事業承継の方法と法的手続き完全ガイド【後継者不在・株式・M&A】大阪の弁護士が解説

事業承継の方法と法的手続き完全ガイド【後継者不在・株式・M&A】大阪の弁護士が解説

和氣 良浩

監修:和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士|大阪弁護士会

大阪で20年以上、中小企業の企業法務・顧問弁護士サービスを提供。顧問先130社以上に透明性の高いリーガルサポートを実践している。

「後継者がいない」「子どもに会社を引き継がせたいが株式の移し方がわからない」「M&Aで売却を考えているが手続きの全体像が見えない」――大阪の中小企業経営者から、弁護士法人ブライトにこうした相談が増えている。

事業承継は、税務・法律・経営の3つが絡み合う複合的な問題だ。決断が遅れるほど選択肢は減り、不測の事態(経営者の急逝・親族トラブル)が起きると対応が困難になる。本記事では、事業承継の主要4方法(親族内承継・役員承継・MBO・M&A)の特徴と法的手続き、弁護士が関与すべきポイントを整理する。

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事業承継とは何か:中小企業経営者が直面する4つの課題

事業承継とは、経営者が会社(経営権・財産・人・知識)を後継者に引き渡す一連のプロセスを指す。中小企業庁の調査では、2025年時点で中小企業経営者の約半数が60歳以上であり、後継者が決まっていない割合は約50%に達するとされる。

事業承継が複雑になる原因は主に4つある。

課題1:自社株式の集中と移転コスト

中小企業では経営者が株式の大半を保有していることが多い。株式を後継者に渡す方法は「贈与」「相続(死亡後)」「売却」の3つだが、いずれも評価額次第で多額の税負担が生じる。財産評価基本通達(国税庁)では類似業種比準価額方式・純資産価額方式等で評価するが、直前の決算内容・配当・利益が評価額を大きく動かす。計画的に評価を引き下げておくことが肝要だ。

課題2:経営承継円滑化法の活用と限界

中小企業経営承継円滑化法(2008年施行、2013年改正)は、相続税・贈与税の納税猶予制度(事業承継税制)と金融支援の2本柱で構成される。特に特例事業承継税制(2018年〜2027年末の時限措置)では、株式の最大100%について贈与税・相続税が猶予される。ただし「特例承継計画の提出」「都道府県知事の認定」「5年間の雇用維持要件(弾力化済)」などの要件があり、要件違反時には猶予税額+利子税が一括請求される。活用する場合は税理士・弁護士との連携が必須だ。

課題3:遺留分と後継者保護

経営者が死亡した場合、株式は相続財産に含まれる。後継者以外の相続人(他の子ども等)が遺留分(民法1042条)を主張すると、後継者が取得した株式の経済的価値の一部を現金で支払わなければならない。この遺留分侵害額請求によって後継者の経営基盤が揺らぐリスクがある。対策は「会社法108条の種類株式(議決権制限株式)の活用」「民法特例(除外合意・固定合意)」「生命保険による原資確保」の3つが代表的だ。

課題4:後継者不在時のM&A(第三者承継)

親族内・役員内に後継者がいない場合、M&Aによる第三者承継が選択肢になる。中小企業庁「中小M&Aガイドライン」(2020年策定、2023年改訂)では、仲介業者・FA(財務アドバイザー)を介した売却プロセスの透明性確保と、法務DDの重要性を強調している。

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事業承継の4方法:比較表と法的ポイント

方法 対象 主なメリット 主なリスク・課題 弁護士の主な役割
親族内承継 子・配偶者等 信頼関係・従業員安心感 遺留分トラブル・株式評価 遺言作成・種類株式設計・民法特例
役員・従業員承継(MBO含む) 役員・幹部社員 経営継続性が高い 株式取得資金・既存株主との交渉 株式譲渡契約・金融機関交渉支援
M&A(第三者承継) 外部企業・投資家 売却益・雇用維持 DD・表明保証・情報漏洩 法務DD・SPA・表明保証条項交渉
廃業 (承継断念時) 清算でリスク確定 従業員・取引先への影響 解散決議・清算手続き

親族内承継の法的手続き:株式移転の3つの方法

生前贈与による株式移転

生前に後継者へ株式を贈与する方法は、経営者が意図的に承継タイミングを設計できる点で有利だ。ただし贈与税が課税される(暦年課税:基礎控除110万円/年、相続時精算課税:累計2,500万円まで非課税)。事業承継税制(特例措置)を活用すれば贈与税の納税猶予が受けられるが、都道府県知事への特例承継計画提出が必要(2026年3月末が申請期限)。

贈与契約書(民法549条)の作成と株主名簿の名義書換(会社法130条1項)が必須手続きだ。また株式に譲渡制限(会社法107条・108条)がある場合は取締役会または株主総会の承認(定款規定による)を事前に得る必要がある。

遺言による相続

経営者が遺言で株式を後継者に相続させる方法だ。公正証書遺言(民法969条)が最も確実で、後日の紛争リスクが低い。問題は遺留分(民法1042条)だ。他の相続人が遺留分侵害額請求権(民法1046条)を行使すると、後継者は遺留分相当額を金銭で支払う義務が生じる。

遺留分対策として有効なのが「民法特例(経営承継円滑化法第4章)」で、後継者以外の推定相続人の書面による合意(除外合意・固定合意)を家庭裁判所に申し立てることで遺留分の主張を制限できる。この手続きには推定相続人全員の参加が必要であり、弁護士の関与が不可欠だ。

種類株式を使った段階的承継

会社法108条は、剰余金の配当・議決権・残余財産の分配等について内容の異なる複数種類の株式(種類株式)を発行することを認めている。典型的な活用パターンは次の2つだ。

  • 議決権制限株式(会社法108条1項3号):後継者に普通株式(議決権あり)を、他の相続人には議決権制限株式を割り当てる。経営権を後継者に集中させながら、他の相続人にも財産的価値を与えて遺留分問題を和らげる。
  • 拒否権付株式(黄金株)(会社法108条1項8号):現経営者が黄金株を保持し、後継者への経営権移転後も重要事項(合併・定款変更等)に拒否権を留保する。後継者の暴走防止に使われる一方、M&Aの障壁にもなりうる。

種類株式・遺留分対策について弁護士に相談したい方へ

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MBO(マネジメント・バイアウト)の手続きと注意点

MBOとは、役員や従業員が金融機関等から調達した資金で自社株式を買収し、経営権を取得する手法だ。後継者候補がいるが資金がない場合に有効な選択肢となる。

MBOのスキーム概要

典型的なMBOスキームは以下の流れをたどる。

  1. 後継者が特定目的会社(SPC)または個人名義で金融機関から資金調達
  2. 現オーナーから株式を買収(株式譲渡契約締結・会社法130条名義書換)
  3. 買収後に会社の資産・収益で借入金を返済(LBO型)

法的論点として、利益相反取引(会社法356条・365条)への注意が必要だ。後継者が取締役の場合、自社株を自己取得する場面で取締役会の承認が必要になる場合がある。また、金融機関との融資契約において財務制限条項(コベナンツ)が設定されるケースが多く、条項違反が期限の利益喪失につながることもある。

M&Aによる第三者承継:弁護士が必要な場面

後継者不在の経営者にとって、M&Aは事業・従業員・取引先を守りながら経営者自身が引退するための現実的な選択肢だ。弁護士が特に重要になる局面は以下の3つだ。

法務デューデリジェンス(DD)への対応

買収側は売主の会社について法務DD(契約書・訴訟・許認可・労務・知的財産の調査)を実施する。売主側としても、DDで不利な事実が発覚した場合の対応方針(開示・補修・価格調整)を弁護士と事前に検討しておく必要がある。大阪の中小企業案件では、個別の業務委託契約に「取引先変更禁止条項」が含まれており、M&A後に既存契約が失効するリスクが問題になるケースがある。

株式譲渡契約(SPA)の交渉

M&Aの最終契約書(SPA: Stock Purchase Agreement)には表明保証条項・補償条項・クロージング条件が含まれる。売主としては表明保証の範囲(特に「重要な契約に変更なし」「訴訟なし」等)をできる限り限定し、補償上限額・補償期間を交渉することが重要だ。M&A仲介業者(FA)は中立的立場のため交渉代理人にはなれない。弁護士が売主の代理人として交渉に立つことで、不当な条件を排除できる。

会社分割vs事業譲渡の選択

M&Aのスキームには「株式譲渡」「会社分割」「事業譲渡」がある。事業の一部だけを売却する場合は会社分割(吸収分割・新設分割)または事業譲渡を使う。会社分割は組織法的行為(会社法757条以下)として許認可が原則として引き継がれるが、事業譲渡は契約法的行為のため個別の契約引継ぎと許認可の取り直しが必要になるケースがある。どちらを選ぶかは税務・労務・許認可の3軸で検討する。

M&Aによる会社売却・第三者承継を検討中の経営者へ

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事業承継を弁護士に相談すべきケース

次のいずれかに該当する場合は、早期に弁護士に相談することを勧める。

  • 後継者以外の相続人が複数おり、遺留分トラブルが懸念される
  • 株式の評価額が高く、生前贈与・種類株式による計画的対策が必要
  • 役員・従業員へのMBOを検討しているが資金調達・スキーム設計が不明
  • M&Aで会社を売却したいが、仲介業者任せで条件交渉が不安
  • 経営承継円滑化法の特例事業承継税制を活用したい(2026年3月末が計画提出期限)
  • 会社分割・事業譲渡のスキームで許認可・労働契約の引継ぎを整理したい

弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部として、事業承継の法的設計から株式移転手続き・M&Aスキーム構築まで対応する。弁護士歴平均14年以上・顧問先130社以上の実名公開という実績で、経営者の承継問題を伴走サポートする。

弁護士に事業承継の相談をしたい方へ

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事業承継に関するよくある質問(FAQ)

事業承継の弁護士費用はどのくらいかかりますか?

弁護士費用は依頼内容によって異なります。遺言作成・種類株式の設計・株式譲渡契約の作成・法務DDへの対応など、個別案件ごとに見積もりが異なります。まずは無料相談で案件の概要をお伝えいただければ、弁護士法人ブライトから目安をご案内します。大阪の中小企業案件では、顧問契約の中でトータルサポートを提供するケースが多く、都度費用より総コストを抑えられるメリットがあります。

特例事業承継税制(事業承継税制の特例措置)の申請期限はいつですか?

特例措置の適用を受けるには、2026年3月31日までに都道府県(大阪府)に「特例承継計画」を提出する必要があります(中小企業経営承継円滑化法施行規則第17条の2)。この期限を過ぎると特例措置の適用が受けられなくなります。計画策定には税理士・弁護士との連携が必要で、準備に数か月かかるケースが多いため、早急に着手することを勧めます。

後継者がいない場合、M&A以外に選択肢はありますか?

主な選択肢はM&A(第三者承継)と廃業・清算の2つです。廃業を選んだ場合でも、取引先・従業員・金融機関との調整・解散決議・清算手続きには法的サポートが必要です。また「事業の一部のみM&Aで売却し、残りを廃業」という分割対応も可能です。どの方法が最適かは会社の財務状況・事業の種類・経営者の意向によって異なるため、まず弁護士にご相談ください。

大阪で事業承継の相談ができる弁護士を探しています。

弁護士法人ブライトは大阪市内に事務所を置き、大阪・近畿圏の中小企業の事業承継・M&A・会社法務を取り扱っています。「みんなの法務部」として顧問先130社以上を実名公開しており、弁護士歴平均14年以上のチームが対応します。初回無料相談を受け付けていますので、まずはお問い合わせください。

事業承継と相続は別に考える必要がありますか?

事業承継と相続は密接に絡み合いますが、別の制度として設計する必要があります。事業承継は「会社の経営権(株式)を誰に・いつ・どう渡すか」の問題であり、相続は「死亡後に財産全体をどう分けるか」の問題です。生前に事業承継を完結させておくことで、相続時の株式争いを防止できます。遺言・種類株式・民法特例を組み合わせた包括的な設計を、弁護士と税理士が連携して構築することが重要です。

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本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
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