「うちは小さい会社だから不正は起きない」——そう思いながらも、どこか落ち着かない気持ちを抱えている社長はいないでしょうか。売上の計上タイミング、経費の使い方、取引先との癒着。個別の案件は問題なく処理されているように見えても、「仕組みとして本当に大丈夫か」と問われると、自信を持って答えられない。そういう不安は、会社が成長すればするほど静かに大きくなっていきます。 この記事では、コーポレートガバナンスと内部統制研究の第一人者である八田進二氏(青山学院大学名誉教授)の知見を入口に、社長が自社の不正リスクとどう向き合えばいいかを、法務の視点から整理します。難しい学術論ではなく、「判断の質を上げる」ためのヒントとして読んでいただければと思います。 八田進二氏とは何者か——なぜ社長が知っておくべきなのか 八田進二氏は、日本におけるコーポレートガバナンス・内部統制・会計不正の研究をリードしてきた学者であり実務家です。青山学院大学名誉教授として長年にわたって企業統治の理論を深め、公認会計士・監査審査会の会長も歴任しました。第三者委員会の実務、監査役・監査委員会の機能強化、ESGへの対応など、「会社が誰のために、どのように機能すべきか」という問いに正面から向き合ってきた人物です。 なぜ社長が八田氏の名前を知っておくべきかというと、彼の研究が「企業不正はなぜ起きるのか」という問いに対して、単なる法律論ではなく組織の構造的な問題として答えているからです。「悪い人がいたから不正が起きた」ではなく、「仕組みが甘かったから不正を防げなかった」という視点。この視点は、社長が今日から取り組めることを考えるうえで、非常に実用的です。 なぜ不正は「気づかないうちに」起きるのか 【図解】八田進二氏とは何者か——なぜ社長が知ってへの対応フロー ① 問題発生 → ② 事実確認・記録 → ③ 顧問弁護士に相談 → ④ 対応策の実行 ※ 弁護士に早期相談することで、リスクを最小化できます。 八田氏の研究が繰り返し指摘するのは、企業不正の多くが「一夜にして起きるわけではない」という事実です。小さな例外の積み重ね、「今回だけ」という判断の連続が、気づけば取り返しのつかない規模になっている。 社長が気づきにくい理由には、構造的なパターンがあります。 信頼が監視を省略させる:長年働いている幹部や経理担当への過度な信頼が、チェック機能を形骸化させる。 忙しさが確認を後回しにさせる:売上が伸びている時期こそ、内部の管理より外部の成長に意識が向きがち。 仕組みが属人化している:一人しかわからない業務フロー、一人しか見ない帳票。これが不正の温床になる。 「問題を報告しにくい空気」が存在する:社長に悪い情報が上がってこない組織文化は、実は非常に危険なサイン。 八田氏が強調するのは、ガバナンスとは「仕組み」と「文化」の両輪だという点です。規程を整えても、それが形だけになっていれば意味がない。逆に、文化がよくても、仕組みがなければ属人的な善意に頼ることになる。社長は両方に目を向ける必要があります。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 問題が起きる前にできること——予防としての内部統制 内部統制という言葉は大企業のものに聞こえますが、本質は「会社が意図した通りに動く仕組みを作る」ことです。規模にかかわらず、社長が今日から意識できる予防的アクションがあります。 業務の「見える化」と分業の原則 経理・発注・承認を一人の担当者が抱えている場合、その人が不正をしようと思えば比較的容易にできてしまいます。「発注者と承認者を分ける」「経理と出納を分ける」といった役割分離の原則を導入するだけで、不正の機会は大幅に減ります。 定期的な「法務ドック」の実施 健康診断と同じように、会社にも定期的なリスク確認が必要です。就業規則・契約書の形式は整っているか、稟議フローに抜け穴はないか、内部通報の仕組みは機能しているか——こうした確認を、弁護士や外部専門家と一緒に行う「法務ドック」は、問題が顕在化する前に危険なポイントを見つける最も有効な手段の一つです。 「報告しやすい空気」を作る 八田氏の研究が示すように、不正を早期に発見するうえで内部通報制度の機能は非常に重要です。制度を形式的に設けるだけでなく、「実際に使える」状態にしておくことが肝要です。社長自身が「悪い情報を歓迎する」姿勢を示すことが、組織文化を変える最初の一歩になります。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 問題が発生したときの対応フロー——証拠の残し方が勝負を分ける いざ「不正かもしれない」という場面に直面したとき、多くの社長が最初にやってしまう失敗は、当事者に直接確認してしまうことです。「本当なの?」と問いかけた瞬間に、証拠が隠滅されたり、メールが削除されたりするリスクが生まれます。 発見時にすべきことの順番は以下の通りです。 社内で静かに事実を把握する:当事者に知られないよう、帳票・メール・システムログなどのデータを保全する。 弁護士に相談してから動く:社内調査の進め方、当事者への対応、行政・第三者への報告義務の有無などは、法的リスクと直結する。動く前に相談する。 調査の記録を残す:誰が、いつ、何を確認したかを文書化する。後に第三者委員会が入った場合、この記録が信頼性の証明になる。 当事者との接触をコントロールする:いつ、どのように話を聞くかは弁護士と相談して決める。一般社員に事情聴取させるのは危険。 証拠は、紛争になってから急に作れるものではありません。日頃から承認フローを文書化し、メールでのやり取りを残す習慣が、いざというときの会社の盾になります。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 失敗事例の構造——なぜ相談が遅れ、証拠がなくなるのか 弁護士法人ブライトに持ち込まれる不正・横領案件のうち、対応が難しくなっているケースには共通したパターンがあります。 「まさかあの人が」という感情が初動を遅らせる 長年信頼していた経理担当が横領していた——こういうケースでは、社長が「信じたくない」という感情から動けなくなる時間が必ず存在します。その間に当事者は証拠を消し、お金を移動させ、退職の準備をする。感情と判断を切り離す習慣が、初動の速さを決めます。 「社内で解決しよう」という判断が傷口を広げる 「外部に知られたくない」「穏便に済ませたい」という判断から、弁護士への相談を後回しにするケースがあります。しかし、不正対応は法的手続きと証拠管理が命綱です。社内で話し合って解決しようとするほど、後に使える法的手段が狭まっていきます。 「記録が残っていない」という壁 「口頭で確認した」「メールではなく電話で指示した」——こうした業務フローは、不正が起きたときに誰も証明できない状況を作ります。日常の業務を「証拠が残る形」で進める習慣は、不正発生後の回収可能性を大きく左右します。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) うちの会社ではどう考えればいいのか——規模別の現実的な対処法 「内部統制」と聞くと上場企業向けの話に聞こえますが、八田氏の研究が示すように、その本質は組織の規模に依存しません。中小企業であっても、「誰が何を決め、誰がそれを確認するか」という原則は変わりません。 社員数10〜50名規模の会社で今すぐ取り組める現実的な一手は次の通りです。 経理・出納・承認の担当者を分ける(最低限の分離) 月次で社長自身が帳票を確認する(「見ている」という事実が抑止力になる) 内部通報の窓口を外部(弁護士)に置く(社内では言いにくいことが上がってくる) 顧問弁護士に年1回の「法務ドック」を依頼する(リスクの棚卸しを定期化する) 「うちは大丈夫」ではなく、「うちでも起きうる」という前提で仕組みを作ること。これが、八田氏の研究が一貫して社会に問いかけているメッセージです。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 再発防止策——一度の不正を「組織の財産」に変える 不正が発覚した後、多くの会社は「なぜ起きたのか」の分析よりも「どう処理するか」に追われます。しかし、八田氏が繰り返し指摘するように、再発防止のない不正対応は不完全です。 事後に必ず行うべきことは以下の3点です。 原因の構造分析:「誰が悪かったか」だけでなく、「どの仕組みが機能しなかったか」を言語化する。 規程・フローの見直し:発覚した抜け穴を就業規則・社内規程・業務フローに反映する。 継続的なモニタリングの仕組みを作る:「直した」で終わりにせず、定期的に機能しているかを確認する体制を整える。 不正は会社にとって痛みを伴う経験ですが、仕組みの見直しにつながるきっかけとして捉え直せれば、それは組織を強くする契機にもなり得ます。 大切なのは、その経験を「個人の失敗」として片付けず、「組織の課題」として向き合い、次の判断材料に変えることです。 不正対応・再発防止策は、一度対応したら終わりではありません。就業規則・社内規程に不正防止の仕組みを組み込み、日頃から顧問弁護士が社内の「法務部」として機能する体制を整えることが、もっとも確実な再発防止です。弁護士法人ブライトでは、顧問先 142社 の実名を公開し、企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが「みんなの法務部」として顧問先企業の内部統制・規程整備・不正対応を継続的に支えています。スポット相談で終わらせず、困ったときにすぐ相談できる体制づくりこそが、八田進二氏が研究の中で一貫して訴えるガバナンスの本質に最も近い実践です。 よくある質問(Q&A) Q. 社員数が少ない会社でも内部統制は必要ですか? A. 必要です。内部統制は「大企業向けの制度」ではなく、「会社が意図した通りに動くための仕組み」です。むしろ社員数が少ない会社ほど一人ひとりの権限が広く、チェックが薄くなりやすいため、役割分離や記録の習慣化が重要になります。 Q. 不正を疑ったとき、まず何をすればいいですか? A. 当事者に直接確認する前に、まず弁護士に相談することをお勧めします。初動の順番を間違えると、証拠が消えたり、法的手続きが取りにくくなったりするリスクがあります。「動く前に相談する」が鉄則です。 Q. 第三者委員会は必ず設置する必要がありますか? A. 規模や状況によります。上場企業や社会的影響が大きい案件では第三者委員会が求められるケースが多いですが、中小企業の場合は外部専門家(弁護士・公認会計士)と連携した内部調査で対応できるケースも少なくありません。どの形が適切かは、弁護士と状況を共有したうえで判断することをお勧めします。 Q. 内部通報窓口は社内に置くべきですか?外部に置くべきですか? A. 中小企業の場合、社内に置くと「社長や上司に知られる」という懸念から通報がなされないリスクがあります。外部の弁護士を通報窓口に指定することで、従業員が安心して報告できる環境が生まれます。形式的な制度設計より、「実際に機能するか」を優先して考えてください。 当事務所が参考にした実務書 当事務所では本テーマに関する最新の実務書を継続的に確認し、顧問先企業のリスク評価に反映しています。本記事の作成にあたり特に参考にした書籍を以下に紹介します。 『コーポレートガバナンスと内部統制』 — 八田進二/白桃書房/2020年6月/分類:学術書・体系書 『会計不正のリアル』 — 八田進二・町田祥弘・藤沼亜起(編著)/中央経済社/2017年10月/分類:学術書・体系書 『内部統制の考え方と実務』 — 八田進二(監修)/中央経済社/2019年3月/分類:Q&A形式の実務解説書 『第三者委員会の理論と実務』 — 八田進二・横田尚昌・堀江正之/同文舘出版/2015年11月/分類:学術書・体系書 『企業不正と内部監査』 — 八田進二/白桃書房/2022年3月/分類:学術書・体系書 ※ 書籍内容は引用しておらず、書誌情報のみ表示しています。本記事は弁護士法人ブライトが監修・執筆しています。 この記事の監修者 和氣 良浩(わけ よしひろ) 弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士 弁護士歴20年(2006年登録)/大阪弁護士会/大阪大学法学部卒 専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生 不正対応・内部統制整備・コーポレートガバナンス強化など経営上の課題を継続的に相談できる顧問弁護士をお探しの方は、弁護士法人ブライト「みんなの法務部」にお問い合わせください。顧問先 142社 の実名を公開しており、企業法務部の弁護士歴平均14年以上の経験豊かな弁護士が対応します。企業法務窓口:06-4965-9590(平日9:00〜18:00) 「みんなの法務部」というブライトの考え方 中小企業の社長に「専属の法務部」を持っていただく——これがブライトの顧問サービスの基本姿勢です。社内に法務部を置けない規模でも、契約書・労務・債権回収・M&Aまで日常的に相談できる体制を、月額固定で。企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームで、142社の顧問先と向き合っています。 ▶ みんなの法務部とは(詳しく見る) 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料)