「第三者委員会を設置すべきだ」と誰かに言われたとき、社長はまず何を考えるでしょうか。「そもそも誰が設置を決めるのか」「自分が決めていいのか」「決め方を間違えたら、かえって批判を受けるのではないか」——そんな問いが頭の中をぐるぐると回りながら、判断が止まってしまうことがあります。 不祥事や疑惑が浮上したとき、社長は「早く動かなければ」という焦りと「動き方を間違えたくない」という慎重さの間で引き裂かれます。第三者委員会の設置は、その「動き方」の中でも特に外から見られる判断です。決め方の中身よりも、決め方の見た目が批判を招くことも少なくありません。 この記事では、第三者委員会を「誰が・どのように・いつ」決めるのかという構造を整理したうえで、社長が判断に迷わないための手順と考え方をお伝えします。 第三者委員会は「誰が決める」のかという問いの正体 結論から言えば、第三者委員会の設置を決めるのは原則として取締役会です。会社法上、会社の業務執行に関する重要事項は取締役会が決定します。第三者委員会の設置もこれに含まれるため、法的には取締役会決議によって設置されます。 ただし、現実の場面では「取締役会が形式的に決議する」だけでは終わりません。誰が委員を選ぶのか、委員の独立性をどう担保するのか、調査範囲をどう設定するのか——こうした実質的な判断のほとんどが、社長(代表取締役)を中心に動き始めます。 そのため、社長が「誰が決めるのか」と問うとき、その問いには二つの意味が重なっています。 法的な意味での決定者:取締役会(決議) 実質的な意味での決定者:社長を中心とした経営トップ、あるいは顧問弁護士や外部専門家の助言を踏まえた経営判断 この二つを混同すると、「取締役会で決めたから自分は関係ない」という誤解や、逆に「社長の私が一人で全部決めた」という印象を与えてしまいます。どちらも後から批判の的になりやすいポイントです。 なぜ判断が遅れるのか——社長が陥りやすい構造 【図解】第三者委員会は「誰が決める」のかという問への対応フロー ① 問題発生 → ② 事実確認・記録 → ③ 顧問弁護士に相談 → ④ 対応策の実行 ※ 弁護士に早期相談することで、リスクを最小化できます。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 第三者委員会の設置判断が遅れる背景には、いくつかの共通した構造があります。社長個人の判断力の問題ではなく、状況が作り出す「判断しにくさ」があります。 ①「自分たちで調べれば解決できる」という思い込み 問題が社内で発覚したとき、最初の反応は「まず内部で確認しよう」です。これ自体は自然な判断です。しかし、内部調査が長引いたり、調査結果の信頼性に疑問が持たれたりすると、「最初から第三者に任せていれば」という後悔につながります。 特に、問題に関与した人物が経営層に近い場合、内部調査では利益相反が生じます。調査の独立性が担保されない状態で時間をかけてしまうと、後から「隠蔽しようとしていた」という見方をされるリスクがあります。 ②「第三者委員会を設置すること自体が問題を認めることになる」という誤解 第三者委員会を設置するということは、「うちに問題がある」と対外的に宣言することではないかと感じる社長は少なくありません。しかし実際には逆で、適時・適切に第三者委員会を設置することは、「問題と向き合う姿勢がある」というシグナルです。 取引先や株主、従業員にとって重要なのは、問題の有無よりも「経営者がどう向き合っているか」です。設置を避けて内部対応だけで乗り切ろうとした結果、後から問題が再燃するほうがはるかに信頼を損ないます。 ③「誰に相談していいかわからない」という孤立感 第三者委員会に関する相談は、日常的な法律相談とは性質が異なります。顧問弁護士に相談しようとしても、顧問弁護士自身が「当事者に近すぎる」と感じて身を引くケースもあります。また、設置の判断を誰かに相談することで情報が漏れることへの恐れから、社長が一人で抱え込んでしまうことがあります。 問題が起きる前にできること——予防的な整備と顧問弁護士の活用 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 第三者委員会の設置判断は、問題が起きてから初めて考えるものではありません。「いざとなったときに慌てない」ための準備が、結果的に判断の質を高めます。 事前にできることとして、以下の整備が有効です。 内部通報制度の整備:問題の早期発見と、社内での初動対応フローを明確にしておく 調査委員会の設置基準の検討:どのような問題が発生した場合に外部調査を検討するかを、あらかじめ内規や取締役会規程に定めておく 顧問弁護士との「いざというときの連絡フロー」の確認:問題発覚時に最初に何をすべきかを、平時に共有しておく 第三者委員会の候補者(委員候補)について事前に整理しておく:独立性の高い弁護士・公認会計士などのリストを顧問弁護士と一緒に検討しておく 平時に「何かあったときのシナリオ」を持っていることが、危機が来たときに判断を止めないための安全装置になります。 問題発生時の対応フロー——証拠の残し方と初動の判断 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 問題が発覚したとき、社長が最初にすべきことは「証拠の保全」と「初動の記録」です。第三者委員会が設置された後、委員会が依拠するのは客観的な記録です。発覚直後に証拠が消えていたり、関係者の供述だけに頼ることになると、調査の質が落ちます。 初動で押さえておくべきこと: 問題の発覚日時・発覚経緯・報告者・報告内容を文書として記録する 関連するメール・チャット・書類・データへのアクセスを保全する(削除・上書きを防ぐ) 関係者への接触を最小化し、事実関係の整理が終わるまで当事者間での話し合いを避ける 顧問弁護士に連絡し、内部調査で対応できる範囲か、外部委員会が必要かを判断する 「証拠は、紛争になってから急に作れるものではない」という原則は、第三者委員会の調査においても同じです。発覚直後の数時間・数日の動きが、その後の調査の土台を決めます。 第三者委員会への移行を判断する目安としては、①経営層が問題に関与している疑いがある場合、②内部調査結果に対して外部から信頼性の疑問が出ている場合、③上場会社・準上場会社でステークホルダーへの説明責任が問われている場合、などが挙げられます。 失敗事例の構造——なぜ相談が遅れ、証拠がなかったのか 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 第三者委員会の設置が「失敗した」と評価されるケースには、共通のパターンがあります。 相談が遅れた理由 多くのケースで、相談が遅れた最大の理由は「まだ自分たちで対応できる」という判断の引き延ばしです。内部調査を始めてみたものの、調査が進むにつれて「これは外部に出せない」という心理が働き、結果として情報を絞り込んだまま時間が経過する。そのうち外部に漏れたり、内部告発が起きたりして、後手の対応を余儀なくされます。 また、「顧問弁護士に相談したら大ごとになる」という誤解から、相談のハードルが上がるケースもあります。実際には、早期に相談するほど選択肢は広く、早期に相談するほど対応コストは低く抑えられます。 証拠がなかった理由 発覚後に「証拠を集めよう」と動き始めると、すでに遅いことがあります。問題に関与した人物が先にデータを削除していたり、関係者の記憶が時間とともに変容していたり、重要なやりとりが口頭だけで行われていて記録が残っていなかったりします。 特に中小・中堅企業では、社内のコミュニケーションが口頭ベースで動いていることが多く、重要な合意・指示・報告が記録として残っていないことが少なくありません。第三者委員会が調査に入ったとき、「裏付けとなる記録がない」という状況が調査の限界を生みます。 うちの会社ではどう考えればいいのか——規模別の判断軸 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 「第三者委員会は大企業のもの」というイメージを持つ社長は少なくありません。たしかに上場企業では設置の義務的な文脈が強いですが、非上場の中小・中堅企業であっても、第三者委員会的なアプローチが有効な場面はあります。 規模や状況に応じた判断軸を整理すると、以下のようになります。 上場会社・準上場会社:投資家・証券取引所・金融庁への説明責任があるため、日本弁護士連合会のガイドラインに準拠した第三者委員会の設置が実質的に求められる場面が多い。設置の判断は早期かつ明確に行う必要がある。 非上場・中堅企業(取引先・金融機関・従業員への信頼が問題になっている場合):「第三者委員会」という名称にこだわらず、独立した外部の弁護士による調査(独立調査委員会・特別調査委員会)という形式で対応することが現実的。顧問弁護士とは別の弁護士に依頼するのが独立性の担保につながる。 小規模企業・スタートアップ:問題の規模や影響範囲が限定的であれば、顧問弁護士による内部調査の支援と、必要な範囲での外部専門家の活用で対応できることもある。 重要なのは「名称」ではなく「独立性と透明性」です。調査を行った人物が会社から独立しており、調査プロセスと結果が外部に説明できる形になっていることが、信頼の回復につながります。 再発防止策——設置して終わりではなく、組織に学びを残す 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 第三者委員会が報告書を出した後、多くの会社は「対外的な発表」と「再発防止策の表明」を行います。しかし、ここで終わりにしてしまうと、同じ問題が形を変えて繰り返されます。 報告書の内容を組織に実装するためには、以下のステップが必要です。 原因の構造化:「なぜこの問題が起きたか」を個人の問題に帰着させず、組織・制度・文化の問題として整理する 規程・制度の見直し:内部通報制度、稟議・承認フロー、情報管理ルールなどを実態に合わせて改定する 定期的なレビュー体制の構築:半年・1年ごとに、再発防止策の実施状況をチェックする仕組みを作る 経営層の関与と宣言:再発防止が「現場任せ」になっていないか、経営トップが継続的に関与する姿勢を示す 第三者委員会の設置は、「問題を外部に委ねて終わり」ではありません。報告書は、会社が自分自身を変えるための材料です。それを組織の血肉にできるかどうかが、その後の信頼回復を左右します。 第三者委員会対応・不祥事調査・内部統制整備など、経営上の課題を継続的に相談できる顧問弁護士体制の構築は、一度の不祥事対応で終わるものではありません。不祥事が再発しない組織をつくるためには、就業規則・社内規程の整備から、経営判断の局面での早期相談まで、継続的に伴走できる法務パートナーが必要です。弁護士法人ブライトでは、顧問先142社の企業法務を担っており、企業法務部の弁護士歴平均14年以上の弁護士チームが「みんなの法務部」として社長の判断を継続的に支えています。スポットの危機対応だけでなく、「次の不祥事を起こさない組織づくり」まで一緒に考えることが、私たちの役割だと考えています。 よくある質問(Q&A) Q1. 第三者委員会と内部調査委員会は何が違うのですか? 内部調査委員会は、会社の役員や従業員が委員となって調査を行う組織です。一方、第三者委員会は会社から独立した外部の有識者(弁護士・公認会計士・有識者など)が委員となります。第三者委員会のほうが独立性・客観性が高く、調査結果の対外的な信頼性も高まります。ただし、「第三者委員会」という名称を使うだけでは意味がなく、実質的な独立性が担保されていることが重要です。 Q2. 第三者委員会の委員は誰が選ぶのですか? 形式的には取締役会が選任します。ただし、委員の候補者の選定は、顧問弁護士とは異なる独立した弁護士や専門家の助言を踏まえて行うことが一般的です。会社と関係の深い弁護士や取引先関係者が委員になると「独立性がない」と批判されるため、選定プロセス自体の透明性も重要です。 Q3. 第三者委員会の設置にかかる費用と期間の目安はありますか? 費用は問題の規模・調査範囲・委員の人数・調査期間によって大きく異なります。一般的には数百万円から数千万円規模になることが多く、大規模な調査では1億円を超えるケースもあります。期間は1〜3ヶ月程度が多いですが、複雑な事案では半年以上に及ぶこともあります。費用や期間の見通しについては、顧問弁護士または独立した外部弁護士に早期に確認することをお勧めします。 Q4. 非上場の中小企業でも第三者委員会は必要ですか? 義務があるわけではありませんが、問題の性質によっては有効です。取引先・金融機関・従業員への信頼が損なわれている場合、あるいは問題が経営層に関わる場合は、外部の独立した専門家による調査が信頼回復に効果的です。「第三者委員会」という形式にこだわらず、独立した弁護士による調査という形でも同様の効果が得られることがあります。まずは現在の顧問弁護士または外部の弁護士に相談して判断することをお勧めします。 当事務所が参考にした実務書 当事務所では本テーマに関する最新の実務書を継続的に確認し、顧問先企業のリスク評価に反映しています。本記事の作成にあたり特に参考にした書籍を以下に紹介します。 『第三者委員会の理論と実務』 — 田中亘、松中学(編著)/商事法務/2021年7月/分類:学術書・体系書 『企業不祥事の法務対応』 — 木目田裕、上田純子(編著)/商事法務/2023年9月/分類:Q&A形式の実務解説書 『内部調査の理論と実務』 — 加藤正男(編著)/商事法務/2022年11月/分類:学術書・体系書 『コーポレートガバナンス・コードの解説』 — 神田秀樹/商事法務/2022年3月/分類:条文逐条解説書 『企業危機・不祥事対応のプロが明かすリスクマネジメントの鉄則』 — 田中辰彦/日本経済新聞出版/2021年4月/分類:マニュアル・チェックリスト型 ※ 書籍内容は引用しておらず、書誌情報のみ表示しています。本記事は弁護士法人ブライトが監修・執筆しています。 この記事の監修者 和氣 良浩(わけ よしひろ) 弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士 弁護士歴20年(2006年登録)/大阪弁護士会/大阪大学法学部卒 専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生 第三者委員会の設置判断・不祥事対応・内部統制整備など、経営上の課題を継続的に相談できる顧問弁護士をお探しの方は、弁護士法人ブライト「みんなの法務部」にお問い合わせください。顧問先142社の企業法務を担っており、企業法務部の弁護士歴平均14年以上の経験豊かな弁護士が対応します。企業法務窓口:06-4965-9590(平日9:00〜18:00) 「みんなの法務部」というブライトの考え方 中小企業の社長に「専属の法務部」を持っていただく——これがブライトの顧問サービスの基本姿勢です。社内に法務部を置けない規模でも、契約書・労務・債権回収・M&Aまで日常的に相談できる体制を、月額固定で。企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームで、142社の顧問先と向き合っています。 ▶ みんなの法務部とは(詳しく見る) 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料)