この記事の執筆者・監修者
笹野 皓平(ささの こうへい)
弁護士法人ブライト|労災事業部 部長弁護士
大阪弁護士会所属 登録番号45457|修習64期(登録2011年・弁護士歴14年)
労災事故・安全配慮義務違反の損害賠償を専門に担当。フォークリフト・機械事故による重篤災害の解決実績多数。
監修
和氣 良浩(わけ よしひろ)
弁護士法人ブライト 代表弁護士|大阪弁護士会所属
この記事のポイント
- プレス機の安全装置(光線式・両手操作式)の未設置・不作動は労働安全衛生規則第131条・第135条違反として会社責任を直接基礎付ける
- 機械の清掃・点検・詰まり除去中の「不停止事故」は、機械停止手順の未確立が安全配慮義務違反の核心
- ブライトの実案件で、プレス機による指の挟まれ(後遺障害12級)で解決金300万円を実現した実績がある
- 安全装置の設置義務は事業者に課されており、被災者が「安全装置の仕組みを知らなかった」ことは過失相殺の減算事由にならない
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プレス機・機械挟まれ事故の深刻な実態
プレス機による「はさまれ・巻き込まれ」事故は、製造業における死傷労働災害の中でも重篤化しやすい類型です。厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、機械による死傷事故の中で「はさまれ・巻き込まれ」は長年にわたり上位を占めています。
特に問題となるのが2つのパターンです。
パターン1:プレス機の通常操作中の挟まれ
動力プレス機(クランクプレス・油圧プレス等)の通常操作中に、手指がプレス金型に挟まれる事故です。両手操作式安全装置・光線式安全装置(ライトカーテン)等が正常に機能していれば、人体がプレス範囲に入った瞬間に機械が停止するため、重大事故を防ぐことができます。これらの安全装置が未設置・故障・無効化されていた場合に事故が発生します。
パターン2:清掃・詰まり除去・調整作業中の不停止事故
機械の清掃・潤滑油の補充・詰まり除去・型替え作業中に、機械の電源を切らずに(またはロックアウト・タグアウトをせずに)作業を行い、機械が予期せず動作して挟まれる事故です。「少しの間だから停止しなくても大丈夫」という慣習的な作業手順が重大事故につながります。この種の事故は、会社が安全な作業手順(ロックアウト・タグアウト手順)を確立・周知していなかったことが安全配慮義務違反の核心となります。
会社が問われる法的責任の根拠
プレス機の安全装置設置義務(労働安全衛生規則第131条・第135条)
労働安全衛生規則は、動力プレス機械の安全措置について詳細に規定しています。
- 同規則第131条:動力プレス機械には、両手操作式・感応式(光線式・レーザー式等)などの安全装置を設けなければならない旨を規定
- 同規則第135条:安全装置の調整・取外しを行った際は、担当者を通じて所定の手続きを経ることを義務付け
- 同規則第107条:機械の掃除・給油・検査・修理・調整作業中は機械の運転を停止することを義務付け(不停止事故防止の根拠条文)
安全装置が設置されていない・故障していた・意図的に取り外されていた場合、これらの条文違反として会社の安全配慮義務違反が認定されます。被災者が「安全装置の仕組みを知らなかった」「安全装置がないことを知っていた」という事情は、条文上の義務が事業者に課されている以上、過失相殺の大きな減算事由にはなりません。
ロックアウト・タグアウト(LOTO)手順の未確立
機械の清掃・点検・詰まり除去中の不停止事故では、会社がエネルギー遮断(電源断・圧力解放)の作業手順(ロックアウト・タグアウト手順:LOTO)を確立・教育していなかったことが問題となります。LOTOとは、機械の動力源を物理的に遮断・施錠し、誰も勝手にその施錠を解除できない状態にした上で点検・清掃を行う安全手順です。
LOTOの手順書が作成されていない・作業者への教育が行われていない・「停止せずに作業するのが現場の慣習」という状態が続いていた場合、これは会社の組織的な安全管理の欠如として評価されます(安全配慮義務違反・民法415条)。被災者が「慣習に従って作業した」ことは、会社が誤った慣習を黙認・放置していたとして、むしろ会社の過失を高める方向に働くことがあります。
安全教育・技能訓練の不足(労働安全衛生法第59条)
労働安全衛生法第59条は、会社が労働者を雇い入れた際・作業内容を変更した際に、安全衛生教育を行う義務を規定しています。プレス機操作に不慣れな労働者を、十分な教育・訓練なしに機械に就かせた場合、この条文違反として会社責任が問えます。ブライトが対応した実案件では、プレス機を初めて操作した日に安全装置の説明が不十分なまま怪我をした50代パート女性のケースで、解決金300万円(依頼者への返金約222万円)を実現しました(笹野皓平弁護士担当)。
初めての機械操作であった事実・操作前の安全教育の記録の有無・安全装置の機能について事前説明がなかった事実は、安全教育義務違反の証拠として機能します。
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プレス機事故・機械清掃中事故の損害賠償額
プレス機による指・手の挟まれ事故は後遺障害が残存するケースが多く、等級認定次第では数百万円規模の賠償が認められます。後遺障害等級と損害賠償額の目安は以下のとおりです。
| 後遺障害等級 | 典型的な症状(プレス機・機械事故) | 後遺障害慰謝料(弁護士基準) |
|---|---|---|
| 8級 | 親指を含む2本の指の欠損 | 約830万円 |
| 10級 | 親指・人差し指の欠損または機能廃絶 | 約550万円 |
| 12級 | 1本の指の欠損・関節の著しい機能障害 | 約290万円 |
| 13級 | 1本の指の機能障害(可動域制限) | 約180万円 |
| 14級 | 指の疼痛・知覚異常(神経症状) | 約110万円 |
これに傷害慰謝料・逸失利益・休業損害差額・治療費等が加算されます。指の切断・複数指の欠損となると、逸失利益だけでも数百万〜数千万円規模になることがあります。
ブライトの解決事例
事例1. プレス機で指が挟まれ後遺障害12級・解決金300万円
製造会社のパート社員(50代女性)が、動力プレス機を初めて操作した際に指が挟まれ後遺障害12級が残存した事例。初めての機械操作にもかかわらず安全装置の説明が不十分だったことが問題となりました。
ブライトは、プレス機の機械該当性(動力プレス機として労働安全衛生法の規制対象か)を丁寧に分析し、安全装置の有無と過失相殺の可能性を検討。内容証明送付後、相手方代理人との交渉を重ね、解決金300万円で和解成立(弁護士費用・実費控除後、依頼者に約222万円が返金)しました(笹野皓平弁護士担当)。
担当弁護士のコメント
「プレス機事故では安全装置の有無が責任論の中心になります。今回は初回操作中の事故であったため、会社の安全教育体制にも問題があると判断しました。機械の機械該当性(何トンのプレス機か)によって適用される安全基準が変わるため、この点の分析を丁寧に行ったことが交渉の核心でした」(笹野皓平弁護士)
事例2. コンベヤ清掃中・不停止による挟まれ事故・後遺障害11級
食品工場でコンベヤベルトの清掃作業中、稼働状態のままコンベヤに手を近づけたところ回転部に挟まれ指3本に損傷(後遺障害11級)を負った事例(40代男性)。会社は「清掃中に機械を止めないのは作業員全員の習慣だった」と主張しましたが、ブライトはその「慣習」の存在こそが会社の安全管理の欠如を示すと指摘。
ロックアウト手順書の不存在・安全教育記録の欠如を証拠化し、会社の過失割合を7割に維持した交渉で解決しました(有本喜英弁護士担当)。(製造業の機械事故・巻き込まれの詳細解説はこちら)
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プレス機・機械挟まれ事故の証拠収集
安全装置の設置・作動状況の記録
事故後に会社が安全装置を後付けする・修理するというケースがあります。事故後できるだけ早い段階で、機械の状態を写真・動画で記録することが重要です。特に光線式安全装置(ライトカーテン)・両手操作ボタンの存在・動作確認ランプの状態は直接証拠になります。
機械の点検・整備記録
動力プレス機は定期自主検査(年1回・月1回)が義務付けられており、記録の保存が必要です(労働安全衛生法第45条・安衛則第135条)。安全装置の「確認済」「要調整」などの記載・整備履歴は、安全装置の管理状態を示す証拠として重要です。
作業手順書・安全教育記録
プレス機の操作手順書・清掃手順書・LOTOの手順書が存在するか。安全教育(採用時・機械変更時)の記録が残っているか。これらの書類の存否が会社の安全管理体制の評価に直結します。
よくある質問(FAQ)
Q1. プレス機の安全装置が壊れていることを知っていました。それでも会社に請求できますか?
はい、請求できます。安全装置の設置・正常作動義務は会社(事業者)に課されており、労働者が「故障を知っていた」という事実が会社の法的責任を否定する理由にはなりません。ただし、故障を知りながら使用した事情が過失相殺で若干減算される可能性はあります。それでも会社側の義務違反が大きい場合、損害賠償額は相当額になります。
Q2. 清掃中に機械を止めないのは「現場の常識」でした。これでも損害賠償できますか?
むしろ「現場の慣習として機械を止めないことが定着していた」という事実は、会社が危険な作業慣行を黙認・放置していたとして会社の安全管理義務違反を重く評価する方向に働きます。作業員が安全でない慣行に従っていた場合、その慣行を作らせた・是正しなかった会社の責任が問われます。
Q3. 指が切断されてしまいました。どのくらいの賠償になりますか?
指の切断は後遺障害等級が高く認定されることが多く(1本の指で12〜13級、親指で8〜10級)、慰謝料・逸失利益を合わせて数百万円規模になります。年齢・年収・切断した指の種類と本数によって大きく異なりますので、まず弁護士の無料相談で試算することをお勧めします。
Q4. 「労災認定された」だけでは損害賠償は受け取れないのですか?
その通りです。労災保険の給付(療養補償・休業補償・障害補償)と、会社への損害賠償請求(慰謝料・逸失利益等)は別の制度です。労災認定は労基署の行政判断であり、それだけでは会社への損害賠償請求権が発生するわけではありません。別途、弁護士を通じて会社への損害賠償請求を行う必要があります。
まとめ
- プレス機の安全装置(光線式・両手操作式)未設置・不作動は安衛則第131条・第135条違反として会社責任の直接根拠となる
- 機械清掃・詰まり除去中の不停止事故は、LOTOの未確立・安全教育の不備が安全配慮義務違反の核心
- 「現場の慣習として機械を止めない」という状態は、会社が危険な慣行を放置したとして会社側の過失評価を高める
- プレス機による指挟まれ後遺障害12級でブライトは解決金300万円を実現した実績がある
- 指の切断・複数指損傷の場合、慰謝料・逸失利益の合算で数百万〜数千万円規模になることがある
プレス機・機械清掃中の挟まれ事故でお困りの方は、弁護士法人ブライトの労災専門チームにご相談ください。全国対応・電話・Zoom相談可。
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