取締役の辞任手続き|権利義務取締役・辞任届テンプレ・損害賠償リスクを弁護士解説

取締役の辞任手続き|権利義務取締役・辞任届テンプレ・損害賠償リスクを弁護士解説

和氣良浩 弁護士

この記事の監修者

和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士

弁護士歴20年(2006年登録)/大阪弁護士会/大阪大学法学部卒

専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生

取締役の辞任は、本人の一方的な意思表示で可能ですが、「権利義務取締役」(会社法346条1項)として職務を続けなければならない場合や、辞任で会社に損害を与えた場合の賠償(民法651条2項)など、見落とすと紛争化する論点があります。辞任の手続き5ステップ・辞任届のテンプレート・変更登記の期限・辞任拒否時の対応までを、中小企業オーナー向けに弁護士が解説。大阪の弁護士法人ブライト(顧問先130社以上・弁護士歴平均14年以上)が監修。

📋 取締役辞任の手続き・トラブルでお困りの方へ

辞任を会社が認めない・後任者が決まらない・権利義務取締役で職務を続けなければならないなど、辞任後の紛争は意外に多いものです。大阪の弁護士法人ブライト「みんなの法務部」(顧問先130社以上)が経営権紛争の経験を踏まえ対応します。

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📌 この記事でわかること

  • 取締役辞任の法的位置づけ(民法651条・会社法330条)
  • 辞任の手続き5ステップと辞任届のテンプレート
  • 「権利義務取締役」(会社法346条1項)の意味と実務的影響
  • 辞任後2週間以内の変更登記(会社法915条1項)と過料
  • 会社が辞任を認めない場合の対応

取締役の辞任とは|会社法と民法上の位置づけ

取締役と会社の関係は会社法330条により委任関係とされ、民法の委任契約の規定が適用されます。委任契約は当事者からいつでも解除可能なため(民法651条1項)、取締役は会社の承諾を要せず、一方的な意思表示で辞任できるのが原則です。

「辞任」と「解任」の違い

取締役が職を離れる場面では「辞任」と「解任」は明確に区別されます。混同すると手続きを誤るため注意が必要です。

項目 辞任 解任
誰の意思で行うか 取締役本人 会社(株主総会)
根拠条文 民法651条1項/会社法330条 会社法339条1項
会社の同意 不要(一方的意思表示で効力発生) 株主総会決議で決定
損害賠償 原則なし(やむを得ない事由なき辞任で会社に損害を与えた場合のみ・民法651条2項) 正当事由なき解任は会社が損害賠償(会社法339条2項)
登記期限 2週間以内(会社法915条1項) 2週間以内(同上)

解任については代表取締役の解任|「解職」と「解任」の手続きを弁護士解説を参照してください。

辞任の効力発生時期

辞任は、辞任の意思表示が会社(代表取締役または取締役会)に到達した時点で効力を生じます(民法97条1項)。書面で辞任届を提出する場合は、会社が受領した日が効力発生日になります。

取締役辞任の手続き5ステップ

中小企業の実務で必要となる手順を5ステップで整理します。

STEP1:辞任の意思決定と時期の検討

辞任は本人の意思のみで可能ですが、円滑な引継ぎと損害賠償リスク回避の観点から、後任者の選任とのタイミング調整が望ましいです。委任契約は「相手方に不利な時期に解除した場合」、やむを得ない事由がなければ損害賠償の対象となります(民法651条2項)。重要案件の処理中・後任未定の状況での辞任は慎重に検討してください。

STEP2:辞任届の作成

辞任届は書面で作成するのが実務上の標準です。口頭でも法的には有効ですが、後日の紛争や登記実務で書面が必須となるため、書面で残します。テンプレートは本記事の後半で示します。

STEP3:辞任届の提出

辞任届は会社の代表取締役または取締役会に提出します。代表取締役自身が辞任する場合は、他の取締役(取締役会または取締役全員)に提出します。提出方法は持参・郵送・内容証明郵便などから選択し、特に会社との関係が悪化している場合は内容証明郵便+配達証明で送付するのが安全です。

STEP4:取締役会への報告と議事録作成

取締役会設置会社では、辞任の事実を直近の取締役会で報告します。後任者の選定が必要な場合は、同時に株主総会の招集を検討します。議事録には辞任日・後任者の選定状況を明記してください。取締役会議事録のテンプレートも参照してください。

STEP5:変更登記の申請(2週間以内)

取締役の辞任があった場合、会社は2週間以内に変更登記を申請する必要があります(会社法915条1項)。代表取締役が辞任する場合は、新代表取締役の選定とあわせて登記します。必要書類は通常、辞任届(または辞任を証する書面)と新役員選任の議事録です。

⚖️ 辞任のタイミング・後任者選任・登記まで一気通貫で支援

辞任の意思表示の方法、後任未定の場合の権利義務取締役の問題、変更登記の必要書類など、実務は微妙な判断が連続します。顧問契約(みんなの法務部)で司法書士との連携も含めてサポート可能です。

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「権利義務取締役」とは|辞任後も職務を行う義務(会社法346条1項)

中小企業の取締役辞任で最も見落とされやすい論点が、会社法346条1項の「権利義務取締役」です。

権利義務取締役の意味

会社法346条1項は、取締役の員数(定款で定めた員数または法定員数)が法令または定款に定める員数を欠くこととなる場合、辞任した取締役は新任者が就任するまで取締役としての権利義務を有すると定めています。つまり、辞任の意思表示自体は有効でも、後任者が就任していない以上、引き続き取締役として職務を行う義務が残るのです。

権利義務取締役となる典型例

  • 取締役会設置会社で取締役3名のうち1名が辞任し、補充選任しないまま定款の定足数を割る場合
  • 取締役会非設置会社で取締役1名のみの会社で、当該取締役が辞任した場合
  • 監査役会設置会社で監査役が欠員になる場合(同条1項は監査役にも準用)

権利義務取締役の責任

権利義務取締役は通常の取締役と同様の善管注意義務・忠実義務を負います(会社法330条・355条)。辞任の意思表示をしたつもりで職務を放置すると、任務懈怠による損害賠償責任(会社法423条1項)が発生する可能性があります。「辞任したつもりだから関係ない」という認識は極めて危険です。

権利義務取締役を解消する方法

  • 後任取締役を株主総会で選任する(会社法329条1項)
  • 定款の取締役員数規定を変更する(会社法309条2項11号・特別決議)
  • 裁判所に対し一時取締役(仮取締役)の選任を申し立てる(会社法346条2項)

後任選任が困難な場合は、裁判所への一時取締役選任申立てが現実的な選択肢です。

辞任届の書き方とテンプレート

辞任届の必須記載事項

  • 会社名(宛名)
  • 辞任する旨の明確な意思表示
  • 辞任の効力発生日
  • 辞任理由(必須ではないが、一身上の都合と簡潔に記載するのが一般的)
  • 提出年月日
  • 辞任する取締役の氏名・押印(届出印を使用)

辞任届テンプレート(取締役用)

辞任届

株式会社○○○○

代表取締役 ○○○○ 殿

私こと、貴社取締役の職を、令和○年○月○日をもって辞任いたします。

令和○年○月○日

住所:大阪府○○市○○○○

氏名:○○ ○○ ㊞

辞任届テンプレート(代表取締役用)

辞任届

株式会社○○○○

取締役各位

私こと、貴社代表取締役および取締役の職を、令和○年○月○日をもって辞任いたします。

取締役会において後任の代表取締役を選定いただきますようお願い申し上げます。

令和○年○月○日

住所:大阪府○○市○○○○

氏名:○○ ○○ ㊞

辞任届で使用する印鑑

辞任届の押印は個人の認印で足ります。ただし、変更登記の添付書類として法務局に提出する場合は、特に代表取締役の辞任時や、辞任者本人が法務局印鑑を提出していない場合には、実印と印鑑証明書が要求される実務運用が多く見られます。辞任届を作成する前に登記実務の窓口を司法書士に確認し、状況に応じて実印で押印するのが安全です。

辞任後の変更登記(2週間以内・会社法915条1項)

取締役の辞任があった場合、会社は2週間以内に本店所在地で変更登記を申請する必要があります(会社法915条1項)。期限を経過すると100万円以下の過料の対象となります(会社法976条1号)。

必要書類の標準パターン

  • 辞任届(または辞任を証する書面)
  • 後任取締役の就任承諾書(後任を同時選任する場合)
  • 株主総会議事録(後任選任のため)
  • 取締役会議事録(代表取締役選定のため)
  • 新任取締役の本人確認書類(一定の場合)

代表取締役辞任時の特殊論点

代表取締役が辞任する場合、後任の代表取締役を選定する必要があります。取締役会設置会社では取締役会の決議(会社法362条2項3号)、取締役会非設置会社では定款・株主総会・互選など、定められた方法によります。代表取締役の解任|「解職」と「解任」の手続きと組み合わせて確認してください。

よくあるトラブルと弁護士相談タイミング

トラブル①:会社が辞任を受理しない

会社(代表取締役)が辞任届の受領を拒否する、または「後任が決まるまで辞任を認めない」と主張するケースがあります。法的には、辞任の意思表示が会社に到達した時点で効力が生じるため、受理拒否自体は辞任の効力に影響しません。ただし、登記手続きで会社の協力が必要になることが多いため、紛争化した場合は内容証明郵便と司法書士・弁護士の関与が不可欠です。

トラブル②:後任が決まらず権利義務取締役のまま

会社法346条1項により、員数を欠く状態では辞任後も取締役の権利義務が残ります。後任選任が困難な場合は、裁判所への一時取締役選任申立て(会社法346条2項)を検討してください。申立て手続きには法的判断が必要です。

トラブル③:会社が登記申請を行わない

会社が変更登記を放置すると、辞任した本人が登記簿上は引き続き取締役として記録されてしまいます。これは取引先からの信用問題や、新会社設立時の阻害要因にもなります。会社が応じない場合は、辞任した本人が登記申請を促す内容証明・訴訟(登記引取請求訴訟)を検討します。

トラブル④:辞任後の損害賠償請求

民法651条2項により、相手方に不利な時期に解除(辞任)し、やむを得ない事由がない場合、会社から損害賠償を請求されることがあります。重要プロジェクト進行中の辞任など、リスクがある場合は事前の調整が必要です。

🚨 辞任後の紛争は経営権争いに発展しやすい

権利義務取締役・登記引取請求・損害賠償・株主からの責任追及など、辞任後の紛争は経営権紛争と密接にリンクします。早期に弁護士に相談してください。大阪の弁護士法人ブライトが経営権紛争・弁護士歴平均14年以上のチームで対応します。

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弁護士に相談すべきタイミング

  • 辞任を検討している段階:タイミング・後任者選定・損害賠償リスクの事前評価
  • 辞任届の作成段階:内容証明郵便で送付するか、形式を整える必要があるか
  • 会社が辞任を認めない・受領拒否:登記引取請求や訴訟戦略
  • 権利義務取締役の解消:一時取締役選任申立てや株主総会招集
  • 辞任後の損害賠償請求を受けた:反論と和解戦略

大阪の弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は、辞任の事前相談から会社との交渉・登記手続き・損害賠償対応まで、中小企業の外部法務部として一貫支援します。顧問先130社以上の実績・弁護士歴平均14年以上のチームが対応します。

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⚖️ 取締役辞任の主要法令

  • 委任契約の任意解除(民法651条1項):当事者はいつでも委任契約を解除できる。
  • 不利な時期の解除(民法651条2項):相手方に不利な時期に解除し、やむを得ない事由がない場合は損害賠償の対象。
  • 取締役と会社の関係(会社法330条):取締役と会社は委任関係。
  • 権利義務取締役(会社法346条1項):員数を欠く場合、辞任後も新任者就任まで権利義務を有する。
  • 一時取締役の選任(会社法346条2項):必要があるときは利害関係人の申立てにより裁判所が一時取締役を選任できる。
  • 変更登記(会社法915条1項):辞任を含む役員変更は2週間以内に登記。
  • 過料(会社法976条1号):登記懈怠は100万円以下の過料。

根拠:民法651条1項/2項・97条1項/会社法330条・339条・346条1項/2項・362条2項3号・915条1項・976条1号

よくある質問(FAQ)

Q1. 取締役は会社の承諾なしに辞任できますか?

はい。取締役と会社は委任関係(会社法330条)にあり、民法651条1項により当事者はいつでも委任契約を解除できます。会社の承諾は不要で、辞任の意思表示が会社に到達した時点で効力を生じます。ただし、相手方に不利な時期に辞任し、やむを得ない事由がない場合は損害賠償の対象となる可能性があります(民法651条2項)。

Q2. 「権利義務取締役」とは何ですか?辞任したのになぜ職務を続ける必要があるのですか?

会社法346条1項により、取締役の員数(法定員数または定款で定めた員数)を欠くこととなる場合、辞任した取締役は新任者が就任するまで取締役としての権利義務を有する制度です。会社の業務継続性を確保するための規定で、辞任の意思表示自体は有効でも、後任者就任までは引き続き取締役として善管注意義務・忠実義務を負います。

Q3. 会社が辞任届の受領を拒否した場合、辞任の効力はどうなりますか?

辞任の意思表示が会社に到達した時点で辞任の効力は発生するため、受領拒否そのものは効力に影響しません(民法97条1項)。ただし、登記手続きで会社の協力が必要になるため、紛争化が予想される場合は内容証明郵便+配達証明で送付し、到達の証拠を残しておくのが実務上の鉄則です。会社が登記申請を拒否する場合は、登記引取請求訴訟も検討します。

Q4. 辞任で会社に損害が生じた場合、損害賠償を請求されますか?

民法651条2項により、相手方に不利な時期に解除(辞任)し、やむを得ない事由がない場合は損害賠償の対象となります。重要プロジェクト進行中の突然の辞任など、明らかに不利な時期の場合は問題となる可能性があります。健康問題・家庭の事情・経営方針の根本的対立など、客観的にやむを得ない事情があれば免責されますが、立証は弁護士と相談しながら準備するのが安全です。

Q5. 辞任の変更登記を会社が怠った場合、どうなりますか?

変更登記は2週間以内に行う義務があり(会社法915条1項)、怠れば100万円以下の過料の対象です(会社法976条1号)。登記簿上は引き続き取締役として記録され、辞任した本人が取引先からの信用問題や新会社設立時の阻害要因として影響を受ける可能性があります。会社が応じない場合は、辞任者本人が登記引取請求訴訟を提起することで強制的に登記変更を実現できます。

監修

和氣 良浩 弁護士(大阪弁護士会)

弁護士法人ブライト 代表弁護士。経営権紛争・取締役辞任・代表取締役解任を含む企業法務を中心に、顧問先130社以上の予防法務を継続サポート。

※本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律アドバイスではありません。具体的な問題については、弁護士にご相談ください。

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本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
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