試用期間中の解雇・本採用拒否の条件|採用後に「やっぱりダメだった」は通用するか【使用者側 弁護士解説・大阪】

試用期間中の解雇・本採用拒否の条件|採用後に「やっぱりダメだった」は通用するか【使用者側 弁護士解説・大阪】

和氣 良浩

監修:和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士|大阪弁護士会

大阪で20年以上、中小企業の企業法務・顧問弁護士サービスを提供。顧問先130社以上に透明性の高いリーガルサポートを実践している。

「試用期間中なら、問題があればすぐ辞めてもらえると思っていた」――大阪の中小企業の経営者からよく聞く誤解です。試用期間は「会社が社員を評価するための期間」ですが、だからといって会社が自由に雇用を終了できるわけではありません。

最高裁判所は、試用期間の法的性質について「解約権留保付き労働契約」と定義しています(三菱樹脂事件・最高裁1973年12月12日)。つまり、一定の条件が満たされれば解雇・本採用拒否できる権利を会社が留保しているにすぎず、その権利の行使にも合理性・相当性が必要です。

このページでは、試用期間の法的性質・本採用拒否が認められる基準・試用期間延長の可否・書面管理の重要性まで、使用者側弁護士の視点から解説します。

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試用期間の法的性質(三菱樹脂事件の射程)

試用期間の法的性質については、最高裁大法廷が昭和48年(1973年)の三菱樹脂事件で明確な判断を示しています。

三菱樹脂事件(最高裁大法廷・1973年12月12日)の要旨

  • 試用期間中の法律関係は「解約権留保付き労働契約」である
  • 試用期間中または試用期間満了時の解雇(本採用拒否)は、通常の解雇よりも広い範囲で認められる
  • ただし「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当として是認される場合」でなければ解雇は無効
  • 採用後に判明した事実に基づいて本採用を拒否できる

この判決のポイントは「通常の解雇より広い範囲で認められる」という点です。つまり試用期間中は、本採用後よりも解雇・本採用拒否のハードルが相対的に低くなっています。しかし「合理的な理由と社会通念上の相当性」は依然として必要です。「なんとなく合わない」「印象が悪い」だけでは足りません。

本採用拒否が認められるケース・認められないケース

どのような事情があれば本採用を拒否できるか、裁判例から整理します。

認められやすいケース

  • 経歴詐称:採用選考で学歴・職歴・資格を虚偽申告していた(採用の重要条件に関わる場合)
  • 勤務態度の著しい問題:無断欠勤・遅刻の繰り返し・業務命令への反抗的な態度が複数回記録されている
  • 能力の著しい不足:採用時の条件(即戦力・特定の技能保有)と実態が大きくかけ離れている
  • 不正行為・ハラスメント:試用期間中に横領・セクハラ・パワハラが判明した
  • 重大な虚偽申告:前職での懲戒歴・犯罪歴を故意に隠していた(業務に直接影響する場合)

認められにくいケース

  • 「なんとなく合わない」「職場の雰囲気に合わない」という抽象的な理由
  • 能力不足だが、具体的な指導・評価が行われていない(問題点の告知がない)
  • 社員の属性(性別・国籍・障害の有無・妊娠等)を理由とする場合
  • 採用担当者の個人的な感情・好みによる判断
  • 問題を指摘せずに試用期間を満了させ、突然本採用拒否を通告する

大阪地裁・東京地裁の裁判例でも「問題を一度も告知せず、突然本採用拒否した」ケースは無効とされることが多いです。試用期間中でも、問題点は早期に書面で指摘し、改善の機会を与えることが重要です。

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試用期間中の解雇手続き(14日ルール)

試用期間中の解雇には、労働基準法上の特例があります。

状況 解雇予告の要否 注意点
試用開始後14日以内 不要(労働基準法21条4号) 即日解雇可。ただし正当な理由は必要
試用開始後14日超 必要(30日前の予告 or 予告手当) 通常の解雇と同じ手続きが必要
試用期間満了時の本採用拒否 30日前の通知が必要(判例の傾向) 試用期間終了間際の突然の拒否はトラブルの原因

重要な点は、試用期間が長期間(3ヶ月・6ヶ月)の場合、その終了間際に突然「本採用しない」と通告することは避けるべきという点です。本採用拒否は「解雇」に準じるものとして、事前に問題点を伝え、弁明の機会を設けることが実務上求められます。

試用期間の延長は可能か

「試用期間を延長してもっと様子を見たい」という相談もよくあります。試用期間の延長については、以下の点に注意が必要です。

延長できる場合

  • 雇用契約書・就業規則に「試用期間を延長できる」旨の規定がある
  • 延長の理由が客観的に合理的である(傷病による長期欠勤・評価に十分な機会がなかった等)
  • 社員に対して延長の理由と期間を事前に書面で通知している

延長できない・無効になるリスクがある場合

  • 就業規則・雇用契約書に延長規定がない
  • 「なんとなくもう少し様子を見たい」という会社側の都合だけで延長する
  • 延長期間が著しく長い(例:当初3ヶ月の試用期間を何度も延長して計2年以上になっている)

試用期間の延長に関する規定は、就業規則に明記しておくことが重要です。弁護士法人ブライトでは顧問先の就業規則の試用期間条項について、法的リスクを踏まえた見直しをサポートしています。

書面管理の重要性(試用期間中の記録)

試用期間中に問題が発生した場合、その問題点を記録として残すことが本採用拒否を有効にする上で最も重要な作業です。

試用期間中に残すべき記録

  • 採用条件の書面化:採用通知書・雇用契約書に「試用期間○ヶ月・試用期間中の評価により本採用を決定する」と明記する
  • 問題点の指摘記録:問題行為・能力不足を発見した都度、書面またはメールで指摘・指導する
  • 評価面談の記録:定期的な評価面談を実施し、評価内容と社員の反応を記録する
  • 本採用可否の判断基準:評価の基準(到達すべきスキル・行動指針)を事前に伝えておく

本採用拒否通知書の作成

本採用拒否を決定した場合、口頭ではなく書面(本採用拒否通知書)で交付します。記載内容は以下の通りです。

  • 本採用を拒否する旨の明確な意思表示
  • 試用期間終了日(雇用終了日)
  • 本採用拒否の具体的な理由(評価面談・指導記録を踏まえた記載)
  • 解雇予告手当の支払いが必要な場合はその旨と金額

大阪の弁護士法人ブライト「みんなの法務部」の顧問先(飲食業・匿名化)では、試用期間中の社員が問題行為を繰り返したため、入社から2ヶ月半で本採用拒否を行いました。この際、採用時の雇用契約書・問題指摘メール(3回分)・評価面談記録が整備されていたため、後の労働審判でも本採用拒否が有効と判断されました。書面管理の積み重ねが結果を左右した典型例です。

試用期間の記録設計、顧問弁護士に相談ください

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問題社員対応の全体像との連携

試用期間中の対応は、問題社員対応の最初のフェーズです。試用期間を経て本採用した後に問題が発生した場合は、注意指導・PIP・退職勧奨・解雇という手順が必要になります。

弁護士法人ブライトの顧問弁護士サービス「みんなの法務部」では、採用段階の雇用契約書・就業規則の整備から、試用期間中の問題対応・本採用拒否の手続き設計まで、使用者側に特化してサポートします。企業法務トップでは人事労務関連の解説記事を多数掲載しています。

よくある質問

試用期間中なら理由なく解雇できますか?

試用期間中でも理由なく解雇することはできません。最高裁(三菱樹脂事件・1973年)は、試用期間中の解雇は「通常の解雇より広い範囲で認められる」としつつも「客観的に合理的な理由があり社会通念上相当として是認される場合」という要件を課しています。「なんとなく合わない」「採用を後悔した」だけでは認められません。大阪の弁護士法人ブライトにご相談ください。

試用期間を3ヶ月から延長することはできますか?

就業規則・雇用契約書に延長規定があり、延長の理由が客観的に合理的な場合は可能です。ただし規定なしの延長・理由のない延長は「試用期間の不当延長」として争われるリスクがあります。延長する場合は社員に書面で延長理由と期間を通知することが必要です。

採用後に前職での問題が判明した場合、本採用を拒否できますか?

前職での懲戒歴・重大な不正行為など、採用の重要条件に関わる事実を故意に隠していた場合は、採用後に判明しても本採用拒否・解雇が認められる可能性があります(三菱樹脂事件・最高裁1973年)。ただし業務に直接影響しない私的な事情については、採用選考での申告義務がなく、拒否の根拠とならない場合があります。個別事情によるため弁護士にご相談ください。

試用期間終了の3日前に本採用拒否を通告しても大丈夫ですか?

試用期間開始後14日を超えている場合は解雇予告(30日前通知 or 解雇予告手当)が必要です。試用期間終了3日前の通告は30日分の解雇予告手当の支払いが必要になります。また、問題点をまったく伝えずに突然本採用拒否することは、「改善の機会を与えなかった」として拒否が無効とされるリスクもあります。試用期間の途中から問題点を書面で指摘しておくことが重要です。

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本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
なお、本記事の内容に関する個別の質問や意見などにつきましては、ご対応できかねます。ただし、当該記事の内容に関連して、当事務所へのご相談又はご依頼を具体的に検討されている場合には、この限りではありません。
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