会社が従業員のパソコン画面を記録するのは違法?従業員に説明できる法的な考え方と運用ルール【弁護士解説】

会社が従業員のパソコン画面を記録するのは違法?従業員に説明できる法的な考え方と運用ルール【弁護士解説】


和氣良浩 弁護士

この記事の監修者

和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士

大阪弁護士会

取扱分野:顧問弁護士・企業法務・人事労務

業務の進め方を見直したい、システムを入れる前に実際の作業を把握したい、勤務中の状況を確かめたい——そうした理由で、会社のパソコンの画面を一定間隔で記録する仕組みを入れる会社が増えています。一方で、導入を伝えた従業員から「勝手に画面を撮るのは違法ではないか」「プライバシーの侵害ではないか」と言われ、社長や管理部門が説明に困る場面も少なくありません。

この記事では、大阪で企業法務・人事労務を扱う弁護士法人ブライトが、会社のパソコン画面を記録すること(いわゆるPCモニタリング)が法律上どう考えられているかと、違法とされないために会社が守るべきことを整理します。

従業員の方が読んでも分かるように書いています。会社から画面の記録について説明を受けた方は、末尾の「従業員の方へ」もご覧ください。なお、この記事は一般的な整理であり、個別の会社の運用が適法かどうかを判断するものではありません。

この記事の結論

  • 会社が貸与したパソコンで、勤務時間中の業務の状況を確認すること自体を禁じる法律はありません。裁判例は、目的・方法・態様と、従業員が受ける不利益とを比べて、社会通念上相当な範囲を超えたときに違法になるという考え方をとっています。
  • 相当な範囲かどうかを分けるのは、①目的を決めて伝える ②範囲を絞る ③見る人を限る ④期間を決めて消す ⑤目的の外に使わない ⑥社内のルールにする、の6点です。
  • 画面の記録は従業員や画面に写る顧客の個人情報を含みます。個人情報保護法の利用目的の特定・通知と安全管理もあわせて押さえます。

導入前に、規程と説明文を確認しませんか

画面の記録は「入れ方」で評価が変わります。弁護士法人ブライトは大阪の中小企業の外部法務部として、モニタリング規程・従業員への説明文・同意書の作成と確認をお手伝いしています。顧問先142社・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが対応します。

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そもそも会社は従業員のパソコン画面を記録してよいのか

結論からいうと、会社が貸与したパソコンについて、勤務時間中の業務の状況を確認することは、目的と方法が相当であれば許されると考えられています。理由は次の2つです。

  • パソコンは会社の設備である:会社は自社の設備や情報がどう使われているかを管理する立場にあります。顧客情報の持ち出しや不正なアクセスを防ぐことは、会社の義務でもあります。
  • 勤務時間中は業務に従事する時間である:従業員は労働契約に基づき、勤務時間中は会社の指揮命令のもとで働きます。会社が業務の進み具合や進め方を把握することは、指揮命令の一部です。

ただし、「会社のパソコンだから何をしてもよい」わけではありません。業務用の機器であっても、従業員には一定のプライバシーへの期待があり、やり方によっては違法になります。

裁判所の考え方——「社会通念上相当な範囲」かどうか

パソコン画面の記録そのものを正面から扱った最高裁判例はまだありません。参考になるのは、会社による従業員の電子メールの閲覧・調査が争われた裁判例です。

  • 東京地裁平成13年12月3日判決(F社Z事業部事件・労働判例826号76頁):上司が部下の私的な電子メールを無断で閲読したことが争われた事案です。裁判所は、社内のネットワークを使って私的なメールをする場合に期待できるプライバシーの保護は、通常の電話よりも相当程度低くなるとしたうえで、監視の目的、手段及びその態様等を総合考慮し、監視される側に生じた不利益と比較衡量して、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合に限りプライバシー権の侵害になる、という基準を示しました。逸脱する例として、監視する立場にない者が監視した場合、監視の必要が全くないのに個人的な好奇心から監視した場合、社内の管理部署などに知らせないまま個人の恣意的な方法で監視した場合を挙げています。この事案では、請求は棄却されました。
  • 東京地裁平成14年2月26日判決(日経クイック情報事件・労働判例825号50頁):社内で誹謗中傷メールが送られた事件の調査のため、会社が疑いのある従業員のメールファイルを調べた事案です。判例データベースの判示事項によれば、企業秩序違反の調査は、企業の円滑な運営上必要かつ合理的なもので、方法・態様が労働者の人格や自由に対する行きすぎた支配や拘束ではないことを要するとされ、本件のメールファイルの点検は、会社が所有・管理するファイルサーバー上のデータの調査であることなどから、社会的に許容しうる限界を超えた違法な行為とはいえないとされました。請求は棄却されています。

どちらも「確認したこと」自体ではなく、目的や必要性と、方法・態様の相当性(従業員が受ける不利益とのつり合い)で結論を出しています。画面の記録も同じ枠組みで判断されると考えられます。つまり、問われるのは「記録したかどうか」ではなく「どう記録したか」です。

どこから「やり過ぎ」になるのか——違法と評価されやすい例

裁判例の枠組みに当てはめると、次のような運用は、相当な範囲を超えると評価されるおそれが高くなります。

やり方 問題になる理由
従業員に知らせずに、こっそり記録する 知らせなかったことだけで直ちに違法となるわけではない(前記のF社Z事業部事件も、規程や告知のない監視について違法とはしていない)が、目的の合理性を説明しにくく、相当性の判断で不利に働く。個人情報保護法上の利用目的の通知・公表の問題も生じる
休憩時間・勤務時間外・私用の画面まで記録する 業務の確認という目的を超えて、私生活の領域に入る
私物のスマートフォンや自宅のカメラで常時撮影する 会社の設備ではなく、私的空間への介入の程度が大きい
嫌がらせや退職に追い込む目的で、特定の人だけを記録する 目的が不当。パワーハラスメント(個の侵害)に当たるおそれもある
上司が個人の判断で、会社の管理部署にも知らせずに見る 前記の平成13年判決が、相当な範囲を逸脱する例として挙げている型に近い(同判決も、上司が当初自分の端末で独自に閲読した方法は「相当とはいえない」と述べている)。見る人と権限は会社として決める
誰でも記録を見られる・社内で話題にする 必要のない人に私的な情報が広がり、不利益が大きくなる
期限を決めずに保存し続ける、説明した目的以外に使う 当初の目的との関係が切れ、必要性を説明できなくなる

反対に、目的を決めて事前に伝え、勤務時間中の会社のパソコンに範囲を絞り、見る人と保存期間を限っていれば、相当な範囲に収まると評価されやすくなります。

「うちのやり方は大丈夫か」を確認できます

すでに記録を始めている場合も、目的・範囲・見る人・保存期間を整理し直せば、争いになったときの説明がしやすくなります。弁護士法人ブライトは顧問先142社の外部法務部として、人事労務の運用を継続的に確認しています。

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個人情報保護法との関係——従業員の情報と、画面に写る顧客の情報

画面の記録には、従業員本人の操作の様子だけでなく、画面に表示された顧客や取引先の情報も写ります。個人情報保護法の観点では、次の3点を押さえます。

1. 利用目的を特定し、本人に通知・公表する

記録された画面や操作の記録は、従業員本人を識別できる情報ですので、従業員の個人情報に当たります。会社は利用目的をできる限り特定し(個人情報保護法17条1項)、取得したときは利用目的を本人に通知するか公表しなければなりません(同法21条1項)。「業務管理のため」のような抽象的な書き方ではなく、「業務の進め方の見直しとシステム改善のため」「顧客情報の不適切な持ち出しがないかを確認するため」のように、実際の目的をそのまま書くことが重要です。

表向きの理由と実際の目的が違うと、後で記録の使い方が問題になったときに、目的外利用(同法18条1項)や、そもそもの相当性の説明で不利になります。

2. 個人情報保護委員会が示す「モニタリングの留意点」

個人情報保護委員会は、ガイドラインのQ&A(Q5-7)で、個人データの取扱いに関する従業者の監督(同法24条)その他の安全管理措置の一環として、従業者を対象とするビデオやオンラインによるモニタリングを行う際の留意点として、次の4つを挙げています。

個人情報保護委員会Q&Aが示す留意点 具体的にやること
モニタリングの目的をあらかじめ特定したうえで、社内規程等に定め、従業者に明示すること 目的を規程と説明文に書き、対象者に事前に伝える
モニタリングの実施に関する責任者及びその権限を定めること 記録を開いて見る人(例:社長と管理担当1名)を決める
あらかじめモニタリングの実施に関するルールを策定し、その内容を運用者に徹底すること 時間帯・除外する画面・保存期間・消去の手順を決め、見る人に守秘を誓約してもらう
モニタリングがあらかじめ定めたルールに従って適正に行われているか、確認を行うこと 期間の終わりに、ルールどおりに運用されたか・消去したかを確認する

同じQ&Aは、モニタリングに関して個人情報の取扱いに係る重要事項等を定めるときは、あらかじめ労働組合等に通知し、必要に応じて協議を行うことが望ましいこと、定めた重要事項等は従業者に周知することが望ましいことも示しています。

3. 画面に写る顧客情報・健康情報の扱い

画面には顧客の氏名や取引内容が写ります。会社は個人データの漏えい等を防ぐ安全管理措置を講じる義務があり(同法23条)、記録した画像そのものが新たな漏えいの原因にならないよう、保存場所・開ける人・保存期間を管理します。

また、体調や通院に関する情報は「要配慮個人情報」(同法2条3項)に当たり、取得には原則として本人の同意が必要です(同法20条2項)。画面の記録から体調を推し量って判断材料にすることは避け、体調が気になる場合は本人と話し、医師の意見を踏まえて対応します。

記録した画像を外部のAIサービスで分析する場合は、提供先が入力データを学習に使わない設定か、保存期間はどうか、海外の事業者か、などを確認し、従業員への説明にも含めます。外部の事業者に情報を渡すことになるため、委託先の監督(同法25条)や外国にある第三者への提供(同法28条)のルールが問題になることがあります。

モニタリング規程・説明文の作成をお手伝いします

個人情報保護委員会のQ&Aが示す4つの留意点を、そのまま社内規程と説明文に落とし込みます。弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は、顧問先142社・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームで中小企業の人事労務を支えています。

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労務の面で気をつけること——就業規則・懲戒・ハラスメント

  • 全社で行うなら就業規則や情報管理規程に定める:会社のパソコンの利用状況を確認することがある旨を規程に定め、周知してから行うのが安全です。常時10人以上の労働者を使用する会社が就業規則を変更する場合は、労働者の過半数代表等の意見を聴き(労働基準法90条)、届け出て(同法89条)、周知する(同法106条)手続が必要です。
  • 懲戒の材料に使うなら、そのことも目的に含めて伝える:「業務改善のため」と説明して始めた記録を、後から懲戒の証拠に使うと、目的外の利用として争いになりやすくなります。不正の調査が目的であれば、その旨を明らかにし、調査の必要性を記録に残します(社内調査の進め方は社内不正の調査の進め方で解説しています)。
  • 特定の1人だけを対象にするときは理由を書面に残す:狙い撃ちや嫌がらせと受け取られやすいため、客観的な理由(例:特定の業務で処理の遅れや誤りが続いている、顧客情報の持ち出しが疑われるなど)を記録し、期間を短く区切り、結果を本人にも伝えて説明の機会を設けます。
  • ハラスメントにならないように:業務上の必要を超えた監視や、記録を使った威圧は、パワーハラスメントの「個の侵害」に当たるおそれがあります(監視ツールとハラスメントの関係はテクノロジーハラスメントとはもご覧ください)。

なお、従業員の同意は必須ではありません。会社の設備・勤務時間中の業務の確認であれば、相当な範囲で業務命令として行うことも可能です。ただし、その場合も事前の通知は必ず行い、できれば説明を受けたことの確認書や同意書をもらっておくと、後の争いを防ぎやすくなります。

導入前のチェックリスト

画面の記録を始める前に、次の項目を決めて書面にしておくと、従業員から質問を受けたときにそのまま説明に使えます。

決めること 決め方の例
目的 業務の進め方の見直しとシステム改善のため(実際の目的をそのまま書く)
対象者 全員/特定の部署/特定の方(特定の方の場合はその理由)
記録する機器と時間 会社が貸与したパソコンのみ。所定の勤務時間中だけ
記録しない画面 ネットバンキング・パスワード・給与明細など私的な画面。休憩中は本人が止められる
見る人 社長と管理担当1名など、名前で決める。見る人は守秘を誓約
保存期間と消去 例:30日で自動消去。確認が終われば速やかに消去
期間 例:2〜4週間など、始まりと終わりを決める
使い道の限定 目的以外に使わない。懲戒に使う可能性があるならそれも明記
本人への結果の伝え方 期間の終わりに結果を本人にも伝え、説明の機会を設ける

画面の記録の導入を、法的な説明とセットで

貴社の目的に合わせた規程・説明文・運用ルールをご提案します。弁護士法人ブライトは、顧問先142社・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームで、中小企業の外部法務部を担っています。

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従業員の方へ——よくあるご質問

Q. 会社が画面を撮るのは違法ではないのですか。

A. 会社が貸与したパソコンで、勤務時間中の業務の状況を確認すること自体は、目的と方法が相当であれば違法とはされにくいと考えられています。違法になるのは、目的が不当だったり、私的な領域まで必要以上に記録したり、見る人や保存期間に歯止めがなかったりして、社会通念上相当な範囲を超えた場合です。

Q. 私的な画面まで見られてしまいませんか。

A. 相当な運用であれば、記録するのは勤務時間中の会社のパソコンに限られ、私的な画面は除くか、本人が止められるようになっています。どの画面が除かれるか、どうすれば止められるかは、会社の説明で確認してください。会社の業務用パソコンで私的な画面を開かないことも大切です。

Q. 誰が画像を見るのですか。

A. 見る人は会社があらかじめ決めておくべき事項です(個人情報保護委員会のQ&Aも、責任者と権限を定めることを留意点として挙げています)。誰が見るのか、説明がなければ会社に確認してかまいません。

Q. 記録は人事評価や懲戒に使われますか。

A. どう使うかは、会社が事前に示した目的によります。説明された目的と違う使い方をすることは、目的外の利用として問題になります。使い道が分からない場合は、書面での説明を求めてよいでしょう。

Q. 記録を拒否できますか。

A. 会社の設備と勤務時間中の業務の確認であれば、相当な範囲で業務命令として行うことができると考えられているため、一律に拒否できるとは言い切れません。一方で、目的や範囲に疑問がある場合は、説明を求めたり、私的な時間の扱いについて相談したりすることができます。

Q. 自分の記録を見せてもらうことはできますか。

A. 記録が本人を識別できる形で保存されている場合、会社に対して開示を求めることができる場合があります(個人情報保護法33条)。まずは会社の説明窓口に、何が記録され、いつ消されるのかを尋ねてみてください。

Q. 体調のことまで記録から判断されませんか。

A. 体調や通院に関する情報は、法律上とくに慎重な扱いが求められる情報です。画面の記録が示すのは「どの時間に、どのソフトで、何の作業をしていたか」であり、体調の判断に使うべきものではありません。体調についての判断は、本人との話し合いや医師の意見を踏まえて行うべきものです。

社内への説明文の例

対象の従業員に伝えるときは、次のような文面をもとに、自社の運用に合わせて書き換えてください。

パソコン画面の記録についてのお知らせ

1. 目的:業務の進め方の見直しとシステム改善のため、会社のパソコンの画面を記録します。

2. 期間:〇年〇月〇日から〇年〇月〇日まで

3. 範囲:会社が貸与したパソコンのみ。勤務時間中(平日〇時〜〇時)に〇秒ごとに1枚。操作のない間は記録しません。ネットバンキング・パスワード等の画面は記録しません。休憩中や私用の際は、画面右下のアイコンから記録を止めてください。

4. 見る人:〇〇(社長)と〇〇(管理担当)の2名のみ。内容を他に漏らしません。

5. 保存:記録は〇日で自動的に消去します。

6. 使い道:上記1の目的にのみ使います。人事評価には使いません。(※使う場合はその旨を明記)

7. 結果:期間の終わりに、分かったことを皆さんにもお伝えします。ご不明な点は〇〇までお尋ねください。

説明文・同意書の確認は弁護士へ

上の例は一般的なひな形です。目的や対象者によって書くべきことは変わります。弁護士法人ブライトでは、顧問先142社の外部法務部として、社内規程と従業員向けの文書を貴社に合わせて整えます。

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まとめ

会社のパソコン画面の記録は、目的を正直に決めて伝え、範囲を絞り、見る人と期間を限り、目的の外に使わないという条件を満たしていれば、法律上の問題が生じにくい運用です。反対に、こっそり・無期限に・誰でも見られる形で行えば、プライバシー侵害やハラスメントとして争われるおそれがあります。

従業員から「違法ではないか」と言われたときに慌てないためには、導入前に目的・範囲・見る人・保存期間を書面にし、その書面で説明できる状態にしておくことが一番の備えです。規程や説明文の作成、すでに始めている運用の見直しについては、当事務所にご相談ください。

※この記事は2026年10月時点の法令・ガイドライン・公表裁判例に基づく一般的な解説です。個別の事情によって結論が変わることがありますので、具体的な運用については弁護士にご相談ください。

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本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
なお、本記事の内容に関する個別の質問や意見などにつきましては、ご対応できかねます。ただし、当該記事の内容に関連して、当事務所へのご相談又はご依頼を具体的に検討されている場合には、この限りではありません。
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