SNS誹謗中傷の投稿者を特定する方法(発信者情報開示) 「匿名だから何を書いても大丈夫」という考えは間違いです。SNS の誹謗中傷投稿は、法的手続きにより投稿者を特定できます。この記事では、発信者情報開示の仕組み・手順・費用・注意点を、弁護士が具体的に解説します。 SNS誹謗中傷で会社・個人が受ける被害 SNS 上の誹謗中傷は、放置すると以下のような深刻な影響が生じます。 会社の評判・採用への影響(Google・X・口コミサイトでの検索上位化) 取引先・顧客の離脱 従業員・代表者個人の精神的苦痛 虚偽情報の拡散による事実誤認の固定化 「フォロワーが少ないから問題ない」とはいえません。ひとつの投稿が拡散されることで、短期間で大きな被害が生じるケースがあります。 発信者情報開示とは何か 発信者情報開示(はっしんしゃじょうほうかいじ)とは、プロバイダ責任制限法に基づき、SNS 事業者やインターネットプロバイダに対して投稿者の個人情報の開示を求める法的手続きです。 開示を求める情報は主に以下のとおりです。 投稿時の IP アドレス(SNS 事業者から取得) IP アドレスをもとにした投稿者の氏名・住所(インターネットプロバイダから取得) この二段階で、匿名の投稿者を特定できます。 2022年改正:手続きが一段階に簡素化された 従来は「SNS 事業者への仮処分申立」と「プロバイダへの訴訟」の二段階の手続きが必要でした。 2022年の改正プロバイダ責任制限法(情報流通プラットフォーム対処法)により、一段階(非訟手続き)で完結する新しい手続きが導入されました。 新手続きの特徴は以下のとおりです。 申立先:東京地裁に集中管轄 手続き:非訟事件(訴訟より簡易) 審理期間の目安:平均 113 日程度 ただし SNS 事業者が IP アドレス提出を拒む場合は、従来の仮処分手続きの方が実効的な場合がある STEP1|投稿の証拠を保全する 発信者情報開示の申立てに先立って、投稿の証拠を保全することが最優先です。 投稿は削除される可能性があります。削除後は証拠が失われるため、発見した段階で直ちに対応します。 証拠保全の方法は以下のとおりです。 スクリーンショット(URL・投稿日時・アカウント名が見える形で) URL のコピー保存 複数の投稿がある場合はスプレッドシートで一覧化(投稿日時・内容・URL) 公証人役場での「確定日付のある証拠保全」は、より強固な証拠として扱われます。 STEP2|投稿が「開示請求の要件」を満たすか確認する 発信者情報開示が認められるには、投稿が「権利侵害」にあたる必要があります。 主に対象となる権利侵害の類型は以下のとおりです。 名誉毀損:事実(真偽を問わず)の摘示により社会的評価を下げるもの 侮辱:事実の摘示なく、人格を傷つけるもの プライバシー侵害:本人が公開していない個人情報等の暴露 業務妨害:虚偽情報による営業への妨害 「批判」「感想」の範囲を超え、具体的な事実の摘示や人格攻撃が含まれていることが要件となります。 STEP3|SNS 事業者への削除申請(任意・並行) 発信者情報開示と並行して、SNS 事業者への削除申請を進めることが重要です。 各 SNS には報告フォームが設けられています。削除申請は法的手続きより迅速に処理されることがあります。 ただし、任意対応のため削除されない場合もあります。削除申請を送った内容が相手に通知されることがある点も注意が必要です。 弁護士名義での削除要請書を送付することで、対応が変わるケースがあります。 STEP4|発信者情報開示の申立て 要件を満たすと判断した場合、弁護士が申立書を作成し、東京地裁に非訟申立てを行います。 申立てに必要な主な書類は以下のとおりです。 投稿のスクリーンショット等の証拠 権利侵害の説明(どの権利がどのように侵害されたか) 開示を求める情報の特定(IP アドレス等) 審理は非公開で行われます。相手方(SNS 事業者)が IP アドレスを提供すれば、次のステップに進めます。 STEP5|プロバイダへの情報開示・投稿者の特定 SNS 事業者から IP アドレスを取得した後、そのプロバイダに対して投稿者の氏名・住所の開示を求めます。 新手続きでは、SNS 事業者への申立てと同時にプロバイダへの通知も行われるため、ログ保存期間の問題が生じにくくなっています(従来は二段階目の申立て前にログが削除されるリスクがありました)。 STEP6|投稿者への損害賠償請求・刑事告訴 投稿者が特定できたら、損害賠償請求(民事)または刑事告訴(名誉毀損罪・侮辱罪)を検討します。 損害賠償の請求額は、被害の程度・投稿数・拡散規模・被害者の社会的地位によって変わります。弁護士費用を含めた総コストと期待回収額を天秤にかけて判断することが現実的です。 よくある相談例 ある採用支援系の会社では、退職した元関係者が複数のアカウントを使い、会社と代表者への中傷投稿を継続しました。最初は弁護士名義の書面通知で一部の投稿を削除させ、その後、改正プロバイダ責任制限法の一段階手続きで発信者情報開示を申立て、投稿者の特定を進めました。 口コミサイトへの誹謗中傷が複数サイトに同時投稿されているケースでは、同一人物が複数アカウントを使用していることが多く、他の投稿も同時に証拠化しておくことが重要です。 ブライトへご相談ください → ご相談はこちら:/corporationlaw/ 電話:0120-929-739(受付 9:00〜18:00) SNS 誹謗中傷への対応は、証拠保全のタイミングが非常に重要です。「様子を見る」のではなく、早期に弁護士へご相談ください。 顧問弁護士がいれば誹謗中傷への対応は初動から動ける SNS 誹謗中傷のダメージは、初動の速さで大きく変わります。 問題投稿を発見した時点ですぐに顧問弁護士に相談できれば、証拠保全・削除申請・開示申立ての方針を即座に決定できます。 また、退職時に「誹謗中傷禁止・守秘義務」を明記した書面を取得しておくことで、元従業員による SNS 攻撃を事前に抑止することができます。顧問弁護士との継続的な関与により、こうした予防策を日常的に整備できます。 まずはご相談ください → みんなの法務部サービスの詳細はこちら:/corporationlaw/service/ 電話:0120-929-739(受付 9:00〜18:00) 関連記事 悪質な口コミ・誹謗中傷を削除する方法 Google口コミ・SNS誹謗中傷への法的対応 IT・SES業界でよくある法律トラブルと弁護士が必要なタイミング よくある質問 Q. SNS誹謗中傷の投稿者を特定するまでどのくらいの期間がかかりますか? A. 改正プロバイダ責任制限法の新手続きでは平均113日程度が目安とされています。ただし事案によって前後します。証拠保全はすぐに行うことが重要です。 Q. 発信者情報開示に必要な費用はどのくらいですか? A. 弁護士費用の目安は30〜50万円程度が一般的です。損害賠償請求まで進める場合は別途費用がかかります。回収可能額と費用のバランスを弁護士と相談することをお勧めします。 Q. 費用はどのくらいかかりますか? A. 事案の内容・複雑さによって異なります。みんなの法務部では初回相談無料でご案内しています。 監修:弁護士法人ブライト 大阪・神戸を拠点に企業法務・顧問弁護士サービスを提供。みんなの法務部として中小企業の法的リスク対応を日々サポートしています。 本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の事案に対する法律アドバイスではありません。個別の対応については弁護士にご相談ください。 よくある質問 Q. SNS投稿者の特定にはどのくらい費用がかかりますか? A. 弁護士費用の目安は30~50万円程度が一般的です。損害賠償請求まで進める場合は別途費用がかかります。回収可能額と費用のバランスを弁護士と相談することが現実的です。 Q. 投稿者を特定するまでの期間はどのくらい? A. 改正プロバイダ責任制限法の新手続きでは平均113日程度が目安とされています。ただし事案によって前後するため、具体的な期間については弁護士にご相談ください。 Q. 誹謗中傷を見つけたら最初に何をすべき? A. 投稿の証拠保全が最優先です。スクリーンショットやURLの保存を直ちに行い、削除される前に記録してください。その後、弁護士に相談して開示申立ての方針を決定することが重要です。