事業承継における株式贈与の手続きと税務・遺留分対策【会社側・経営者向け 弁護士解説】

事業承継における株式贈与の手続きと税務・遺留分対策【会社側・経営者向け 弁護士解説】

和氣 良浩

監修:和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士|大阪弁護士会

大阪で20年以上、中小企業の企業法務・顧問弁護士サービスを提供。顧問先130社以上に透明性の高いリーガルサポートを実践している。

「子どもに会社の株を贈与したいが、贈与税がいくらかかるのかわからない」「株式を少しずつ移す方法と一度に渡す方法、どちらが得か」――大阪の中小企業経営者からこうした相談が弁護士法人ブライトに多く寄せられる。

事業承継における株式贈与は、やり方を間違えると多額の税負担や遺留分トラブルを招く。本記事では、事業承継における株式贈与の手続き・税務・法律的リスクと対策を大阪の弁護士が解説する。

事業承継の株式贈与でお困りの経営者へ

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事業承継における株式贈与とは:3つの方法の比較

後継者に株式を移す方法は「生前贈与」「相続(死亡後)」「売却(有償譲渡)」の3つが基本だ。

方法 タイミング 税金 主なリスク
生前贈与 生前(経営者が元気なうち) 贈与税(暦年or相続時精算課税) 評価額・要件管理
相続 経営者死亡後 相続税(遺産分割) 遺留分・相続争い
売却(有償譲渡) 生前 譲渡所得税(経営者側) 後継者の購入資金

生前贈与の手続き:5つのステップ

ステップ1:株式評価額の算定

贈与税の計算の前提として、株式の評価額(相続税評価額)を算定する必要がある。国税庁財産評価基本通達では、非上場株式の評価方法として「類似業種比準価額方式」「純資産価額方式」「配当還元価額方式」が定められており、会社の規模・業種によって適用方法が変わる。大会社・中会社・小会社の区分は従業員数・総資産・売上高で判定する(財産評価基本通達178条〜180条)。

直前3年の利益・配当・純資産が評価に影響するため、贈与の数年前から評価額の引き下げ対策(役員退職金の計上・設備投資等)を検討することが有効だ。

ステップ2:贈与税の課税方式の選択

贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2方式がある。

  • 暦年課税:年間110万円の基礎控除内であれば非課税。110万円を超える贈与には10〜55%の累進税率が適用される。毎年少額ずつ贈与する「暦年贈与」で評価額の高い株式を段階的に移転する方法がある。
  • 相続時精算課税:60歳以上の贈与者から18歳以上の推定相続人(後継者)への贈与に選択適用できる。累計2,500万円まで贈与時非課税(110万円/年の基礎控除は別途適用)、超過分は一律20%。贈与者死亡時に精算課税適用財産が相続財産に加算されて相続税計算する。相続時の評価額でなく贈与時の評価額が基準になる点が最大の特徴だ。

ステップ3:事業承継税制(特例措置)の活用検討

特例事業承継税制(中小企業経営承継円滑化法施行規則)を使えば、贈与税の全額(株式の最大100%分)が納税猶予される。要件は①都道府県(大阪府)への特例承継計画の提出(2026年3月31日期限)②都道府県知事の認定③後継者の代表者就任④5年間の雇用維持(弾力化あり)などだ。5年後も一定要件を継続すれば猶予税額が免除される。

ステップ4:取締役会・株主総会の承認取得

株式に譲渡制限が付いている場合(会社法107条1項1号・定款規定)、贈与による株式移転にも会社の承認が必要だ(会社法136条・138条)。承認機関は定款規定により「取締役会」または「株主総会」となる。承認手続きを経ずに名義書換した場合、会社はその移転を対抗できなくなるリスクがある(会社法130条1項)。

ステップ5:株主名簿の名義書換

株式の取得者は会社に株主名簿の名義書換を請求する(会社法130条1項)。名義書換を行わないと、会社に対して株主権(議決権・配当請求権)を行使できない(会社法130条1項)。贈与契約書と承認取得書類を保管した上で名義書換請求書を提出する。

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遺留分リスクと対策:株式贈与後の相続トラブルを防ぐ

遺留分侵害額請求とは

生前に後継者へ株式を全て贈与した場合でも、経営者の死亡後に他の相続人が「遺留分侵害額請求」(民法1046条)を行使する可能性がある。民法1044条3項では、相続人への生前贈与は相続開始10年前まで遡って遺留分算定の基礎財産に算入されると定めている。評価の高い株式を贈与した直後に経営者が亡くなった場合、後継者は他の相続人に遺留分相当額を現金で支払うことになる。

民法特例(経営承継円滑化法第4章)による遺留分の事前カット

後継者以外の推定相続人全員の書面同意を得て、家庭裁判所の許可を受けることで、後継者が取得した株式について遺留分算定の基礎から除外(除外合意)または固定額で合意(固定合意)することができる。この手続きは公証人認証の合意書と家庭裁判所への申立てが必要で、弁護士の関与が実務上は不可欠だ。

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事業承継における株式贈与に関するよくある質問(FAQ)

事業承継の株式贈与で贈与税を節税する方法はありますか?

主な方法は3つです。①暦年贈与(年間110万円基礎控除内の分割贈与)②相続時精算課税の活用(贈与時評価額で固定)③特例事業承継税制(贈与税の全額猶予)です。特例事業承継税制は2026年3月末が計画提出期限のため早急な検討が必要です。いずれも税理士・弁護士との連携設計が重要で、どの方式が有利かは会社規模・株式評価額・相続人構成によって異なります。

株式贈与後に経営者が死亡した場合、遺留分はどうなりますか?

民法1044条3項により、相続人への生前贈与は相続開始10年前まで遡って遺留分算定基礎財産に算入されます。後継者への株式贈与が相続開始10年以内であれば、他の相続人が遺留分侵害額請求権(民法1046条)を行使できます。民法特例(経営承継円滑化法第4章)による除外合意・固定合意を事前に締結しておくことが最も確実な対策です。

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弁護士法人ブライト(大阪)では、事業承継における株式贈与の手続き設計・遺留分対策・種類株式の設計・民法特例の申立て支援を行っています。弁護士歴平均14年以上・顧問先130社以上の実名公開という実績で、中小企業の事業承継問題に対応しています。初回無料相談をご利用ください。

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