問題社員への対応を進めていくと、必ず一度は「懲戒解雇にするか、諭旨解雇にするか」という分かれ道が来ます。事実関係はおおむね固まった。就業規則にも懲戒解雇事由として書いてある。それでも、いざ通知書を出す直前になって手が止まる——大阪の中小企業の社長・人事責任者から、弁護士法人ブライトにはこの段階のご相談が多く寄せられます。 手が止まる理由は、多くの場合「重い処分を出すこと」そのものへの迷いではありません。重い処分を出したあとに、会社の側が何を背負うのかが読めないことです。退職金はどう扱えばよいのか。本人が弁護士を立ててきたらどうなるのか。残る社員にどう説明するのか。この不安に対して、就業規則は答えを書いてくれません。 この記事では、諭旨解雇とは何か、懲戒解雇と具体的に何が違うのか、そして会社側があえて諭旨解雇を選ぶときにどこを見て判断しているのかを、会社側(使用者側)の実務の視点から整理します。処分名の意味だけでなく、「選んだあとに何が起きるか」まで含めて判断できる状態を目指します。なお本記事は一般的な情報提供であり、個別の事案の結論を示すものではありません。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ 弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。 法務チェックリスト 無料ダウンロード 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る 0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料) 諭旨解雇とは|懲戒処分の一種であって「合意退職」ではない 諭旨解雇(ゆしかいこ)とは、懲戒解雇に相当する事由がある社員に対し、会社が情状を酌量したうえで、本人に退職を勧告する形で行う懲戒処分をいいます。多くの会社の就業規則では、「懲戒解雇事由に該当するが情状酌量の余地がある場合は諭旨解雇とし、退職届の提出を勧告する。所定の期限までに提出がないときは懲戒解雇とする」といった形で定められています。 ここで最初に押さえるべきなのは、諭旨解雇はあくまで「懲戒処分」だという点です。本人が退職届を出す形をとるため、退職勧奨や合意退職と混同されがちですが、法的な性質はまったく違います。退職勧奨は懲戒ではなく、「辞めることを勧める」という事実上の働きかけにすぎません。これに対して諭旨解雇は、懲戒事由の存在を前提に会社が懲戒権を行使しています。したがって、あとから懲戒処分としての有効性(労働契約法15条:客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない懲戒は無効とされます)を問われる立場に立ちます。 諭旨解雇・諭旨退職・諭旨免職は、呼び方が違うだけのこともある 実務でよく混乱するのが呼称です。「諭旨退職」「諭旨免職」という言葉も使われますが、これらは法律上の定義があるわけではなく、各社の就業規則がどう定めているかで意味が決まります。おおまかには次のように整理できます。 諭旨退職:本人が退職届を提出し、退職の形で終わらせることに力点を置いた呼び方。 諭旨解雇:退職届が出なかった場合に会社が解雇するところまでを含む呼び方。 諭旨免職:公務員や学校法人などで使われることが多い呼び方。 大切なのは言葉の当てはめではなく、自社の就業規則に何と書いてあるかです。「諭旨解雇」という項目がないのに諭旨解雇の通知書を出す、という食い違いが起きると、それ自体が処分の有効性を揺らがせる材料になります。処分名を決める前に、必ず現行の就業規則の条文を確認してください。 就業規則に定めがなければ、諭旨解雇という処分は出せない 懲戒処分は、就業規則に懲戒の種別と事由を定めたうえで(労働基準法89条9号)、それを労働者に周知していることが前提になります。就業規則に列挙されていない種類の処分を新たに作って科すことは、原則としてできません。 中小企業では、就業規則が数年〜十数年前のまま更新されていない、あるいは本社にしか備え置かれておらず周知が怪しい、というケースが珍しくありません。「懲戒解雇」しか定められていない就業規則で諭旨解雇を出すと、処分名と根拠条文が一致しないという不安定な状態になります。この場合は、懲戒解雇として出したうえで退職金の一部を支給する、あるいは懲戒処分は行わずに退職勧奨で進める、といった別ルートを検討することになります。 「退職届を出させる」という形式が、あとで効いてくる 諭旨解雇の実務上の特徴は、最終的な退職の形が「本人の意思による退職」になる点です。本人が退職届を出し、会社がそれを受理して退職扱いとするため、解雇そのものの効力を正面から争う入口が狭くなります。会社側から見ると、これが諭旨解雇を選ぶ最大の実務的メリットです。 ただし、これは裏を返せば「本人の意思が本当に自由だったか」が争点になりうるということでもあります。強い圧力のもとで書かせた退職届は、あとから意思表示の瑕疵(強迫・錯誤)や退職強要を理由に効力を争われる余地が残ります。形式を整えることと、実質を整えることは別物です。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ 弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。 法務チェックリスト 無料ダウンロード 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る 0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料) 諭旨解雇と懲戒解雇の違い|会社側が見るべき7つの比較軸 両者は「懲戒処分の中でいちばん重い層」に属する点では共通していますが、会社が負うリスクとコストの形が違います。実務で判断材料になる7点を表にまとめます。 比較軸 諭旨解雇 懲戒解雇 処分の重さ 懲戒解雇に次ぐ重さ。情状酌量を前提とする 懲戒処分の中でいちばん重い 本人の関与 退職届の提出を勧告し、本人の提出を受けて退職扱い 会社の一方的な意思表示で雇用が終了 退職金 全額または一部を支給する定めが多い 不支給・大幅減額とする定めが多い 解雇予告手当 退職届による退職なら解雇ではないため予告の問題は生じない 原則30日前の予告または予告手当。予告なしの即時解雇は労基署長の除外認定を受けるのが原則 離職理由の記載 退職届が出るため自己都合の形をとることが多いが、事由の重さによりハローワークが重責解雇と同等に扱う可能性もある 重責解雇として扱われる可能性がある 再就職への影響 「懲戒解雇歴」という形にはなりにくい 経歴上の不利益が大きく、本人の抵抗が強くなりやすい 争われやすさ 退職の効力を争う入口が狭く、紛争化しにくい傾向 解雇無効を正面から争われやすく、長期化しやすい いちばん大きな違いは、退職金の扱い 会社と本人の双方にとって最も金額差が出るのが退職金です。多くの就業規則は「懲戒解雇の場合は退職金を支給しない」と定め、諭旨解雇については「その一部を支給することがある」と定めています。 ただし、規定があるからといって、当然に全額不支給が認められるわけではありません。退職金には賃金の後払い的な性格と功労報償的な性格があるとされ、不支給が認められるのは、それまでの勤続の功を打ち消してしまうほどの重大な不信行為があった場合に限られる、というのが一般的な考え方です。長年まじめに勤めた社員の一度の非違行為で機械的に全額不支給とすると、退職金請求という別の紛争を呼び込みます。 諭旨解雇は、この論点をあらかじめ和らげる選択でもあります。「懲戒解雇に相当するが、勤続の実績を踏まえて退職金の一部は支給する」という設計は、処分の相当性を説明しやすくします。 解雇予告手当と、労基署長の除外認定 懲戒解雇であっても、労働基準法20条の解雇予告の適用が自動的に外れるわけではありません。予告なしの即時解雇を行うには、「労働者の責に帰すべき事由」について労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受けるのが原則とされています。認定を受けずに即日で雇用を打ち切ると、労働基準監督署から是正を求められるおそれがあるほか、そもそも「責に帰すべき事由」があったのかを本人側から争われ、30日分の平均賃金(解雇予告手当)の支払いを求められるリスクが残ります。手続を省いた分の不確実性を、会社が抱え込む形になります。 この点、諭旨解雇で本人が退職届を提出して退職に至った場合は、そもそも解雇ではないため予告の問題自体が生じません。手続の煩雑さという意味でも、諭旨解雇のほうが軽い設計になります。 離職票・再就職への影響は「本人の抵抗の強さ」に直結する 本人にとって、懲戒解雇は経歴に残る事実です。転職活動での説明が難しくなり、雇用保険の給付でも重責解雇として扱われる可能性があります。だからこそ、懲戒解雇を告げられた社員は「せめて自己都合退職にしてほしい」「懲戒解雇という事実を覆したい」という動機で弁護士に相談します。実際、労働者側の相談実務では、会社を辞めること自体はすでに受け入れているのに、懲戒解雇という処分名だけは争いたい、という動機で相談に至る例が少なくありません。 会社側から見ると、これは重要な示唆です。本人が争う動機は「辞めるかどうか」ではなく「どういう名前で辞めるか」に宿ることがある。諭旨解雇は、その動機そのものを小さくする選択肢だということです。なお、離職票の離職理由は、会社が実態に基づいて記載したうえでハローワークの確認も入ります。諭旨解雇で退職届が出て形式上は自己都合退職になった場合でも、処分の原因となった事実が重ければ「自己の責めに帰すべき重大な理由による離職」として給付制限が及ぶことがあります。処分名がそのまま雇用保険の扱いに直結するわけではない、という点は会社側も押さえておくべきです。 見落とされがちな「争われやすさ」の差 実務では、この点が最も軽視されがちで、最も高くつきます。次章で詳しく扱います。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ 弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。 法務チェックリスト 無料ダウンロード 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る 0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料) 会社があえて諭旨解雇を選ぶときの3つの判断軸 「いちばん重い処分を出せるのに、なぜ一段落とすのか」。ここが本記事の中心です。会社側の実務では、次の3つを見て判断しています。 ①「いちばん重い処分」ほど、争われたときのコストが読めない 懲戒解雇は懲戒処分の中でいちばん重い処分です。重い処分であるほど、その事案にその重さが釣り合っているか(相当性)が厳しく見られます。つまり、会社が持っている証拠のレベルが同じでも、処分が重いほど無効と判断される可能性は上がるという構造になっています。 実務では、この構造が労働者側の戦略としてそのまま使われています。即日で懲戒解雇を告げられた事案の組み立ては、おおむね次の形です。「懲戒解雇はいちばん重い処分なので、よほど悪質な事実がなければ無効を主張しやすい」「懲戒解雇であることが分かる通知書を必ず確保したうえで、解雇無効を前提に、係争中の期間分も含めた賃金相当額(バックペイ)を請求していく」——会社が処分名を重くすればするほど、相手方にとってはこの組み立てが立てやすくなります。 これを会社側に反転させると、次の意味になります。懲戒解雇は、争われたときに「解雇が無効なら、その間ずっと賃金が発生し続ける」という形で損失の見通しが立てにくくなる処分だということです。しかも紛争が長引くほどその金額は増えます。諭旨解雇を選ぶ第一の理由は、この不確実性を小さくすることにあります。 ② 証拠の固さと、処分の重さを釣り合わせる 処分を決める段階では、「事実はほぼ間違いないが、第三者に説明しきれるだけの証拠が全部そろっているとは言えない」という状態がよくあります。ヒアリングでは認めているが録音がない。周辺の社員は見ているが証言を書面にしてくれない。そういう場面です。 このとき、証拠の固さに見合わない重さの処分を出すと、処分の当否ではなく「会社の手続の粗さ」が争点にすり替わります。諭旨解雇は、証拠の固さが八分目のときに、処分の重さを一段落として釣り合いを取る選択肢として機能します。 ただし、ここで注意すべきなのが「選択肢の示し方」です。実務では、システム開発を行う会社が社員に対し、大幅な減給・諭旨退職・応じない場合は懲戒解雇、という三択を提示した結果、提示を受けた本人が「実質的な退職強要ではないか」として弁護士に相談に向かった、という経過をたどった例が実際にあります。会社としては情状を汲んだつもりでも、受け取る側には「どれを選んでも不利益、断れば最も重い処分」という圧力として届いていました。諭旨解雇は「選ばせる処分」ではなく、懲戒処分を一段軽くしたうえで通知する処分だと整理しておくことが、この落とし穴を避ける第一歩になります。 ③ 職場への説明と、次の一手を残す 処分は、対象者一人に向けたものではありません。残る社員が見ています。「あの件は結局どうなったのか」が曖昧なままだと、まじめに働いている社員の側が疲弊していきます。 他方で、いま出せる処分が軽くても、それが無意味ということではありません。ブライトが会社側で関与した、使用人兼務役員によるハラスメント・不正行為が問題となった案件では、「仮に今回重い処分ができなくとも、このタイミングで改善指導を図ることで、再発行為については重い処分が可能となる。社内の信頼確保にもつながり、今後の万一の事態にも備えられる」という方針で進めました。処分は一発勝負ではなく積み上げです。諭旨解雇や、その手前の懲戒処分は、「次に同じことが起きたときに、より重い処分を説明できるようにするための一段目」としての意味を持ちます。 同じ案件では、経営側が動かないこと自体のリスクにも触れています。ハラスメント問題を解消するよう動かなければ、その不作為を捉えて会社の責任(安全配慮義務違反)を問われるおそれがある——処分をためらうことも、それはそれでリスクだということです。 図解:懲戒解雇か諭旨解雇かを分ける判断フロー(会社側) ① 就業規則に「諭旨解雇」の定めがあるか→ないなら諭旨解雇という処分名は使えない。懲戒解雇+退職金の一部支給、または退職勧奨へ ② 第三者に説明しきれる証拠がそろっているか→そろっていない場合は、処分の重さを一段落として釣り合いを取る ③ 同種の事案で過去に出した処分と釣り合っているか→前例より重い処分を出すなら、重くする理由を文書で説明できるようにする ④ 争われた場合、係争期間の賃金負担に耐えられるか→耐えにくいなら、紛争化しにくい設計(諭旨解雇・合意退職)を優先する → ①〜④のいずれかに不安が残るなら、通知書を出す前に弁護士に確認する 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ 弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。 法務チェックリスト 無料ダウンロード 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る 0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料) 諭旨解雇の進め方|会社側の5ステップ 諭旨解雇は「軽い処分」ではありません。懲戒処分である以上、踏むべき手続は懲戒解雇とほぼ同じです。手順を飛ばした軽さは、あとで跳ね返ってきます。 STEP1:処分を決める前に、事実調査を終える 順番を逆にしないことが最も重要です。「処分を決めてから、それを裏づける事実を集める」という進め方は、あとから理由の後付けと評価されやすくなります。関係者のヒアリング、客観資料(勤怠記録・メール・チャット・伝票・入退室記録など)の保全、時系列の整理を先に終えてください。 ブライトが会社側で関与した案件でも、「対象者の言い分を聴く機会が必要である」「より詳細な事実ベースでの調査を再実施したうえで進めるべき」という方針をとりました。調査をやり直す判断は遠回りに見えますが、処分後の紛争まで考えれば結果的に最短です。 STEP2:就業規則の該当条項を特定する 「何条の何号に当たるのか」を明確にします。抽象的な包括条項(「その他前各号に準ずる行為」など)だけを根拠にすると、処分理由の説明が弱くなります。あわせて、退職金規程で諭旨解雇の場合の支給割合がどう定められているかも、この段階で確認してください。 STEP3:弁明の機会を与える 懲戒処分の手続として、本人に言い分を述べる機会を与えることは実務上の基本です。就業規則に手続規定があればそのとおりに、なければ最低限、調査した事実を示して、いつまでに、どのような方法で弁明できるかを書面で伝えることをおすすめします。弁明の内容は記録として残してください。 STEP4:処分を決定し、書面で通知する 諭旨解雇の通知書には、少なくとも次の要素を入れます。①認定した事実、②該当する就業規則の条項、③処分の内容(諭旨解雇であること)、④退職届の提出期限、⑤期限までに提出がない場合の取り扱い、⑥退職金の取り扱い。 書面を軽視しないでください。労働者側は、争うと決めた瞬間にまず書面を取りに行きます。実務上、労働者側の代理人が最初に打つ手は、ほぼ例外なく「解雇されたことが分かる通知書・書面を会社からもらう」ことです。会社が出した書面は、そのまま相手方の主張の土台になります。逆に言えば、書面が整っていれば、それは会社の防御にもなります。 STEP5:退職届が出なかったときの取り扱いを設計しておく 諭旨解雇は、本人が応じない可能性を最初から含んだ処分です。期限までに退職届が出なければ懲戒解雇に移行する、という就業規則の定めがある場合は、その手続をあらためて踏む必要があるのか(改めて弁明の機会が要るのか)を含めて、通知の前に整理しておきます。ここを詰めずに走り出すと、期限が来た時点で会社が動けなくなります。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ 弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。 法務チェックリスト 無料ダウンロード 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る 0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料) 諭旨解雇でつまずく5つの落とし穴 ①「選ばせた」つもりが、退職強要と評価される 前述のとおり、「減給か、諭旨退職か、応じなければ懲戒解雇か」という提示の仕方は、受け取る側に強い圧力として届きます。複数の不利益な選択肢を並べて即答を求める運びは避け、処分の内容と根拠を示したうえで、検討と弁明のための時間を確保するのが安全な進め方です。その場での署名を求める、長時間にわたって同席を続ける、といった運用も避けてください。 ② 弁明の機会を省略した 「本人が認めているから不要」と考えて省略してしまうケースがあります。しかし、認めている範囲が会社の認定事実と一致しているとは限りません。手続を省いたことだけを理由に処分が覆ることもあるため、時間がないときこそ、書面で機会を与えて記録に残す運用が有効です。 ③ 退職金を機械的に全額不支給にした 諭旨解雇を選びながら退職金は全額不支給、という設計は、処分としての一貫性を欠きます。「情状を酌量して一段軽い処分にした」という説明と矛盾するためです。規程の文言と、実際にどう運用するかをそろえてください。 ④ 処分理由を後から追加した 通知書に書いていない事実を、紛争になってから「実はこういうこともあった」と追加するのは、会社にとって不利に働きやすい進め方です。調査段階で拾い切ることが原則になります。 ⑤ 紛争化したときの金額感を見ていない 退職をめぐる交渉では、本人側から年収相当額の解決金を求められることがあります。実務でも、不動産業を営む会社が従業員との雇用関係のもつれについてご相談に来られた際、相手方から年収に相当する金額を支払えば円満に退職するという提案が出ていました。この場面で和氣弁護士は、感情的に応じるのではなく、まず業務命令に従わなかったという事実を解雇理由として明確にしたうえで、支払いの範囲を具体的に区切って提案するという組み立てを示しています。金額の交渉は、事実と根拠を固めてからでなければ始まりません。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ 弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。 法務チェックリスト 無料ダウンロード 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る 0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料) 大阪の中小企業からよくいただくご相談と、ブライトの関わり方 弁護士法人ブライトは大阪を拠点に、会社側(使用者側)の労務トラブルを扱っています。顧問先130社以上の実名を公開しており、社内に法務部を置けない会社の外部法務部として、日常的な判断に伴走しています。 諭旨解雇に関して実際にいただくご相談は、次のようなものです。 就業規則に諭旨解雇の定めがあるか自信がない。条文を見てほしい 懲戒解雇にするか諭旨解雇にするか、判断の材料がほしい 通知書の記載内容を、出す前に確認してほしい 本人が退職届を出さない。次にどう動くべきか すでに本人に弁護士がついた。会社としてどう返すべきか これらは、いずれも通知書を出す前にご相談いただくほど選択肢が広いご相談です。処分を出したあとでは、取れる手が減ります。 ご相談自体は、顧問契約がなくてもお受けしています。そのうえで、実際に代理人として交渉や手続に入る段階では、会社の状況を継続的に把握できる体制のほうが結果につながるため、顧問サービス(みんなの法務部プラン)または法務ドック(会社の法務リスクを一度に点検する診断)とあわせてご案内しています。企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームで対応します。 関連する記事もあわせてご覧ください。 懲戒処分の進め方|譴責・減給・出勤停止・懲戒解雇の5段階と手続き——処分の種類と段階の全体像 問題社員への対応手順|タイプ別5つのステップ——処分の前段階(指導・記録)から整理したい方へ 退職勧奨の進め方と、違法にならないための線引き——懲戒ではなく合意退職で進めたい場合 不正行為をした問題社員の解雇方法|証拠収集・懲戒手続き——証拠の固め方を詳しく 無断欠勤が続く社員の解雇手順——連絡が取れないケース 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ 弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。 法務チェックリスト 無料ダウンロード 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る 0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料) よくある質問(会社側) Q. 諭旨解雇と懲戒解雇、迷ったらどちらを選ぶべきですか? A. 一律の正解はなく、①就業規則の定め、②証拠の固さ、③過去の同種事案との釣り合い、④争われた場合の負担、の4点で判断することになります。特に④は見落とされがちです。懲戒解雇は解雇無効を正面から争われやすく、無効と判断されれば係争期間中の賃金相当額の負担が生じる可能性があります。証拠が十分でない段階でいちばん重い処分を選ぶと、かえって会社の負担が大きくなることがあるため、通知書を出す前に弁護士へご確認ください。 Q. 就業規則に「諭旨解雇」と書いていません。それでも諭旨解雇にできますか? A. 懲戒処分は就業規則に定められた種別・事由に基づいて行うのが原則です(労働基準法89条9号)。定めがない処分名で通知を出すと、根拠条文と処分名が食い違う不安定な状態になります。現実的な選択肢としては、懲戒解雇として処分したうえで退職金規程の範囲で一部支給を検討する、あるいは懲戒を行わず退職勧奨で進める、といった方法があります。今後のために就業規則を改定しておくことも検討されるとよいでしょう。 Q. 諭旨解雇の場合、退職金は払わなければいけませんか? A. 退職金の有無や金額は、まず退職金規程の定めによります。諭旨解雇について「全額または一部を支給する」と定めている会社が多く、その場合は規程に沿った支給を検討することになります。なお、懲戒解雇について「不支給」と定めていても、それまでの勤続の功を打ち消すほどの重大な行為があったといえるかが問われるため、規程どおりに全額不支給とすれば必ず認められるというものではありません。金額の判断は事案によって変わりますので、個別にご相談ください。 Q. 本人が退職届を出しません。すぐ懲戒解雇に切り替えていいですか? A. 就業規則に「期限までに提出がないときは懲戒解雇とする」という定めがあるかどうかが、まず前提になります。定めがある場合でも、あらためて弁明の機会が必要か、解雇予告または予告手当をどう扱うか(即時解雇には労働基準監督署長の除外認定が必要とされています)を整理してから進める必要があります。期限が来てから慌てないよう、通知書を出す前に段取りを決めておくことをおすすめします。 Q. 大阪で会社側の労務問題を相談したいのですが、顧問契約がなくても相談できますか? A. ご相談自体は顧問契約がなくてもお受けしています。弁護士法人ブライトは大阪を拠点に、会社側(使用者側)の立場で問題社員・懲戒処分・退職をめぐるトラブルを扱っています。実際に代理人として交渉や手続に入る段階では、会社の実情を継続的に把握できる体制のほうが結果につながるため、顧問サービスまたは法務ドックとあわせてご案内しています。まずは企業法務窓口(0120-929-739・平日9:00〜18:00)へお問い合わせください。 この記事の監修者 和氣 良浩(わけ よしひろ) 弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士 弁護士歴20年(2006年登録)/大阪弁護士会/大阪大学法学部卒 専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生 問題社員の懲戒処分・諭旨解雇・退職をめぐる判断について、継続的に相談できる体制をお探しの方は、弁護士法人ブライトの企業法務窓口までお問い合わせください。顧問先130社以上の実名を公開しており、企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが対応します。企業法務窓口:0120-929-739(平日9:00〜18:00・大阪) 「みんなの法務部」というブライトの考え方 中小企業の社長に「専属の法務部」を持っていただく——これがブライトの顧問サービスの基本姿勢です。社内に法務部を置けない規模でも、契約書・労務・債権回収・M&Aまで日常的に相談できる体制を、月額固定で。企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームで、130社以上の顧問先と向き合っています。 ▶ みんなの法務部とは(詳しく見る) 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ 弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。 法務チェックリスト 無料ダウンロード 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る 0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料) 会社側・使用者側専門 問題社員対応に特化した弁護士チームのご案内 タイプ別の対応方法・解決事例・費用の考え方を、1つのページにまとめています。「うちのケースはどれに当たるのか」からご確認いただけます。 → 問題社員対応の特化ページを見る→ タイプ別の対応一覧 → 解決事例 ※本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律アドバイスではありません。具体的な問題については弁護士にご相談ください。