執筆・監修
笹野 皓平(ささの こうへい)
弁護士法人ブライト|労災事業部 部長
大阪弁護士会(2011年登録)|修習64期
代表監修
和氣 良浩(わけ よしひろ)
弁護士法人ブライト 代表弁護士
この記事の結論
建設現場の転落・墜落事故で会社・元請けに安全配慮義務違反(労働契約法5条)や労働安全衛生法違反があれば、損害賠償請求が可能です。立証のカギは「足場・安全帯の設置状況」「元請けの安全管理義務(安衛法15条)」「情報開示請求による証拠保全」の3点。ブライト解決実績:合計1億1,000万円(一人親方・タラップ転落)・解決金3,000万円(廃業した雇用主の案件で元請けへ請求)。
建設業は全産業の中でも最も転落・墜落死亡事故が多い業種です。厚生労働省の「令和5年労働災害発生状況」によると、死亡者数の最多業種は建設業(全体の約3割)であり、うち転落・墜落が最大の死因類型です。
しかし被災した建設作業員の多くは「労災保険をもらったから終わり」「自分にも過失があった」「下請けだから元請けには請求できない」と諦めています。これらはすべて誤解です。
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建設現場の転落・墜落事故で会社が負う法的責任
安全配慮義務違反の典型パターン(労働安全衛生法・同規則)
- 足場未設置(高さ2メートル以上):労働安全衛生規則518条違反。作業床・手すりの設置義務
- 安全帯(墜落制止用器具)の未配備・取付設備の未整備:安衛則518条・519条違反
- 作業主任者の未選任:つり足場等での組立て等作業主任者の選任義務(安衛法14条)
- 危険区域への立入禁止措置の不履行:足場解体・高所作業中の他作業員の立入禁止
- 安全教育の未実施:新規入場者への安全衛生教育(安衛法59条)
元請業者の安全管理義務(労働安全衛生法15条)
建設現場では多重下請け構造が一般的です。労働安全衛生法15条は、元請業者(統括安全衛生責任者)が下請業者の労働者に対しても統括的な安全管理義務を負うと定めています。
さらに、実質的な指揮命令関係がある場合、安全配慮義務の相手方は直接の雇用主に限らず元請け・発注者にも拡張されるとした判例(労災実務書籍によれば最高裁昭和59年4月10日判決等を参照)が確立されています。
これにより、直接の雇用主(三次下請け等)が廃業・破産していても、元請け・発注者への責任追及が可能なことが多くあります。
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安全配慮義務違反を立証するための証拠収集
情報開示請求で手に入る「強力な証拠」
- 労働基準監督署の災害調査復命書:監督官が現場を調査した記録。情報公開法に基づく開示請求で入手可能
- 死傷病報告書(様式23号):会社が労基署に提出した事故報告書。事実と異なる記載がある場合は修正申し入れが可能
- 送検・是正勧告の記録:会社の安全義務違反が公的に認定されていることになる
- 刑事記録(業務上過失致死傷):重大事故の場合に存在することがある。保管期限切れのリスクがあるため早期入手が必要
- 事故現場の写真・動画:足場の状況・安全帯の有無。事故直後に確保することが重要
ブライトが対応した案件では、「刑事記録の保管期限切れリスクを早期に説明して証拠を確保」した上で元請けへの交渉を成功させ、解決金3,000万円+借入金免除(依頼者手残り約2,204万円)の和解を実現した実績があります。
「専門外作業の指示」「多重下請け構造」が会社責任を重くする
- 専門外の作業を指示した:鉄骨工が解体作業を指示されて転落した案件では「専門外作業への安全教育・適切な道具の提供を怠った」として会社の過失が認定
- 複数の会社が関与している:元請け・一次下請け・発注者への請求を同時並行で進めることで補償を最大化できる
- 労災申請を遅らせる:証拠消失のリスクがある。受任前から自主申請を指導することが重要
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損害賠償で請求できる金額の目安
後遺障害等級別の賠償額レンジ(建設業・転落系)
| 後遺障害等級 | 主な症状例 | 後遺障害慰謝料(弁護士基準) | 賠償総額目安 |
|---|---|---|---|
| 1〜2級(要介護) | 高次脳機能障害・脊髄損傷 | 2,370〜2,800万円 | 5,000万〜1億円超 |
| 5〜7級 | 下肢機能障害・複数部位骨折 | 1,000〜1,051万円 | 3,000〜5,000万円 |
| 8〜10級 | 骨盤骨折後遺症・可動域制限 | 550〜830万円 | 1,500〜3,000万円 |
| 12〜14級 | 局部の神経症状・椎体骨折 | 94〜290万円 | 300〜1,000万円 |
一人親方の基礎収入の算定
一人親方の場合、会社は「申告所得が低い」として逸失利益を低く見積もろうとします。ブライトでは申告売上から真に必要な経費のみを控除する方法・賃金センサスを活用した方法を組み合わせ、最も有利な基礎収入を選択します。一人親方のタラップ転落案件では、この手法で合計1億1,000万円の示談を成立させた実績があります。
損害賠償請求権の時効は、損害および加害者を知った時から5年(改正民法724条の2・166条1項)です。労災保険給付の時効(療養・休業補償は2年、障害・遺族補償は5年/労災保険法42条)とは別計算ですので注意が必要です。
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弁護士法人ブライトの解決事例(建設現場転落・墜落)
事例1. タラップ転落・高次脳機能障害・合計1億1,000万円示談(一人親方・40代)
40代男性の配管工(一人親方)が、設備工事中に仮設タラップ(手すりなし)から転落し、高次脳機能障害・下肢機能障害の重篤な後遺障害を負いました。多重下請け構造で雇用主は破産済み。ブライトは元請大手ゼネコンX社・一次下請Y社への安全管理義務違反を立証し、過失相殺を1割以内に抑制。将来介護費用を随時介護として計上し賠償額を最大化した結果、合計1億1,000万円で示談が成立しました。
事例2. 廃業した雇用主の元請けに請求・後遺障害7級・解決金3,000万円(鉄骨工・50代)
50代男性の鉄骨工が、元請けから指示された専門外の解体作業中に使用器具が破損し高所落下。複数部位の骨折・後遺障害7級。直接の雇用会社が廃業しており元請けへの損害賠償が唯一の手段でしたが、元請けは当初支払いを拒否。ブライトは刑事記録の保管期限切れリスクを早期に説明して証拠を確保し、解決金3,000万円+借入金免除で和解(依頼者手残り約2,204万円)を成立させました。
事例3. 脚立転落・過失相殺7割主張を退け・解決金1,500万円(職長・30代女性)
30代女性の職長(内装仕上げ工)が脚立使用中の転落で後遺障害8級。相手方は「職長として安全指導する立場だったため被災者側の過失は7割」と主張。ブライトは上長の反省文を証拠として会社側の義務違反を立証し、解決金1,500万円で任意和解を成立させました。
事例4. 足場・安全帯なし外壁塗装転落・刑事・民事並行対応(一人親方・60代)
60代男性の塗装工(一人親方)が、安全帯・足場なしで集合住宅外壁塗装中に転落し骨盤・胸部骨折・脊椎拘縮・ストーマ手術が必要な重篤状態に。ブライトは受任前から「秘密録音」「書面へのサイン拒否」を指示し、労働局・消防機関への情報開示請求を主導。刑事手続きも発展し証拠収集・交渉・刑事手続きを並行進行中。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 建設現場で転落しました。足場はありましたが安全帯がありませんでした。元請けに請求できますか?
安全帯の未配備・取付設備の未整備は会社の安全配慮義務違反です。また、元請けは労働安全衛生法15条の統括安全管理義務に基づき、下請け作業員に対しても安全配慮義務を負います。元請けへの請求は可能なケースが多くあります。
Q2. 雇い主の下請け会社が廃業しました。どこに請求すればいいですか?
元請け・一次下請け・発注者への請求が可能なケースが多くあります。廃業が判明してからでも遅くない場合がほとんどですが、時効・証拠消失リスクのため早期相談が重要です。ブライトはこの類型で1億1,000万円の解決実績があります。
Q3. 被災者が職長・安全担当でした。それでも請求できますか?
はい。相手方は「職長・安全担当者の過失が大きい」と主張することが多いですが、会社(元請け)にも安全管理義務があります。ブライトでは「職長7割過失」の主張を退け、1,500万円の和解を成立させた実績があります。
Q4. 一人親方でも損害賠償を請求できますか?
一人親方でも、元請・発注者への損害賠償請求は可能です。実態として指揮命令関係があれば安全配慮義務の対象となります。ブライトでは一人親方案件で1億1,000万円超の解決実績があります。
Q5. 症状固定前ですが今すぐ弁護士に相談できますか?
症状固定前の相談・受任を推奨しています。時効管理・証拠保全(特に刑事記録の保管期限切れリスク)・後遺障害診断書への介入など、症状固定前から弁護士が行える対応は多くあります。
Q6. 労災保険と損害賠償請求はどちらを先に手続きすべきですか?
同時並行で進めることが可能です。ただし、労災認定を受けておくと業務起因性の立証が容易になります。弁護士が労災申請のサポートと損害賠償請求の両方を一括して進めることが効率的です。
まとめ
- 建設現場の転落・墜落事故では、足場未設置・安全帯なしなど会社の安全配慮義務違反(労働契約法5条)を立証することで損害賠償請求が可能
- 元請業者は安衛法15条の統括安全管理義務に基づき、下請け作業員への安全配慮義務を負う
- 情報開示請求(災害調査復命書・刑事記録)が立証の鍵——弁護士の早期介入が証拠保全に直結
- 一人親方・下請け作業員でも、元請け・発注者への請求が可能なケースが多い
- ブライト解決実績:合計1億1,000万円(一人親方・タラップ転落)・解決金3,000万円(廃業した雇用主の元請けへ請求)
- 損害賠償請求の時効(生命・身体侵害)は損害・加害者を知った時から5年(民法724条の2)
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