監修:和氣 良浩(わけ よしひろ) 弁護士法人ブライト|代表弁護士|大阪弁護士会 大阪で20年以上、中小企業の企業法務・顧問弁護士サービスを提供。顧問先130社以上の実名を公開し、透明性の高いリーガルサポートを実践している。 ある日突然、「団体交渉申入書」という書面が会社に届く。差出人は聞いたこともない「合同労組」や「ユニオン」。そこには、従業員1名の待遇や解雇をめぐる要求と、「誠実に対応しなければ不当労働行為として労働委員会に申し立てる」といった文言が並んでいます。 多くの経営者にとって、団体交渉は初めての経験です。何から手を付ければよいのか、社長が出なければならないのか、無視したらどうなるのか――分からないことだらけのまま最初の一歩を誤ると、後の交渉が長期化し、解決の難易度が上がります。 弁護士法人ブライトは大阪の中小企業を中心に顧問先130社以上を実名公開し、「みんなの法務部」として使用者側の団体交渉対応を数多く手がけてきました。本記事では、団体交渉申入書が届いた直後にすべき初動対応から、社外ユニオンと企業内組合の違い、応じる義務の範囲、議題別の準備、絶対にやってはいけない対応まで、実務の順序に沿って解説します。 団体交渉申入書が届いてからの初動早見表 タイミング やるべきこと 注意点 受領当日〜翌日 申入書の内容確認・顧問弁護士へ共有 現場担当者だけで即答しない 1週間以内 回答書の作成・出席者と方針の決定 全面拒否・無回答は避ける 1ヶ月以内 第1回団体交渉の開催 合理的理由なく長引かせると不誠実交渉と評価されうる 団体交渉申入書が届いたら、まずは顧問弁護士にご相談ください 弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずは無料でご相談ください。 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る 無料で相談する 団体交渉とは何か|申入書が届いたら最初にすべきこと 団体交渉とは、労働組合が使用者(会社)に対し、賃金・労働条件・解雇の当否といった事項について、組合員の代表として交渉を求める手続きです。会社と従業員1名との個別交渉とは異なり、相手は「組合」という団体になります。 誠実交渉義務とは 会社には、団体交渉に応じ、誠実に交渉する義務があります(労働組合法7条2号)。「誠実に交渉する」とは、組合の要求を全て受け入れることではありません。自社の主張を根拠とともに説明し、資料を提示し、譲歩できる部分とできない部分を明確にしながら、解決に向けて協議を尽くすことを意味します。逆に、正当な理由なく交渉を拒否したり、形だけの交渉で実質的な話し合いをしなかったりすると、不当労働行為として労働委員会への申立てを受けるリスクがあります。 回答期限の設定と出席者の人選 申入書には、多くの場合「◯月◯日までに回答せよ」「◯名以内で出席せよ」といった指定が記載されています。会社側にこれに従う法的義務はありませんが、無視したり大幅に遅らせたりすると不誠実交渉と評価されるリスクが高まります。実務上は、申入れから概ね1ヶ月以内を目安に第1回団体交渉を設定し、その間に事実関係の整理・会社としての方針決定・出席者の人選を進めるのが安全な進め方です。出席者は、意思決定にある程度関与できる立場の担当者と、必要に応じて弁護士とする組み合わせが一般的です。 初動対応を誤ると交渉が長期化します。早めのご相談が有効です 弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずは無料でご相談ください。 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る 無料で相談する 社外ユニオン(合同労組)と企業内労働組合の違い 中小企業の経営者が戸惑いやすいのが、「社内に労働組合はないはずなのに、なぜ団体交渉を申し入れられたのか」という点です。これは、従業員が社外の「合同労組」「ユニオン」に個人で加入したことが原因です。 合同労組の特徴 合同労組は、特定の企業に属さず、地域や業種を横断して個人単位で加入できる労働組合です。従業員はトラブルが発生した後にインターネット等で合同労組を探し、加入することが少なくありません。加入時点で、その従業員は正式な組合員となり、会社は原則として団体交渉に応じる義務を負います。 企業内組合との違い 企業内組合(社内労組)は、その企業の従業員のみで構成される組合で、通常は労使関係が既に構築されています。一方、合同労組は初対面の相手であることが多く、会社側の内部事情や労務管理の実態を把握していないまま強い要求を伝えてくることがあります。だからこそ、初期対応で会社の立場と事実関係を的確に伝える準備が重要になります。 団体交渉に応じる義務の範囲|拒否した場合の不当労働行為リスク 「加入して1週間の組合員のために、なぜ交渉に応じないといけないのか」と感じる経営者は少なくありません。しかし、労働組合法上、組合加入からの期間の長短は交渉拒否の理由になりません。 ⚖️ 団体交渉に関する法的根拠 労働組合法7条2号:正当な理由のない団体交渉拒否・不誠実な交渉は不当労働行為に該当する 義務的団交事項:賃金・労働時間・解雇・懲戒処分など、組合員の労働条件や待遇に関する事項は原則として交渉に応じる義務がある 任意的団交事項:経営に関する専権事項(人事権の行使そのもの・経営方針の決定等)は、労働条件への影響が具体的でない限り、交渉義務の範囲外とされることが多い 根拠条文:労働組合法7条2号(不当労働行為) 拒否できるケース・できないケース 状況 対応 賃金・残業代・解雇・懲戒処分の当否 義務的団交事項。原則として応じる必要がある 既に退職した元従業員に関する事項 在職中の労働条件に関連する場合は交渉義務が認められる場合がある 全く同一の議題で決着済みの再蒸し返し 誠実に対応済みであれば、以後の交渉拒否が正当化される場合がある 経営判断そのもの(事業縮小の是非等) 労働条件への影響を具体的に説明した上で、交渉範囲を限定できる場合がある 個別の事案がどちらに該当するかの判断は専門的で、誤ると不当労働行為の申立てや、交渉自体が長期化する原因になります。判断に迷う場合は、回答書を送る前に弁護士に確認することをおすすめします。 交渉義務の有無・回答書の内容は、送付前にご相談ください 弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずは無料でご相談ください。 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る 無料で相談する 団体交渉の実務設計|出席者・場所・時間・回数 団体交渉は「何度でも」「無制限に」応じなければならないものではありません。誠実に協議を尽くし、双方の主張が出尽くした段階(いわゆる交渉の行き詰まり)に至れば、それ以上の交渉継続を強制されることはないとされています。ここでの設計を誤ると、無用に交渉が長期化し、経営者の時間的負担が増えるだけでなく、対応の一貫性が崩れて不利な発言を引き出されるリスクも高まります。 社長は出席しなければならないか 組合側が「社長本人でなければ話にならない」と出席を強く求めてくることがあります。しかし、団体交渉における会社側の出席者を誰にするかは、原則として会社が決めることができます。実務上は、事実関係と会社の方針を正確に把握した担当者(役員・人事責任者)と弁護士が出席し、社長は必要な場面に限って同席する形が、感情的な対立を避けるうえでも有効です。 場所・時間・記録の取り扱い 開催場所は自社の会議室である必要はなく、貸会議室など中立的な場所を指定しても問題ありません。1回あたりの時間はあらかじめ「1時間程度」など上限を組合側に伝えておくと、際限のない長時間交渉を避けられます。録音については、双方が録音する前提で臨むのが安全です。会社側も必ず録音し、後日の言った言わないのトラブルを防ぎます。 複数回に及ぶ場合の考え方 1回の交渉で結論が出ないことは珍しくありません。回を重ねる中で、双方の主張の対立点が明確になり、金銭解決や職場復帰といった落としどころが見えてくることもあります。重要なのは、毎回の交渉で「前回からの進展」を作ることです。同じ主張の応酬が続くだけであれば、それ以上の交渉継続義務がないと判断できる材料にもなります。 よくある議題別の準備ポイント 団体交渉で扱われる議題は、企業規模や業種を問わずある程度パターン化されています。議題ごとに準備すべき資料と論点が異なります。 解雇・退職勧奨の撤回要求 解雇や退職勧奨の経緯について、組合が「不当解雇だ」「退職強要だ」として撤回を求めるケースです。就業規則、注意指導の記録、面談の経緯を時系列で整理し、手続きの適正さを説明できるようにしておく必要があります。退職勧奨そのものの進め方に不安がある場合は、退職勧奨の適切な進め方をまとめた記事もあわせてご確認ください(退職勧奨を進める際の注意点はこちら)。 ハラスメント(パワハラ・セクハラ)主張 「上司の言動がパワハラだった」という主張を組合が代弁するケースは非常に多いテーマです。この場合、事実関係を関係者からヒアリングして整理すること、厚生労働省のハラスメント指針に照らして評価することが出発点になります。事実に争いがある部分と、評価が分かれる部分を切り分けて主張することが、交渉を前に進める鍵になります。 未払賃金・残業代請求 雇用契約書や給与明細の記載不備が発端となり、差額賃金や未払残業代を請求されることがあります。契約書の文言が曖昧なまま放置されていると、組合側の主張に反論しづらくなります。日頃から雇用契約書・就業規則を整備しておくことが、団体交渉での防御力に直結します。 議題 準備すべき資料 解雇・退職勧奨の撤回要求 就業規則、注意指導記録、面談議事録 ハラスメント主張 関係者ヒアリング記録、社内規程、時系列表 未払賃金・残業代請求 雇用契約書、給与明細、勤怠記録 実際の解決事例|転勤命令拒否から団体交渉に発展したケース 弁護士法人ブライトが顧問先企業をサポートした事例に、転勤命令を拒否した従業員が労働組合に加入し、団体交渉に発展したケースがあります。会社が命令の正当性と処遇条件を丁寧に整理して交渉に臨んだ結果、解決金の支払いを伴わない形で約4ヶ月で終結しました(解決実績「転勤命令拒否から団体交渉に発展した事例」はこちら)。団体交渉は「金銭を払って終わらせるしかない」ものではなく、会社の主張を丁寧に積み上げることで、金銭的な譲歩を伴わずに解決できることもあります。 議事録作成と証拠化のポイント 団体交渉では、口頭でのやり取りが後日の紛争(労働委員会でのあっせん・不当労働行為の申立て等)における最大の争点になります。毎回の交渉終了後、日時・出席者・発言の要旨・次回までの宿題を議事録にまとめ、社内で保管しておくことが重要です。可能であれば、交渉のたびに会社側の発言内容を事前にすり合わせ、担当者ごとに発言がぶれないようにしておきます。合意に至った場合は、必ず「清算条項」を含む協定書・合意書を締結し、将来の蒸し返しを防止します。 こんな場合は、団体交渉が始まる前に弁護士へご相談ください 弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずは無料でご相談ください。 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る 無料で相談する 弁護士に相談すべきケース・弁護士同席のメリット 次のいずれかに該当する場合は、団体交渉が本格化する前に弁護士へ相談することを強くおすすめします。 団体交渉申入書が届いたが、社内に対応経験のある担当者がいない 組合側が社長本人の出席や、特定の即答を強く要求している 解雇・退職勧奨・懲戒処分など、法的評価が争点になっている 労災申請と団体交渉が同時並行で進んでいる 問題社員対応が既に長期化しており、他の従業員への影響が懸念される(問題社員対応の全体像はこちら) 弁護士が交渉に同席する最大のメリットは、感情的な応酬を避け、論点を法的に整理した状態で交渉を進められる点です。組合側は交渉を仕事として行っているため、強い言葉や高圧的な態度で臨んでくることがあります。会社側の担当者だけで対応すると、その場の空気に流されて不用意な発言をしてしまうリスクがありますが、弁護士が同席することで、事実に争いがある点と評価が分かれる点を切り分けながら、冷静に交渉を進めることができます。 絶対にやってはいけない対応 団体交渉への対応でやってしまいがちな、しかし絶対に避けるべき対応を整理します。 申入書を無視する・回答を放置する 「関わりたくない」という気持ちから申入書を放置すると、それ自体が団体交渉拒否として不当労働行為に該当するリスクが極めて高くなります。回答を保留する場合でも、期限内に「検討中である」旨の一報を入れておくべきです。 組合員であることを理由に不利益な取扱いをする 組合に加入したこと、団体交渉を申し入れたことを理由に、配置転換・降格・解雇といった不利益な取扱いを行うことは、不当労働行為(労働組合法7条1号)として明確に禁止されています。既存の問題行為に基づく処分であっても、タイミングによっては「組合活動への報復」と評価されるおそれがあるため、処分の時期・理由の整理は慎重に行う必要があります。 その場しのぎの口約束をする 交渉の場を早く終わらせたい一心で、確認が取れていない事項について曖昧な回答や口約束をしてしまうと、後日「言った・言わない」の対立を招きます。即答を避け、持ち帰って検討する姿勢を貫くことが重要です。 よくある質問 団体交渉は拒否できますか? 賃金・解雇・懲戒処分など労働条件に関する事項(義務的団交事項)は、正当な理由なく拒否すると不当労働行為(労働組合法7条2号)に該当するリスクがあります。一方、経営専権事項など交渉義務の範囲外とされる事項もあるため、個別の判断が必要です。回答前に大阪の企業法務に強い弁護士へご相談ください。 ユニオン(合同労組)から団体交渉申入書が届いたら、何日以内に対応すべきですか? 法律上の期限は定められていませんが、実務上は申入れから概ね1ヶ月以内に第1回団体交渉を開催するのが安全な目安です。回答自体は数日〜1週間程度で行い、無回答・放置は避けてください。 団体交渉に社長は必ず出席しなければなりませんか? 会社側の出席者を誰にするかは、原則として会社が決めることができます。組合側が社長の出席を強く求めることはありますが、事実関係を把握した担当者と弁護士が出席する形でも問題ありません。 従業員が組合に加入したことを理由に、配置転換や不利な扱いをしても良いですか? 組合加入や団体交渉申入れを理由とする不利益取扱いは、不当労働行為(労働組合法7条1号)として禁止されています。問題行為に基づく処分であっても、時期や理由の整理次第では報復と評価されるおそれがあるため、事前に弁護士へご相談ください。 大阪の企業ですが、団体交渉の対応を弁護士に相談できますか? 弁護士法人ブライトは大阪を拠点に、顧問先130社以上・弁護士歴平均14年以上のチームで団体交渉対応をサポートしています。「みんなの法務部」として、申入書が届いた直後の初動相談から交渉同席まで対応しますので、まずはお気軽にご相談ください。 団体交渉の初動対応は、スピードが結果を左右します 弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずは無料でご相談ください。お電話は0120-929-739まで。 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る 無料で相談する 団体交渉は、会社にとって不慣れで緊張を強いられる場面です。しかし、初動対応・出席者の人選・議題ごとの準備・議事録による証拠化という基本の型を押さえれば、過度に恐れる必要はありません。弁護士法人ブライトは、企業法務トップページ(企業法務コンテンツ一覧はこちら)でも、契約・労務・会社運営に関する実務記事を公開しています。団体交渉申入書が届いた際は、一人で抱え込まず、まずはご相談ください。