「この契約書、ちゃんと確認しておけばよかった」——そう気づく瞬間が、経営者にとってもっとも後悔の深い場面の一つです。 フランチャイズへの加盟を決めたとき、事業拡大のための継続取引契約を結ぶとき、あるいは新しい事業用物件を借りるとき。そういう局面では、事業そのものへの期待と緊張感が先立ち、契約書の細部まで読み込む余裕はなかなかありません。 特に、「連帯保証人」として代表者個人が署名を求められる場面は珍しくありません。会社の契約に社長が個人として責任を負う、という構図です。そこに「極度額」という概念が絡んでくる——そのことを知らないまま署名してしまうと、後になって「保証が無効だった」あるいは逆に「上限なく個人資産が狙われる可能性があった」という深刻な事態に発展することがあります。 この記事では、連帯保証人の極度額について、社長が押さえておくべき実務上の論点を整理します。 「極度額」とは何か——知らないと損をする根保証の基本 2020年4月に施行された改正民法により、個人が連帯保証人になる「根保証契約」には、極度額(保証の上限金額)を書面で定めることが義務付けられました(民法465条の2)。 根保証契約とは、一定の継続的な取引関係から生じる「不特定の債務」をまとめて保証する契約のことです。たとえば、フランチャイズ加盟者の代表者が、加盟金・ロイヤルティ・損害賠償その他一切の債務について個人保証する、というケースが典型例です。 改正前は、個人が根保証人になった場合、理論上は無制限に責任を負い続けるリスクがありました。「保証したときは100万円だと思っていたのに、気づいたら数千万円の請求が来た」という事態が実際に起きていたのです。 改正民法はこの問題を解消するために、極度額の記載がない個人根保証契約は無効と定めました。これは保証人を守るための強行規定です。 なぜ判断ミスが起きるのか——契約書を「信じてしまう」構造 【図解】「極度額」とは何か——知らないと損をするへの対応フロー ① 問題発生 → ② 事実確認・記録 → ③ 顧問弁護士に相談 → ④ 対応策の実行 ※ 弁護士に早期相談することで、リスクを最小化できます。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) フランチャイズ本部や継続取引先から提示される契約書は、多くの場合、「先方の法務部が作った書類」という印象を与えます。プロが作ったものだから、法律的に問題はないだろう——そう思うのは自然なことです。 しかし実態は異なります。FC本部や継続取引先が用意する契約書は、当然ながら相手方に有利な内容で設計されています。極度額が設定されていなかったり、金額が曖昧だったり、あるいは記載はあっても「その他一切の損害を含む」という文言で事実上無制限に近い内容になっていることもあります。 判断ミスが起きやすい場面を整理すると、次のようなパターンがあります: FC本部から提示された加盟契約書に極度額の記載がなく、そのまま署名してしまう 以前使っていた旧法時代の保証契約書を流用しているケース 極度額はあるが金額の根拠が不明で、高すぎる・または低すぎる設定のまま合意してしまう 弁護士に確認しないまま、「事業がうまくいけば問題ない」という楽観でサインしてしまう 特に厄介なのが「旧法下の書類の流用」です。2020年4月以前に作られた保証契約書をそのまま使い続けている取引先は少なくなく、気づかないまま無効な保証契約を結んでいることがあります。 問題が起きる前にできること——契約書レビューという予防策 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 「揉めてから弁護士を使うのではなく、揉めないように弁護士を使う」——これが、連帯保証の問題において特に重要な視点です。 保証契約のリスクは、署名した後では手遅れになることが多い。相手が「保証の責任を果たせ」と主張してきた段階で、ようやく問題に気づいても、契約内容を遡って変えることはできません。 問題が起きる前にできることは、主に次の3つです: 契約書への署名前にレビューを依頼する:連帯保証条項の有無、極度額の設定状況、極度額の金額の妥当性を確認してもらう 極度額の金額交渉を行う:先方が提示した金額に必ずしも応じる必要はない。実際の想定リスクに合わせて交渉することが可能 継続取引のたびに保証条件を見直す:取引の規模や内容が変われば、保証の必要性や適切な極度額も変わる フランチャイズ加盟を検討している場合は特に注意が必要です。加盟金・ロイヤルティ・研修費・損害賠償など、FCに関連して発生し得る費用は多岐にわたります。極度額を設定する際には、これらを踏まえた金額設定が求められます。 実務上の目安として、賃貸借契約では賃料の約2年分(24か月分)が極度額として設定されることが多いとされています。フランチャイズや継続取引では契約規模に応じて異なりますが、「実際に損害が発生した場合の合理的な上限額」という観点から設定するのが基本です。 問題発生時の対応フロー——「保証が無効かもしれない」と気づいたとき 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) すでに署名済みの保証契約書を確認して、「極度額の記載がない」「金額が書かれていない」と気づいた場合、どのように対応すべきでしょうか。 まず確認すべきこと: 契約書に極度額(金額)が明記されているか その契約が「根保証」(継続的な取引から生じる不特定の債務を保証するもの)に該当するか 契約締結日が2020年4月1日以降か(改正民法の施行日) 保証人が個人か法人か(極度額規制は個人保証に適用される) 証拠の残し方: 保証契約の有効性をめぐる争いになる可能性がある場合、まず手元にある契約書の写しを保全してください。メールや書面のやり取り、契約締結の経緯に関する記録(いつ、誰から、どのように契約書を提示されたか)も記録しておくことが重要です。証拠は、紛争になってから急に作れるものではありません。 なお、極度額の記載がない個人根保証契約は、改正民法のもとでは無効となります。これは保証人(経営者個人)にとっては有利な事実ですが、逆に債権者(FC本部や取引先)の立場に立つ場合は、極度額の記載漏れが「保証が無効だった」という反論を受けるリスクになります。 失敗事例の構造——なぜ相談が遅れたのか 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 実際の相談の中には、次のようなケースがあります。 ある学習塾を運営する会社の経営者は、フランチャイズ加盟店から一方的に契約を解除され、多額の売掛金や損害を抱えることになりました。その後、以前依頼していた法律事務所が作成した契約書に連帯保証人の極度額記載漏れがあったことが判明。「専門家に頼んでいたのに、なぜこんなことが」という深い失望とともに、その弁護士への着手金返還請求という別の紛争まで抱えることになりました。 また、フランチャイズ加盟を検討していた別の経営者は、FC本部から提示された加盟契約書の保証条項に極度額の記載がない問題点を、顧問弁護士がレビューの段階で発見。署名前に是正を求めることができました。これは「揉めてから」ではなく「揉める前に」弁護士を使った典型例です。 なぜ相談が遅れるのか: 「弁護士に頼むほどのことでもない」という過小評価 「先方が大手だから大丈夫」という根拠のない信頼 「事業がうまくいけば問題は顕在化しない」という楽観 「今さら変更を求めると交渉が壊れる」という遠慮 なぜ証拠が残っていなかったのか: 口頭での説明を信じて、書面を求めなかった 締結後の書類を整理せず、紛失してしまった メールではなく口頭で交渉し、記録が残っていなかった うちの会社ではどう考えればいいのか 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 「連帯保証人の極度額」という問題は、大企業だけの話ではありません。むしろ、フランチャイズ加盟・継続取引・事業用物件の賃貸などを行う中小企業の経営者こそ、日常的に直面しうる問題です。 自社の立場を整理するために、次の3つの観点で考えてみてください。 ① 保証人を求める立場のとき(債権者側) 取引先や加盟者に対して個人保証を求める場合、極度額を書面で明記しなければ保証契約が無効となり、いざというときに保証人に請求できません。書式の確認と定期的な更新が必要です。 ② 保証人になる立場のとき(保証人側) フランチャイズへの加盟や継続取引の契約時に代表者個人として保証を求められる場合、極度額が設定されているか、その金額が合理的かを必ず確認してください。特に「その他一切の債務」といった包括的な文言が含まれている場合は注意が必要です。 ③ 既存契約の見直しをするとき 現在使っている保証契約書が2020年4月以前に作られたものであれば、改正民法に対応した内容になっているか確認してください。旧法下の書類を使い続けることで、知らずに無効な保証契約を結んでいる可能性があります。 再発防止策——契約書を「点検する習慣」が会社を守る 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 一度の保証契約のミスが、経営者個人の資産に直結する問題に発展することがあります。しかし、その多くは「署名前の確認」という一手を踏むだけで防げます。 再発防止のために取り入れてほしい習慣を整理します: 署名前の契約書チェックリストを作る:連帯保証条項の有無・極度額の記載・金額の妥当性・根保証に該当するか、を必ず確認する項目として設ける 保証契約書のファイルを整理する:現在有効な保証契約を一覧化し、改正民法以前の書式がないかを定期的に確認する 継続取引先との保証条件を定期的に見直す:取引規模が変われば極度額の適切な金額も変わる。年に一度、契約の棚卸しをする機会を設ける 新規の保証契約は必ず法的確認を経る:「今回は急ぎだから」という判断こそが、後悔の入口になる 連帯保証の問題は、「発生してから対応する」ことが極めて難しい類型の法務リスクです。署名後に気づいても、原則として契約内容は遡って変えられません。法務ドック(会社の法務リスクの健康診断)として、定期的に保証契約の状況を確認する体制を整えることが、長期的な経営安定につながります。 連帯保証人の極度額に関する問題は、フランチャイズ契約・継続取引・賃貸借といった「日常的な契約行為」に潜んでいます。一度だけ対応すればそれで終わりではなく、取引が続く限り継続的に確認が求められる性質のものです。弁護士法人ブライトの「みんなの法務部」では、顧問先142社の実名を公開しており、企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが、フランチャイズ加盟前の契約書レビューから継続取引契約の整備・保証条件の見直しまで、継続的にサポートしています。署名前の相談から再発防止のための体制づくりまで、社長の判断の質を上げる伴走型の支援が可能です。相談すればするほど強くなる——そういう体制を、早めに整えておくことをお勧めします。 よくある質問(Q&A) Q1. 極度額の記載がない保証契約書にすでに署名してしまいました。この保証契約は有効ですか? 2020年4月1日以降に締結された個人根保証契約で極度額の定めがない場合、その保証契約は無効です(民法465条の2)。ただし、「根保証に該当するか」「個人保証か法人保証か」「契約締結日がいつか」などの要件確認が必要です。すでに署名済みの場合でも、弁護士に状況を確認してもらうことで、保証の有効性について整理できます。 Q2. 極度額はいくらに設定すればいいですか? 一律の基準はありませんが、実務上の目安として、賃貸借契約では賃料の約24か月分(2年分)とされることが多いです。フランチャイズや継続取引では、契約期間中に発生し得る最大のリスク(未払いロイヤルティ・損害賠償・違約金など)を踏まえた金額設定が求められます。高すぎると保証人の個人資産が過度に拘束され、低すぎると保証としての実効性が失われます。取引規模や契約内容に応じた個別検討が必要です。 Q3. 法人の代表者が保証人になる場合も、極度額の設定は必要ですか? 極度額の規制は「個人」が保証人になる場合に適用されます。法人が保証人になる場合には適用されません。ただし、代表者個人が保証人になるケース(いわゆる「経営者保証」)は個人保証に該当するため、極度額の設定が必要です。なお、経営者保証ガイドラインとの関係で、代表者個人への保証要求自体を見直すことができる場合もあります。 Q4. フランチャイズ本部から提示された契約書に極度額の記載がありませんでした。交渉で変えられますか? 交渉によって変えることは可能です。極度額の記載がない個人根保証条項は無効であるため、そもそも保証自体が成立しない可能性をFC本部側も認識しているはずです。レビューを通じて問題点を指摘し、適切な極度額を設定するよう求めることは、加盟者として正当な交渉行為です。ただし、交渉の進め方や代替案の提示については、弁護士のサポートを得て行うことをお勧めします。 当事務所が参考にした実務書 当事務所では本テーマに関する最新の実務書を継続的に確認し、顧問先企業のリスク評価に反映しています。本記事の作成にあたり特に参考にした書籍を以下に紹介します。 『新注釈民法(14)債権(7)』 — 潮見佳男ほか編/有斐閣/2021年11月/分類:学術書・体系書 『民法改正と保証実務』 — 小林明彦・大木正俊・今川嘉典/金融財政事情研究会/2018年7月/分類:Q&A形式の実務解説書 『フランチャイズ契約の法律実務』 — 石田雄二・村山昇作ほか/商事法務/2018年9月/分類:業種特化型実務書 『保証の理論と実務』 — 道垣内弘人/有斐閣/2022年3月/分類:学術書・体系書 『実務解説 改正民法』 — 筒井健夫・村松秀樹/商事法務/2018年8月/分類:条文逐条解説書 ※ 書籍内容は引用しておらず、書誌情報のみ表示しています。本記事は弁護士法人ブライトが監修・執筆しています。 この記事の監修者 和氣 良浩(わけ よしひろ) 弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士 大阪弁護士会/大阪大学法学部卒 専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生 フランチャイズ加盟・継続取引・賃貸借など、保証契約に関わる経営上の課題を継続的に相談できる顧問弁護士をお探しの方は、弁護士法人ブライト「みんなの法務部」にお問い合わせください。顧問先142社の実名を公開しており、企業法務部の弁護士歴平均14年以上の経験豊かな弁護士が対応します。企業法務窓口:06-4965-9590(平日9:00〜18:00) 「みんなの法務部」というブライトの考え方 中小企業の社長に「専属の法務部」を持っていただく——これがブライトの顧問サービスの基本姿勢です。社内に法務部を置けない規模でも、契約書・労務・債権回収・M&Aまで日常的に相談できる体制を、月額固定で。企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームで、142社の顧問先と向き合っています。 ▶ みんなの法務部とは(詳しく見る) 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料)