代表取締役の解任|「解職」と「解任」の手続きを弁護士解説

代表取締役の解任|「解職」と「解任」の手続きを弁護士解説

和氣良浩 弁護士

この記事の監修者

和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士

弁護士歴20年(2006年登録)/大阪弁護士会/大阪大学法学部卒

専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生

代表取締役の解任は、「解職」(取締役会決議)と「解任」(株主総会決議)の2つの異なる手続きを理解することが出発点です。会社法362条2項3号・339条1項・369条2項などの規定をもとに、中小企業オーナー向けに正当事由・損害賠償リスク・反対される場合の実務対応まで解説します。大阪の弁護士法人ブライト(顧問先130社以上・弁護士歴平均14年以上)が監修。

📋 代表取締役の解任は経営権を左右する重大判断です

解職・解任の手続きを誤ると、損害賠償請求や取締役会決議無効訴訟に発展します。大阪の弁護士法人ブライトは弁護士歴平均14年以上の専属チームが対応。顧問先130社以上の実績で予防から有事対応までサポートします。

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📌 この記事でわかること

  • 「解職」(取締役会決議)と「解任」(株主総会決議)の使い分け
  • 代表取締役を解職する取締役会の決議要件と特別利害関係人の扱い
  • 解任時の正当事由と損害賠償リスク(会社法339条2項)
  • 本人や賛同取締役が反対する場合の実務対応
  • 弁護士に相談すべきタイミングと予防策

代表取締役の解任とは|「解職」と「解任」の違い

「代表取締役を辞めさせたい」場面では、まず「解職」と「解任」という2つの異なる手続きを区別することが重要です。両者は根拠条文・決議機関・効果がすべて異なります。

項目 解職(代表取締役) 解任(取締役)
意味 代表取締役の地位(役職)から外す 取締役の地位そのものを剥奪する
根拠条文 会社法362条2項3号 会社法339条1項
決議機関 取締役会 株主総会
決議要件 過半数出席・過半数賛成(会社法369条1項) 普通決議(出席議決権の過半数)
効果 代表取締役の地位を失うが、取締役の地位は維持 取締役の地位を失い、会社との委任関係も終了
損害賠償リスク 原則として発生しない(取締役の身分は残るため) 正当事由なき解任は損害賠償の対象(会社法339条2項)

なぜ2つの手続きが必要なのか

代表取締役は「代表権を持つ取締役」です。取締役の地位は株主から選任されますが、その中から誰を代表取締役にするかは原則として取締役会が決定します(会社法362条2項3号)。したがって、代表権だけを取り上げる場合は取締役会の「解職」決議で足り、取締役という地位自体まで剥奪したい場合は株主総会の「解任」決議が必要になります。

実務では「代表取締役を辞めさせたい=解職で十分か、それとも取締役からも降ろしたいのか」を最初に判断します。取締役の地位を残せば、当該人物は今後も取締役として経営に関与し続けます。取締役会の運営と決議要件と合わせて理解してください。

代表取締役を「解職」する手続き(取締役会決議)

取締役会設置会社では、取締役会の決議によって代表取締役を解職できます(会社法362条2項3号)。中小企業オーナーが「現代表取締役と意見が合わない」「健康問題で実務に支障が出ている」といった場面で、第一に検討すべき手段です。

STEP1:取締役会の招集

解職を議題に取締役会を招集します。招集通知は開催日の1週間前までに各取締役と監査役に発する必要があります(会社法368条1項)。なお、取締役・監査役全員の同意があれば招集手続きを省略可能です(同条2項)。

STEP2:特別利害関係人の扱い(最重要)

解職対象となる代表取締役本人は、当該議案について特別利害関係人に該当するため、議決権を行使できません(会社法369条2項)。これは、最高裁判決(最三小判昭44・3・28)でも確認されている重要な原則です。利益相反取引の特別利害関係人と同じ趣旨の規定です。

例えば、3名の取締役(A・B・代表取締役C)の場合、Cの解職決議ではAとBの2名で過半数賛成があれば可決します。Cが反対しても、議決権行使自体ができないため決議の成立に影響しません。

STEP3:決議の実施と議事録作成

取締役会の決議要件は、議決権を行使できる取締役の過半数が出席し、出席取締役の過半数が賛成することです(会社法369条1項)。議事録には、解職対象者が特別利害関係を有する旨と、議決権を行使しなかった旨を明記してください(会社法施行規則101条3項4号)。議事録は取締役会後10年間、本店に保管する必要があります(会社法371条)。

STEP4:解職の効力発生と対外対応

取締役会の解職決議は、決議成立時点で効力を生じます。解職された者は直ちに代表権を失い、その後の対外的な意思表示はできなくなります。ただし、登記が完了するまでは善意の第三者に対する関係で代表取締役と扱われる可能性があるため(会社法908条1項・登記の対抗力)、解職から2週間以内に変更登記の申請を行う必要があります(会社法915条1項)。

⚖️ 解職決議の議事録は後日の紛争で証拠の中核になります

特別利害関係人の扱い・出席状況・議決結果の記載漏れは、決議無効訴訟のリスクに直結します。顧問契約(みんなの法務部)なら、議事録の事前チェック・解職スキームの設計を弁護士が支援します。

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取締役自体を「解任」する手続き(株主総会決議)

代表取締役の地位を外すだけでは不十分で、取締役の地位そのものを剥奪したい場合は、株主総会の解任決議が必要です(会社法339条1項)。会社との委任関係そのものを終了させる手続きです。

取締役会設置会社の場合(普通決議)

取締役会設置会社では、株主総会の普通決議で取締役を解任できます。普通決議の要件は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数の賛成です(会社法309条1項)。定款で出席要件を引き下げることも可能ですが、過半数の賛成要件を緩和することはできません。

取締役会非設置会社の場合

取締役会非設置会社の場合、定款で別段の定めがない限り普通決議で足りますが、定款で特別決議とする会社もあります。

累積投票で選任された取締役の特別決議要件

会社法上、取締役会設置会社か否かを問わず、累積投票で選任された取締役を解任する場合は、特別決議(議決権の過半数の出席+出席議決権の3分の2以上の賛成)が必要です(会社法309条2項7号・342条6項)。累積投票制度を採用している中小企業では、解任議案の決議要件を事前に確認してから議題化してください。

解任の議題設定と招集通知

「取締役○○の解任の件」を議題として臨時株主総会を招集します。発行済株式総数の3%以上を6か月以上保有する株主は、会社に対して臨時株主総会の招集を請求できます(会社法297条1項)。会社が応じない場合は、裁判所の許可を得て株主自身が招集することも可能です。詳しくは経営権紛争・臨時株主総会招集請求の手続きを参照してください。

解任の正当事由と損害賠償リスク(会社法339条2項)

株主総会の決議で取締役を解任しても、「正当事由」がなければ、解任された取締役は会社に対して損害賠償を請求できます(会社法339条2項)。中小企業オーナーが見落としがちなポイントです。

正当事由とは何か

判例上、正当事由として認められるのは概ね以下のような場合です:

  • 法令・定款違反、忠実義務違反(横領、私的流用、利益相反取引の隠蔽など)
  • 職務遂行に堪えない健康状態の悪化(長期入院など)
  • 重大な経営判断ミス(説明可能な合理性を欠く意思決定)
  • 会社に著しい損害を与えた行為

逆に、「経営方針の対立」「単なる相性の悪さ」「業績不振だが本人の責任とは認めがたい場合」は、正当事由として認められない可能性が高い領域です。

損害賠償の範囲

正当事由なき解任の場合、解任された取締役は残任期間の役員報酬相当額を請求できるのが原則です。例えば、年俸2,400万円の取締役を任期残2年で解任した場合、4,800万円の損害賠償リスクが生じます。退任慰労金の有無や退任後の収入による損益相殺の議論はありますが、いずれにせよ慎重な準備が必要です。

🚨 「正当事由なき解任」は数千万円〜数億円の損害賠償リスクに直結します

解任を実行する前に、正当事由の証拠(議事録・調査報告書・第三者意見)を整え、損害賠償リスクを最小化する設計が必須です。経営権紛争を多数手がける大阪の弁護士法人ブライトにお任せください。

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解任に反対される場合の実務対応

代表取締役本人や賛同する取締役・株主が解任に強く抵抗するケースは、中小企業の経営権紛争で頻繁に発生します。実務上の論点を整理します。

取締役会で過半数が取れない場合

解職決議の前提として、取締役会で過半数の賛成が必要です。過半数が取れない場合は、まず取締役の交代を株主総会で実現する必要があります。具体的には、現取締役の解任議案と新取締役の選任議案を同時に上程する2段階戦略をとります。

株主総会で過半数株主の賛同が得られない場合

過半数株主の賛同が得られない場合でも、以下の方法で打開できることがあります:

  • 委任状勧誘:他の株主から議決権行使の委任状を集める
  • 裁判所による解任の訴え:6か月以上3%以上保有する株主が、不正行為等を理由に裁判所に解任を求める訴え(会社法854条)
  • 株主間契約・種類株式:事前に経営権紛争を予防する仕組みを設計

また、解任に賛同する株主が少数派でも、株主代表訴訟を通じて、対象取締役の責任追及をすることでプレッシャーをかける戦略も実務で用いられます。

解任議案が議題として可決されない可能性

株主総会で解任議案を議題化する段階で、対象取締役が議長として議事進行を妨害するケースがあります。判例上、特別利害関係を有する取締役が議長として議決権を行使した決議は無効と判断される余地があるため、議長の交代を求める動議も同時に準備しておくべきです。

代表取締役解任を弁護士に相談すべきタイミング

代表取締役の解任は、中小企業の経営権紛争で最も慎重な準備が必要な手続きです。次のタイミングでは、行動する前に弁護士に相談してください。

解任を検討し始めた段階(最優先)

  • 正当事由の整理と証拠保全
  • 「解職」と「解任」のどちらを選ぶかのスキーム設計
  • 取締役会・株主総会で過半数が取れるかのカウント
  • 反対される場合の代替戦略(裁判所への解任の訴え、委任状勧誘など)

対象取締役が抵抗を見せ始めた段階

  • 議事妨害・招集無効主張・決議無効訴訟リスクへの備え
  • 裁判所の仮処分(職務執行停止)の検討
  • 登記関係書類の準備と司法書士との連携

解任後の対応

  • 登記変更(2週間以内・会社法915条1項)
  • 退任慰労金・残任期分の役員報酬請求への対応
  • 取引先・金融機関への通知設計

大阪の弁護士法人ブライトは、経営権紛争に強いベテラン弁護士チーム(弁護士歴平均14年以上・顧問先130社以上)が、解任スキームの設計から登記まで一気通貫でサポートします。

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⚖️ 代表取締役解任に関する主要判例・法的根拠

  • 特別利害関係人としての議決権制限:最三小判昭44・3・28(民集23巻3号645頁):代表取締役の解職決議について、解職対象の代表取締役は特別利害関係人に該当し、議決権を行使できない。
  • 解任の正当事由:会社法339条2項により、正当事由なき解任は会社が損害賠償責任を負う。判例上、横領・忠実義務違反・職務遂行不能などが正当事由として認められる。
  • 少数株主による解任の訴え:会社法854条1項により、6か月以上3%以上の議決権を保有する株主は、不正行為等を理由に裁判所に解任を求める訴えを提起できる。
  • 取締役会決議の効力:取締役会の解職決議は決議成立時に効力を生じる。ただし変更登記は2週間以内に行う必要がある(会社法915条1項)。

根拠条文:会社法339条1項・2項/362条2項3号/369条1項・2項/309条1項・2項/342条6項/854条/915条1項

よくある質問(FAQ)

Q1. 代表取締役を辞めさせるには、解職と解任のどちらを選べばよいですか?

取締役の地位を残したまま代表権だけを取り上げる場合は「解職」(取締役会決議)、取締役の地位そのものを剥奪する場合は「解任」(株主総会決議)です。中小企業では、まず取締役会で解職決議をして代表権を外し、その後の状況を見て解任を判断する2段階アプローチが一般的です。

Q2. 解職対象の代表取締役本人は、解職決議に賛成・反対できますか?

本人は当該議案について特別利害関係人に該当するため、議決権を行使できません(会社法369条2項、最三小判昭44・3・28)。例えば取締役3名(A・B・C)のうちCを解職する場合、AとBの2名で議決し、過半数賛成で可決します。

Q3. 解任で「正当事由」がないと、いくらの損害賠償が発生しますか?

原則として、残任期間の役員報酬相当額が損害賠償の対象となります(会社法339条2項)。例えば年俸2,400万円の取締役を任期残2年で解任した場合、4,800万円の請求リスクが発生します。退任慰労金や退任後の収入による損益相殺の議論があるため、具体的な金額は弁護士にご相談ください。

Q4. 株主総会で過半数の賛同が得られない場合、解任は不可能ですか?

必ずしも不可能ではありません。6か月以上3%以上の議決権を保有する株主は、不正行為等を理由に裁判所に解任を求める訴え(会社法854条)を提起できます。また、委任状勧誘・他の株主との連携・職務執行停止の仮処分など、複数の戦略があります。実務上は弁護士と早期に相談し最適な経路を設計します。

Q5. 解職・解任後、すぐに登記を変更する必要がありますか?

はい。代表取締役の変更登記は解職・解任から2週間以内に行う必要があります(会社法915条1項)。登記が遅れると過料の対象となるほか、登記簿上は旧代表取締役のままとなり、善意の第三者との関係で混乱を招く可能性があります(会社法908条1項)。司法書士・弁護士と連携して迅速に対応してください。

監修

和氣 良浩 弁護士(大阪弁護士会)

弁護士法人ブライト 代表弁護士。経営権紛争・代表取締役解任・株主間紛争を含む企業法務を中心に、中小企業オーナーの経営判断を継続的にサポート。

※本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律アドバイスではありません。具体的な問題については、弁護士にご相談ください。

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