監修・執筆者情報
執筆:笹野 皓平 弁護士(弁護士法人ブライト 労災部部長・修習64期・登録2011年)
企業への安全配慮義務違反追及・後遺障害等級認定・多重下請け責任の立証を専門領域とする。転落・墜落事故の損害賠償交渉・訴訟に豊富な実績を持つ。
監修:和氣 良浩 弁護士(弁護士法人ブライト 代表)
「脚立から足を滑らせて落ちてしまった」「はしごを使って作業中に転落した」——こうした事故は、現場では「よくあること」として扱われがちですが、実は会社側に重大な安全配慮義務違反が認められるケースがほとんどです。
脚立・はしご作業は労働安全衛生法施行規則(安衛則)に詳細な規定があり、その規定に違反して作業させていた場合、会社への損害賠償請求が可能です。
この記事でわかること
- 脚立・はしごからの転落が「会社の責任」になる法的根拠(安衛則・民法415条・709条)
- 「自分にも不注意があった」という過失相殺の主張を弁護士がどう反論するか
- 骨折・脊椎損傷など受傷部位別の後遺障害等級と損害賠償の見込み額
- ブライトの実際の解決事例(脚立転落・後遺障害8級・1,500万円和解)
- 症状固定前に弁護士に相談すべき理由
労災専用フリーダイヤル:0120-931-501(平日9:00〜18:00)
脚立・はしご転落の労災相談、受付中です。
脚立・はしご転落事故を「自己責任」にしてはいけない理由
労働安全衛生規則が定める脚立・はしご作業の義務
脚立・はしごを使った高所作業には、労働安全衛生法施行規則(安衛則)第527条・528条が適用されます。主な義務規定は以下のとおりです。
- 安衛則第528条:脚立は、脚と水平面との角度を75度以下とし、折りたたみ式は金具等で開き止めを施すこと
- 安衛則第527条:移動はしごは、幅30センチメートル以上とし、すべり止め装置を設けること
- 高さ2メートル以上の作業には足場の設置・墜落制止用器具(安全帯)の使用義務(安衛則第518条・519条・520条)
- 作業主任者の選任・安全教育の実施義務(安衛法第14条・安衛則第16条)
これらの規定を会社が守っていなかった場合、安全配慮義務違反(労働契約法第5条)に基づく損害賠償請求が可能です。「事故が起きたのは会社が規則を守らせなかったから」という主張の根拠となります。
「自分が不注意だった」でも賠償請求できる
「脚立の乗り方が悪かった」「急いでいたせいで落ちた」という場合、多くの被災者が「自分にも責任がある」と思って請求を諦めます。しかし法的には「過失相殺」という考え方が適用されるだけで、請求自体は可能です。
実務上の判断基準として、専門書籍(「労働安全衛生法の詳解」)や裁判実務では、会社が安全基準を設けていなかった、安全教育を怠っていた、適切な脚立・器具を支給していなかった場合には被災者の過失割合は小さく見積もられる傾向があります。
ブライトでは実際に「脚立から転落・後遺障害8級・相手方が被災者7割過失と主張」という案件で、上長の反省文を証拠として会社側の安全義務違反を立証し、1,500万円で和解に持ち込んだ実績があります(詳細は後述の解決事例参照)。
脚立・はしご転落で想定される損害賠償の構成
損害項目と計算の考え方
会社への損害賠償請求では、以下の項目が損害として認められます。
| 損害項目 | 内容 | 労災保険でカバーされるか |
|---|---|---|
| 治療費・入院費 | 療養に要した実費全額 | ◎(療養補償給付) |
| 休業損害 | 働けない期間の収入補填 | △(給付基礎日額の60%のみ) |
| 慰謝料(入通院・後遺障害) | 精神的苦痛に対する賠償 | ✕(労災保険に慰謝料はない) |
| 逸失利益 | 後遺障害による将来収入の損失 | △(障害年金は一部のみ) |
| 介護費用 | 介護が必要な場合の将来費用 | △(介護補償給付は限定的) |
特に慰謝料と逸失利益は労災保険ではカバーされないため、弁護士による損害賠償請求が補償の最大化に直結します。後遺障害等級が認定された場合、慰謝料だけで以下の金額が目安となります(弁護士基準)。
- 後遺障害14級(局部に神経症状を残す):110万円
- 後遺障害12級(局部に頑固な神経症状):290万円
- 後遺障害8級(1上肢の用廃など):830万円
- 後遺障害5級(神経系統の機能障害):1,400万円
- 後遺障害2級(要常時介護):2,370万円
脚立・はしご転落で多い受傷部位と後遺障害等級の傾向
脚立・はしごからの転落は、高さが2〜5メートル程度の中高所作業が多く、以下の受傷パターンが頻出します。
- 腰椎・脊椎の圧迫骨折:後遺障害11〜8級相当。長期的な慢性疼痛・可動域制限が残る
- 手首・橈骨の骨折(転倒時の反射的な手突き):後遺障害14〜12級相当
- 肩関節の脱臼・腱板断裂:後遺障害12〜10級相当
- 頭部外傷・高次脳機能障害:ヘルメット未着用の場合に発生。後遺障害7〜2級と幅が広く、賠償額が大きい
診断書への「可動域制限の記載漏れ」「後遺障害なし」という誤記が後遺障害認定の失敗につながるケースが多く、ブライトでは症状固定前から診断書の記載内容に弁護士が能動的に介入します。
症状固定前に弁護士に相談することが重要です
後遺障害診断書の記載内容・等級認定の方針は症状固定のタイミングで決まります。治療中でも相談できます。
会社が「自己責任」「うちに責任はない」と主張してくる場合の対処法
会社側の典型的な主張パターン
脚立・はしご転落事故では、会社側から以下のような主張が出ることがよくあります。
- 「規則通りに脚立を使っていなかったのは作業員自身の判断だ」
- 「安全教育は実施していた。本人が守らなかっただけだ」
- 「労災保険が下りているのだから、それ以上の補償義務はない」
- 「一人親方(個人事業主)だから、会社に責任はない」
こうした主張に対し、弁護士は安全教育の記録・脚立の状態・作業指示書・上長の発言(反省文等)を証拠として用い、会社側の安全義務違反を立証します。
一人親方の場合の元請責任追及
一人親方として働いていた場合でも、元請・発注者への損害賠償請求が可能です。法的根拠は以下のとおりです。
- 安全配慮義務(労働契約法第5条の類推適用・民法415条):実質的な指揮命令関係があれば、雇用契約がなくても安全配慮義務が認められる
- 民法709条(不法行為):元請が安全基準を守らせなかった場合の不法行為責任
- 労働安全衛生法第29条:元請事業者の下請け労働者に対する安全衛生教育・指導義務
ブライトの実際の解決事例:脚立転落・後遺障害8級・1,500万円和解
解決事例:脚立転落・後遺障害8級・1,500万円和解
事故の状況:建設業の現場監督として勤務中、脚立・はしごを使用した高所作業中に転落。後遺障害8級の認定を受けた。事故後、別会社に転職し収入は事故前より増加していた。
会社側の主張:「被災者は現場監督で安全指導を担う立場。過失は被災者側が7割だ」として支払いを大幅に抑えようとした。
ブライトの対応:
・上長が作成した反省文を証拠として活用し、会社側の安全教育義務違反を立証
・「収入が増えた」という事実から逸失利益がゼロと主張する相手方に対し、後遺障害8級の認定内容と長期的な労働制限を根拠に反論
・訴訟リスクと依頼者の状況を踏まえ、現実的な落とし所を設定した和解交渉を主導
結果:解決金1,500万円で任意和解成立(訴訟移行を回避)
脚立・はしご転落事故後にやってはいけないこと
- 会社から書類を渡されてもその場でサインしない:「示談書」「損害賠償の合意書」「権利放棄書面」となる書類が混在している。弁護士に確認するまでサインを待つ
- 「労災保険でもらえたから十分」と思わない:慰謝料・逸失利益全額は労災保険でカバーされない
- 「自分にも落ち度があった」で諦めない:過失相殺は弁護士が交渉で下げられる
- 症状固定を急がない・先延ばしにしない:医師の「症状固定」の判断を会社や保険会社に委ねない。弁護士と相談しながら適切なタイミングを見極める
- 時効を確認する:損害賠償請求権の時効は、症状固定日から主観的起算点で5年(民法724条の2・166条1項。2020年4月1日以降の事故に適用)
労災専用フリーダイヤル:0120-931-501(平日9:00〜18:00)
弁護士に依頼するタイミングと手順
症状固定前に相談すべき理由
「治療が終わってから相談しよう」と思っている方が多いですが、ブライトでは症状固定前・受傷直後からの相談・受任を強く推奨しています。理由は以下のとおりです。
- 証拠保全の問題:事故現場の状態(脚立の状態・足場の有無・安全帯の支給状況)は時間とともに変化・消滅する。弁護士が早期に指示することで証拠が保全できる
- 後遺障害診断書への介入:症状固定のタイミングと診断書の記載内容を弁護士が事前にチェックできる。「後遺障害なし」「可動域制限の記載漏れ」を防げる
- 時効管理:症状固定から5年の時効は、弁護士が受任することで適切に管理される
- 会社・相手方との交渉対応:受任前から相手方との面談の場で「録音を残す」「サインを拒否する」など具体的な行動指示ができる
相談から解決までの流れ
- 無料相談(電話・LINE・Webフォーム):事故の状況・労災申請状況・現在の治療状況を確認
- 受任:委任契約の締結。完全成功報酬制のため着手金は不要
- 証拠収集:事故現場・労働基準監督署・消防局への情報開示請求を弁護士が主導
- 後遺障害認定サポート:症状固定のタイミング確認・診断書の記載内容への介入
- 損害賠償交渉・訴訟:会社・元請・保険会社との交渉。交渉不調の場合は訴訟・調停へ移行
- 解決・示談成立:和解金・解決金の受領
関連する問題:元請・発注者への責任追及(多重下請け構造の場合)
建設・製造現場では、三次・四次下請けの末端で被災するケースが少なくありません。直接の雇用先が廃業していたり、小規模で支払い能力がない場合でも、元請・一次下請・発注者への責任追及が可能です。
ブライトでは実際に、元請企業3,000万円の解決(直接の雇用先が廃業したケース)を達成した実績があります。詳細は高所作業転落の損害賠償請求(ハブ記事)をご覧ください。
「元請が大企業だから請求できない」は誤りです。0120-931-501にご相談ください。
よくある質問
Q1. 脚立から落ちたのは「不注意」です。それでも会社に請求できますか?
請求できます。「不注意があった」という事実は、賠償金額の減額(過失相殺)につながる可能性はありますが、請求権そのものはなくなりません。ブライトでは「相手方が被災者7割過失と主張」という案件でも1,500万円の和解を成立させた実績があります。
Q2. はしごから落ちて骨折しました。どのくらいの金額が請求できますか?
骨折の種類・後遺障害の有無・年齢・収入によって大きく異なります。後遺障害が残る場合、等級によって数百万円〜数千万円の差が生じます。まずは無料相談で概算をお伝えします。
Q3. 一人親方として現場に入っていました。誰に請求できますか?
元請・一次下請・発注者への損害賠償請求が可能です。実質的な指揮命令関係があれば、雇用契約がなくても安全配慮義務違反を問えます。ブライトでは1億円超の解決事例(多重下請け・一人親方)があります。
Q4. 事故からしばらく経ちますが、まだ相談できますか?
損害賠償請求権の時効は症状固定から5年です(民法724条の2・166条1項)。ただし、時効管理が重要なため早めの相談を推奨します。
Q5. 家族が脚立から転落して今も入院中です。家族が代わりに相談できますか?
はい、家族(配偶者・親・兄弟)による相談・受任が可能です。緊急の場合は弁護士が受任し、本人の回復後に追認する形での対応も実績があります。
Q6. 労災保険の申請は済んでいます。それ以上に何かできることはありますか?
あります。労災保険は慰謝料・逸失利益の全額をカバーしません。特に後遺障害が残った場合、弁護士による損害賠償請求で数百万円〜数千万円の追加補償が見込めるケースが多いです。
まとめ:脚立・はしごからの転落は「会社の責任」を問える
安衛則違反・安全配慮義務違反・過失相殺への反論——いずれも弁護士が対応できます。
労災専用フリーダイヤル:0120-931-501(平日9:00〜18:00)
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