メンタル不調社員の対応|休職・復職・退職の判断基準と会社が踏むべき手順【大阪の顧問弁護士が解説】

メンタル不調社員の対応|休職・復職・退職の判断基準と会社が踏むべき手順【大阪の顧問弁護士が解説】

和氣 良浩

監修:和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士|大阪弁護士会

大阪で20年以上、中小企業の企業法務・顧問弁護士サービスを提供。顧問先130社以上に透明性の高いリーガルサポートを実践している。

この記事の結論

メンタル不調社員への対応で会社が迷うのは、「いつ・何をすべきか」の判断基準がないからです。

ブライトは「どうやって辞めさせるか」より先に、「今この社員はどの段階にいるか」を確認します。休職前・休職中・復職後・退職勧奨の段階によって、会社が取るべき行動は全く異なります。段階を間違えると、療養中の解雇(労基法19条違反)や、復職拒否による不当解雇扱いになるリスクがあります。

メンタル不調社員への対応、まず弁護士に確認してください

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「メンタルで休んでいる社員をどうすればいいか分からない」——よくある相談

大阪の中小企業からブライトに届くメンタル不調社員に関する相談は、次のようなものです。

  • 「突然「うつ病」の診断書を持ってきて休職を申し出てきた。どう対応すればいいか」
  • 「休職期間が終わりそうだが、復職できる状態か判断できない」
  • 「復職させたが、また体調が悪くなった。何度も繰り返している」
  • 「療養中の社員に退職を勧めたいが、違法にならないか不安」
  • 「問題社員だったが、退職を切り出したらメンタル不調を訴えるようになった」

これらに共通するのは、「段階ごとに何をすべきかが分からない」という不安です。メンタル不調への対応は、通常の問題社員対応より格段に難しく、一手間違えると会社が不当解雇・ハラスメントと評価されるリスクがあります。

まず現在の「段階」を整理しましょう

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📋 まず、自社の状況を整理してみてください

当てはまる項目が多いほど、対応の準備が整っています。空欄が多い場合は、動く前に「整える」段階です。

  • ☐ 医師の診断書を受け取っている
  • ☐ 就業規則に休職・復職規程がある
  • ☐ 産業医・主治医との連携体制がある
  • ☐ 復職の判断基準を決めている
  • ☐ 不調が業務に起因する可能性を検討した
  • ☐ 本人の意向(働き続けたいか)を確認している

空欄が多いなら、まず「診断書の受領」と「休職規程の確認」から。チェックの数より、空欄の埋め方が方針を分けます。

ブライトが最初に確認する「今、この社員はどの段階か」

メンタル不調社員への対応を相談された場合、ブライトはまず「現在の段階」を4つに分けて確認します。段階によって、会社がすべきこと・してはいけないことが全く変わるからです。

段階1:症状が出ているが、まだ休職していない

この段階で会社が確認すべきことは次の3点です。

  • 就業規則に休職制度があるか——休職命令を出す根拠が必要。規定がない場合、無断欠勤扱いになるリスクがある
  • 症状の業務起因性——業務上のストレスが原因だとすると、労災認定される可能性がある。この場合、休業期間中・後30日間は解雇禁止(労基法19条)
  • 職場環境の記録——ハラスメントがあったかどうかの事実確認。後に「会社が原因」と主張される前に、現状を記録しておく

段階2:休職中

休職中は「放置」が最大のリスクです。定期的な状況確認(連絡)を行い、復職見込み・傷病手当金の状況・主治医の診断内容を記録します。

注意点:休職中の社員に「いつ復職できるか」「このまま辞めないか」と圧力をかけることは、強迫的な退職勧奨と評価される場合があります。連絡は「安否確認と状況把握」にとどめます。

また、就業規則に「休職期間満了による退職」の規定がある場合、休職期間の管理が重要です。期間が来ても復職できない場合、自動退職または解雇の手続きに進めます(ただし、産業医・主治医の意見を経ることが必要)。

段階3:復職の判断

ここが最も判断が難しい段階です。主治医の「復職可能」診断書が出ても、会社が直ちに復職させる義務はない場合があります(最判平10.4.9・片山組事件参照)。重要なのは「従前の業務に通常の程度に行える健康状態に回復しているか」の確認です。

ブライトが顧問先にアドバイスしているのは、次の復職判断プロセスです。

確認項目 内容
主治医の診断書 「復職可能」の旨と、就業上の配慮事項(残業制限・業務内容など)の明記を求める
産業医の意見 産業医がいる場合は必ず産業医面談を実施し、意見書をもらう
試し出勤 いきなりフル復職ではなく、短時間・軽作業から始める期間を設ける(リハビリ出勤)
復職拒否の場合 拒否するには客観的・合理的な理由が必要。恣意的な拒否は解雇と同様に扱われる

段階4:復職できない・繰り返す場合の対応

休職期間満了まで回復が見込めない、あるいは復職後も短期間で再休職を繰り返す場合は、退職勧奨または就業規則に基づく自動退職・解雇の手続きに移ります。ここでも記録が重要です。

なぜ「段階の整理」が経営問題なのか——多くの会社が損害を広げるパターン

ブライトの顧問先で実際に起きた事例を紹介します。

※プライバシー保護のため、複数の事例をもとに内容を一部変更して紹介しています。

実例:産業医面談のタイミングと録音の重要性(医療・サービス業)

ある事業所でセクハラ問題を起こした社員が、対応を進める中で「うつ・てんかんの疑いなし」の診断書を提出してきた。会社は産業医面談を設定しようとしたが、タイミングを誤り「攻撃的になるリスクがある」との判断で一時停止した。

ブライトのアドバイスは「録音は必須。書面作成は本人が構えるため、まず上司を通じた面談設計を先行させる」というものだった。産業医面談の実施順序・方法を間違えると、後の退職勧奨が「追い詰めた」と評価されるリスクがある。

このケースで重要だったのは、メンタル不調を主張する社員への対応順序を弁護士と事前に設計したことだった。

この事例が示すのは、メンタル不調への対応は「感情で動かず、順序を設計する」ことが不可欠だということです。会社が感情的に動くと、本来有効な退職勧奨が「パワハラ」「強迫」と評価される余地を与えます。

対応の順序設計を一緒に考えます

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法律上のポイント——会社が知らずに踏む地雷

療養中の解雇禁止(労働基準法第19条)

業務上の傷病による療養期間中およびその後30日間の解雇は禁止されています。メンタル不調の原因が業務にある(業務起因性がある)場合、この禁止規定が適用されます。

「業務起因性があるかどうか分からない」という段階でも、解雇に踏み切ることは非常にリスクが高いです。解雇後に労災認定された場合、解雇が無効になります。

復職拒否と解雇の基準(片山組事件・最判平10.4.9)

最高裁は「労働者が職種・業務の限定なく採用された場合、従前の業務に就けなくても、他の業務に就くことができ、使用者もその配置が可能な場合には、能力の欠如を理由とした解雇は許されない」と判示しています。つまり、「元の仕事ができない」だけでは解雇できないケースがあります。

就業規則の「休職→自動退職」規定の重要性

就業規則に「休職期間満了後も復職できない場合は自動退職とする」旨の規定があれば、期間満了による退職処理が可能です。この規定がない場合、解雇手続きが必要になり、解雇権濫用法理(労働契約法第16条)の適用を受けます。就業規則に休職・復職・自動退職の手続きが明記されているかは、必ず確認してください

弁護士に相談すべきケース

次のいずれかに該当する場合は、対応前に必ず大阪の弁護士に相談してください。

  • メンタル不調の原因が業務(過重労働・ハラスメント)にある可能性がある
  • 休職期間が満了するが、就業規則に自動退職規定がない
  • 復職を繰り返している(3回以上)
  • 本人が「会社のせいだ」と主張しており、弁護士からの通知が来た
  • 問題行動があってから体調不良を主張するようになった(タイミングへの疑念がある)
  • 産業医がいない(産業医面談なしで復職判断をしようとしている)

メンタル不調社員への対応、一人で抱え込まないでください

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問題が解決した後に考えること——再発防止の体制整備

メンタル不調社員の問題が一件解決した後、同じ問題が繰り返されないための体制整備をブライトは提案しています。

就業規則の休職・復職規定の整備

「休職期間の上限」「復職判断のプロセス」「繰り返し休職した場合の扱い」を明文化します。これがあるだけで、次回の対応が格段に楽になります。

ハラスメント相談窓口と対応フローの設置

ハラスメント規定はあっても「申告があった場合の対応フロー」がない会社は多い。ブライトの顧問先(医療クリニックの事例)でも、「ハラスメント申告は”まず傾聴、法的判断は弁護士”という体制を構築する」アドバイスをしています。就業規則の形式的整備と運用フロー設計がセットで必要です。

顧問弁護士との事前設計

メンタル不調社員が出てからではなく、出る前に対応フロー・記録様式・産業医との連携体制を設計することが最も効果的な予防策です。顧問弁護士サービス「みんなの法務部」では、法務ドックとして会社の労務体制を定期的に診断しています。

詳しくは企業法務トップページもご覧ください。

よくある質問

うつ病の診断書を持ってきた社員に、すぐ休職させなければなりませんか?

就業規則に休職制度がある場合、会社は休職命令を出すことができます。ただし、義務かどうかは就業規則の規定内容によります。休職命令を出さず就業させ続けた結果として症状が悪化した場合、会社の安全配慮義務違反(労働契約法第5条)が問われる可能性があります。診断書を受け取ったら、就業規則の休職規定と照らし合わせ、速やかに対応方針を弁護士に相談することをお勧めします。

「会社のパワハラが原因でうつになった」と主張された場合、どうすればよいですか?

業務起因性(業務が原因かどうか)の有無が問題になります。業務起因性が認められれば労災となり、療養中の解雇禁止(労基法19条)が適用されます。また、会社の安全配慮義務違反として損害賠償請求が来る可能性があります。まず職場の実態調査(いつ・何があったかの記録確認)を行い、弁護士に事実関係を報告した上で対応方針を決めてください。

休職→復職→また休職を繰り返している社員を退職させることはできますか?

就業規則に「復職後〇ヶ月以内に再び同一または関連する傷病で休職した場合は、前回の休職期間と通算する」という規定があれば、休職期間満了による自動退職が可能です。この規定がない場合は解雇手続きが必要になります。また、解雇するには「治癒の見込みがない」という医師の意見書が必要です。繰り返し休職への対応は、就業規則の整備状況によって全く異なります。まず就業規則を弁護士に確認させてください。

休職中の社員に連絡をとってもよいですか?

定期的な安否確認・状況報告の連絡は適法です。ただし、業務指示・退職を促す内容・頻繁な連絡は「休養妨害」「退職強要」として問題になりえます。頻度は月1回程度、内容は「体調の確認と傷病手当金の手続きに必要な書類確認」にとどめることをお勧めします。連絡方法・頻度についても、就業規則や休職時の合意書に明記しておくと安心です。

メンタル不調社員の対応は「みんなの法務部」にご相談ください

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関連記事:解雇失敗4パターン|中小企業が陥りやすいリスクと対策退職勧奨の進め方|違法にならない手順と判断基準

この記事の内容は「問題社員対応の全体フロー」の一部です。目的別の手段選択フローや他の対応手段については以下のハブ記事で解説しています。

→ 問題社員対応|辞めさせたいなら目的から考える【意思決定フロー付き・大阪の弁護士解説】

問題社員への対応、一人で抱え込んでいませんか?

弁護士法人ブライトは大阪の中小企業の外部法務部「みんなの法務部」として、問題社員・解雇トラブルを弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。顧問先130社以上に透明性の高いサポートを実践しています。

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参考文献(当事務所蔵書)

メンタルヘルス不調者への対応は、不調の業務起因性(ストレス—脆弱性理論)や使用者の安全配慮義務が正面から問題となる領域で、労働事件の実務マニュアルでも独立の章が設けられる定番論点です(東京弁護士会労働法制特別委員会『新労働事件実務マニュアル〔第5版〕』(ぎょうせい、2020年))。

  • 東京弁護士会労働法制特別委員会『新労働事件実務マニュアル〔第5版〕』(ぎょうせい、2020年)
  • 東京弁護士会弁護士研修センター運営委員会『弁護士専門研修講座 労働環境の多様化と法的対応(労働法の知識と実務Ⅲ)』(ぎょうせい、2016年)
本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
なお、本記事の内容に関する個別の質問や意見などにつきましては、ご対応できかねます。ただし、当該記事の内容に関連して、当事務所へのご相談又はご依頼を具体的に検討されている場合には、この限りではありません。
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