社内不倫を理由に懲戒解雇できる?会社側が知るべき法的ポイントと実務対応

社内不倫を理由に懲戒解雇できる?会社側が知るべき法的ポイントと実務対応

この記事でわかること

  • 社内不倫を放置すると、訴訟・人材流出・使用者責任の3つのコストが数百万〜1,000万円超に膨らむ理由
  • 懲戒解雇を有効にするために今すぐ整備すべき就業規則と手続きの実務ポイント
  • 顧問弁護士がいれば「問題が小さな段階」で手を打てる理由と具体的なステップ

「社内不倫、どう対処すればいいかわからない……」と悩んでいませんか?

こんな状況に心当たりはないでしょうか。

  • 管理職と部下の不倫関係が発覚したが、「証拠が薄い」「就業規則に明文規定がない」と思い、ひとまず様子を見ている
  • 社内不倫が原因で職場の雰囲気が悪化し、関係する社員が次々と退職しているが、どこから手をつければよいかわからない
  • 懲戒処分を下そうとしたら「不当解雇だ」と反論されそうで、踏み出せずにいる

社内不倫は「プライバシーの問題だから介入しにくい」という心理的ハードルもあり、経営者・人事担当者が対応を先送りしがちな問題のひとつです。しかし、放置すればするほど、会社が支払うコストは雪だるま式に膨らんでいきます。本記事では、放置した場合に発生する3つのコストと、今すぐとるべき実務対応を具体的に解説します。

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社内不倫を放置した場合に発生する3つのコスト

コスト①:不当解雇訴訟・地位確認訴訟(解決まで数百万〜500万円超)

「不倫した社員を解雇したい」と思っても、就業規則に懲戒事由として社内不倫が明記されていなければ、懲戒解雇は原則として無効です。労働契約法第15条は「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」のない懲戒処分を無効とすると定めており、裁判所は就業規則の根拠条文の有無を厳しくチェックします。

問題が発覚した後に慌てて解雇に踏み切り、社員側が「不当解雇だ」として地位確認訴訟を起こすケースは少なくありません。訴訟になれば弁護士費用だけで着手金・成功報酬合わせて50〜100万円以上が発生します。仮に会社が敗訴すれば、解雇期間中の未払い賃金(バックペイ)の支払いも命じられます。1〜2年分の賃金ともなれば、総額500万円を超えることも珍しくありません

「放置」とは「解雇しない」ことだけを意味するわけではありません。就業規則を整備しないまま時間を過ごすこと自体が、将来の訴訟リスクを育てているのです。なお、問題のある社員への対応全般として、問題社員を放置していた会社が直面した3つのリスクも合わせてご参照ください。

コスト②:職場崩壊と人材流出(採用・教育コストで数百万〜1,000万円超)

社内不倫が放置されると、周囲の社員は敏感に反応します。「会社は何もしてくれない」「不公平だ」という空気が広がり、特に関係者と同じ部署にいる社員から退職者が出やすくなります。

中途採用1名あたりの採用コストは、求人広告費・面接工数・入社後の教育期間を合算すると平均100〜150万円とも言われています(業種・職種によって変動)。10名規模の部署で退職が連鎖すれば、採用・教育コストだけで数百万〜1,000万円超の損失になります。退職者が増えれば残った社員への業務負荷も増し、さらなる退職連鎖を引き起こすという悪循環に陥ります。

社内不倫を「個人間の問題」として会社が放置し続けるメッセージを発信することは、組織全体のモラルと定着率を静かに蝕んでいきます。

コスト③:被害社員からのハラスメント損害賠償(会社に使用者責任)

特に問題になりやすいのが、管理職・上司が地位や権限を利用して部下に関係を迫るケースです。この場合、単なる不倫問題にとどまらず、セクシュアルハラスメントやパワーハラスメントとして、会社が使用者責任を問われる可能性があります(民法715条)。

被害を受けた社員が精神疾患を発症した場合、労災申請と並行して会社への損害賠償請求がなされるケースもあります。慰謝料・治療費・休業損害などを合算すると、請求額が数百万円規模に上ることも十分にあり得ます。会社が「知らなかった」では済まされず、問題を認識していながら放置していた事実が明らかになれば、賠償額がさらに加算されるリスクもあります。

実際に起きた事例から学ぶ「放置のツケ」

ある製造業の会社では、営業部門の管理職と部下の社内不倫が発覚したにもかかわらず、「証拠が不十分」「就業規則に規定がない」として約1年間対応を保留していました。その間、不倫関係に嫌気が差した周辺社員3名が相次いで退職。採用・引き継ぎにかかったコストは合計400万円を超えました。さらに、関係を迫られ続けた部下が適応障害を発症し、会社への損害賠償請求へと発展。最終的に会社が負担した金額(弁護士費用・賠償金・バックペイを含む)は1,000万円超にのぼりました。

また、あるサービス業の会社では、役員同士の不倫が長期間黙認された結果、一方の配偶者(社員)が精神的苦痛を理由に会社に対して使用者責任を追及。「職場環境配慮義務を怠った」と認定され、会社側が150万円の和解金を支払う事態となりました。いずれも、早い段階で弁護士に相談し就業規則を整備していれば、問題の大半は防げたケースです。

懲戒解雇を有効にするために今すぐ整備すべきポイント

①就業規則に懲戒事由を明記する

懲戒処分を有効に行うためには、就業規則に懲戒事由として「社内不倫」または「職場秩序を乱す行為」が明記されていることが前提です。「会社の信用を著しく損なう行為」「職場の風紀・秩序を乱す行為」という包括的条項でも運用可能ですが、より明確な条文を設けることで後の法的紛争を予防できます。就業規則の作成・変更は、労働者代表の意見聴取と労働基準監督署への届出が必要です(労働基準法89条・90条)。

②懲戒処分は段階的に行う(比例原則)

「不倫した=即懲戒解雇」は原則として認められません。裁判所は懲戒処分の「相当性」を厳しく審査するため、戒告→減給→出勤停止→降格→諭旨解雇→懲戒解雇という段階を踏むことが重要です。特に解雇は「最後の手段」と位置づけられており、職場への実害(業務妨害・ハラスメント・不正行為など)が明確でない限り、解雇の有効性は認められにくいのが実情です。

③事実確認・弁明の機会を必ず設ける

懲戒処分を行う前には、当事者への事実確認と弁明の機会の付与が必要です。この手続きを欠いた懲戒処分は、内容が正当であっても無効とされるリスクがあります。聴き取り内容は議事録として文書化し、証拠として保存しておきましょう。

④解雇以外の選択肢も検討する

「解雇したいが根拠が弱い」という場合、退職勧奨という選択肢もあります。ただし、退職勧奨も違法と判断されるケースがあるため、進め方には注意が必要です。詳しくは退職勧奨で違法と言われないための進め方をご参照ください。

「顧問弁護士がいれば、この段階で防げた」という現実

上記の事例に共通しているのは、「問題が表面化した後に弁護士に相談した」という点です。訴訟や損害賠償請求が起きてから弁護士に依頼しても、すでに会社側の不利な状況は固まっています。弁護士費用も跳ね上がり、解決まで1〜2年を要することも珍しくありません。

一方、顧問弁護士と継続的な顧問契約を締結している会社では、以下のような「早期介入」が可能です。

  • 就業規則の定期的な見直し:社内不倫・ハラスメントの懲戒事由を事前に整備できる
  • 問題が発覚した初動での相談:「この段階ではどの処分が相当か」をその場で確認できる
  • 聴き取り・証拠収集のサポート:後の紛争に備えた記録の取り方を指導してもらえる
  • 社員への通知・交渉の代理:感情的になりやすい場面でも冷静な法的対応が可能

顧問弁護士の月額費用は一般的に3万〜10万円程度が目安です。訴訟1件で500万円超の損失が発生することを考えれば、費用対効果は明らかです。顧問弁護士の必要性・選び方については顧問弁護士は必要?重要性・利用すべき場面・費用対効果の判断基準で詳しく解説しています。

今日からとるべき実務対応ステップ

社内不倫の問題が発生した(または予防したい)場合、以下のステップで対応を進めてください。

  1. 【ステップ1】就業規則の確認:懲戒事由に「職場秩序を乱す行為」「セクシュアルハラスメント」などの条文が整備されているか確認する
  2. 【ステップ2】事実の把握:当事者・関係者からの聴き取りを行い、記録を文書化する(弁明の機会の付与も忘れずに)
  3. 【ステップ3】処分の相当性の判断:戒告・減給・出勤停止など、段階的処分の中からどのレベルが相当かを検討する(この段階で弁護士に確認することが強く推奨されます)
  4. 【ステップ4】処分の実施と記録保存:処分通知書を書面で交付し、一連の手続き記録を保存する
  5. 【ステップ5】再発防止策の整備:ハラスメント研修の実施・相談窓口の設置など、職場環境の整備を行う

特にステップ2〜3の段階では、判断を誤ると後の訴訟リスクに直結します。「まだ小さな問題だから」という段階での弁護士への相談が、最大の損失予防策です。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 社内不倫を理由にした懲戒解雇は、法的に認められますか?

就業規則に懲戒事由が明記されており、事実確認・弁明の機会付与などの手続きが適切に行われていれば、一定の条件下で有効とされるケースがあります。ただし、「不倫した」という事実だけでは懲戒解雇の相当性が認められにくく、職場への具体的な悪影響(業務妨害、他の社員への被害、管理職としての信頼失墜など)が加わって初めて解雇が正当化されます。まずは解雇より軽い処分から段階的に進めることが原則です。就業規則の整備状況や具体的な事実関係によって判断が大きく変わるため、早めに弁護士に相談することをお勧めします。

Q2. 既に社内不倫が発覚してしまっています。今からでも適切な対応は間に合いますか?

問題が発覚した後でも、適切な対応は十分に間に合います。重要なのは「今すぐ動くこと」です。現時点での就業規則の内容確認、事実関係の記録化、処分内容の検討という順序で進めることで、後の法的紛争リスクを大幅に下げることができます。特に「まだ訴訟になっていない段階」であれば、弁護士のアドバイスのもとで紛争を予防しながら対応できます。対応が遅れるほどリスクは高まりますので、まずは初回無料相談をご活用ください。

Q3. 社内不倫対応を弁護士に相談・依頼した場合、費用はどのくらいかかりますか?

相談内容や依頼範囲によって異なりますが、就業規則の整備・見直しのみであれば数万〜20万円程度が一般的な目安です。訴訟に発展した場合は、着手金・成功報酬で合計50〜100万円以上かかることが多く、解決まで1〜2年を要します。これに対し、顧問契約を締結しておけば月額3万〜10万円程度で継続的な相談・就業規則整備・初動対応サポートを受けられます。問題が小さい段階で顧問弁護士に相談する方が、トータルの費用を大幅に抑えられます。

監修:弁護士法人ブライト 企業法務チーム
大阪・神戸を拠点に企業法務・顧問弁護士サービスを提供。中小企業の法的リスク対応を日々サポートしています。

※本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律アドバイスではありません。具体的な問題については弁護士にご相談ください。

本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
なお、本記事の内容に関する個別の質問や意見などにつきましては、ご対応できかねます。ただし、当該記事の内容に関連して、当事務所へのご相談又はご依頼を具体的に検討されている場合には、この限りではありません。
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