近で考査に落ちた・社内で判断が割れた案件をお聞かせください。企業法務窓口:06-4965-9590(平日9:00〜18:00) 差し戻しが続いている媒体から、順番に整えていけます 全媒体を一度に作り直す必要はありません。いちばん止まっているところから、確認の型をご一緒に決めます。 広告審査の継続受託を見る 外部法務部サービスを見る 06-4965-9590(企業法務窓口)LINEで相談する この記事と併せて読まれている記事 広告審査(表示の確認)の継続受託|広告を出す事業者向け 広告表現のリーガルチェックを社内でやる限界|外に出すかどうかの判断軸と、渡す前に揃えるもの 薬機法の広告表現でよく落ちる言い方と直し方|化粧品・健康食品のOK/NG対照表 ステマ規制で社内が止まる場面と確認の順番|「事業者の表示」の線引き 景品表示法の広告表現ルール|優良誤認と有利誤認の違い・不実証広告規制・媒体別の注意点 景表法(景品表示法)違反とは|措置命令・課徴金3%・罰則と業種別の違反事例 優良誤認表示の違反事例から学ぶ——景品表示法リスクを避けるための社長の判断基準 景品表示法の違反事例から学ぶ|NG表示パターン・措置命令事例・防止チェックリスト 景品表示法とは?規制の対象・違反事例・措置命令・課徴金の全体像 薬機法の広告規制チェックガイド|NG表現・措置命令・課徴金を避けるための対策 ECサイトの特定商取引法表記ガイド|必須記載事項・違反事例 サブスク・自動更新の落とし穴|利用規約と契約トラブルを防ぐ法務対策 企業法務トップ 打消し表示の線引きや、考査で落ちた表現の直し方を継続的に相談できる弁護士をお探しの事業者は、弁護士法人ブライトにお問い合わせください。大阪を拠点に、顧問先140社の企業法務を担っており、企業法務部の弁護士歴平均14年以上の弁護士が対応します。企業法務窓口:06-4965-9590(平日9:00〜18:00) 法務部がない会社の、外部法務部。 顧問より一歩、会社の中へ——これが弁護士法人ブライトの顧問サービス(みんなの法務部プラン)の基本姿勢です。社内に法務部を置けない規模でも、広告表示・契約書・労務・債権回収まで日常的に相談できる体制を。企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームで、140社の顧問先と向き合っています。 ▶ 外部法務部サービスを詳しく見る 【参照した一次資料】不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)5条1号・2号、7条1項・2項、8条1項、22条1項、26条、48条(e-Gov法令検索で条文を確認)/消費者庁「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点(実態調査報告書のまとめ)」/消費者庁「打消し表示に関する実態調査報告書(一部訂正)」および同概要/消費者庁「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書(概要)」/消費者庁「広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告書」。いずれも消費者庁ウェブサイト掲載のPDF原文で確認しています(2026年9月20日時点)。本記事では、消費者庁が公表している個別の措置命令事例について、事業者名・処分日を特定した記述は行っていません。