監修:和氣 良浩(わけ よしひろ) 弁護士法人ブライト|代表弁護士|大阪弁護士会 大阪で20年以上、中小企業の企業法務・顧問弁護士サービスを提供。顧問先130社以上に透明性の高いリーガルサポートを実践している。 「問題社員を解雇することに決めた。次に何をすればいいか」――解雇の手順を正しく踏まないと、解雇自体は有効であっても手続き違反として会社が損害賠償を負うリスクがあります。 特に重要なのが解雇予告(労働基準法20条)です。解雇する場合は原則として30日前に予告するか、30日分の平均賃金を「解雇予告手当」として支払わなければなりません。これを怠った解雇は、たとえ解雇理由が正当であっても手続き上の問題が生じます。 このページでは、解雇予告の手順・解雇予告手当の計算式・即日解雇が認められる条件・解雇予告除外認定の申請まで、使用者側弁護士の視点から解説します。 解雇の手順、弁護士が一緒に確認します 弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずは無料でご相談ください。 問題社員・労務トラブルの無料相談はこちら 無料で相談する 解雇予告の基本ルール(労働基準法20条) 労働基準法20条は、解雇の手続きについて以下を定めています。 労働基準法20条(解雇の予告) 原則:労働者を解雇しようとする場合は、少なくとも30日前に予告しなければならない 代替手段:30日前に予告しない場合は、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う 中間的な対応:予告日数が30日に満たない場合は、不足日数分の平均賃金を支払う(例:20日前の予告なら10日分の平均賃金) 違反の効果:解雇予告手当を支払わない解雇は無効(大阪高裁1956年・最高裁1951年判例の蓄積) 解雇予告の方法 解雇予告は口頭でも法律上は有効ですが、「言った・言わない」のトラブルを避けるため、必ず書面(解雇通知書)で交付します。解雇通知書には以下を記載します。 解雇する旨(「解雇します」という明確な意思表示) 解雇日(30日後以降の具体的な日付) 解雇の理由(就業規則の条項番号と具体的な理由) 解雇予告手当を支払う場合はその旨と金額 なお、労働者から解雇理由証明書の交付を請求された場合は、遅滞なく交付する義務があります(労働基準法22条)。 解雇予告手当の計算方法 解雇予告手当は「平均賃金×不足日数分」で計算します。平均賃金の計算は少し複雑なので、間違いなく計算することが重要です。 平均賃金の計算式 計算方法 内容 原則(賃金総額÷暦日数) 解雇予告を行った日の直前3ヶ月間に支払われた賃金の総額 ÷ その期間の暦日数 最低保障(賃金÷労働日数×0.6) 3ヶ月間の賃金総額 ÷ 3ヶ月間の労働日数 × 60%(日給・時給の場合に使う) 適用 上記2つを計算し、大きい方を採用する(労働基準法12条) 計算例 (例)月給30万円の社員を即日解雇する場合 直前3ヶ月の賃金総額:30万円 × 3ヶ月 = 90万円 直前3ヶ月の暦日数:31 + 30 + 31 = 92日 平均賃金(原則):90万円 ÷ 92日 ≒ 9,782円 解雇予告手当(30日分):9,782円 × 30日 ≒ 293,478円 なお、賃金の総額に算入しない項目があります(臨時に支払われた賃金・3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金・通勤手当が含まれる場合の一部など)。計算誤りがないか弁護士または社会保険労務士に確認することを推奨します。 解雇予告手当の支払い方法 解雇予告手当は、解雇日(即日解雇の場合はその日)に全額を現金で支払う必要があります(労働基準法24条の即時払いの原則)。振込対応の場合は、社員の同意が必要です。支払い記録(振込記録・領収書など)は必ず保管します。 解雇予告手当の計算、弁護士に確認してから実行を 弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずは無料でご相談ください。 問題社員・労務トラブルの無料相談はこちら 無料で相談する 即日解雇が認められる条件(解雇予告の除外) 労働基準法20条1項ただし書きは、以下の場合に解雇予告・解雇予告手当が不要な「除外認定」を定めています。 天災事変その他やむを得ない事由(20条1項ただし書き前段) 自然災害・戦争など、事業を継続することが不可能となった場合です。工場が火災で全焼した場合などが該当しますが、単なる経営悪化は含まれません。 労働者の責めに帰すべき事由(20条1項ただし書き後段) 社員側に重大な帰責事由がある場合で、代表的なものは以下の通りです。 横領・窃盗・詐欺など会社財産の不正取得 同僚・顧客への傷害行為 重要な機密情報の漏洩・持ち出し 無断欠勤が14日以上続き、連絡がとれない場合 経歴詐称(採用選考での重大な虚偽申告) 「除外認定」の申請手続き 「労働者の責めに帰すべき事由」による即日解雇を行う場合は、事前または事後に所轄の労働基準監督署への「解雇予告除外認定」の申請を行うことが強く推奨されます。認定を得ないまま即日解雇した場合でも無効になるわけではありませんが、後の争いで認定を得ていたかどうかが重要な証拠になります。 大阪の弁護士法人ブライト「みんなの法務部」の顧問先(製造業・匿名化)では、横領が判明した社員を即日解雇する際に、事前に弁護士が除外認定申請の文書を整備したことで、後の労働審判でも手続き上の問題なしと判断された事案があります。 解雇予告を不要とする社員の範囲 労働基準法21条では、以下の社員には解雇予告・解雇予告手当が不要とされています。 対象者 条件・注意点 日々雇い入れられる労働者 1ヶ月を超えて継続して雇用された場合は適用除外 2ヶ月以内の期間を定めて雇用した労働者 所定の期間を超えて継続して雇用された場合は適用除外 季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて雇用した労働者 所定の期間を超えて継続して雇用された場合は適用除外 試用期間中の労働者 14日を超えて継続して雇用された場合は適用除外。試用期間14日を超えた後は予告が必要 注意が必要なのは試用期間中の社員です。試用開始から14日以内であれば解雇予告は不要ですが、14日を超えると通常の解雇予告が必要になります。試用期間中の解雇・本採用拒否の詳細は試用期間中の解雇・本採用拒否の条件をご参照ください。 解雇通知書の書き方と注意点 解雇通知書は、後の紛争に備えて正確に作成することが重要です。弁護士法人ブライトでは顧問先に解雇通知書の文案を作成・確認するサポートを行っています。 解雇通知書に必ず記載すること 社員の氏名・部署 「貴殿を下記の理由により解雇します」という明確な意思表示 解雇日(「令和○年○月○日付で解雇します」) 解雇理由(就業規則の何条何号に該当するかを明記) 解雇予告手当の有無と金額(即日解雇の場合) 会社名・代表者名・日付・押印 解雇理由は曖昧にしない 「業務上の問題により」「会社の都合により」という曖昧な記載は避けます。後から追加の解雇理由を主張することは原則として認められない(解雇理由の後発的追加禁止)ため、解雇通知書の記載内容が争点の核心になります。解雇理由は具体的に、就業規則の条項と照合した上で記載します。 解雇後の手続き 解雇が成立した後も、会社として以下の手続きが必要です。 離職票の交付:ハローワークへの離職証明書提出・離職票の交付(解雇の場合は「特定受給資格者」として処理) 源泉徴収票の交付:退職後1ヶ月以内に交付義務あり 健康保険・厚生年金の資格喪失届:退職日翌日から5日以内 退職金の支払い:就業規則に退職金規程がある場合は、定めの期日までに支払う 私物の返却・会社貸与品の回収:社員証・PC・鍵など 問題社員対応の全体フローと各ステップの詳細については、問題社員への対応完全ガイドをあわせてご参照ください。 また、弁護士法人ブライトの顧問弁護士サービス「みんなの法務部」では、解雇通知書の文案作成・解雇予告手当の計算確認・労基署対応など、解雇の手続きを一括してサポートしています。企業法務トップでは人事労務関連の解説記事を多数掲載しています。 よくある質問 解雇予告手当を支払わなかった場合どうなりますか? 解雇予告手当を支払わずに行った即日解雇は、判例上「解雇の効力は生じないが、解雇予告手当の支払いにより解雇の効力が生ずる」と解されています(最高裁昭和35年判決)。ただし支払いを怠れば労働基準法違反として6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象になります。労基署からの是正勧告・刑事告発のリスクもあります。大阪の弁護士法人ブライトに事前にご相談ください。 30日前に解雇を予告したが、社員が出勤拒否しています。どうすればいいですか? 解雇予告後の出勤拒否は、社員の意思によるものであれば欠勤扱いとなり、欠勤期間中の賃金支払い義務はありません(ノーワーク・ノーペイの原則)。ただし解雇予告後も労働契約は存続しているため、会社側から就労を拒否することはできません。予告期間中の取扱いを社内規程で整備しておくことが重要です。 横領が発覚した社員を即日解雇できますか? 横領は「労働者の責めに帰すべき事由」として解雇予告除外認定の対象となります(労働基準法20条1項ただし書き)。事前または事後に所轄の労働基準監督署へ除外認定申請を行うことで、解雇予告・解雇予告手当なしで即日解雇が可能です。ただし横領の事実確認・証拠保全を先に行い、弁護士に確認してから実行することを強く推奨します。 解雇の理由を社員に教える義務はありますか? 解雇通知書に解雇理由を記載することは義務ではありませんが、社員から「解雇理由証明書」の交付を請求された場合は、遅滞なく交付しなければなりません(労働基準法22条)。証明書に記載した以外の理由を後から追加することは原則として認められないため、解雇通知書・解雇理由証明書の作成は慎重に行う必要があります。 解雇の手続き、弁護士法人ブライトに相談してください 弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずは無料でご相談ください。 問題社員・労務トラブルの無料相談はこちら 無料で相談する