「これ以上ごねるなら、ネットで全部ばらしてやる」「お前の家族に何かあっても知らないぞ」――そんな言葉を取引先や顧客から受けたとき、社長として最初に頭をよぎるのは「これは脅迫になるのか」という疑問と、「警察に相談して、本当に解決するのか」という不安ではないでしょうか。 被害届を出せばよいのか、それとも相手と話し合いを続けるべきか。法的手段を取ることで、かえって関係が悪化したり、会社の評判に傷がついたりしないか。そういった迷いは、会社を守ろうとする社長であれば誰でも持つ自然な感覚です。 この記事では、脅迫的な言動を受けた企業の社長が、「被害届を出すかどうか」を正しく判断するための考え方と、証拠の残し方、民事対応との並行進行の仕方を具体的にお伝えします。 「これは脅迫になるのか」と迷う理由 多くの社長が被害届の提出を躊躇する理由は、そもそも「何が脅迫罪にあたるのか」が分からないためです。 刑法第222条は、「生命・身体・自由・名誉・財産に対して害を加える旨を告知し、人を畏怖させた」行為を脅迫罪としています。要件を簡単にまとめると、①害悪を告知する言動があり、②その内容が相手を恐怖させるに足る程度であることです。直接「殺すぞ」と言わなくても、「家族に何かあっても知らない」「ネットにさらしてやる」「会社を潰してやる」といった表現も、状況によっては害悪の告知に該当し得ます。 しかし、日常のビジネスシーンでは「強いクレーム」と「脅迫」の境界線は曖昧に見えることが多く、「相手が本気かどうか」「会社として大げさに対応しているように見られないか」という判断が先に立ってしまいます。この「曖昧さ」こそが、被害届提出の判断を遅らせる構造的な原因です。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) なぜ判断ミスが起きるのか――3つの思い込み 【図解】「これは脅迫になるのか」と迷う理由への対応フロー ① 問題発生 → ② 事実確認・記録 → ③ 顧問弁護士に相談 → ④ 対応策の実行 ※ 弁護士に早期相談することで、リスクを最小化できます。 脅迫被害を受けた会社が判断を誤るパターンには、共通した思い込みがあります。 思い込み①「警察に行っても動いてくれない」実際には、脅迫罪は親告罪ではなく、被害届があれば捜査の端緒になります。ただし、証拠が不十分だと受理後も捜査が進みにくいのは事実で、「警察に行ったが何もしてくれなかった」という経験から「警察は動かない」と思い込む社長が多い。 思い込み②「民事で解決すれば刑事は不要」民事の損害賠償請求と刑事の被害届は目的が異なります。刑事手続きは相手への抑止力と社会的な制裁を求めるものであり、民事とは並行して進めることができます。どちらかに絞る必要はありません。 思い込み③「話し合いで解決したほうが早い」脅迫的な言動をする相手と社長が直接交渉を続けることは、証拠の毀損リスクや二次被害につながります。相手が「話し合いに応じているうちは被害届を出さないだろう」と認識し、要求をエスカレートさせるケースもあります。 これらの思い込みは、いずれも「結果的に相談を遅らせる」という点で共通しています。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 問題が起きる前にできること――予防的な視点 脅迫的な言動は、取引関係のこじれや顧客との紛争、従業員の不満など、さまざまな文脈で起きます。完全には防げませんが、「記録を残す文化」と「社内の報告ライン」を整えておくことで、被害を拡大させないための初動を格段に速めることができます。 具体的には以下の体制が有効です。 電話対応は録音できる環境を整える(クラウドPBXや録音機能付きIP電話の導入) 店舗・事務所に防犯カメラを設置し、映像を一定期間保存する運用ルールを定める 脅迫的な言動を受けた従業員が「すぐ上長に報告できる」報告フローを就業規則・社内規程に明記する 顧問弁護士との契約を事前に締結し、有事の初動相談を即座に行える体制を作る 顧問弁護士を「困ったときだけ使う存在」ではなく、「社内の報告・判断ラインの一部として組み込む存在」にしておくことが、最も実効性のある予防策です。揉めてから弁護士を使うのではなく、揉めないように弁護士を使う。これが会社を守る正しい順番です。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 被害届を出す前後の対応フロー――証拠の残し方を具体的に 実際に脅迫的な言動を受けた場合、以下のフローで対応することを推奨します。 証拠をその場で保全するメール・LINE・SNSのスクリーンショット、録音データ、書面(手紙・FAX)の現物を保存します。スクリーンショットは「日時が確認できる状態」で撮影し、クラウドストレージに保存してください。削除されると取り返しがつかないため、すぐに複数箇所に保存することが大切です。 記録(被害メモ)を作成する日時・場所・発言内容・その場にいた人物を記録したメモを作成します。感情的な表現ではなく、できるだけ客観的・具体的に記録してください。これが後に警察や弁護士への説明材料になります。 弁護士に相談し、方針を確定する被害届を出すかどうか、民事での損害賠償を請求するかどうか、まず弁護士に状況を整理してもらうことで、社長自身の判断の精度が上がります。「証拠として使えるか」の評価は、法的な観点がないと難しいためです。 被害届を提出する(必要に応じて告訴状に切り替える)被害届は捜査の端緒を作るものですが、法的効果が弱い場面では告訴状として提出する方が捜査機関に対する拘束力を持ちます。弁護士と相談のうえ、書面の形式を判断してください。 民事対応を並行して検討する損害(精神的苦痛・業務の損害・対応コストなど)がある場合は、損害賠償請求を民事で進めることができます。刑事手続きと民事手続きは相互に補完し合う関係にあります。 証拠は、紛争になってから急に作れるものではありません。「記録に残す」という習慣が、後の法的対応の質を決定的に左右します。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 失敗事例の構造――なぜ相談が遅れたのか 弊所の顧問先から寄せられた相談の中には、「もっと早く動いていれば」という後悔を含むケースが複数あります。共通しているのは以下の3点です。 ①「まだ証拠が足りない」と自己判断して動けなかった 「これだけの証拠では警察にも弁護士にも動いてもらえないだろう」という自己判断で相談を先送りにしているうちに、相手がSNSやメールのアカウントを削除してしまい、証拠が消滅したケースがあります。「証拠が足りるかどうか」は、社長が判断することではなく、弁護士が評価することです。 ②「穏便に済ませたい」と直接交渉を続けた 取引先や顧客との関係維持を優先して、社長自身が相手と直接やり取りを続けた結果、「あのときこう言った」「謝罪した」などの言動が後に不利な材料として使われたケースがあります。相手に弁護士がついている場合は特に、社長が単独で交渉を続けることには高いリスクがあります。 ③「大ごとにしたくない」と記録をつけていなかった 口頭での脅迫的発言は記録がなければ立証が困難です。「そんなことは言っていない」と相手に否定されたとき、録音や目撃者がなければ警察も弁護士も動きにくくなります。「大ごとにしたくない」という心理が、結果的に証拠のない状態を作り出してしまいます。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) うちの会社ではどう考えればいいのか 脅迫的な言動への対応は、会社の規模や業種、相手との関係性によって最適な手順が異なります。ただし、判断の軸となる考え方は共通しています。 「脅迫かどうか」の判断は弁護士に委ねる。社長自身が判断せず、まず弁護士に事実を共有し、法的評価を受けてから動く。 刑事と民事は並行して検討する。どちらかに絞る必要はなく、両方の選択肢を同時に持っておく。 「今すぐ被害届を出すかどうか」より「証拠を残せているか」を先に確認する。被害届の提出タイミングは弁護士と相談して決めればよいが、証拠の保全は今すぐ行う必要がある。 相手に弁護士がついている場合は、こちらも弁護士を立てる。素手で戦う必要はありません。 社長の役割は「被害届を出すかどうかを一人で決めること」ではなく、「正確な情報をもとに正しい判断をすること」です。弁護士はその判断の質を上げる存在であり、判断を奪う存在ではありません。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) 再発防止策――次の被害をどう防ぐか 一度、脅迫的な言動への対応を経験した会社が取り組むべき再発防止策は、以下の通りです。 クレーム・悪質顧客対応マニュアルの整備:「どの段階でどのように対応するか」を明文化し、従業員が迷わず動けるフローを作る。 録音・記録体制の構築:電話・対面での会話を記録できる環境を整え、記録データの保存ルールを定める。 「上長報告義務」の明文化:脅迫的な言動を受けた従業員が一人で抱え込まないよう、報告義務を就業規則または社内規程に記載する。 取引先・顧客との契約書の整備:取引の開始時点で、「脅迫的言動があった場合は取引を即時解除できる」旨の条項を入れておくことで、相手の行動に一定の抑止力を持たせる。 再発防止の本質は、「次に被害が起きたとき、より早く、より有利な状態で対応できる体制を整えること」です。法的手続きを一度経験した後は、その経験を体制整備に活かすことが会社を強くする最善の方法です。 脅迫被害への対応は、単発のトラブル処理で終わらせるべきではありません。悪質なクレームや脅迫的な言動は、一度対応を誤ると相手が「この会社はコントロールできる」と認識し、繰り返されるリスクがあります。対応規程の整備と顧問弁護士への継続的な相談体制の構築がセットで必要です。弁護士法人ブライトでは、企業法務部の弁護士歴平均14年以上の弁護士が顧問先142社の実名とともに、現場の判断を支える「みんなの法務部」として機能しています。一件の相談で終わらせず、就業規則・社内規程の整備から日常的なクレーム対応の相談まで、継続的にサポートすることで、会社の対応力を底上げします。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料) よくある質問(Q&A) Q1. 「訴えてやる」と言われただけでも脅迫罪になりますか? A. 「訴えてやる」という言葉だけでは、一般的に脅迫罪の「害悪の告知」には該当しないとされます。ただし、「訴えてやるから家族も覚悟しろ」「会社を潰してやるから訴えてやる」といった文脈での使用であれば、脅迫罪の構成要件に近づく可能性があります。言葉の内容だけでなく、状況・文脈・相手の意図を総合的に評価する必要があるため、録音や記録を保存のうえ、弁護士に相談してください。 Q2. メールやSNSで送られてきた脅迫的なメッセージは証拠になりますか? A. はい、なります。ただし、スクリーンショットは送信者・日時・内容が明確に確認できる形で保存してください。アカウントが削除される前に保全することが重要で、可能であれば弁護士に相談のうえ、保全手続き(証拠保全申立て)を検討するケースもあります。 Q3. 被害届を出すと、相手との関係は必ず壊れますか? A. 必ずしもそうではありません。被害届の提出が相手への警告・抑止として機能し、その後の交渉が円滑になるケースもあります。一方で、継続的な取引関係を重視する場合は、刑事手続きと並行して民事での示談交渉を進める選択肢もあります。どちらを選ぶかは、相手との関係性・被害の程度・会社の方針によって異なるため、弁護士と相談のうえ判断することを推奨します。 Q4. 警察に相談したが被害届を受理してもらえませんでした。どうすればよいですか? A. 被害届の受理は警察の裁量に委ねられており、証拠が不十分と判断された場合は受理されないことがあります。この場合、①追加の証拠を収集して再提出する、②告訴状という形式で提出し直す(告訴状は被害届より法的効果が強く、受理義務があるとされています)、③弁護士に代理人として対応してもらう、という選択肢があります。 当事務所が参考にした実務書 当事務所では本テーマに関する最新の実務書を継続的に確認し、顧問先企業のリスク評価に反映しています。本記事の作成にあたり特に参考にした書籍を以下に紹介します。 『捜査実務全書〈第5巻〉脅迫・強要・恐喝』 — 河野博/東京法令出版/2007年4月/分類:条文逐条解説書 『クレーム・悪質クレーマー対応の法律と実務(第2版)』 — 日本組織内弁護士協会 監修、西谷徹 著/日本加除出版/2023年5月/分類:Q&A形式の実務解説書 『刑事訴訟法(第5版)』 — 池田修・前田雅英/東京大学出版会/2023年7月/分類:学術書・体系書 『カスタマーハラスメント対応の法律実務』 — 石崎冬貴/弘文堂/2022年7月/分類:Q&A形式の実務解説書 『被害者支援と刑事手続』 — 河原俊也/成文堂/2021年5月/分類:学術書・体系書 ※ 書籍内容は引用しておらず、書誌情報のみ表示しています。本記事は弁護士法人ブライトが監修・執筆しています。 この記事の監修者 和氣 良浩(わけ よしひろ) 弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士 大阪弁護士会/大阪大学法学部卒 専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生 脅迫被害・悪質クレーム・取引先トラブルなど経営上の課題を継続的に相談できる顧問弁護士をお探しの方は、弁護士法人ブライト「みんなの法務部」にお問い合わせください。顧問先142社の実名を公開しており、企業法務部の弁護士歴平均14年以上の経験豊かな弁護士が対応します。企業法務窓口:06-4965-9590(平日9:00〜18:00) 「みんなの法務部」というブライトの考え方 中小企業の社長に「専属の法務部」を持っていただく——これがブライトの顧問サービスの基本姿勢です。社内に法務部を置けない規模でも、契約書・労務・債権回収・M&Aまで日常的に相談できる体制を、月額固定で。企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームで、142社の顧問先と向き合っています。 ▶ みんなの法務部とは(詳しく見る) 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先142社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料)