賃料減額請求への対応|不動産投資・賃貸経営オーナーが知るべき法律と交渉術【弁護士解説】

賃料減額請求への対応|不動産投資・賃貸経営オーナーが知るべき法律と交渉術【弁護士解説】

和氣 良浩

監修:和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士|大阪弁護士会

大阪で20年以上、中小企業の企業法務・顧問弁護士サービスを提供。顧問先130社以上に透明性の高いリーガルサポートを実践している。

「テナントから突然『賃料を下げてほしい』と言われた。どこまで応じなければならないのか」「退去交渉を迫られているが、応じると損をする気がする」——不動産投資・賃貸経営を行う大阪の企業オーナー・個人事業主から、賃料減額・テナント交渉についての法律相談が増えています。

テナントからの賃料減額要求は、借地借家法上の「賃料減額請求権」という強力な権利に基づいています。しかし貸主(大家・オーナー)側にも、正当な理由なく減額に応じない権利や、交渉を有利に進める法的手段があります。

この記事では、賃料減額交渉を求められた貸主側(大家・不動産投資家)が知っておくべき法律の仕組みと、弁護士が関与することで交渉を有利に進める方法を解説します。

この記事でわかること

  • テナントが主張できる賃料減額請求権の法的根拠と限界
  • 貸主側が賃料減額に応じなくてよい条件
  • 賃料増額交渉を行う場合の法的手順
  • 立退き・更新拒絶を行う場合の正当事由と手続き
  • 弁護士が関与することで変わる交渉力

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賃料減額請求権の法的根拠と貸主側の権利

借地借家法が定める賃料減額請求権

借家契約(賃貸借契約)では、借主(テナント)は一定の条件のもとで賃料の減額を一方的に請求できます(借地借家法32条1項)。減額請求が認められる条件は次の3つです。

賃料減額請求が認められる3条件(借地借家法32条1項)

  • 土地・建物に対する租税その他の負担が減少した:固定資産税の引き下げ等
  • 土地・建物の価格が下落した:周辺不動産価格の下落等
  • 近傍の同種の建物の賃料と比較して不相当に高くなった:周辺相場との乖離

根拠条文:借地借家法32条1項

ただし、この減額請求権は「請求できる権利」であり、自動的に賃料が下がるわけではありません。借主が減額請求をしても、貸主が応じなければ最終的には裁判(調停・訴訟)で決定されます。

重要な例外:定期借家契約の場合

定期建物賃貸借契約(定期借家契約)で、「賃料減額請求をしない旨の特約」が明記されている場合、テナントは減額請求ができません(借地借家法38条7項)。

普通借家契約では同様の特約を設けても無効とされますが、定期借家契約ではこの特約が有効です。不動産投資・賃貸経営において定期借家契約を活用することは、賃料の安定という観点から重要な法的手段です。

貸主から賃料増額を請求する場合

逆に貸主側から賃料を増額したいケースもあります。貸主側の賃料増額請求権は、テナントの減額請求と対称的に、借地借家法32条1項が定めています(「増額を請求することができる」)。

増額請求が認められる条件は次の3つです。

  • 土地・建物の租税等の負担が増加した
  • 土地・建物の価格が上昇した
  • 近傍同種の建物の賃料と比較して不相当に低くなった

大阪の商業エリアでは、近年の地価上昇・インフレの影響で「現在の賃料が周辺相場より低い」というケースが増えています。顧問先の実務では、適切なタイミングでの増額交渉が賃料収入の改善につながった事例があります。

賃料増額・減額の交渉は弁護士が関与することで法的根拠が強くなります

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テナントから賃料減額を求められた場合の対応手順

ステップ1:減額要求の根拠を確認する

テナントから「賃料を下げてほしい」という申し出があった場合、まず相手方が主張する減額の根拠を確認します。

  • 経営不振・業績悪化:法律上の減額請求権の根拠にはならない。「払えないから下げてほしい」は交渉事であり、法的義務ではない
  • 周辺相場との乖離:借地借家法32条1項の要件に当たりうる。近傍同種物件の賃料データで反論が必要
  • 建物の老朽化・設備の不具合:修繕義務(民法606条)の問題と賃料減額は別の論点。まず修繕対応が先になることが多い

根拠が「経営不振」だけであれば、法的な減額請求権の行使とはいえず、あくまで任意の交渉の申し出です。応じる義務はありません。

ステップ2:近傍相場データを収集する

賃料の相当性は「近傍同種の建物の賃料」との比較で判断されます。貸主側として交渉を有利に進めるために、次のデータを収集します。

データの種類 取得方法 証拠力
不動産鑑定士による鑑定評価 不動産鑑定士に依頼 最高(裁判での証拠力大)
国土交通省公示地価・基準地価 国土交通省ウェブサイト 高(公的機関データ)
大阪市内の同種物件の成約賃料 不動産業者からの市場調査 中〜高
固定資産税評価額の推移 市区町村から通知書で確認 中(租税負担変動の根拠に)

ステップ3:調停・訴訟での解決

テナントが減額請求を主張し、貸主が応じない場合、最終的には次の法的解決手続きになります。

賃料増減額の訴訟は「調停前置主義」が適用されます(民事調停法24条の2)。いきなり訴訟を提起せず、まず簡易裁判所に調停を申し立てる必要があります。

  • 賃料減額調停:テナントが申し立て。調停委員が間に入り協議。合意しなければ訴訟へ
  • 賃料増額調停:貸主が申し立て。同様の手続き
  • 訴訟:調停不成立の場合。鑑定評価が重要な証拠になる

調停・訴訟の場面では不動産鑑定評価書が最も重要な証拠になります。貸主側が先に鑑定を取得しておくことで、交渉の出発点を自社に有利な数字に設定できます。

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立退き・更新拒絶を行いたい場合の法的手順

正当事由とは何か

貸主がテナントに立退きを求めるには、「正当事由」が必要です(借地借家法28条)。正当事由は次の要素を総合的に考慮して判断されます。

  • 貸主側の使用の必要性:自己使用・建替え・相続人の利用等
  • 借主側の使用の必要性:長期入居・生計依存度等
  • 立退料の提供:正当事由を補完する重要な要素
  • 建物の老朽化・危険性:建替えの必要性

「テナントの業績が悪い」「賃料を滞納している」という理由だけでは正当事由として認められません。立退き・更新拒絶には、貸主側の具体的な使用必要性と立退料の提示が一般的に必要になります。

賃料滞納を理由とした解除の手順

テナントが賃料を滞納している場合、賃貸借契約の解除が可能ですが、一定の手順が必要です。

  • 催告:相当の期間を定めて賃料の支払いを催告する(内容証明郵便が証拠として有効)
  • 信頼関係破壊の判断:1〜2ヶ月程度の滞納では解除できないケースもある。「信頼関係を破壊するに足りる程度」の滞納が必要(最高裁判例)
  • 解除通知:催告後に支払いがなければ解除通知を送付
  • 明渡し請求訴訟:テナントが退去しない場合は訴訟・強制執行

賃料滞納の事案では、内容証明郵便による催告→解除通知という段階を踏まないと、後の訴訟で手続きの瑕疵を指摘されるリスクがあります。弁護士法人ブライトの顧問先の実務でも、手続きを飛ばして直接退去を求めたことで紛争が長期化したケースがあります。

弁護士が関与することで変わる交渉力

法律の仕組みを理解した交渉が結果を変える

賃料交渉・立退き交渉は、法律の仕組みを知っているかどうかで結果が大きく変わります。テナント側も弁護士を立てているケースでは、貸主側も弁護士関与なしで交渉を続けることにリスクがあります。

弁護士法人ブライトの「みんなの法務部」には、大阪を中心に不動産オーナー・投資家から次のような相談が寄せられています。

  • 「サブリース契約の解除・賃貸人地位の承継について、覚書の内容が正しいか確認してほしい」(顧問先パターン4・Slack相談記録より抽象化)
  • 「管理会社が2年以上請求ミスをしており、突然50万円超の請求が来た。払う必要があるか」(顧問先パターン8・Slack相談記録より抽象化)
  • 「不動産売買のたびに締結まで数日しかない急ぎの依頼が続いている。顧問として常にチェックしてほしい」(顧問先パターン5・Slack相談記録より抽象化)

不動産オーナー・投資家の顧問先は、売買・賃貸・人事が同時進行で複数案件を抱えるケースが多いです。都度のスポット相談では対応が後手に回りがちで、顧問弁護士による継続サポートが有効です。

弁護士法人ブライトでは、大阪の不動産オーナー・投資家を含む中小企業130社以上(実名公開)に対して、賃貸借トラブル・立退き・賃料交渉を継続的に支援しています。弁護士歴平均14年以上のチームが法律的な裏付けを持った交渉戦略を立案します。

関連記事:賃貸借契約を解除する方法 | 賃貸トラブル・原状回復 | 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」 | 企業法務トップ

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よくある質問

テナントから賃料を下げてほしいと言われました。必ず応じなければなりませんか?

必ずしも応じる義務はありません。借地借家法32条1項の賃料減額請求権は「租税負担の減少」「不動産価格の下落」「近傍相場との比較で不相当に高い」という条件を満たす場合に認められる権利です。テナントの経営不振・業績悪化だけを理由とする減額要求には法的根拠がなく、任意の交渉の申し出に過ぎません。ただし近傍相場との乖離を主張されている場合は、データで反論する準備が必要です。

定期借家契約では賃料を下げなくていいのですか?

定期建物賃貸借契約(定期借家契約)に「賃料減額請求をしない旨の特約」が明記されている場合、テナントは借地借家法32条の減額請求権を行使できません(同法38条7項)。普通借家契約では同様の特約は無効ですが、定期借家契約では有効とされます。賃貸経営の安定を図るうえで、定期借家契約の活用は重要な選択肢のひとつです。

テナントに立退きを求めるにはどうすればよいですか?

貸主がテナントに立退きを求めるには「正当事由」が必要です(借地借家法28条)。正当事由は「貸主側の使用の必要性」「借主側の使用の必要性」「立退料の提供」「建物の老朽化」などを総合判断して決まります。立退料の提示なしに正当事由が認められるケースは限られており、弁護士による交渉戦略の立案が有効です。賃料滞納を理由とする解除は別途、催告→解除通知という手順が必要です。

賃料増額交渉を行いたい場合、どう進めればよいですか?

貸主から賃料増額を請求できるのは「租税負担の増加」「不動産価格の上昇」「近傍相場と比較して不相当に低くなった」という条件を満たす場合です(借地借家法32条1項)。増額を主張するには近傍同種物件の賃料データ・不動産鑑定評価書が有力な証拠になります。テナントが応じなければ調停(調停前置主義)→訴訟という流れになります。弁護士関与で交渉の法的根拠が明確になります。

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本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
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