監修:和氣 良浩(わけ よしひろ) 弁護士法人ブライト|代表弁護士|大阪弁護士会 大阪で20年以上、中小企業の企業法務・顧問弁護士サービスを提供。顧問先130社以上に透明性の高いリーガルサポートを実践している。 「毎月同じ業者から納品されているはずの経費が、実際の仕事量に見合っていない気がする」「請求書の金額が、以前より少しずつ高くなっている」――そんな違和感の先に、架空発注・水増し請求という経理不正が隠れているケースは、大阪の中小企業でも珍しくありません。 この種の不正は、経理担当者や役職者が取引先業者と共謀して行う点が特徴で、単独犯の横領よりも発覚が遅れやすく、被害額も大きくなりがちです。弁護士法人ブライトの「みんなの法務部」にも、顧問先の企業様から同種の相談が継続的に寄せられています。本記事では、架空発注・水増し請求が疑われたときの調査手順から、詐欺罪・業務上横領罪・背任罪の整理、本人と共謀業者への損害賠償請求、税務上の対応、再発防止策までを弁護士が解説します。 架空発注・水増し請求の疑いがあるなら、まず弁護士へ 弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずは無料でご相談ください。 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る 無料で相談する(電話 0120-929-739) 架空発注・水増し請求とは?ダミー業者・共謀型の典型スキーム 架空発注・水増し請求とは、実体のない取引を装って会社の資金を不正に流出させる手口の総称です。単純な現金の抜き取りと異なり、帳簿・請求書・振込記録の体裁が一見整っているため、決算や監査でもすぐには気づかれにくいという特徴があります。実務上よく問題になる典型パターンは、大きく次の3つに分けられます。 ダミー業者を使った架空発注型 経理担当者や決裁権を持つ役職者が、自身や親族名義で実体のない業者(ダミー業者)を設立・利用し、その業者宛てに架空の発注書・請求書を作成して代金を支払わせる手口です。納品物やサービスの実体が存在しないため、発覚すれば業務上横領罪または詐欺罪の成否が問題になります。 実在取引先との共謀による水増し請求型 実際に取引関係のある業者と共謀し、本来の取引金額よりも高い金額で請求書を発行してもらい、差額をキックバックとして受け取る手口です。取引自体は実在するため一見すると正常な取引に見え、帳簿突合だけでは発見しづらいのが実務上の難点です。大阪の中小企業では、退職した元従業員が在職中に取引先業者と共謀し、業務委託費を水増し請求していた事実が退職後に発覚するケースも見られます。 見積もり・相見積もりを偽装するケース 相見積もりを取る体裁を整えつつ、実際は特定の業者に発注することが決まっており、他社の見積書を形式的に取り寄せる、あるいは同一人物・関連会社が別名義で複数の見積書を提出するといった偽装が行われることもあります。この場合、正規の入札・相見積もりのプロセスそのものが機能しなくなっている点が問題です。 帳簿の違和感、放置していませんか 弁護士法人ブライト「みんなの法務部」では、大阪の中小企業から経理不正の初動対応のご相談を数多くお受けしています。顧問先130社以上・弁護士歴平均14年以上のチームが調査から回収までサポートします。 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る 無料で相談する 発覚後の初動対応 ― 証拠確保からヒアリングまで 架空発注・水増し請求の疑いが浮上した段階で、対応の順序を誤ると証拠が失われ、その後の損害賠償請求や刑事告訴が困難になります。以下の順序を守ることが重要です。 第1段階:証拠の確保とアクセス権の制限 会計システム・経費精算システムのログをバックアップする(管理者権限で速やかに) 疑いのある取引に関する請求書・発注書・見積書・契約書の原本を確保する 対象者の会計システム・銀行口座へのアクセス権を制限する 対象業者との取引を一時的に停止する(ただし発覚を悟られない配慮も必要な場合がある) この段階では本人へのヒアリングを急がないことが重要です。証拠が固まる前に本人へ告知すると、証拠隠滅や口裏合わせのリスクが高まります。 第2段階:弁護士への相談と方針決定 証拠の一次確保ができた時点で、弁護士に相談し、次の点を整理します。 不正の規模・期間・関与者の範囲(本人単独か、取引先業者との共謀か) 民事上の損害賠償請求と、刑事告訴のどちらを軸に進めるか 本人・共謀業者への告知タイミングと手順 懲戒処分(懲戒解雇等)の手続的な進め方 第3段階:本人・取引先へのヒアリングと自認書の取得 弁護士の関与のもとで本人からヒアリングを行い、事実関係を確認します。ヒアリングは録音し、可能であれば本人が不正を認めた内容を書面(自認書)に残します。自認書は、その後の民事上の損害賠償請求や刑事告訴において重要な証拠になります。取引先業者側にも共謀が疑われる場合は、業者への照会・ヒアリングも並行して進める必要があります。 詐欺罪・業務上横領罪・背任罪 ― 罪の整理と成立要件 架空発注・水増し請求は、関与の態様によって成立する犯罪が異なります。刑事告訴を検討する際は、どの構成要件に当てはまるかの整理が不可欠です。 罪名 条文・法定刑 主に問題となる場面 詐欺罪 刑法246条/10年以下の懲役 架空の発注・請求で会社を欺き、代金を交付させた場合 業務上横領罪 刑法253条/10年以下の懲役 業務上占有している会社の金銭を、権限を悪用して着服した場合 背任罪 刑法247条/5年以下の懲役または50万円以下の罰金 会社に対する任務に背いて財産上の損害を加えた場合(横領・詐欺の要件を満たさない場合の受け皿) 業務上横領罪が成立するケース 経理担当者など会社の金銭を業務上占有する立場にある者が、自らの支配下にある会社資金を、権限を逸脱して自己または第三者のために処分した場合に成立します。架空発注型で、経理担当者自身がダミー業者への支払いを実行した場合などが典型です。 詐欺罪が成立するケース 会社(決裁権者)に対して、存在しない取引や過大な取引があったと誤信させ、その誤信に基づいて代金を支払わせた場合に成立します。架空の請求書を提出して決裁者を欺いた場合など、「欺罔行為」と「錯誤に基づく交付」という要件が満たされるかがポイントになります。 背任罪が成立するケース 決裁権限のある役職者が、自己または第三者の利益を図る目的で、任務に背いて会社に財産上の損害を与えた場合に成立します。横領罪・詐欺罪の構成要件を厳密には満たさない場合の受け皿的な罪として問題になることが多く、実務上は事実関係を精査したうえでどの罪で構成するかを検討します。 共謀した取引先業者の刑事責任(共同正犯・幇助) 水増し請求に応じた取引先業者についても、社内の関与者と共謀関係が認められれば、共同正犯として詐欺罪・業務上横領罪の刑事責任を問える可能性があります。共謀の程度が低い場合でも、幇助犯として責任を問える余地があります。いずれにせよ、共謀の事実をどこまで立証できるかが、刑事・民事双方の帰趨を左右します。 ⚖️ 架空発注・水増し請求に関連する主要法令 刑法246条(詐欺罪):10年以下の懲役。架空発注・虚偽請求で会社を欺いた場合 刑法253条(業務上横領罪):10年以下の懲役。業務上占有する金銭を着服した場合 刑法247条(背任罪):5年以下の懲役または50万円以下の罰金 刑法60条(共同正犯)・62条(幇助):共謀した取引先業者の刑事責任の根拠 民法709条・719条(不法行為・共同不法行為):本人・共謀業者への損害賠償請求の根拠 証拠収集の実務:帳簿・請求書・銀行記録から不正を立証する 架空発注・水増し請求は、共謀型であるほど帳簿の見た目が整っているため、次のような多角的な突合作業が不可欠です。 帳簿と実際の納品・成果物の突合 発注記録・検収記録と、実際に納品された物品やサービスの内容を突き合わせます。成果物が存在しない、あるいは発注量に対して著しく少ないといった不整合があれば、架空発注の重要な手がかりになります。 請求書・見積書の整合性チェック 同一業者からの請求書について、単価・数量・時期ごとの変動を時系列で並べ、不自然な増額がないかを確認します。相見積もりの記録が形式的なものになっていないか、見積書の書式・印影が業者間で酷似していないかも、共謀を疑う手がかりになります。 銀行振込記録・資金の流れの調査 会社から取引先業者への振込記録と、その業者から社内の関与者への資金の還流(キックバック)がないかを調査します。関与者本人や親族名義の口座への不自然な入金がないかを確認することも重要です。 取引先への照会 疑いのある業者に対しては、書面で取引内容の照会を行います。取引先が架空取引の存在を認めれば有力な証拠になりますが、否認された場合に備え、照会は弁護士を通じて慎重に行うことが望ましいです。 証拠収集の段階から弁護士に相談すべき理由 証拠が固まる前に本人へ告知すると、証拠隠滅のリスクが高まります。弁護士法人ブライト「みんなの法務部」が、調査設計から損害賠償請求・刑事告訴まで一貫してサポートします。 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る 無料で相談する 本人・共謀業者への損害賠償請求と刑事告訴 損害額の算定方法(水増し分・架空分の特定) 損害額は、架空発注型であれば支払った代金全額、水増し請求型であれば適正な取引金額との差額が基本になります。適正金額の立証には、同種取引の市場価格や、他の取引先から取得した見積書との比較が有効です。 共同不法行為としての請求構成 社内の関与者と取引先業者が共謀していた場合、両者に対して民法719条の共同不法行為に基づく損害賠償請求を行うことができます。雇用契約上の忠実義務違反を根拠に、不正に得た利得の引渡しを求める構成(民法646条の趣旨を参考にする考え方)を組み合わせることも実務上検討されます。関与者が複数にわたる場合は、資力の乏しい相手を被告から外す、あるいは分割弁済・一括弁済といった条件を相手ごとに調整するなど、回収可能性を踏まえた戦略的な訴訟の進め方が重要になります。 財産の保全(仮差押え)の検討 関与者が資産を処分・隠匿するおそれがある場合は、訴訟提起に先立って不動産や預金口座に対する仮差押えを申し立てることが有効です。仮差押えには一定の担保金が必要になりますが、後日の回収可能性を大きく左右する重要な手続きです。 刑事告訴のタイミングと告訴猶予という選択肢 証拠が整った段階で、弁護士に告訴状の作成を依頼し、所轄の警察署へ提出します。一方で、本人が不正を認めて誠実に弁済に応じている場合は、告訴する権利を留保しつつ弁済状況を見ながら判断する「告訴猶予」という選択肢もあります。弁済が滞った時点で告訴に踏み切るという運用が実務上多く取られています。 税務上の論点と再発防止策(承認フロー・職務分掌) 過大計上の修正は税理士と連携を 架空発注・水増し請求によって、実際には発生していない経費が損金として計上されていた場合、税務上は過大計上の修正(修正申告等)が必要になる可能性があります。これは税務の専門領域であるため、詳細な処理方法・時期については必ず顧問税理士と連携して対応してください。弁護士法人ブライトでも、損害賠償請求の進行状況と税務対応のタイミングをすり合わせる形で、顧問税理士と連携しながら進めるケースが多くあります。 損害賠償請求権と会計処理の関係 不正発覚後に本人・共謀業者へ損害賠償請求を行う場合、その請求権をどのタイミングでどのように会計上認識するかについても、税務上の取扱いが関係します。回収の見込みが立たない場合の貸倒処理の要否なども含め、法務側の対応方針と税務側の処理を並行して整理することが望ましいです。 承認フロー・職務分掌の設計 再発防止の観点から、顧問弁護士がまず提言するのは承認フロー・職務分掌の見直しです。最低限、以下の体制を整えることを推奨しています。 発注担当者と承認者(決裁者)を分離し、1人が発注から支払いまで完結できないようにする 一定金額以上の発注には、複数名による相見積もりの取得と、その記録の保存を義務付ける 新規取引先の登録時に、実在性(登記事項証明書・所在地)の確認を行う 取引先の口座名義と担当者・役職員の氏名・親族関係に重複がないかを定期的にチェックする 月次で主要取引先ごとの支払額の推移をモニタリングする 発注〜支払いの二重チェック体制 発注・検収・支払いの各段階を異なる担当者が確認する体制を構築することも有効です。特に検収(実際にサービス・物品が提供されたことの確認)を発注者本人以外が行う体制にするだけで、架空発注型の不正は大幅に発見しやすくなります。 承認フロー・職務分掌の見直しもあわせて相談できます 弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は、大阪の中小企業130社以上の顧問先に対し、不正発覚時の対応だけでなく再発防止の体制構築までサポートしています。 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る 無料で相談する 弁護士に相談すべきサインと費用の目安 架空発注・水増し請求は「疑いの段階」から弁護士に相談することで、証拠散逸や被害拡大を防げる可能性が高まります。以下のサインが1つでも当てはまる場合は、早めの相談をおすすめします。 相談すべきサイン 放置するリスク 特定の業者への支払額が、業務量に見合わず増え続けている 被害額の拡大・証拠の散逸 相見積もりの記録が形式的になっている、または業者が固定化している 不正の温床となる承認フローの形骸化が進む 経理担当者・役職者が特定の業者と個人的に親しい様子がある 共謀関係の看過・発見の遅れ 対象者が突然の退職を申し出た 証拠隠滅・資産の隠匿・回収困難化 費用の目安(弁護士法人ブライト「みんなの法務部」顧問先の場合): 初動対応(証拠確保の助言・ヒアリング立会・書面作成):顧問契約の範囲内で対応できるケースが多い 損害賠償請求・示談交渉:着手金10〜30万円程度+報酬(回収額の10〜20%)が一般的な水準 仮差押えなどの保全手続き:別途着手金+担保金の準備が必要 刑事告訴状の作成・提出:別途費用が発生する場合が多い(内容により異なる) 民事訴訟(通常訴訟):着手金20〜50万円程度+報酬 顧問契約がある場合は、初動対応を含む多くの局面でスポット費用を抑えられます。大阪の弁護士法人ブライト「みんなの法務部」では、架空発注・水増し請求など経理不正の緊急対応を顧問業務として提供しています。 よくある質問 Q. 取引先業者にも損害賠償請求はできますか? A. 社内の関与者と共謀していたことが立証できれば、民法719条の共同不法行為に基づき、取引先業者に対しても損害賠償請求を行うことができます。大阪の弁護士法人ブライトでは、共謀の立証段階から対応しています。 Q. 証拠が確定的でない段階でも相談してよいですか? A. むしろ、疑いの段階でのご相談を推奨しています。証拠が固まる前に本人へ告知してしまうと、証拠隠滅や資産の隠匿につながるおそれがあります。調査の設計自体を弁護士とご相談いただくのが安全です。 Q. 詐欺罪と業務上横領罪、どちらで告訴すべきか分かりません。 A. 関与者の立場(金銭を業務上占有していたか、決裁者を欺く行為があったか)によって成立する罪が異なります。事実関係を精査したうえで、最も立証しやすい構成を弁護士が選定します。両罪が観念的競合として同時に問題になることもあります。 Q. 修正申告など税務対応も弁護士に依頼できますか? A. 修正申告などの具体的な税務処理は税理士の専門領域になります。弁護士は損害賠償請求・刑事告訴などの法的対応を担当し、税務面は顧問税理士と連携しながら進める形が一般的です。顧問税理士がいらっしゃらない場合は連携先をご案内することも可能です。 Q. 大阪の中小企業でも、再発防止の体制づくりから相談できますか? A. 可能です。弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業130社以上を顧問先として、不正発覚時の対応だけでなく、承認フロー・職務分掌の設計といった予防法務まで一貫してサポートしています。 架空発注・水増し請求が発覚したら、すぐにご相談ください 弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずは無料でご相談ください。 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る 無料で相談する(電話 0120-929-739) 関連記事 横領・着服した社員への損害賠償請求と刑事告訴の実務|弁護士解説【会社側・使用者側】 業務上横領の防止策・発覚後の対処法【内部統制・刑事告訴・損害賠償・大阪の弁護士】 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る 本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の事案に対する法律アドバイスではありません。個別の対応については弁護士にご相談ください。 【特集】企業不正対策センター 社員の横領・着服・架空発注・水増し請求などの不正が発覚したときの初動から、回収・刑事告訴・再発防止の制度設計までを体系的にまとめた特集ページです。 企業不正対策の特集ページを見る