「従業員同士のトラブルで、片方が手を出してしまったらしい」「上司が部下に手を上げたと聞いたが、本人は否定している」——そんな報告が入ったとき、社長はどう動けばいいのか。答えがすぐに出てこない方も多いのではないでしょうか。 社内での暴力は、刑事事件になる可能性も、被害者・加害者双方から会社が訴えられる可能性もある、経営上の重大リスクです。しかし「揉め事を大きくしたくない」「当事者が和解するなら会社は出しゃばらなくていい」という判断が、会社をより大きなリスクにさらすことがあります。 この記事では、社内暴力が発生したときに社長がどう考え、どう動くべきかを、予防から対応・再発防止まで順番に整理します。 なぜ会社の対応が遅れるのか——判断ミスの構造 社内暴力への対応が後手に回る背景には、いくつかの共通した思考パターンがあります。 「当事者間の問題」と切り離す:「個人的なトラブルだから会社は関係ない」という判断は、法的には通用しません。会社には「安全配慮義務」があり、職場環境を整える責任を負っています。 「波風を立てたくない」で動きを止める:特に小規模な組織では、加害者が古参社員や幹部の場合、注意・処分に踏み切れないことがあります。しかしこの沈黙は、会社が問題を認知しながら放置したという事実になります。 「被害者が大丈夫と言っている」で終わらせる:被害者が表面上「大丈夫です」と言っていても、後日精神的な不調が生じたり、退職後に訴訟を起こすケースがあります。その時点で会社が何もしていなければ、責任を問われます。 問題は「暴力があったかどうか」だけでなく、「会社が知っていたにもかかわらず、どう動いたか」が問われる点です。対応が遅れるほど、会社の責任は重くなります。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 問題が起きる前にできること——予防の仕組み 【図解】なぜ会社の対応が遅れるのか——判断ミスのへの対応フロー ① 問題発生 → ② 事実確認・記録 → ③ 顧問弁護士に相談 → ④ 対応策の実行 ※ 弁護士に早期相談することで、リスクを最小化できます。 社内暴力は「まさかうちで」と思われていた会社でも起きます。規模が小さければ「全員顔見知り」という安心感が、かえって問題を見えにくくすることもあります。予防のために整えておくべきことは次の通りです。 就業規則に「暴力行為の禁止と懲戒処分基準」を明記する 就業規則に「職場内での暴力行為は懲戒解雇の対象となる」という規定が明確になければ、いざ処分しようとしたときに「不当解雇だ」と反論されるリスクがあります。就業規則は「禁止事項」と「処分の水準」がセットで機能します。 相談・報告ルートを作る 被害を受けた従業員が、上司(加害者本人かもしれない)を飛ばして相談できる窓口がなければ、問題は表に出てきません。社内の人事担当者に加え、外部窓口(顧問弁護士など)を設けておくことが有効です。 管理職向けの研修・周知 「感情的になって手が出てしまった」という事案の多くは、管理職による部下への行為です。パワハラ防止法の研修と合わせて、暴力行為は刑事責任・民事責任につながることを全管理職に認識させておくことが重要です。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 問題発生時の対応フロー——証拠の残し方を含めて 社内暴力の報告を受けたとき、会社がとるべき行動の順番は以下の通りです。 被害者の安全確保と状況確認:まず被害者の状態(怪我の有無・精神的ダメージ)を確認します。怪我がある場合は医療機関への受診を促し、診断書を取得するよう伝えます。この診断書が後の証拠になります。 被害者・目撃者のヒアリングと記録化:いつ・どこで・何があったかを、本人の言葉のまま記録に残します。後から「言った・言わない」の争いを防ぐため、できれば書面(メール・確認書)で残します。 加害者の事情聴取:加害者の言い分も必ず聴きます。ただし、被害者と対面させることなく、別々に行います。加害者の発言も書面化・署名取得が望ましいです。 加害者と被害者の分離措置:調査中は、両者が接触しないように配慮します。シフト変更・席替え・一時的な業務分離など、できる範囲で対処します。 処分の検討と実施:事実関係が確認できたら、就業規則に照らして懲戒処分を決定します。口頭注意・戒告・降格・停職・懲戒解雇と段階があり、暴力の態様・回数・被害の深刻さによって判断します。 証拠は、紛争になってから急に作れるものではありません。初動でのヒアリング記録・診断書・メールのやり取りが、後の会社の主張を支える根拠になります。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 失敗事例の構造——なぜ相談が遅れ、なぜ証拠がなかったのか 社内暴力への対応で、会社が後から「しまった」となるケースには共通した構造があります。 ケース①:当事者同士で示談させてしまった 「本人同士が謝罪・和解した」と報告を受けた会社が、そのまま静観したケースです。数ヶ月後、被害者が精神疾患を発症して休職。「会社は知っていたのに何もしなかった」として安全配慮義務違反を問われました。 なぜ相談が遅れたか:「当事者が解決した=会社の問題でなくなった」という誤解。 なぜ証拠がなかったか:ヒアリング記録も処分記録も残っておらず、「会社がどう動いたか」を示す証拠が一切なかった。 ケース②:加害者が幹部で処分できなかった 創業メンバーの幹部が部下に暴力を振るったが、社長との関係から処分に踏み切れず、注意だけで終わらせたケースです。翌年も同様の行為が繰り返され、被害者が退職。退職後に損害賠償請求が来ました。 なぜ相談が遅れたか:「自分(社長)が処理する問題」と思い込み、弁護士への相談を先延ばしにした。 なぜ証拠がなかったか:最初の事案を処分記録なしで終わらせたため、「繰り返し行為」という事実が立証困難になった。 いずれも、早い段階で外部の専門家(顧問弁護士)に相談していれば、対応方針が変わっていた可能性が高いケースです。揉めてから弁護士を使うのではなく、揉めないように弁護士を使うという姿勢が会社を守ります。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) うちの会社ではどう考えればいいのか 「大企業の話で、うちは小さな会社だから」と感じる方もいるかもしれません。しかし、労働関係の裁判例を見ると、従業員数十名規模の中小企業でも、安全配慮義務違反や使用者責任が認められた判決は数多くあります。 会社の規模に関係なく、社長が押さえておくべき判断基準は次の三点です。 会社は「知ったとき」から責任が始まる:報告を受けた瞬間から、会社は当事者です。「静観する」という選択は、放置という行為になります。 加害者の処分は「就業規則」に従う:感情や人間関係で軽くも重くもしてはいけません。就業規則の基準に照らした対応が、後の法的紛争での会社の盾になります。 被害者への配慮は「文書で残す」:口頭でどれだけ丁寧に対応しても、記録がなければ「何もしなかった」と同じになりえます。 「どこまでやれば十分か」「この事案はどの程度の処分が妥当か」——こうした判断の精度を上げるために、社内暴力の問題は早期に法律の専門家と確認することが大切です。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 再発防止策——一件対応して終わりにしない 社内暴力は、一度対応したからといって終わりではありません。むしろ、一件目の対応がその後の会社文化に大きく影響します。 処分事実の社内周知(必要な範囲で) 「こういうことがあり、会社としてこう対応した」という事実を、プライバシーに配慮しつつ組織に伝えることで、「会社は暴力を許さない」という姿勢を示せます。周知しないと、他の従業員は「何が起きたか分からない=会社は動かない」と受け取ることがあります。 就業規則・ハラスメント規程の見直し 今回の事案を受けて、就業規則の「禁止行為」「懲戒事由」の規定が実態に合っているか確認します。「暴力行為」を明示していない就業規則は、今すぐ見直すべき状態です。 ハラスメント相談窓口の整備と運用確認 窓口を設置しているだけで機能していない会社は多くあります。「誰に相談すればいいか」「相談しても不利にならないか」が従業員に伝わっていなければ、窓口は形骸化します。年に一度、周知・運用の見直しをする機会を設けてください。 社内暴力は一件対応しても、職場の土台(規程・文化・体制)が変わらなければ繰り返します。問題が起きるたびに対処するのではなく、「起きにくい職場」を作ることが、経営者としての本来のゴールです。 社内暴力への対応は、スポットの事件解決だけで終わらせるべきではありません。暴力行為の禁止規定・懲戒処分基準・ハラスメント相談窓口の運用——これらはすべて就業規則と社内規程の整備として一体で動かすものです。「何か起きたときに相談できる体制」ではなく、「何も起きていないときから一緒に考えてくれる体制」が、会社を守ります。弁護士法人ブライトでは、顧問先 142社 の実名を公開し、企業法務部の弁護士歴平均14年以上の弁護士が「みんなの法務部」として日常の法的判断を支えています。就業規則の条項整備から、いざというときの初動相談まで、継続的に伴走できる顧問弁護士の活用が、もっとも確実なリスク管理です。 よくある質問 Q1. 被害者が「被害届を出したくない・大ごとにしたくない」と言っています。会社はどう対応すればいいですか? 被害者の意思は尊重すべきですが、会社としての対応はそれとは別に行う必要があります。被害届の有無にかかわらず、会社はハラスメント・安全配慮義務の観点から事実確認と加害者への対応を行う義務があります。被害者の意思を記録した上で、会社として取った対応もすべて記録に残してください。 Q2. 加害者が「手が触れただけで暴力ではない」と主張しています。どう判断すればいいですか? 当事者の主観が一致しない場合は、目撃者の証言・監視カメラの映像・被害者の状態(診断書)などを総合的に確認します。「暴力かどうか」の判断は会社単独で行わず、顧問弁護士と事実関係を確認した上で対応方針を決めることを強くお勧めします。 Q3. 加害者を懲戒解雇にしたいのですが、後で訴えられないか不安です。 懲戒解雇は最も重い処分であり、裁判例でも「相当性」が問われます。暴力の態様・回数・被害の深刻さ・過去の指導歴などが判断材料になります。事実をしっかり記録した上で、処分前に弁護士に相談することで、後の紛争リスクを大幅に下げることができます。 Q4. 社内暴力の加害者が「自分も被害者だ」と逆に主張してきました。 このような「逆申告」は珍しくありません。会社としては、どちらの言い分も中立的に聴取・記録し、客観的な事実(目撃情報・物的証拠)に基づいて判断することが重要です。感情的に一方を信じてしまうと、もう一方から会社が訴えられるリスクが生じます。双方のヒアリングを書面化し、弁護士と一緒に事実整理することをお勧めします。 当事務所が参考にした実務書 当事務所では本テーマに関する最新の実務書を継続的に確認し、顧問先企業のリスク評価に反映しています。本記事の作成にあたり特に参考にした書籍を以下に紹介します。 『問題社員対応の法律実務』 — 向井蘭/労働調査会/2024年2月/分類:Q&A形式の実務解説書 『職場のハラスメントをめぐる法律相談』 — 中野公義・村上智也・向井仁・根岸由紀/第一法規/2024年1月/分類:Q&A形式の実務解説書 『ハラスメント対策の法律と実務 —企業のための予防と対応—』 — 弁護士法人旬報法律事務所編/旬報社/2022年4月/分類:Q&A形式の実務解説書 『新版 企業のためのハラスメント調査マニュアル』 — 津村裕之/中央経済社/2022年6月/分類:マニュアル・チェックリスト型 『就業規則の法律実務』 — 向井蘭/労働調査会/2024年4月/分類:Q&A形式の実務解説書 ※ 書籍内容は引用しておらず、書誌情報のみ表示しています。本記事は弁護士法人ブライトが監修・執筆しています。 この記事の監修者 和氣 良浩(わけ よしひろ) 弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士 大阪弁護士会/大阪大学法学部卒 専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生 社内暴力・問題社員対応・解雇など経営上の課題を継続的に相談できる顧問弁護士をお探しの方は、弁護士法人ブライト「みんなの法務部」にお問い合わせください。顧問先 142社 の実名を公開しており、企業法務部の弁護士歴平均14年以上の経験豊かな弁護士が対応します。企業法務窓口:06-4965-9590(平日9:00〜18:00) 「みんなの法務部」というブライトの考え方 中小企業の社長に「専属の法務部」を持っていただく——これがブライトの顧問サービスの基本姿勢です。社内に法務部を置けない規模でも、契約書・労務・債権回収・M&Aまで日常的に相談できる体制を、月額固定で。企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームで、142社の顧問先と向き合っています。 ▶ みんなの法務部とは(詳しく見る) 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 関連記事 Amazon利用停止メール詐欺が届いたら?社長が知るべき判断の順番